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従業員の働きがいと意識改革(12)〜アステラス製薬〜

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┃\/┃    ☆雇用システム研究所メールマガジン☆
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                               2010/06/01
           http://www.koyousystem.jp
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  気温の格差がある中、衣替えの季節となりました。
  皆様、いかがお過ごしでしょうか。

  雇用システム研究所メールマガジン第98号をお送りします。  

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  □ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

  ◆従業員の働きがいと意識改革(12)〜アステラス製薬〜

  ■社員の遺伝子レベルが共通
  ■トップ自ら面接し“公平人事”を貫く
  ■統合ビジョンの共感と賃金制度の早期統一
                       (以上執筆者 溝上 憲文)

  ■義務化されるメンタルヘルス対策 
  ■定期健康診断項目として追加が必要
            (以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)


  ■[編集後記]               (編集長 白石多賀子)

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◆従業員の働きがいと意識改革(12)〜アステラス製薬〜


 市場での生き残りを賭けた合併・買収が増えているが、一方では、サントリーとキリン、高島屋とエイチ・ツー・オーリテイリング、新生銀行とあおぞら銀行などの合併前の破談劇も相次いでいる。

 仮に合併しても、1+1=3以上の合併効果を生み出すのは至難の技である。
下手をすれば旧JASと合併した日本航空のように破綻の淵に追い込まれかねないリスクも抱えている。経営トップ同士が合意しても、企業風土の違いや「人の融合」に失敗すれば、合併以前より経営悪化をもたらす可能性もある。

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 ■■■ 社員の遺伝子レベルが共通 ■■■ 
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 多くの合併中でもアナリストから成功例と見なされているのが05年4月に山之内製薬と藤沢薬品が合併で誕生したアステラス製薬である。

 統合時の営業利益は1922億円だったが、その後も着実に業績を伸ばし、08年3月期は



2759億円に達し、売上高も同様に右肩上がりで推移している。もちろん、
業績は成功の一つの指標にすぎないが、合併を成功に導いたのは「人の融合」がうまくいったことにある。

 成功の要因について同社の人事担当者は「両社の社員の遺伝子レベルが似ていた」と指摘する。

「規模的にも似ていただけではなく、営業スタイルが粘着質という点でも類似していた。



旧山之内は開業医を相手に数字にとことんこだわるという粘着質があり、旧藤沢は顧客との人間関係づくりに対して非常に執着するなど、数字と顧客に対する執着心という点で共通していた」

 意外であるが、働き方や仕事の進め方が似ている、つまり社員の相性が近いことが合併にとって必要な要件であるということを示唆している。

 しかし、それでも昨日のライバルが一緒に机を並べることに代わりはない。
疑心暗鬼が渦巻き、権限争いが激化する可能性は十分にある。


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 ■■■ トップ自ら面接し“公平人事”を貫く ■■■ 
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 アステラスの統合プロセスで最も重視したのは、トップマネジメントが公平な人事を



貫いたことである。対等合併とはいっても、資本力や事業規模に差があれば、強者は奢りにまかせ、弱者は必死の思いで椅子の奪い合いが発生する。

 そのため統合準備中にトップ自ら公正中立な人事を宣言。
旧社の経営トップ二人ずつの計4人(トップ4)が新ポストの候補者全員と直接面談し、



適材適所の人事配置を断行したのである。

 具体的には、統合1年前の正式発表後、新社の組織構造が固まった夏過ぎからポストの人選に当たった。トップ4が各分科会のリーダーの情報を参考にしながら候補者に直接インタビューし「外部の雑音を一切シャットダウンし、4人だけで公正に人選を行った」(人事担当者)という。

 いわゆる部長がA社出身なら次長はB社という“たすきがけ人事”ではない。
同社は統合発表後に「統合7原則」を社内に発表し、その一つに「人事は能力に基づき、公正にして適材適所に徹すること」を掲げているが、まさにそれを実践した。

 加えて、トップ4が実践したのは現場とのコミュニケーションである。
統合直前には旧社のトップ自ら現場に出向いて統合の必要性を訴えるなど丁寧なフォローを行っている。
旧山之内のトップが旧藤沢の事業所に、旧藤沢のトップが旧山之内の事業所にそれぞれ出向いて統合の理念を訴える活動を積極的に展開した。

 トップと現場社員とのコミュニケーション量の多さが「統合で不利益を受けるかもしれない人たちの納得は得られないまでも、理解できる水準に持っていけたのではないか」(人事担当者)


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 ■■■ 統合ビジョンの共感と賃金制度の早期統一 ■■■ 
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 いうまでもなく統合の理念やビジョンは、会社の将来への不安を解消するためにも重要である。同社が打ち出した経営理念とは「先端・信頼の医薬で世界の人々の健康に貢献する」というものだ。
製薬業界は外資を巻き込んだ厳しい競争環境にさらされている。
その中で生き残っていく大変さは社員自身も十分に知っていた。

 統合により、新生アステラス製薬は医療用医薬品の分野に傾注し、具体的目標として売上高世界10位を目指す「グローバル10」を掲げたことが社員の共感を得たという。

 人の融合を後押ししたもう一つの要因は、人事制度の早期統一である。
ただし、異なる二社の制度の統一、ましてやグローバルレベルを意識した賃金制度を導入するのは容易ではない。これまで合併しても、賃金制度の統一による混乱を避けるために、長らく賃金制度に手をつけずに放置していた企業も少なくない。
しかし、遅らせることで融合は進まず、全員が一枚岩となって社業に邁進することはない。

 同社は統合した4月に、賃金体系を「職務給」に一本化することを宣言し、10月1日から本格的に移行した。

 じつは2社の旧制度にも職務給的仕組みを導入していたが、年功的要素の強い資格給制度も温存させていた。新制度導入に当たっては、両社の制度を足して2で割っても誰も納得しないだろうと判断。納得性を高めるには与えられた職責に対する成果を公平に評価することができるということで職務給に一本化したという。

 合併成功の秘訣は、トップ同士の相性の良さなど関係ない。企業風土を踏まえた社員同士の相性、公平な人事と相互の徹底したコミュニケーションの継続、統合ビジョンの共有とスピーディかつ納得度の高い人事制度の早期統一――が
重要である。                               (溝上 憲文)


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 ■■■ 義務化されるメンタルヘルス対策 ■■■ 
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 冒頭にお断りしなければなりません。今号では国会での改正労働者派遣法の成立を見込んだ記事を予定していたが、社民党の動向により、成立の可否が5月31日現在で予断できないので、急拠テーマを変えます。 

                  
 既に終了したNHKの「プロジェクトX」風に書き出してみる。

 昭和59年に旧労働省に東大法卒で入省した1人のキャリア官僚がいた。出身の高知県の坂本龍馬を偲ばせる刃切れのよい好漢だ。 

 入省後まもなく、労働者派遣法と介護分野における雇用管理改善法の創設に係わり、その後は、企業再編に伴う労働法制の見直し、課長補佐では、当時、財界の強い反対で当分無理だと言われていた予防給付を盛り込んだ労災保険法の改正、室長になるや個別労働紛争解決制度を創設した法律創設、さらに施策拡充として若年層の雇用対策と能力開発、そして何人かの前任者が実現できなかったパート労働法の改正による過料の導入、そして現在は労働基準局安全衛生部に所属し、次期通常国会での労働安全衛生法の改正に向け精力的に活動している。      
               

 まさに、制度改革を行うために入省してきた現役官僚。もちろん、制度改革は本人の能力だけでなく、上司を含む周囲の理解なくて行えるものではないが、長年にわたり中央官僚を取材していると、1人の志気により大きく動く例は多く、逆に、1人の無能、消極性により何ら先に進まない例も多く見てきている。  
            

 労働基準局の重要政策の中に、職場での喫煙対策と、化学物質による健康障害予防のために、改正労働安全衛生法を次期通常国会に提出予定であることは4月1日付けのこの欄で掲載しているが、これとて、前任者を含む安全衛生部幹部の意向は、現行通達の見直し・強化であった。
昨年7月の人事異動で安全衛生部計画課長に就任した当日にまず行ったことが、

「働く人のメンタルヘルスポータルサイト・こころの耳」を外部スタッフに作成させ、作成するだけでなく、厚生労働省のホームページ表紙に掲載し、国民の誰もが閲覧できるようにした。    
                    

 安全衛生部の編成は、部長が事務系キャリア、医系技官、技術系技官がその時の行政事情により就任する。現在の部長は久しぶりの技術系技官で、残る課長は4ポストで、計画課長は事務系キャリア、安全課長と化学物質対策課長は技術系技官、労働衛生課長は旧厚生省採用の医系技官で固定され、囲りを労働基準監督官、技術系技官、事務系キャリア、労働基準局採用プロパーで構成される複雑な人事構成となっており、安全衛生部の筆頭課長である計画課長ポストは、特に部長が医系、技術系の技官である時に大きな政策力が必要とされる。


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 ■■■ 定期健康診断項目として追加が必要 ■■■ 
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 今回、厚生労働省の「自殺・うつ病対策プロジェクトチーム」がまとめた報告は、普及啓発、地域連携体制、職場復帰支援、訪問支援、精神保健医療改革の5つの柱で構成されているが、その第3の柱で職場におけるメンタルヘルス対策を掲げ、




(1)管理職に対する教育促進、
(2)情報提供の充実、
(3)メンタルヘルス不調者の把握と対応、
(4)産業保健スタッフの養成、
(5)働き方の見直し、
(6)ハイリスク期における取組み強化、
(7)職場環境に関するモニタリング、
(8)労災申請の手続き迅速化、
(9)休職者の職場復帰支援、
(10)地域、職域の連携、の10項目が盛り込まれている。
              

 このうち、(3)におけるメンタルヘルス不調者の把握と対応では、労働安全衛生法に基づく定期健康診断において、効果的にメンタルヘルス不調者を早期に把握することが必要で、定期健康診断項目に追加するとなると、労働安全衛生法の改正が必要となる。もちろん、労働者がそれによって不利益を被ることがないことを盛り込むことも法改正事項となる。             

 実のところ、今回のメンタルヘルス対策が公表されるまで、厚生労働省では、果たして法改正まで必要なのだろうか、予算措置の拡充や現行の基準、通達の見直しで対応できるのではないかという根強い意見があった。おそらく、それでも対策の相当部分が実現できるだろう。分煙対策もしかり。現行の通達見直しでもよいのでは、という意見が強かったが、法改正による義務化を断行する予定だ。
まさに、担当幹部の判断と言える。過去、行政の不作為が国民から指弾された例
がいかに多いことか。エイズ、肝炎、アスベスト等など。    (津山 勝四郎)


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編┃集┃後┃記┃
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 今年の4月から労働基準法が改正され、1カ月60時間を超える時間外労働割増賃金が50%(中小企業は猶予)となりました。

 先日、ある団体集会に出席した折り、労働基準監督署の仕事内容を説明した資料に、下記の記述がありました。

○労働の安全と安心の確保

○仕事と生活の調和の実現

○ムリムダのない付加価値の高い労働

○企業の発展と社会の安定した成長

 これをご覧になった団体代表の企業経営者が、
「行政が“付加価値の高い労働”の後押しをしてくださるのは心強い」
という趣旨のことを述べられていました。

 行政としては、労働者の働きやすい環境を整備することにより、付加価値の高い仕事へと結びつくことをアピールし、法令遵守を求めているのです。

しかし、立場が違うと受け取り方が異なります。

労働相談等が増加傾向の状況下、企業も長時間労働体質等を見直し、働く環境の
改善に取り組まなければリスクを負いかねません。           (白石)


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 発行者  雇用システム研究所 代表 白石多賀子
     東京都新宿区新小川町9番5号畑戸ビル   
     アドレス:info@koyousystem.jp

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   お楽しみいただければ幸いです。今後もさらに内容充実していきたいと
   思います。
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