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経営の“落とし穴”(13)〜大震災が残した教訓(3)〜

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┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
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                                 2011/08/01

           http://www.koyousystem.jp
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 節電の折、いかがお過ごしでしょうか。
 熱中症などには気を付けて
 くれぐれもお身体をお大事にお過ごし下さいませ。

 雇用システム研究所メールマガジン第112号をお送りします。 

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  □ 目次 INDEX‥‥‥‥‥
  
 ◆ 経営の“落とし穴”(13)〜大震災が残した教訓(3)〜

  ■安否確認を複数の手段で実施  
  ■会社の留まる場合の対応の見直しを 
  ■想定外に対応するのが危機管理の基本                     
                      (以上執筆者 溝上 憲文)

  ■多様な労働形態における「労働者性」判断 
  ■指揮監督下、場所的拘束を広義に解釈   
           (以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)


  ■[編集後記]               (編集長 白石 多賀子)

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◆  経営の“落とし穴”(13)〜大震災が残した教訓 (3)〜

 甚大な被害を与えた東日本大震災は企業のBCP(事業継続計画)にも
大きな教訓を残すことになった。
計画自体の不備もさることながら従業員に対する周知や訓練などのソフト面の対策の
まずさも露呈した企業も多い。

BCPを策定する上での今後の課題をいくつか紹介したい。

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 ■■■ 安否確認を複数の手段で実施 ■■■ 
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 今回の大震災で露呈したBCPの不備の1つは2次、3次被害の想定である。

どのBCPでも本社や工場が被災し、停電により製造がストップし、サプライチェーンに
影響を及ぼすことは想定されていた。だが、今回の震災ではガソリンが不足し、
物流網がストップするという事態を招いた。
事業を継続するためにガソリンの確保は今後の課題である。

 もう1つの不備は地震発生直後の行動である。
多くの企業は地震発生直後に従業員の安否を確認し、それを受けてBCPを作動させる
シナリオを描いていた。ところが
「安否確認を含む初動の部分を詰め切れておらず、抜け落ちていた」(リスクコンサルタント)
企業が圧倒的に多かった。

 1番目の問題点は安否確認である。

通常は全社員とその家族を対象にケガなどの安否を確認し、出社の有無を確認する。
多くの企業は「安否確認システム」を導入している。
この仕組みは安否確認メールを一斉送信すれば、社員は文字入力せずにボタン操作で
自分や家族の状況を伝えることができる。

 安否は最後の一人まで確認できなければ意味がない。
ところが、変更したメールアドレスを会社に通知していないために送信してもエラーが発生する、
海外旅行中のために届かないといったケースもあり十全に機能しなかった。

 また、震災当日の安否確認は1度返信があれば、それでOKというわけにはいかなかった。

休日の夜なら一度の確認ですむかもしれないが、今回は平日の昼間に発生した。
社外で仕事をしている社員もいれば、夜中に自宅まで徒歩で帰った社員もいた。
大手IT企業は最終的な安全確認のためのフォローに追われたという。

 同社の総務担当者は「その後の安否を確認するに大変だった。
無事に帰宅したのか確認するために、もう一度メールで確認するしかない。
しかし、上司の中には一度のメールだけですませた人もいた。
どのようにフォローするかも反省点の一つだ」と指摘する。

 同社は今回の反省を踏まえて、上司は必ずフォローすること。
また、社員は確認のメールを2回出すこととし、安否の報告はメール、電話、ウェブ、FAXなど2種類以上方法で行うことを徹底させた。


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 ■■■ 会社の留まる場合の対応の見直しを ■■■ 
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 2番目は当日の社員の安全確保だ。

地震が発生し、安全が確認できない限り、社員を外に出さないというのがBCPの原則である。
ところがBCPの中に明確に記載されていない企業が多く、耐震設計の自社ビル低層階の
社員が一斉に外に飛び出すなど、統制がとれていないケースもあった。

 会社からすれば安全配慮義務もあり、安全が確認できるまでは帰したくないという思いがある。
とくに今回は鉄道がストップしているため、徒歩での帰宅となると不安も残る。
実際は企業の対応は大きく分かれた。

 3番目は社員が会社の留まる場合の対応である。

今回は備蓄品の食糧を提供したが、食糧は1〜2日程度の備蓄しか用意していない企業が多かった。

だが、首都直下型地震が襲った場合はそれではすまない。

場合によっては3〜4日以上会社に寝泊まりする可能性も出てくる。
ある企業では女性社員から寒さをしのぐための毛布を用意してほしいとの意見も出されたという。


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 ■■■ 想定外に対応するのが危機管理の基本 ■■■ 
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 今回の大震災は原発事故も重なり、計画停電の影響で出社できないというBCPでは
想定していない事態が発生した。

事業を継続するには社員の出社を促す仕組みが必要である。
大手IT企業は2つの対策を実施した。

 1つは出社確認メールによる出社できる社員の把握である。
安否確認システムと同様の仕組みで毎朝、確認メールを送信。
朝の9時に上司に返事が届くように周知し、人事も全社員の出社状況を把握した。

 もう1つは、出・退社時間の変更による通勤の混雑の緩和だ。
同社の勤務時間帯の9時〜17時30分を8時〜16時30分に変更した。
早朝の出社を促すことで社員の出勤率が高まったという。

 そのほかに震災を経験して有効と思われる仕組みがいくつかある。

1つはタクシーで使用されるMCA(マルチチャンネルアクセス)無線。
各支店に設置していた企業は被災支店との連絡や安否の確認に効果を発揮したという。

もう1つはツィッターなどのSNSの利用だ。

電車の運行情報はテレビよりも社員のツィッター情報が早く、
情報の入手や共有するのに効果があったという。

 今回の大震災は想定を超えたことでBCPは役に立たないという声もある。
しかし、想定外の事態に対応するのが危機管理の基本だ。BCPはあくまで基本的な計画書であり、
原則を記したもの。不測の事態にBCPを基にいかに対応するのか、
イマジネーションを働かせることが重要になる。想定外であるからお手上げではなく、
想定外のときにどのように対応するのかが問われる。
 大震災を経験して経営者の意識も変わったといわれる。

不測の事態を想定した日頃の訓練を行うことを含めて、経営トップが危機意識を持って
迅速に対応することが企業存続の鍵を握っている。
                                             (溝上 憲文)
 

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 ■■■ 多様な労働形態における「労働者性」判断 ■■■ 
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 厚生労働省の「労使関係法研究会」(座長・荒木尚志東京大学大学院法学政治学研究科
教授)が7月25日にまとめた報告は、労働組合法上の労働者性の判断基準を初めて提示し、
同省は近く報告書の内容を中央労働委員会、都道府県労働委員会、
都道府県労働所轄担当部局など、関係者に広く通知する。

 近年になって労働者の働き方が多様化し、業務委託・独立自営業者、2重就労といった
就労形態が増え、業務委託を受けて労務を提供する個人自営業者数が5年前の調査で
既に125万人を超えている。

つい先日も、都内の労働者が、会社と雇用契約を結び基本賃金を定めた一方で、同じ会社と
個人業務請負を締結させられ、両方の賃金相殺で雇用契約で保障された基本給が
出ないということで、労働者として労働組合に加入したが、会社は団体交渉に応じない
ということで訴訟に入った事案があった。

 現行の労働組合法は戦後の昭和20年12月に実現し、その後アメリカのGHQにより、
労働基準法などと共に昭和24年に全面改正され、その時の労働者概念が今に至るまで
綿々と考え方が骨格となってきた。

このことが、労働組合法で定義される「労働者」に該当するか否かについての判断が
困難な事例が多くなり(最高裁判例 CBC管弦楽団労組事件、新国立劇場運営財団事件、
INAXメンテナンス事件など)、また確立した判断基準か存在しなかったことからも、
労働紛争を取り扱った労働委員会命令と裁判所判決が異なる結論となり、
研究会は労働組合法の趣旨・目的、制定時の思想、学説、労働委員会命令・判例などを
踏まえ、今回、報告書としてまとめた。


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 ■■■ 指揮監督下、場所的拘束を広義に解釈 ■■■ 
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 見直された「労働者性」の判断基準は、判断基準の基本的要素として、

(1)事業組織への組み入れ
(2)契約内容の一方的・定型的決定
(3)報酬の労務対価性をあげ、

 (1)から(3)までの一部が充たされない場合であっても直ちに「労働者性」が否定されないとし、
   補充的要素として、

(4)業務の依頼に応ずべき関係
(5)広い意味での指揮監督下の労務提供と一定の時間的場所的拘束の2項目の
  要素を総合判断することにより、労働者性を肯定される場合もある、と言い切っている。
  逆に、
(6)顕著な事業者性(労務供給者が恒常的に自己の才覚で利得する機会を持ち、
  自らリスクを引き受けて事業を行う者)が認められる場合は、総合判断の結果として
  「労働者性」を否定するか、少なくとも消極的判断に立ってよいとしている。

 (1)は労務供給者が相手方の事業遂行に不可欠ないしは枢要な労働力として組織内に確保されている、
 (2)は契約の締結の形から、労働条件や提供する労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定している、
 (3)は労務供給者の報酬が労務提供に対する対価やそれに類するものとしての性格を有する
   (労働基準法上の賃金よりも広義)、が肯定的解釈。その上で、
 (4)は労務供給者が労働力の供給を相手方からの個々の業務の依頼に対して、
   相手方に委ねて就労すべき関係にあるという認識が当事者間に存在することを推認できる
   (事実上、業務依頼を拒否できない)、
   そして(5)は文字通り、労務供給の態様について、詳細な指示、定期的な報告の要求、日時、
   場所について裁量の余地がない、一定の日時に出勤や時機などが必要、などの要素で、
   労働基準法上は「労働者性」を肯定すべき要素とならないが基本的要素(1)〜(3)との総合的判断によって、
   「労働者性」を有すると判断される要素が具体的判断としてあげられた。

 報告は、各判断要素を合わせて総合判断することで、契約の形式にとらわれるのでなく、
当事者の認識や契約の実際の運用を重視して判断すべきと結論づけている。

 厚生労働省はこの報告書の内容を通知という形で全国に広く周知、広報する方針だ。

「労働者性」の広義解釈は先日亡くなった笹森元連合会長が病と闘いつつ実現を目指し、
民主党政権下の厚労相政務3役と連携をとりつつ進めてきたもので、
労働組合員拡大に影響が出るだろう。

一方で、中小・零細事業主は、合同労組への対応を含む労働組合対策で苦労しているが、
今回の報告書でみる限り、何らかの労務供給を受けるということは、
その供給者は労働組合法上の労働者にあたり、
要求を拒否すれば不当労働行為で労働紛争に行きつくことになりかねない。    
                                            (津山 勝四郎)


編┃集┃後┃記┃
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 “なでしこジャパン”が女子W杯で世界一となり、日本国民に感動を与えてくれました。

優勝候補のドイツを準々決勝で破り波に乗った“なでしこジャパン”は、決勝戦で世界ランク1位、
対戦成績21敗3分けで一度も勝ったことがない強豪アメリカの厚い壁を乗り越えました。

勝因の「諦めない」は、特に東日本大震災の被災地の皆さんに希望と励ましを与えました。

3月11日から4ヶ月経過、がれき撤去が進まず、復興の夢も描けていません。

私は、先月6日に岩手県と宮城県の被災地(大船渡、陸前高田、名取市、亘理町)へ行き、
被災された会員、被災県会の被災地域における相談体制等のお話をお聞きしました。

3月1日に開業届を出し事務所の看板を掲げた1時間後に津波で自宅が流された会員、
「家族全員が無事だから仕事を続けようと頑張れる」という会員など・・・。

私は、現状のもの凄さをみて言葉を失い、どのような言葉を掛けたらよいか悩むばかりでした。

遠く離れた東京で、被災された皆さんの社会保険関係の相談でお役に少しでもなれたらとの
思いが強かったのですが、現地で感じたことは、
被災された方々の心を開くのに言葉の大切さを学びました。

被災地の企業が元気になり、雇用の場が広がることが1日も早い復興へと繋がります。

被災地が元気になるよう私にできる些細なことから応援していきたいと思った1日でした。
                                                 (白石)


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 発行者  雇用システム研究所 代表 白石多賀子
     東京都新宿区新小川町9番5号畑戸ビル   
     アドレス:info@koyousystem.jp

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   お楽しみいただければ幸いです。今後もさらに内容充実していきたいと
   思います。
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