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「組織を変え、人を変える」意識改革運動(4)
     〜資生堂のグローバル人事制度改革〜

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┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
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                                 2012/11/01

           http://www.koyousystem.jp
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 日に日に秋の深まりを感じるこの頃です。

 みなさま、いかがお過ごしでしょうか?
 雇用システム研究所メールマガジン第127号をお送りします。

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  □ 目次 INDEX‥‥‥‥‥
  
 ◆ 「組織を変え、人を変える」意識改革運動(4)
   〜資生堂のグローバル人事制度改革〜

  ■外国人を本社の幹部・役員に登用
  ■年功色を払拭した世界共通の賃金制度に統一
  ■40代、50代を対象にしたキャリアの再設計                  

                       (以上執筆者 溝上 憲文)

  ■65歳までの雇用継続は進んではいるが……  
  ■改正高年齢者雇用安定法の課題
            (以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)

  ■[編集後記]               (編集長 白石 多賀子)

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◆「組織を変え、人を変える」意識改革運動(4)
  〜資生堂のグローバル人事制度改革〜

 ビジネス環境の変化により業績が低迷し、部門の統廃合など全社的な構造改革に着手する企業が少なくない。
あるいは海外市場をターゲットにしたグローバル型の組織変革を断行する企業も
増えている。
構造改革と並んで重要なのが、会社の体質や社員の働き方の変革を促す組織風土
改革運動である。

今回はグローバル事業の拡大を目指す資生堂の人事制度改革の取り組みを紹介したい。


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 ■■■ 外国人を本社の幹部・役員に登用 ■■■ 
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 化粧品最大手の資生堂が2011年4月の末川久幸社長の就任以来、
グローバル経営を一挙に加速している。

同社の海外売上げ比率は40%を超え、世界の87の国と地域でビジネスを展開する
までになっている。
今後も中国を中心に海外市場でのシェアを高め、2017年には
「日本をオリジンとし、アジアを代表するグローバルプレイヤー」になることを
掲げている。

 幹部人事もグローバルシフトだ。今年4月には06年に招聘したグローバル事業
担当のカーステン・フィッシャー取締役執行役員専務を代表取締役に昇格させる
人事を行っている。また、執行役員人事部長には11年年4月に米GEやHPの
人事を経験した大月重人氏を招いている。日本の伝統的名門企業で外部から
人事部長を招聘するのは極めて異例のことだ。

グローバル戦略の下で、国内の人事諸制度も抜本的に改革していこうというのが
最大の狙いである。

 その一つが人材のグローバル化による適材適所のマネジメントシステムの構築だ。
つまり、日本人に限らず、海外の現地法人からも本社の幹部・役員に登用していこ
うというものだ。

 そのための素地は整いつつある。
同社のグループ社員は約4万5000人。
うち外国人が2万人を占める。現地法人は約40社あるが、
年間十数人の責任者クラスが日本から海外、あるいはフランスからアメリカという
多国間異動を行っている。
現地法人の社長の日本人と外国人比率はほぼ半々と拮抗し、次期社長候補の副社長、
ダイレクタークラスの幹部役員は日本人約80人に対し外国人約240人。経営の現地化
も着々と進んでいる。

今後も世界の国・地域からグローバルリーダー候補を発掘し、
世界レベルでの登用を進めていく予定だ。


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 ■■■ 年功色を払拭した世界共通の賃金制度に統一 ■■■ 
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 そうなると国内の社員も当然、無縁ではいられない。

同社の幹部社員層の400程度をグローバルリーダー候補として位置づけ、
すでに主要ポストへの登用を前提にした育成計画に着手している。
後継人材の選抜方法も整備している。業績や人事評価をベースに各部門の人材育成会議、
事業部ごとの事業審議会、本社の人材育成審議会で議論して選抜し、
後継人材としてノミネートされる。

 グローバルリーダー候補にノミネートされた社員は、当然育成計画に基づいて
日本を含む世界の拠点を異動する。しかし、国ごとに賃金体系や人事評価制度が
違っていてはスムーズな異動に支障を来すことになる。
その結果、日本の管理職層の賃金体系をグローバル標準に見直すことにしている。

 現在、同社の管理職の資格等級は年功的な色彩が残る日本的な仕組みで
運用している。これを職務や職責など仕事の役割に基づく役割等級制度を導入
していくことにしている。
年功色を払拭し、年齢や能力に関係なく、本人が従事している職務や役割に着目し、
同じ役割(ポスト)であれば給与水準も同じにする仕組みを導入しようというものだ。

当然ながらポストに就けないと給与が下がる社員も続出するだろう。

 人事制度の大変革とグローバルな昇進システムの改革は、労組を中心に資生堂の
社員に動揺を与えているらしい。
社員にとっては外国人の上司が異動してくれば当然英語力がなければ仕事にならない。

 これに対して、同社の人事担当者は

「明日から上司はアメリカ人ですかというようなことを言う人がいるが、
そんな部署ばかりではない。国内には2万5000人の社員がおり、日本のマーケットも
非常に大きい。
グローバルなヘッドクォーター機能を担うのはその中の1000人ぐらいかもしれない。
残りの2万4000人はあくまでも日本のマーケットでの能力の発揮が求められることになる」

と語る。

 とは言っても、今後の少子高齢化により、
日本における資生堂の市場規模が小さくなれば安閑としていられないのは確かだ。


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 ■■■ 40代、50代を対象にしたキャリアの再設計 ■■■ 
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 資生堂は国内の社員も含めた底上げを図るために、
キャリアの再設計に乗り出している。

11年4月に立ち上げた「キャリアデザインセンター(CDC)」主導で、
個別のキャリアカウンセリングの実施やキャリア開発研修、
キャリアデザインセミナーなどを開催している。

40代向けと50代向けの2種類のキャリアデザインセミナーが開催され、
自分の強みを整理し、社内でのキャリア形成を考えるとともに、自分の人生設計を
含めたキャリアの伸長を図ることを目的にしている。
最大の狙いは、自らのキャリアは自ら描くという自発的なキャリア形成にある。

 同社の担当者は「グローバルで勝負しないといけない中で、
もっと社員の専門性を高める必要がある。
海外企業に比べて日本企業の社員の専門性が薄い。
それではグローバルで勝てないのではないか」と語る。

 しかし、キャリアを自分で描くといっても、従来は会社が描く一人前の人材に
育てることを目的に一定のジョブローテーションに従って養成していくという
パターンだった。

今の40代、50代はその路線に乗って育てられた世代である。
会社を取り巻く環境が大きく変化する中で、それに追いついていくことができるのか。

中高年にとっては受難の時代といえるかもしれない。

                               (溝上 憲文)

                                 
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 ■■■ 65歳までの雇用継続は進んではいるが…… ■■■ 
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 東京労働局が10月18日に発表した「平成24年高年齢者の雇用状況集計結果」によると

 (平成24年6月1日現在)、

都内の雇用状況を報告した「31〜300人規模」1万9,687社、「301人以上」4,609社の
集計結果において、高年齢者雇用確保措置の実施済企業の割合は96.8%(2万3,520社)
で前年比1.8ポイントの上昇で、雇用確保措置を未実施である企業は3.2%(776社)で
同じく1.8ポイントの減少であった。

 企業規模別では、大企業で99.3%(4,577社)で前年比0.6ポイント上昇しているの
に対し、中小企業では96.2%(1万8,943社)で同じく2.1%上昇しており、
東京労働局では「中小企業への経過措置の終了により、確保措置未実施であった企業が、
平成23年度中に改善措置をとった結果」(職業安定部職業対策課)と分析している。

 雇用確保措置の上限年齢については、実施済企業のうち、現在の義務年齢である
64歳を上限年齢としている企業は7.1%(1,660社)であるのに対し、
法の義務化スケジュールを前倒しして65歳以上を上限年齢としている企業
(定年制のない企業も含む)は92.9%(2万1,860社)に達している。

雇用確保措置の内訳としては、
(1)定年制の廃止2.7%(627社)、
(2)定年の引上げ14.4%(3,397社)、
(3)継続雇用制度の導入82.9%(1万9,496社)となっている。

 さらに継続雇用制度導入の内訳は、導入企業のうち、対象者を限定する基準を
定めていない企業が30.7%(5,994社)、
対象者を限定する基準を労使協定で定めている企業は69.3%(1万3,502社)で、
後述する来年4月1日施行の改正高年齢者雇用安定法における労使協定の位置づけと
継続雇用対象者の基準設定が企業にとって大きな課題となっている。

ちなみに希望者全員が65歳まで働ける企業の状況をみると、希望者全員が65歳以上
まで働ける企業の割合は39.4%(9,570社)で前年比1.2ポイント上昇しているものの、
企業規模別では、中小企業で43.9%(8,636社)であるのに対し、
大企業では20.3%(934社)でしかない。

 調査は細部に及び、過去1年間の定年到達者(12万8,483人)のうち、
継続雇用を希望しなかった者が3万7,087人(28.9%)、
定年後に継続雇用された者が8万8,917人(69.2%)、
希望したが基準に該当しないこと等により離職した者が2,479人(1.9%)
となっており、特に継続雇用の対象者を限定する基準を定めている企業では、
継続雇用された者の割合は67.5%で、基準を定めていない企業の77.6%を
大きく下回っている。

 参考までに70歳以上まで働ける企業の割合は15.3%(3,709社)で、
中小企業16.8%(3,303社)大企業8.8%(406社)である。

 東京労働局と同時に発表された厚生労働省の同調査集計結果では、
全国約14万社の状況として、希望者全員が65歳まで働ける企業の割合は48.8%で、
中小企業では51.7%、大企業では24.3%となっており、いずれも東京労働局の
集計結果を大きく上回っており、定年到達者の継続雇用状況数値も、
継続雇用された人が、73.6%で東京労働局の69.2%を上回り、
首都圏における高年齢者の厳しい雇用状況を如実に表している。


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 ■■■ 改正高年齢者雇用安定法の課題 ■■■ 
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 改正高年齢者雇用安定法が3月9日に国会に提出され、大幅修正の上、
8月29日に可決・成立し、来年4月1日から施行される。
この法律はもともとが行政指導法のため、具体的な法律運営は省令、
指針が重要となるが、その原案が10月2日の労働政策審議会雇用対策基本問題部会に
提示され、パブリックコメントなどの行政手続が行われており、
まもなく省令・指針が労働政策審議会職業安定分科会での審議を経て発出される。

 改正高齢法の内容は既に報道されていることから詳細は省略するが、
要は雇用と年金を確実に継続するための空白期間を解消するための雇用確保措置
(65歳までの定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止)を導入する
ことにあるが、大きな課題として、改正前の高齢法第9条第2項に基づく
継続雇用制度における対象者の基準に関する労使協定が、今回の改正で廃止される
ため、労使双方に新しい課題が発生し、新しい労働協約の締結などを定める
労使協議を行う必要がある。

 まず、現行の就業規則から継続雇用制度の対象者の基準規定を削除するとともに、
就業規則に定める解雇事由や退職事由に該当する者以外の者を継続雇用制度の対象と
することを就業規則で定める必要が出てくる。

また、労使協議を行う場合でも、60歳定年で継続雇用しない場合における労働契約法
に基づく解雇権濫用法理による客観的合理性・社会的相当性、
継続雇用制度を導入する場合で、60歳以降の契約形態を有期労働契約で締結する場合
には、65歳までは契約更新できる旨の就業規則の周知、さらに65歳前に契約期間の
満了で雇止めした場合は、改正後の労働契約法に基づいた雇止め制限法理が適用
されることになる、等など、複数の法律(このほかに労働組合法、労働基準法、
雇用先の拡大に伴う子会社・関連会社での再雇用での民法第625条)が関連してくる。


事業主は早急に社会保険労務士などの法律専門家に自社の実情を相談していく必要がある。

 10月2日に提示された指針原案では、心身の故障のため堪えられないと認められる、
勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ない者などを
継続雇用としない旨などが盛り込まれているが、
“指針”の“細則”が必要で、新たな労使紛争の種となることは間違いなく、
中小・零細企業にとって個別労働紛争事案が増える。

行政指導法だからといって甘くみていると、新たな問題を抱えることになる。
                             (津山 勝四郎)


編┃集┃後┃記┃
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 2009年、イタリア・ラクイラで300人を超える死亡者が出た地震がありました。

地震発生直前の「安全宣言」が被害を広げたとして、地震学者らに過失致死罪で
禁錮6年の実刑判決がでました。

地震国日本に住む一人として地震予知の安全性、また元気のない日本企業内に
おいて社員の発言責任として、考えさせられたニュースです。
企業内で社員の積極的な発言から新たな技術や商品企画等が生まれます。

経営者は社員の声に耳を傾け、また社員は自分の発言に責任を持って、
元気な企業になるよう力を合わせなければなりません。

 24日、原子力規制委員会が全国16カ所の原発で、重大事故が起きた場合の
放射性物質の拡散予測を発表しました。
しかし、29日に6カ所でデータ入力ミスが原因で放射性物質の拡散する方角や
距離に誤りがあると訂正しました。

福島原発事故以来、私たちは原発関係のニュースには敏感に反応します。
常に正しいデータを発表できるよう心がけて欲しいです。

ミスを事前に防止できない要因に、
「自分の作業に間違えがない」との思い込みから、確認作業を新たな視点や
事細かく行わないことや、指示された作業目的や手順を自己判断で変えてしまう
ことがあります。
また、第三者が確認するとき、信頼している者の作業だと間違いがないと
信じて気を抜いてしまうこともあります。

「自分の仕事は大丈夫」の過信からミスは発生します。
常に冷静な視点でミスを事前防止したいです。           (白石)


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 発行者  雇用システム研究所 
 代表 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
 アドレス:info@koyousystem.jp

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お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容充実していきたいと思います。 
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