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最新コア人材育成法(9)
     〜トヨタ自動車の人事評価制度(下)〜

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┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
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                                2013/10/01

           http://www.koyousystem.jp
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北から紅葉の便りが伝えられ、寒暖の差が激しくなりました。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。

体調管理にお気をつけください。

雇用システム研究所メールマガジン第138号をお送りします。

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  □ 目次 INDEX‥‥‥‥‥
  
 ◆ 最新コア人材育成法(9)
  〜トヨタ自動車の人事評価制度(下)〜

  ■職能主義を世界で統一。課長職まで給与は同じ。
  ■機能別教育で“専門性”を磨く
  ■“人望”評価に基づいて昇進を決める           
       
                       (以上執筆者 溝上 憲文)

  ■厚生労働省の来年度一般会計予算要求、初めて30兆円超  
  ■雇用対策には2兆8381億円(失業等給付含む)

            (以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)

  ■[編集後記]               (編集長 白石 多賀子)

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◆最新コア人材育成法(9)
  〜 トヨタ自動車の人事評価制度(下)〜

 前回はトヨタ自動車の選抜育成研修について触れた。

トヨタにとって日本人、外国人問わずグローバルに活躍する人材や
現地の幹部の育成は重要なテーマであるが、そのためにはベースとなる世界標準の人事制度が不可欠となる。

だが、人事制度の根幹である賃金制度は年功色の強い日本の職能資格制度と欧米の
「職務」ベースの制度は大きく異なる。

 多くの日本のグローバル企業は幹部層の賃金制度を職務・役割給で統一しようとしている。
その中で、トヨタは世界の幹部層の賃金制度も自社と同じ職能ベースで統一した。


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 ■■■ 職能主義を世界で統一。課長職まで給与は同じ。 ■■■ 
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 全社員の能力育成を掲げ、長期雇用を標榜するトヨタの人事制度の根幹は
職能資格制度だ。賃金体系も職務給が今就いている職務に基づいて支払われるのに対し、
トヨタはほぼ全員の賃金が積み上がっていく生活保障型の賃金だ。
月例給は主任職以下は職能基準給と職能個人給で構成。
課長職以上の基幹職は資格給と職能給の2本で構成されているが、
資格給と職能基準給は基本的に同じである。

 資格給は社員の能力を格付けした等級ごとに支払われる固定給。
職能給は毎年の人事評価によって昇給額が決まる。
課長職に相当する基幹職3級までは前年の昇給額に上乗せされていく積み上げ給。
次長職の基幹職2級以上の積み上げではなく、毎年の人事評価結果で増減する
洗い替え方式である。

 職能資格制度に固執する理由について同社の人事担当役員は
「職能主義というのは長期にわたり人を育てて長期に力を発揮してほしいという
長期雇用前提の仕組みです。その人の持っている能力を伸ばし、
伸張度合いによって報酬も支払う。したがってがんばって仕事をすれば、
ほとんどの人が課長までにはなれますし、
課長になるぐらいまでは給与にそんなに差がつきません」と語る。

 職能給は欧米ではなじまないといわれるが、北米でも若い社員から上の層まで
職能資格制度で運用している。
同社の人事担当者は
「日本に比べて中途採用者が多いが、過去に比べて、新卒で入社して長期に働く人も
増えています。米国内では相容れない部分は正直あると思いますが、
中・長期で人材を育成していくことに重きを置いていることを
理解してもらうようにしています」と語る。


 能力に応じて安定した給与を保障する職能主義は育成主義と密接に連動しているのである。


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 ■■■ 機能別教育で“専門性”を磨く ■■■ 
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 トヨタは人事、経理、開発といった機能別ごとに育成を行っている。

たとえば基幹職になるまでに核となる専門性を身に着けさせる
「マスター(親方)養成プログラム」もその一つだ。

同社独自の仕組みである「職場先輩制度」を通じてマネジメントの基礎を修得する
とともに、一人前の専門家としての技能を徹底的に学習する。

「各機能で一人前になるにはどういう経験をしなければいけないのかという
プログラムを作っています。たとえば人事部といっても採用の業務もあれば、
福利厚生の企画、社員の評価、異動に関する業務、労務対策など多岐にわたっています。

しかも日本だけでは海外拠点での業務もあります。
課長になるまで15年、20年の間に培った専門性で飯が食えるような力を身に着ける
ことを目標にしています」(役員)

 育成を柱とする職能主義は人事評価制度にも貫かれている。
もちろん業績評価も重要であるが、業績評価結果はボーナスに反映され、一方、
職能評価は月給と昇進・昇格に反映されるなど、より重視している。
ユニークなのはその評価項目だ。

 課長職以上の基幹職の評価項目は大項目として
「課題創造力」
「課題遂行力」
「組織マネジメント力」
「人材活用力」
「人望」の5つ。

項目はさらに10の評価項目に分かれている。

組織マネジメント力では
@組織上の優先順位に基づいたマネジメントリソーセスの投入、
A仕事の枠組みづくり。
人材活用力は
@適切なアサインメントと厳正な評価、
A人材育成の2つ。
いずれも非常に抽象的な評価項目であるが、最初に各項目について、
本人がやり遂げたことを上司にアピールし、上司はそれを踏まえて採点する。


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 ■■■ “人望”評価に基づいて昇進を決める ■■■ 
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 点数は1項目の満点が100点。

10項目で1000点満点となる。

課題創造力、課題遂行力など業務に関する能力が合計500点であるのに対し、
人材育成を含むマネジメントに関する部分が半分の500点を占めるなど、
育成を重視していることがわかる。

それにしても、日本でも「人望」を評価項目に据えている極めて珍しい。

 人望の意味について役員は「どれだけ部下をその気にさせて、
目指すべき方向に引っ張っていけるのか。
人の魅力やリーダーシップのとり方は人によって違っても、あの人と一緒に仕事をしたい、
あの人の下で働きたいと思わせるもの」と解説する。

もちろん、日本人にはそのニュアンスはわかるが、トヨタのおもしろいところは
「人望」をグローバル統一の基準にしていることだ。

 上司がつけた点数は最終的に人事部と各部門の人事が本人に関する仕事ぶりに
関する情報を加味した協議の結果、4段階の相対評価を下す。
当然、評価を巡っては様々な意見が飛び交うことになるが、評価のプロセスや
フィードバックを通じて本人を育成していこうというのが特色だ。

 こうした評価が日本人以外の外国人に対しても行われる。

育成重視の評価について役員は「トヨタに入った以上、外国人であっても
経理の仕事に就いたら経理の専門職としての力を身につけていろんな分野を経験して
ほしいう気持ちがあります。
そして将来はその地域の幹部として活躍して欲しい。
会社としてはやはり人を大事にしたいし、
人を大切にする会社として皆にがんばってもらいたい」と語る。

 育成重視の職能資格制度が、はたして世界で通用していくのかは未知数だ。
しかし、トヨタはこの仕組みを貫いていく覚悟である。
                             (溝上 憲文)

                                 
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 ■■■ 厚生労働省の来年度一般会計予算要求、初めて30兆円超 ■■■ 
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 9月1日号に続き、今号では「当面の労働行政の課題」の後編として、
厚生労働省が8月末に集計した「平成26年度予算概算要求」の主要事項を中心に、
労働行政関係局である労働基準局、職業安定局、雇用均等・児童家庭局、
職業能力開発局の4局の施策を予算面から展望する。

 まず厚生労働省予算概算要求の全体像をみると、平成26年度要求額は一般会計で
30兆5620億円で前年度を1兆1299億円上回り、3.8%増となり、
初めて30兆円を超えた。

これに厚生労働省特有の特別会計が加わり、
労働保険特別会計が3兆7175億円で前年度比0.6%増、年金特別会計が
56兆8113億円で同じく1.7%増、
東日本大震災復興特別会計が1167億円で同じく19.4%増となっている。

また、総額30兆円超の一般会計のうち、新しい日本のための優先課題推進枠として
1617億円が計上されている。

年金・医療等に係る経費の自然増は9700億円とされており、
税制抜本改革に伴う社会保障の充実と、予定されている消費税

率の引上げに伴う支出増については、
年末の予算編成過程で検討することになる。

 一般歳出30兆円超のうち、要望額で1000億円を超える主な施策を
厚生労働省全体で俯瞰すると、
待機児童解消策の推進など保育の充実に4937億円、
ひとり親家庭自立支援のための児童扶養手当の支給と貸付拡大に1811億円、
児童手当の支給に1兆4178億円、
求職者支援の推進(一般会計分)に1091億円、
現在特例的に引き下げられている雇用保険制度と求職者支援制度の国庫負担率を本来の
国庫負担率(雇用保険4分の1、求職者支援2分の1)に戻すことに前出の
1091億円を含み2260億円、
各医療保険制度における医療費国庫負担に10兆5175億円、
介護保険制度の運営に2兆5540億円、
生活保護にかかる国庫負担2兆8224億円、
年金支給のための国庫負担10兆4187億円、
日本年金機構の業務運営に2934億円、
障害福祉サービスの確保に9107億円、
障害児・障害者への自立支援医療の提供に2233億円が計上され、
これらの総額は27兆0109億円となり、一般会計総額の88.3%を占める。

何のことはない、少なくとも予算上からは日本は既に高福祉社会を実現していることになる。

国全体の予算には、さらに教育、警備、自衛などの義務的経費が計上されている。


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 ■■■ 雇用対策には2兆8381億円(失業等給付含む) ■■■ 
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 労働行政を展望する。

 現政権の目玉でもある「日本再興戦略」は失業なき労働移動を前面に押し出し、
雇用制度改革と人材力の強化策として、

@行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換としての
労働移動支援助成金の抜本的見直し、若者等の学び直しの支援のための雇用保険制度
の見直し、

A民間人材ビジネスの活用によるマッチング機能の強化としての
ハローワークの求人・求職情報の開放、トライアル雇用奨励金等の拡充、
民間人材ビジネスを最大限活用した就業支援、

B多様な働き方の実現としての労働者派遣制度の見直し、
多様な正社員モデルの普及・促進と職業能力の「見える化」の整備、

C若者・高齢者等の活躍する全員社会の実現、
の4項目を主要項目として、
職業安定局は平成26年度要求額として、一般会計2100億円、
東日本大震災復興特別会計562億円、労働保険特別会計2兆6280億円
(うち失業等給付1兆7735億円)計上し、所要の法律改正を行うことになる。

ただ、労働者派遣法改正では、早すぎる“先祖帰り”に労使両方からの批判が強く、
成案までの動きが注目される。

 雇用対策での重点項目の1つでもある人的資源確保のための能力開発では、
若者、女性等の活躍支援への後押しがこれまでも課題となってきており、職業能力開発局は
一般会計で143億円、
労働保険特別会計で1606億円(労災勘定5億8990万円、
雇用勘定1600億円)計上している。

 非正規労働者である若者等がキャリアアップなど“学び直し”を促進することを
中心とした能力開発支援、女性の復職後の能力アップに取り組む企業への
助成制度の創設、成長分野・ものづくり分野での離職者訓練、職業能力の
「見える化」促進のためのツール策定とモデル実施、などを重点施策とする。

“学び直し”実施のためには雇用保険法の改正が必要となる。

 雇用均等・児童家庭局の雇用均等政策での予算要求は、
一般会計で2018億円で、その他に年金特別会計の子どものための給付勘定から
児童育成事業費として675億円、
労働保険特別会計から115億円が計上されている。

例年思うことだが、労働保険特別会計から雇用均等政策への予算計上が少なすぎる。
この事が労働政策部門での女性就労対策の大きな遅れをもたらしてきた。

かつての婦人少年局、婦人局、女性局時代にさかのぼり、自前財源を持たず、
労働保険特別会計に頼るしかなかった女性の雇用均等と活用促進、
ハラスメントへの対応、ポジティブ・アクション推進の遅れ、
両立支援策などへの旧労働省部門の対応は、ここにきてようやく見直されてきてはいるが、
まだまだ意識改革が必要である。

 雇用均等対策の重点は、地域における切れ目ない妊娠・出産支援の強化(厚生行政)、
ひとり親家庭への就業支援のための転職・キャリアアップ支援などであるが、
仕事と育児・介護の両立支援のための相談・情報提供を行う
「カムバック支援サイト」の創設や、
個々人のニーズに応じた「育休復帰支援プラン」
の策定と利用支援が重点となっている。

 雇用均等・児童家庭局は現在、厚生労働省全局のなかで今一番忙しい。

法付則に書き込まれている男女雇用機会均等法、パート労働法、次世代育成支援法の
改正時限が過去の国会事情により押せ押せできていることや、
「日本再興戦略」でも女性の活用が最重点になっていることもある。

事務次官、雇用均等・児童家庭局長、同局女性課長、
そして外部から女性を応援している人たちの一層の応援に期待したい。

 何故か、例年、厚生労働省において労働基準局だけが局別の予算編成表を
公表していない。単なる連絡・引継ぎ不足なのか、担当者の怠慢なのかわからない。
一般会計と労災特別会計とのグレーゾーンの透明化を避けているのかも知れない。

 それかあらぬか、労働基準局分野では第12次労働災害防止計画を踏まえた
労働安全衛生法の改正に伴う労働災害防止、メンタルヘルス・産業保健対策の推進、
化学物質管理の強化、過重労働・長時間労働の解消への取組み、
職場のパワーハラスメントの予防・解決、などが主要項目となっている。

 もっとも労働基準行政の最重点事業は、全国の労働基準監督署を通した
健全な労使の就業環境整備である。使用者の法令遵守、
労働者の健康管理と安全衛生対策、個別労働紛争への対応など、
日常活動に帰することが多い。当面は改正労働契約法施行と、
改正高年齢者雇用安定法施行への労使の対応である。

                             (津山 勝四郎)


編┃集┃後┃記┃
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 10月2日(水)午後10時 日本テレビで、竹内結子主演の
『ダンダリン 労働基準監督官』が放送されます。

 この原作は、漫画雑誌に掲載された田島隆氏の『ダンダリン一〇一』です。

物語は、労働基準監督署を舞台に、現在話題の高いブラック企業などの労働法令の
順守に欠ける企業から、日本の労働者を守るために活躍する労働基準監督官たちの
姿を描くそうです。

そして、そのブラック企業の後ろ盾になっている悪徳社会保険労務士が登場します。
今、同業者間で話題です。初めて社会保険労務士がドラマに登場しますが
悪徳はショックです。

2020年東京五輪が決定しました。

今後、五輪開催を起爆剤として、会場・選手村等の整備、高速道路等インフラ整備
による日本企業の成長が見込まれ雇用も進みそうです。
特に若年者層は、生まれたときから不況が続き、
将来に夢や希望がもてない状況でしたが、7年後の開催で元気が出ることでしょう。

今回の最終プレゼンテーションでの

「日本語でたった一言『お・も・て・な・し』」が話題となりました。


日本の魅力の『おもてなし』は、人と人とのコミュニケーションの基本でもあります。


これからは若年者層の雇用が活発になりますが、
働くための“基本姿勢”の教育が重要となります。
今は、詰め込み型の教育は逆効果です。成長できる企画を立ててみましょう。

最後に望むことは、五輪を成功させるためにも、
宮城・岩手・福島の被災地の早い復興と、
福島第一原子力発電所の汚染水対策の公約を守っていただきたいです。
                                      
(白石)


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 発行者  雇用システム研究所 
 代表 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
 アドレス:info@koyousystem.jp

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お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容充実していきたいと思います。 
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