夏の甲子園にみる、レギュラーと補欠の“谷間”
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☆雇用システム研究所メールマガジン☆
第73号
2008/08/16
http://www.koyousystem.jp
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残暑の合間にも幾分秋を感じられるようになりました。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
雇用システム研究所メールマガジン第73号をお送りします。
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□ 目次
夏の甲子園にみる、レギュラーと補欠の“谷間”
■逮捕者の出る不祥事、甲子園出場を巡る賛否
■「本体の不祥事ではない」というダブルスタンダード
■ チーム全体で『作品』をつくるという意識
(以上執筆者 福島敏之)
■[編集後記](編集長 白石多賀子)
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夏の甲子園にみる、レギュラーと補欠の“谷間”
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北京五輪と同時進行していた2008年・夏の甲子園が、終わりました。
熱戦に次ぐ熱戦。優勝した大阪桐蔭高校はもとより、すべての出場校の面々に賛辞を送りたいと思います。
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■■■ 逮捕者の出る不祥事、甲子園出場を巡る賛否 ■■■
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さて、その甲子園の出場を巡って、今年は一波乱がありました。
ご記憶かと存じますが、出場の決まったさる高校の野球部員から「強制わいせつ」のかどで逮捕者が出、大会の直前、連帯責任による出場辞退がなされるかどうか、注目が集まったものです。
同校の校長は、記者会見で陳謝しつつ、逮捕された生徒がレギュラーメンバーでなかった旨を説明し、「1人の生徒の責任は非常に重いが、他の部員に責任を負わせるのは忍びがたい。
選手たちは3年間、練習に励み、昼も夜もなく頑張ってきた」
「許されるなら出場させていただきたい」として出場辞退はしない意向を明言。
高野連の判断に従う考えを示しました。高野連も、
(1)事件に関与したのが部員1人であり
(2)部活動とは直接関係のない時間帯・場所だった――
という事情を斟酌して、
出場停止事由に当たらないとの判断を下し、結果として、同校ナインは当初予定どおり、グラウンドに立つことができたのでした。
この一連の経緯について世間は賛否両論。
「処分が甘すぎる。被害者の気持ちをどう思っているのか」
「レギュラーの不祥事ならアウトで、補欠ならセーフなのか」
「これまで喫煙程度で出場辞退であったのに、今回逮捕までされた卑劣な犯罪であるのにお咎めなしでは、著しくバランスを欠くのではないか」 といった
批判が噴出する一方で、
「そもそも連帯責任という考え方がおかしい。なぜまじめに練習してきた選手が責任をとらなければならないのか」という反論も出されるなどして、さながら場外戦の様相でありました…。
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■■■ 「本体の不祥事ではない」というダブルスタンダード ■■■
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レギュラーであろうとなかろうと、同じ野球部員であることに変わりはありません。なのに仄見えるダブルスタンダード。
それは、現代の職場の、正規雇用と非正規雇用の間の「格差」をそこはかとなく連想させます。ちなみに、正社員は英語でregular employeeです…。
話は飛びますが、秋葉原・通り魔事件の容疑者が勤務していた自動車メーカーは、事件の翌々日、ホームページで「秋葉原の事件について」と題する社長名の文書を掲示しましたが、そのなかに次のような一節がありました。
「今後、人材派遣会社に対しては、このような不祥事が二度とないように、人材の確保、管理、監督について要請していきたいと思います。」
うがった見方かもしれませんが、
《うちはあくまで派遣元から送られてきた要員を受け入れていただけに過ぎず、このような事件が起きて騒ぎになることは、うちにとって迷惑な話だ》
というようなメッセージにも見えてきます。
両者から共通して受け取れるのは、「本体の不祥事ではない」という意識です。
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■■■ チーム全体で『作品』をつくるという意識 ■■■
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話を甲子園に戻しましょう。
今夏の甲子園で、46年ぶりに出場を果たし、88年ぶりにベスト8まで上り詰めた高校がありました。
北神奈川代表の慶応義塾高校です。
同校は、レギュラーの選に漏れた選手も相手校の戦力分析などチームの勝利のための役割を担い、メジャー選手とマイナー選手(同校ではレギュラーと補欠を「メジャー」「マイナー」と称する)の垣根なく、上級生・下級生の垣根なく、部全体が機能している異色のチームです。監督を務める同校英語教師の上田誠氏は次のように言います。
「試合に勝つということはチーム全体で『作品』をつくっているようなもの。
だから、そういう意識で試合に挑もう」
と部員たちにはよく説明しています。
われわれの目指す野球を「作品」にたとえ、それをみんなで完成させる。
完成したということはすなわち試合に勝てたということです。
(上田誠著『エンジョイ・ベースボール』)
いい仕事をして結果を出すことに、メンバー誰しもが責任を負っている。
レギュラーも補欠もない。正社員も派遣社員もない。――ごくごく当たり前のことではありますが、人の気持ちも、その集積としての現場の空気も、描いた理想のとおりにコントロールできるものではなく、「言うはやすし」であると思います。
しかし、今夏の慶応は、粘りで接戦を制する「いい作品」の数々を作り上げていました。それを観て、「言うはやすし」の後に、
「でも、やればできる」と付け加えたい気持ちにさせられました。
では、同校ではいかにして「マイナー」の選手のモチベーションを維持し続けているのでしょうか。
いかにしてメジャー選手とマイナー選手の
“意識の谷間”を埋めてきているのでしょうか。
次号、そのユニークな実践をとりあげてみたいと思います。 (福島 敏之)
編┃集┃後┃記┃
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「良い子だか、仕事ができない」
と数年前に行きつけの美容院オーナーが話していました。
ある日のオフィスでの会話
「素直なら仕事は指示通りにできるはず、素直ではない・・・」、
「一生懸命仕事をしていることで仕事ができると思っており、その結果のミスや改善は考えていないのでは・・・」、
「仕事ができなければ解雇される。又は仕事が合わなければ退職することすら考えていないのでは・・・」等、
一見、「良い子」、「素直な子」の若年者層について話しました。
来客で会話は中断しましたが、その来客も同じ悩み抱えていました。
近年、「仕事に対する労働意識の希薄さ」が問題となり、各企業も対応に苦慮し研修・教育方法も見直しています。
最近の連続して発生している事件でも、加害者に対する周囲の評価は、「良い子」、「普通の子」です。
一見「良い子」等に、あの手この手で指導しても改善されず「仕事ができない」と企業が判断したときの、その子の反応は・・・。
ただいま、一見「良い子」等が増殖中です。
皆様の周りにはいませんか。 (白石)
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発行者 雇用システム研究所 代表 白石多賀子
東京都新宿区新小川町9番5号畑戸ビル
アドレス:info@koyousystem.jp
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今週のメールマガジン第73号はいかがだったでしょうか?
お楽しみいただければ幸いです。今後もさらに内容充実していきたいと
思います。
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