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経営の“落とし穴”(3)〜受動喫煙対策で問われる事業主の安全配慮義務〜

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┃\/┃    ☆雇用システム研究所メールマガジン☆
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                                 2010/10/01
           http://www.koyousystem.jp
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   衣替えの頃となり、朝夕は冷え込む季節となりました。
   皆様、いかがお過ごしでしょうか。

   雇用システム研究所メールマガジン第102号をお送りします。 

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  □ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

  
◆ 経営の“落とし穴”(3)〜受動喫煙対策で問われる事業主の安全配慮義務〜

  ■空間分煙の規制を強化
  ■飲食店、居酒屋も例外扱いはしない
  ■早ければ通常国会に改正法案を提出
                       (以上執筆者 溝上 憲文)

  ■介護分野の拡充目立つ ― 平成23年度厚労省予算概算要求
  ■最賃引上げ施策と新卒者支援は特別枠で
            (以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)


  ■[編集後記]               (編集長 白石 多賀子)

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◆ 経営の“落とし穴”(3)〜受動喫煙対策で問われる事業主の安全配慮義務〜


 受動喫煙防止措置を怠った会社に対する損害賠償訴訟が多発する――。

それが現実となる法改正の動きが始まろうとしている。
厚労省の「職場における受動喫煙防止対策に関する検討会」の報告書が5月末に出されたが、その内容は「労働者の健康障害防止」の観点から事業者に対する対策の義務化という大きく踏み込んだ内容となっている。

今後、労働政策審議会での議論を経て、
早ければ来年の通常国会に労働安全衛生法改正案が提出される予定だ。

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 ■■■ 空間分煙の規制を強化 ■■■ 
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 すでに厚労省健康局は、今年2月25日に受動喫煙対策防止の健康局長通知を発出。
多数の者が利用する公共的空間は「原則全面禁煙」とすることを求めるなど、
従来の分煙対策を超えるハードルを設定した。
今回の報告書は労働者の健康障害防止の観点から事業者の受動喫煙対策を強化する
ことを求めている。

 具体的措置として、一般の事務所・工場と飲食店のように顧客が喫煙する事業場の2つ
に分けて対策を示している。
事務所・工場は全面禁煙または空間分煙とすることが必要だとし、
全面禁煙の定義を「建物や車両内全体を常に禁煙とすること」と明確化した。
したがって工場内でも建物外の敷地対象に入らない。

 空間分煙は当然、喫煙室の設置が必要になる。ただし、これまでは喫煙室はあっても、



そこから喫煙室外にたばこの煙が漏れるケースも少なくなかった。
報告書では分煙の判断基準として、喫煙室内と外部の境界の浮遊粉じん濃度および
一酸化炭素濃度を検証するように求めている。

 難しいのは、飲食店、ホテル、宿泊施設などの顧客が喫煙する場所で働く労働者の対策だ。
全面禁煙にすれば営業活動に支障を来す恐れもある。対策として、
1つは喫煙専用室の設置である。
つまり、食事を提供する場所を禁煙とすることで労働者のたばこの煙へのばく露を防止し、
食事を提供しない喫煙専用室を設置するというものだ。


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 ■■■ 飲食店、居酒屋も例外扱いはしない ■■■ 
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 しかし、喫煙室のスペースの問題もあり、現実にはなかなか難しい。

報告書では「喫煙区域における換気等による有害物質濃度の低減、
適当な場合は保護具の着用等の措置」をとることを求める。

 「保護具の着用」といっても、さすがに飲食店での防じんマスクの着用は難しい。
ただし、換気だけでOKとするつもりはない。

「飲食店など特定の業種に分けて、機械的にそういうところは換気だけでいいというのは
健康障害防止の観点ではすべきではない。なるべく一部猶予措置みたいな形で限定的な



範囲にとどめるべきではないかという意見もある」(厚労省労働基準局安全衛生部環境改善室)

 規制強化は居酒屋、バーなどの中小事業主にとっては深刻な問題だ。小規模のレストラン、
居酒屋の事業者で構成する全国飲食業生活衛生同業組合連合会の幹部は
「会員の約7割は家族経営に近い小規模事業者であり、喫煙室を設けるスペースや分煙設備
の費用を考えても分煙対策そのものも難しいのが現状である。お客様のニーズもあり、



全面禁煙に踏み切るのも店にとっては死活問題」と指摘する。


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 ■■■ 早ければ通常国会に改正法案を提出 ■■■ 
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 すでに欧米諸国では受動喫煙防止対策が強化されつつある。
とくにイギリスでは国民の健康を守るために政治主導による禁煙対策が強化され、
事務所・工場以外のレストラン、バーも含めて禁煙となり、たばこが吸えるのは自宅
ぐらいしかないという状況にある。

 日本でも事業場全体の受動喫煙対策は年々進んでおり、
07年の労働者健康状況調査(厚労省)によると何らかの喫煙対策に取り組んでいる
事業場は全体の76%に上る。
ただし、全面禁煙もしくは空間分煙のいずれも講じていない事業場は54%もある。

 検討会の報告書を踏まえ、厚労省は労働政策審議会に報告し、安全衛生部会で議論
することになる。職場の受動喫煙防止については労使の隔たりは少なく、
議論が長引くこともないだろう。
また、報告書は健康障害防止の観点から事業者の義務化を謳っており、
従来のガイドラインの策定にとどまるのではなく、労働安全衛生法の改正に踏み切るのは
間違いない。早ければ来年の通常国会に改正法案が提出される見込みだ。

 法改正されれば、分煙対策などのコストが事業主にのしかかる。それだけではない。



労働者の健康被害の発生を防止する安全配慮義務がこれまで以上に厳しく問われることになる。

 受動喫煙に関する裁判例としては、江戸川区の職員が区に対して起こした
損害賠償請求訴訟がある。東京地裁は04年7月、区に対し、被用者をたばこの煙から保護する
安全配慮義務違反を怠ったとして5万円の支払い命じる判決を下している。

法改正により受動喫煙対策が義務化されると、今後はとても5万円程度ですむことはないだろう。 
                             (溝上 憲文)


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 ■■■ 介護分野の拡充目立つ ― 平成23年度厚労省予算概算要求 ■■■ 
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 総額28兆7954億円、対前年度比1兆2393億円増の
平成23年度厚生労働省予算概算要求が8月末にまとまった。

 主な新規事業をみると、医療分野では医師の地域偏在を是正するため新たに地域医療



支援センターを全都道府県に設置(17億円)、次世代の女性のがんを予防するため、
子宮頸がん予防ワクチン事業への初の国費による助成(150億円)、
働く世代が自宅で大腸がん検診が受けられる「大腸がん検査キット」を直接送付(55億円)、
肝炎ウィルス検査の未受検者や肝炎治療の対象者に個別通知等による検査の促進など
早期発見・早期治療に対応する各種支援(39億円)、などを予算要求。

懸案の子ども手当は現行の
「1万3千円」から上積みし、上積み分については地域の実情に応じて現物サービスにも



代えられる、としているものの、総額は白紙要求。子ども手当に関しては現政権は約束違反
という前科があることから、年末の政府案決定まで予断しない方がよい、というのが国民の
正直な気持ちと言える。

 障害者については、障害があっても地域で暮らせるために、24時間緊急対応等の体制整備、
8万3000人分のグループホームの整備や全ての都道府県での在宅精神障害者への
アウトリーチ(訪問支援)の実施(126億円)、
介護分野では家族の介護負担を軽減するための「お泊まりデイサービス」の全国8000床の整備(100億円)、
24時間地域巡回型訪問サービスの実施を全国100カ所(28億円)、
介護分野へ防災対策や特養ホームのユニット化改修費用への支援(80億円)、
と介護分野への支援強化が目立つ。

 年金では年金給付費国庫負担金(10兆4458億円)、
日本年金機構の運営確保(3599億円)の他に、
年金記録に関する紙台帳とコンピュータ記録との突合促進を全体の2.5割から3割で
実施(876億円)が計上されている。

 この他に医療費国庫負担(9兆8903億円)、生活保護国庫負担(2兆4703億円)、
保育サービスの充実(4088億円)、などが概算要求の主要部分を占めている。



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 ■■■ 最賃引上げ施策と新卒者支援は特別枠で ■■■ 
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 ところで23年度予算概算要求では新政権が政治主導で予算配分を行うと宣言した
「元気日本復活特別枠」として、全体として「1兆円を相当程度に超える額」、
厚生労働省分として1287億円要求している。
この特別枠はいわば財務省の査定ではなく、政権与党による仕分けを経た事業に充当
されるもので、柱立てとして、新成長戦略(デフレ脱却・経済成長)、新成長戦略(雇用拡大)、
マニフェスト施策、国民生活の安定・安全、人材育成・新しい公共、の5本が立てられ、



厚生労働省は既存の施策拡充の他に、機会の平等で社会に参加でき、
格差・貧困を少なくする目的とした最低賃金の引上げ(62億円)、労働に参加し、
いきいきと働くための新卒者のための就職実現プロジェクト(73億円)を盛り込んだ。




 最低賃金引上げの内容と問題点は9月1日付で少しふれたが、
支援策の内容が固まったので今一度紹介する。

 最低賃金引上げの政府目標は、全ての都道府県でできる限り早期に時間あたり
800円以上を目指しており、この目標を達成するために雇用の担い手である中小企業を支援する。

 第1は経済産業省との連携で、全国支援策として、経営面と労働面の相談を
ワン・ストップ・無料で提供する体制を全国300カ所で整備する。

 第2は業種別支援で、業界団体(例えば飲食料品小売、食品製造業など)が最低賃金の
引上げに向けた環境整備として、研修、セミナーの実施など生産性向上、共同購入、省エネ、
IT導入などのコスト削減の実験、市場調査、などに取組んだ場合に1団体上限2000万円まで
助成金を支給する。

 第3は地域別支援で、平成23年4月1日現在の最低賃金が680円以下の県の中小企業が、



法定最低賃金の引上げに先行して、事業場内で最も低い時間給を計画的に800円以上に



引上げる場合に、引上げ額、引上げ人数に応じた賃金改善奨励金を1事業場当たり15万円
から70万円までを、年間9000事業場に支給するとともに、業務改善等助成金として、
省力化設備・器具の導入、研究等を実施する中小企業に、上乗せで1事業場当たり
上限100万円を年間1000事業場に支給する。

 最低賃金の引上げに対する中小企業への支援策は、いかにも使いづらい事務手続き、



そもそも賃金のそのものへの助成が雇用対策(雇用調整助成金など)以外に国として行う
必要があるのか、対象労働者数と事業場数が情報開示の面からも不透明である、
との意見が省内にもあり、事業枠はかなり縮小されるという見方もある。

 「いきいきと働くための新卒者のための就職実現プロジェクト」は、今年度の高卒、大卒の
就職内定率が低く、今後も就職環境も引き続き厳しくなることに対応するもので、
平成23年度予算概算要求に盛り込まれた新卒者就職実現プロジェクト(72億円)と同一事業で、
既卒者採用拡大奨励金として、すくなくとも卒業後3年以内の既卒者(平成20年度以降に卒業し
た者に限る)も対象とする求人を提出し、ハローワークの紹介により正規雇用者として採用した
事業主に、正規雇用での雇入れから6カ月経過後に100万円を支給(1社1回に限る)するとともに、
新卒者育成支援奨励金として、ハローワークの紹介により、未内定の大学生、
高校生等(平成22年3月卒及び平成23年3月卒)を、原則3カ月の有期雇用を経て正規雇用として
雇入れた事業主に、有期雇用期間は対象1人につき月額10万円を有期雇用期間終了後に、



有期雇用終了後の正規雇用での雇入れに対しては対象者1人につき50万円を雇入れから3カ月後に、
それぞれ支給する。予算枠としてプロジェクト全体で8850人が予定されている。

 求職者支援制度ではその他に、生活支援の給付を受給しながら職業訓練が受けられる制度
(求職者支援制度)を創設・恒久化すべく、既に省内組織を改編して来年通常国会での新法創設を
予定しているが、この事業も省内では「予算のない中で、果して実現できるのだろうか。




特に参院は通らないのでは」との冷たい見方が既に出ている。

 職安から全く信頼されなかった大臣が去り、細川新3役の手腕(特に野党、経営側)が注目される。
 
                             (津山 勝四郎)


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編┃集┃後┃記┃
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 郵便不正事件で無罪確定の厚生労働省村木厚子元雇用均等・児童家庭局長は、
1年3カ月ぶりに職場復帰し内閣府政策統括官(局長級ポスト)に起用されました。

  「とても苦しかったが、得るものも多かった」と記者会見で述べられましたが、
職場復帰された村木氏の笑顔がとても素敵でした。

一方、事件で押収されたフロッピーディスクのデータの改ざん疑いが発覚し、
大阪地検特捜部のエースといわれる前田主任検事が証拠隠滅容疑で逮捕されました。
最高検は、改ざん隠ぺいへの組織的関与も含めて捜査をしています。

 検事が描いたシナリオに基づいて事件を組み立てるとはいえ、検察は、事件への
疑いをもたれた者の起訴・不起訴を決定する機関です。
小説・ドラマにでてくる証拠書類の改ざんが、現実に行われていると知り、
驚きとともに恐ろしさを感じました。

 今や、各界でモラル低下がいわれている状況です。

意識の多様化と激動する社会のため、多様な改善策とスピードが必要となりました。
                             (白石)


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 発行者  雇用システム研究所 代表 白石多賀子
     東京都新宿区新小川町9番5号畑戸ビル   
     アドレス:info@koyousystem.jp

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