現場の倫理観をこそ――偽装とコンプライアンス
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ☆雇用システム研究所メールマガジン☆ 第58号
2007/12/16 http://www.koyousystem.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
街中ではクリスマスイルミネーションから松飾りへと変化しています。 一年がたつのは、ほんとうにあっというまですね。 みなさま、いかがお過ごしでしょうか?
雇用システム研究所メールマガジン第58号をお送りします。
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現場の倫理観をこそ――偽装とコンプライアンス
◆ 単なる法令遵守は現場力を細らすだけ
◆ 「人としての常識」「プロフェッショナルとしての倫理観」
(以上執筆者 福島敏之)
[編集後記] (編集長 白石多賀子) ---------------------------------------------------------------
現場の倫理観をこそ――偽装とコンプライアンス
2007年の世相を象徴する一字は、「偽」でした。
確かに、次から次へと連鎖的に発覚した食品偽装のインパクトは相当なものでした。すっかりおなじみの風景になってしまった謝罪会見。そのたびごとに経営陣が決まり文句のごとく口にしたのは「法令遵守の徹底」でした。
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■■■ 単なる法令遵守は現場力を細らすだけ ■■■
しかし、この「法令遵守」の考え方が実は曲者だ――と解説するのは、コンプライアンスの専門家で、元東京地検特捜部の郷原信郎氏(桐蔭横浜大学法学科大学院教授)です。
多くの賢明な組織人達は、法令遵守ということの意味のコンプライアンスが、多くの弊害をもたらしていることに気づき始めています。抽象的に法令遵守を宣言し、社員に厳命するだけの経営者の動機が、命令に反して社員が行った違法行為が発覚した場合の「言い訳」を用意しておくことに過ぎないこと、法令遵守によって組織内には違法リスクを恐れて新たな試みを敬遠する「事なかれ主義」が蔓延し、モチベーションを低下させ、組織内に閉塞感を漂わせる結果になってい ることを感じています。 (郷原信郎著「『法令遵守』が日本を滅ぼす」新潮新書)
郷原氏によれば、○○法を守れ、○○規則を守れ、○○マニュアルを守れ…という単純な法令遵守では、そればっかりに汲々としてしまい、根本的なことや基本的なことから注意が離れて、法令と法令の「谷間」の問題や環境の変化に対応する能力が失われてしまうのだそうです。一昨年に発生したJR福知山線脱線事故の際、被害者の家族が医療機関に肉親の安否を問い合わせたのに対して、医療機関側が個人情報保護法を理由に回答を拒絶したのは、その典型例だと言います。
■■■ 「人としての常識」「プロフェッショナルとしての倫理観」 ■■■
「非寛容な時代」とも称される今日、商品の安全性や表示の信憑性に向ける消費者やメディアの“目”は厳しさを増す一方です。内部告発が一般化し、都合の悪いことを社内だけにとどめておくことも難しくなりました。そんな折、現場から「考える力」が失われ、責任回避的な振る舞いが支配的になれば、企業はいかに脆弱になってしまうか。そういうことも考え合わせて、コンプライアンスを捉えていかなければならないでしょう。
郷原氏はこう言います。
「重要なことは、組織が何を目的とし何をめざしているか、その実現に関して何が問題になっているかを、全構成員が理解、認識することです」「細かい条文がどうなっているなどということを考える前に、人間としての常識に従って行動することです。そうすれば、社会的要請に応えることができるはずです」
企業の社会的責任を担保するのは、法令遵守の詳細なマニュアルではなく、働き手の「人としての常識」であり、「プロフェッショナルとしての倫理観」です。その厚みを増すことこそが、いま求められる本質的なコンプライアンスだと言えるのでしょう…。
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人が為すと書く「偽」という字は、意味深長です。ただ、次なる年は、後代に示しのつく字が選ばれるようでありたいですね。 どうか皆様、よいお年をお迎えください。 (福島敏之)
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編集後記◆ --------------------------------------------------------------------------
今年の「新語・流行語大賞」トップテンに「消えた年金」が入りました。それにしても社会保険庁の年金管理のずさんさには驚きました。
NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」で、ヒロイン和田喜代美が落語家に弟子入りし、毎日掃除・洗濯・食事の支度に明け暮れ、落語の稽古をしてもらえず、嫌々ながら掃除をしていたときに、兄弟子が、『落語家は、“人を気持ちようさせる”それが仕事や』という台詞がありました。
「嫌々ながら掃除をした部屋にいても気分が悪いだけ、心込めて行えば“人を気持ちようさせる”ことができる。これは落語家だけではなく全てのことに通ずる」とのことです。
利己主義が多いといわれる昨今は、“人を気持ちよくさせる”ことの意識・行動には、温度差があります。
来年も、相手を思いやる心を持って行動し、ギスギスした人間関係を打破するお手伝いをしたいです。(白石)
------------- ☆ ☆ ☆ -------------- 発行者
雇用システム研究所 代表 白石多賀子 東京都新宿区新小川町9番5号畑戸ビル アドレス:info@koyousystem.jp
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