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管理職と残業代

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        ☆雇用システム研究所メールマガジン☆
                                 第61号
                               2008/02/01
          http://www.koyousystem.jp
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春とは名ばかりでまだ真冬のように寒く、都心では雪が降り積もりました。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。

雇用システム研究所メールマガジン第61号をお送りします。  

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□ 目次

◆ 管理職と残業代 〜現役店長の勝訴に考える

◆ 管理監督者の判断基準、実はかなり厳格

◆ 課長クラスの75%が管理監督者という“誤った”現実
  (以上執筆者 福島敏之)

◆ 今!気になる4つのテーマ
  【第169回 通常国会に10法案提出】
  【「ガソリン」だけでない臨時措置】
  【障害者雇用促進法と児童福祉法等も改正】
  【取り残された改正労働基準法は?】
  (以上執筆者 津山 勝四郎)

[編集後記]
  (編集長 白石多賀子)

☆☆「労働契約法」「パートタイム労働法」セミナー開催のお知らせ☆☆
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管理職と残業代 〜現役店長の勝訴に考える


 日本最大のファストフードチェーンが、直営店の現役店長から未払い残業代を求められた裁判で、先月、会社側敗訴の判決が出されました。
 最大の争点は、「店長は(時間外手当の支払義務が除外されている)管理監督者か否か」ということでした。会社側からすれば、店長が管理監督者だと同定されれば、全国の同様な直営店長1,700人分についても未払い分の要請が生じるわけで、その判断だけは避けたかったところ。
 裁判所の判断は、「労務管理の一端を担い、売り上げ計画なども一定の決裁権限を持っているが、権限は店舗内に限られ、企業全体の経営方針などの決定過程に関与している事実は認められない」というもので、原告の現役店長の主張を認めるものとなりました。
 原告に対して支払うよう会社が命じられた金額は、過去2年分の残業代など約750万円。同社は判決の翌日、控訴しました…。


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■■■ 管理監督者の判断基準、実はかなり厳格 ■■■
 あれ?管理職には残業代を出さなくてもよいのでは?
 と思われた方もいらっしゃるかもしれません。ちょっとここで法律の話を挟みます。

   *   *

 労働基準法は、会社が従業員に1週間40時間、1日8時間を超えて労働させることを原則として禁止しています。やむをえず超過労働を従業員に命ずるためには、労働基準法第36条の規定に基づく「時間外労働・休日労働に関する協定」を労使間で締結し、所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。 また、1時間当たりの賃金を2割5分割増して支払う ことが義務づけられます。

 この規制は、かつての工場労働のような長時間労働が健康を損なうという歴史的教訓を踏まえて導入されたものでした。ただし、一部の例外も仕組まれています。「監督もしくは管理の地位にある者又は機密の事務を扱う者はこの規制を適用しない」(労働基準法第41条2号)というもので、この規制枠外に置かれる職位を「管理監督者」と呼んでいます。

 ただし、この管理監督者の範囲は、法令によって明文化されてはいません。誰を管理監督者にするかは会社の判断に委ねるものとしつつ、解釈通知による行政指導でシバリをつけていました。その解釈通知の判断基準は、

(1)事業運営に関する重要事項に対する関与、
(2)労働時間規制になじまない勤務形態、
(3)地位にふさわしい待遇――というものです。


■■■ 課長クラスの75%が管理監督者という“誤った”現実 ■■■

 …つまり、肩書きに「課長」とつけて多少の管理職手当をつけたくらいでは、残業代不要の管理監督者の要件を満たしたことにはならないということです。こうした判断基準は、これまでの判決で繰り返し採用されてきました。今回の判決でも採用されました。

 しかし現実には、課長に残業代を支払っている企業は少数派でしょう。厚生労働省委託の実態調査でも、課長クラスの職位の約75%が管理監督者として扱われ、課長代理クラスでも4割超が管理監督者になっているという結果が出ています(「管理監督者の実態に関する調査研究報告書」2005年3月)。
 この「現実と法理の乖離」は、判断基準の根拠が法令ではなく、行政指導であったことに一因があると言えます。

 ただ、世間の注目を集めた今回の判決により、流れが変わることも十分考えられます。法理上の常識と会社の常識の“食い違い”を埋める動きが何か起こるのか起こらないのか。それによって個々の会社や従業員にどのような影響が及ぶことになるのか――。

 今後の労政の動きに注視が必要です。            (福島敏之)

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今!気になる4つのテーマ
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◆◆◆ 第169回 通常国会に10法案提出 ◆◆◆

 「ガソリン国会」という、まさに“品格”のない名称が冠せられ、25円という数値が一人歩きして、肝心の道路整備をどうするのかという議論が全く展開されない。与野党共に脳裏に選挙しかない結果で、お粗末な国会と言える。
そんな中、厚生労働省関係の提出予定法案は予算関連法案4本を含む10法案が審議され、この他に臨時国会で継続審議扱いとなった「被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法案の一部を改正する法律案」と、後述する「改正労働基準法」も提出されている。

10法案のうち、日切れ扱い法案となり3月末まで成立する法案は、国民年金法等一部改正案(21年度から基礎年金の国庫負担を3分の1プラス1000分の40に、平成21年度から2分の1)。次に「戦没者の父母等に対する特別給付金支給法の一部改正案は、平成19年に終了した戦没者の父母等に5年償還の国債を100万円継続支給するための改正で、対象件数は120件。


◆◆◆ 「ガソリン」だけでない臨時措置 ◆◆◆

 3番目の日切れ法案が昭和33年に時限立法として成立し、これまで9度延長し、5月16日に期限切れとなる「駐留軍関係離職者臨時措置法」と、同じく昭和52年に時限立法として成立し、6度延長され6月30日に期限切れとなる「漁業離職者に関する臨時措置法」で、在日米軍再編による駐留軍関係離職者と、韓・中・口3国との漁業交渉による漁獲割当が変動することによる漁業離職者の臨時措置を、それぞれ5年間延長する。


◆◆◆ 障害者雇用促進法と児童福祉法等も改正 ◆◆◆

 4番目が鳥インフルエンザなど新型インフルエンザ流行に対し、入院措置等の法的根拠を整備する「感染症予防及び患者医療に関する法律及び検疫法の一部改正」、5番目が政府全体の財政均衡策によるシーリングにより、厚生労働省予算の自然増を毎年度2000億円カットするため、平成20年度の特別措置として、政管健保の国庫負担を1000億円減額し、その分を健保組合750億円、共済組合等に250億円負担増とするための「健康保険法の規定による国庫補助額特例法案」が提出される。

そして、6番目が昨年12月のこの欄でふれた「障害者雇用促進法の一部改正案」で、改正内容は、中小企業における障害者雇用を促進するため、現行で301人以上となっている障害者雇用納付金の納付義務を常用雇用者101人以上(一定期間は201人以上)にするとともに、中小企業が事業協同組合等を活用して共同で障害者を雇用した場合に、雇用率の算定をまとめて行う特例を設ける。さらに、短時間労働(週20時間以上30時間未満)に対応した雇用率を2分の1に算定する雇用率制度の見直しも行う。

7番目が政府の行政改革に伴う国立高度専門医療センター(全国6センター)を平成22年度から非公務員型の独立行政法人への移行させるための法律案。そして8番目が厚生行政の改正の目玉と言える「児童福祉法等の一部改正案」で、「子どもと家族を応援する日本」重点戦略を踏まえた新たな子育て支援サービスの創設と、仕事と生活の両立支援のための「次世代育成支援対策推進法の一部改正」。新たな子育て支援は家庭的保育事業による全ての子どもを対象とした一時預かり事業の創立と、次世代育成支援対策推進法の対象を現行の301人以上規模から、当面は201人以上規模に拡大して、一般事業主行動計画の策定・届出の義務付けとする。対象範囲拡大の施行は平成22年4月1日から。

9番目は「介護保険法と老人福祉法の一部改正」は、コムスンに代表された介護サービス事業者の不正事業の再発を防止するもので、10番目は医療事故等の原因を究明し、医療の安全を図ることを目的とした医療安全調査委員会を設置するための法案で、委員会に勧告又は追議を厚生労働大臣に行う権限を持たせる。


◆◆◆ 取り残された改正労働基準法は? ◆◆◆

 提出される10法案とは別に、継続となっている2法案のうち、「被用者年金一元化法案」は、週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満で20時間以上、報酬月額が9万8千円以上であるパート労働者の厚生年金への加入を法案の中に盛り込んではいるが、主要部分の一元化が、公務員制度改正の動向と共に不透明となっており、審議は更に先送りとなる見込み。

そして改正労働基準法だが、政府案の割増賃金の引上げが、時間外労働45〜79時間が引上げ努力義務、80時間以上が割増賃金50%(法的措置)で支払に代えて有給の休日付与も可能。また、この部分は中小企業に対して猶予措置を講ずるとともに、年次有給休暇については5日分に限り時間単位の取得を可能とする内容となっている。

労働者側の連合は基本的に割増賃金は50%との立場だが、政府案に対して、例えば80時間以上が70時間なり60時間まで引き下がれば歩み寄る姿勢を持っており、ワーク・ライフ・バランスの実現ということから経営側も法案成立のための修正に賛同していることから、今国会での成立は可能性大ではあるが、問題は衆院選の動向である。改正が成立すれば、与野党どちらに利するかが読み切れず、特に労働者側(野党)に利することを危惧する与党が審議に入らない事も考えられる。つまり、衆院選が通常国会終了後まもなくでなく、来年の任期終了後など、時間があけば、政府案一部修正の上で成立することになる。だが、予断はできない。                       (津山 勝四郎)



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◆ 編集後記◆  
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 現在、H5N1型鳥インフルエンザウイルスは、鳥から人に、人から人に感染しはじめ、WHOは「最大脅威」と報告しています。
インフルエンザウイルスには、遺伝子の変異等により強毒性の新型インフルエンザに変化していく可能性が高いそうです。

20世紀に起こったスペイン風邪、アジア風邪、香港風邪といった過去の新型インフルエンザは弱毒性型の鳥ウイルスでしたが、H5N1は強毒性です。致死率は60%以上で、日本でも厚生労働省によると64万人(オーストラリアの研究機関によると210万人)と予測されています。

お正月に、企業の危機管理意識の話題から鳥インフルエンザの話題になり、「H5N1(岡田晴恵著:ダイヤモンド社)」を勧められ読書中に、丁度、NHKで2夜連続の“H5N1”スペシャル番組がありました。ご覧になりましたか。

 企業の危機管理意識に話を戻しましょう。
SARS(重症急性呼吸器症候群)の流行を覚えていますか。
多くの会社では、東南アジアからの出張等の帰国者に対して、1週間程度の自宅待機の措置をしました。自宅待機は二次感染者を出さないための適切な処置です。しかし、自宅待機者の中には、会社の措置した“自宅待機”によるリスク管理の意味を理解せずに、この間に旅行や知人・親戚と会食するなどの行動をした人もいたようです。“自宅待機”=“自宅籠城”の意識が必要なのです。
H5N1をはじめとする感染症に対する正確な知識を持つことにより危機意識も高まりますので、企業による社員に対する指導が重要になりますね。(白石)


☆☆「労働契約法」「パートタイム労働法」セミナー開催のお知らせ☆☆

「労働契約法・パートタイム労働法等の実務対応」

 近年、就業形態の多様化、労働者の意識の多様化により、個別労働関係紛争が増加傾向にあります。
このような状況を改善するために、労働契約に係る民事上のルールを明確化した「労働契約法」が成立し、3月に施行です。
新法は、労働契約を規律する基本法です。今回は、要点解説と法的面における労務管理上の留意点を解説していただきますので、企業の雇用環境整備にお役立てください。
また、4月より改正される「パートタイム労働法」については、“差別的取扱の禁止”、“均衡のとれた待遇”を中心に要点解説をします。

■■セミナーの内容■■
1.労働契約法
   新法の要点解説  ・安全配慮義務
            ・就業規則の不利益変更
            ・配転・出向をめぐる裁判例
            ・有期労働契約の中途解約 等
2.改正パートタイム労働法
   改正の要点解説  ・差別的取扱の禁止
            ・均衡のとれた待遇 等

■■セミナーの日程等■■

日 時:平成20年2月28日(木)午後1時30分〜午後4時30分
場 所:喜山倶楽部 光琳 
千代田区一ツ橋2−6−2 日本教育会館9階 
TEL 03−3262−7661
講 師:中 川 恒 彦 氏 
参加費:10,000円
申込締切:2月15日(金)

■■講師 中川恒彦氏のプロフィール■■

労働基準監督官、労働省労働基準局監督課中央労働基準監察監督官、東京労働基準局賃金課長、労働省労働基準局賃金課主任中央賃金指導官、滋賀労働基準局長を歴任。
現在 執筆、講演活動等で活躍中
著書:「賃金の法律知識」(労働法令協会)、
「労働者派遣法の実務解説」(労働法令協会)、
「労働法令通信:個人情報保護法と雇用管理」連載中
(労働法令協会)等    


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発行者  雇用システム研究所 代表 白石多賀子
     東京都新宿区新小川町9番5号畑戸ビル   
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