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“65歳定年制”時代の再雇用・定年延長制度(1)
     〜サントリーホールディングスの取り組み〜

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┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
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                               2014/06/01

           http://www.koyousystem.jp
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咲きはじめた紫陽花に梅雨の訪れを感じます。
皆様どのようにお過ごしでしょうか。

雇用システム研究所メールマガジン第146号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆ “65歳定年制”時代の再雇用・定年延長制度(1)
   〜サントリーホールディングスの取り組み〜

■再雇用制度から65歳定年制に転換
■年収は60歳時の6〜7割
■管理職層の賃金制度も見直し
(以上執筆者 溝上 憲文)

■雇用・労働関係の主導権は官邸に
■長時間労働への途は是か非か?

(以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)

■[編集後記] (編集長 白石 多賀子)

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◆ “65歳定年制”時代の再雇用・定年延長制度
   (1)〜サントリーホールディングスの取り組み〜

 65歳までの雇用を義務化した2013年の4月の改正高齢法の施行を機に新たな継続雇用制度を打ち出す企業が増えている。
その中には65歳まで定年を延長する企業もある。

実質65歳定年制時代を迎え、高齢社員を積極的に活用したいとの狙いがある。
今回は2013年4月1日から65歳定年制度に移行した
サントリーホールディングスを紹介したい。

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■■■ 再雇用制度から65歳定年制に転換 ■■■
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 同社はこれまで「エルダーパートナー制度」と呼ぶ再雇用制度を実施してきた。
定年退職の直近2年間の人事評価結果を採用基準とし、1年ごとに契約を更新
し、最長65歳まで雇用する仕組みだ。再雇用基準はあるが、
故郷へのUターンを希望するなど、希望する勤務地の事業所に配置のニーズない
といった限られたケースを除き、ほぼ希望者全員が再雇用されていた。

 定年到達者の約7割が再雇用を希望し、その再雇用率は90%以上だった。
たとえば2011年は95人の定年退職者のうち82人が再雇用を希望し、
うち80人が再雇用されている。

 エルダーパートナー制度はフルタイムで働く「常勤」と短日・短時間勤務の
「非常勤」の2種類があり、年収は常勤者で350万円、
公的年金を含めると450万円程度である。
2013年4月の65歳定年制を導入した時点では
約350人(常勤250人、非常勤100人)のエルダーパートナーが在籍していた。
その人たちは65歳までに引き続きエルダーパートナーとして勤務するが、
一方、65歳定年制導入の2013年度以降は、
新たなエルダーパートナーの雇用は実施していない。

 定年延長の対象となるのは2013年の4月以降に60歳に達する社員からである。
したがってすでに再雇用制度で勤務している社員はそのまま再雇用が継続され、
すべての社員が新制度に移行するのは2017年からということなる。


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■■■ 年収は60歳時の6〜7割 ■■■
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 定年延長になることで職務内容は現職と同じだ。

再雇用社員は比較的軽度の業務に従事していたが、
定年延長する60歳以降の社員は
「原則として現職にとどまり、従来と同じように会社の命令による
転勤や異動もある普通の社員」(同社人事担当者)になる。
定年延長の対象となる社員はホールディングスに在籍したまま出向している
サントリー酒類やサントリー食品インターナショナルなどの
事業会社を含む約5000人だ。

 働き方は現役時代と一緒と述べたが、ただし60歳以降は全員が役職を勇退し、
一担当者として現場を支える役割を担うことになる。
給与は再雇用のときよりも上がり、60歳時点の6〜7割になる。
処遇の仕組みはその働き方と関係している。

 同社の社員は一般社員であるメンバー層と管理職のマネージャー層に分かれる。
同社の賃金はこれまで職能資格制度に基づいて資格給主体の賃金体系であった。
だが、2012年、旧来の人事制度を見直し、管理職層に役割給制度を新たに導入し
ている。
これによって資格給は残すが新たに役割給が入り、
月例給は資格給と役割給の2本立てとなった。

役割グレードは課長職の一つ手前の役割から本部長クラスまでの
数段階を設定している。

 65歳定年制の導入に伴い、60歳以降の処遇制度を新たに導入した。
具体的には「エキスパート資格」「メンバー資格」「サポート資格」の3つの資
格を設け、60歳時点の資格・役割グレードに基づいて格付けされる。

 60歳以降の賃金は原則として全員が役職を降りるために、
新たに設定された資格給のみとなる(一部60歳を超えて役割を継続する場合は
これまでの役割給を支給)。

したがって大体の目安として管理職だった社員は6〜7割程度の給与になるという。


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■■■ 管理職層の賃金制度も見直し ■■■
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 また、退職一時金や企業年金については60歳までに積立を終了し、
65歳からの支給となる。ただし、2013年度以降の5年間については移行期間と
位置づけ、途中で企業年金を受給できるようにしている。

 定年延長による処遇を引き上げたことで当然、人件費は増加する。
現在の再雇用者に支払う人件費と全員が定年延長の対象者になる2017年の60歳以
上の社員に支払う分を比較すると、十数億円の純増になるという。

 なぜ、人件費増となる定年延長を実施することにしたのか。
同社の人事担当者は「高齢法の改正で希望者全員が再雇用することになるのであ
れば、処遇も上げることで高齢社員を戦力として積極的に活用し、
生産性向上を目指そうというものだ」と語る。

 だが、人件費は増えるが、中・長期的には管理職層に役割給を導入したことは
見逃せない。
資格給は原則として下がることはないが、役割給はグレードが下がればそれに応
じた給与になる。
実際にグレードダウン、つまり降格も発生する仕組みになっている。

65歳定年制によって膨れあがる人件費を
役割給導入による将来的に抑制する効果もある。
                            (溝上 憲文)
                            
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■■■ 雇用・労働関係の主導権は官邸に ■■■
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 6月末の成長戦略決定を前に、厚生労働省存続の岐路とも言えるくらい、
各分野からの労働政策推進に向けた動きが目立つ。

 ここまで安倍政権の経済再生に向けた主な推進体制は、昨年6月に閣議決定さ
れた日本再興戦略に基づく産業競争力会議雇用・人材分科会において、
女性の活躍促進と外部労働市場の強化、内なるグローバル化(外国人材)、
多様な正社員、紛争解決システム、労働力と働き方(労働時間)などが討議され、
国家戦略特区ワーキンググループでは、成立した特別区域法に基づく
雇用条件の明確化と有期雇用の特例、
さらに規制改革会議ワーキンググループでは
労働時間法制等の見直しとジョブ型正社員の雇用ルールの整備、
労働者派遣制度の見直し、などが討議されている。

いずれの分科会、ワーキンググループにも厚生労働省は参考意見を述べることは
できるが、直接関与できないだけに舞台裏での主導権争いは、
各省の官僚、担当大臣(甘利大臣、新藤大臣、稲田大臣)、
長谷川閑史武田薬品社長、
竹中平蔵慶應義塾大学教授、
八田達夫大阪大学社会経済研究所招聘教授、
鶴光太郎慶應義塾大学大学院商学研究科教授などの会議の構成委員も含めた論客
が、それぞれの立場で意見を述べ、マスコミも系統立てた報道ができないことか
ら、国民も動向が理解できず右左に振り回されているのが実態である。

 その背景の下、厚生労働省は今国会に労働関係の改正法案として、
雇用保険法、短時間労働者の雇用管理の改善法(パート労働法)、
次世代育成支援対策法、労働安全衛生法、労働者派遣法のそれぞれ一部改正法案
を提出し、改正労働者派遣法の今国会での成立は不透明である以外、
成立又は成立確実となっており、有期雇用労働者等に関する労働契約の見直しと
なる特別措置法も施行が予定されている来年4月1日に間に合うべく成立にこぎつ
ける。

 安倍総理から政策実現へのスピードが強く要請されているなかで、
厚生労働省は政策決定の手順として公労使の3者構成による労働政策審議会での
諮問・答申を経て初めて具体案策定となるだけに、
省の担当者からも
「これまでのやり方を再検討していかないと、
官邸や他省の要望についていけないことが出てくる」との意見があるが、
過去、政策決定に良くも悪くも労働政策審議会に依存してきただけに、
このままでは政策決定までの道程を根本的に見直すことに
なりかねず、幹部は頭の痛いところであろう。


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■■■ 長時間労働への途は是か非か? ■■■
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 厚生労働省の現役首脳が
「あれだけ女性の活躍推進と全員参加型社会の実現と言っておきながら、
長時間労働への政策提言が数多く出てくるのはどういうことなのだろう」との
疑問を洩らした。
産業競争力会議雇用・人材分科会で長谷川閑史主査が提出した
「新たな労働時間制度への創設」を想定してのことである。

 長谷川氏は経済同友会の代表幹事でもあり、最近とみに政策決定における意見
表明を行わなくなった日本経団連にかわって、経営側の立場で主張するのは
当然と言える。

 提言は新たな労働時間制度の創設として二つの型体をあげている。

一つは労働時間上限要件型で、国が示す対象者の範囲の目安を踏まえ、
労使合意の下で、職務経験が浅く、受注対応などに自己で管理が困難な業務従事
者は対象外として、本人の希望選択に基づき労働時間管理を決定する。

労働条件は法律に基づき労使合意で決定するが、年間労働時間の量的上限等は
国が一定の基準を示す。

報酬は労働時間と峻別し、職務内容と成果等を反映する。
注目すべき点は、労働基準法と同等の規律がある場合は現行の労働時間規制等と
は異なる選択肢を提示し、労使協定に基づく柔軟な対応を可能とすることで、
導入企業は、当初は過半数組合のある企業に限定し、
導入企業は労働基準監督署に労使協定等に届出し、
罰則など履行確保措置は現行の労働基準法とは別の規程を設ける。

つまり、労使の話し合いがつけば、経営側の裁量権が刑事罰抜きで
実現することにある。

二つ目の型体は高収入・ハイパフォーマー型で、高度な職業能力を有し、
自律的かつ創造的に働きたい社員で本人の希望選択に基づくが、
対象者の年収下限要件を概ね1000万円以上とする。
労働条件は期初に職務内容や達成度・報酬等を明確にし、職務遂行手法や
労働時間配分は個人の裁量に委ねるとともに、
仕事の成果と達成度に応じた報酬(ペイ・フォー・パフォーマンス)とするが、
成果未達成等による年収要件不適合の場合は通常の労働管理に戻す(失格の烙
印?)ことになる。

導入企業は労働時間上限型と同じ要件。

二つの型体とも仕事の成果・達成度が重要視され、
導入要件として「当初は過半数組合のある企業」としている。

 労働時間関係では、この他に専門的業務型裁量労働制の適用要件の緩和と範囲
の拡大、企画業務型裁量労働制に関する対象業務の拡大と労働者の拡大、
36協定の特別条項に関する基準の廃止、
現行のフレックスタイム制度の全面見直し、月60時間超時間外労働の割増賃金率
の適用猶予措置に対する労使の意見対立、など課題が山積している。

 労働基準法も労働契約法も労使対等を法律で規程している。
ところが現実は厚生労働大臣でさえ労使対等という実態には否定的な発言している。
極端な話、労使対等が自然に実現していれば、厚生労働省の役割はかなり軽くなる。

そうでないから労働者を保護する省、法律が必要となる。

 日本は米国、オーストラリア、欧米のように労働者の人権が確立しているとは
残念ながら言えない。労働時間と生活賃金の案分は企業の存続と労働者の権利の保存
に向けた永遠の課題とはいえ、現在の経営側に片寄った議論は、
労働側の反論が弱いだけに何やら不気味である。産業競争力会議の長谷川主査は、
5月28日の会議に修正意見を提示し、1000万円の年収要件を削除するとともに、
対象労働者を幹部候補に限定するとしたが、大勢に変わりなく、
今度は名ばかり幹部候補という言葉が流行しそうだ。
                           (津山 勝四郎)


編┃集┃後┃記┃
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 日本経済新聞の一面に「医療費抑制への地域目標」の見出しで、
政府は2016年度にも都道府県ごとに医療費の抑制目標を導入する方針と掲載され
ていました。

また、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会の医療保険部会は、
市町村が運営して財政が悪化している国民健康保険の救済策について
論議を始めました。
厚生労働省は 国民健康保険の運営を都道府県に引き受けてもらう代わりに、
2015年度より大企業の健康保険組合の拠出金を増やす方針です。

そのため、健康保険組合のうち高所得者が多い65%の組合で負担が増え、
保険料が上がる可能性があるとのことです。

健康保険料(介護保険料含む)は、ここ数年間、
大企業の健康保険組合も含め保険料率が上がり続け企業及び社員の負担が
増加しています。
各健康保険組合は保険料率を抑えるための努力をしているにもかかわらず、
外部要因による拠出金のために保険料率が上がることは反対でしょう。
政府管掌の協会けんぽの保険料率も各都道府県の努力により異なります。

毎年、保険料率の改定の度に政府の医療費抑制対策等の遅れを痛感し、
また、お客様の反応を気にして保険料通知をお送りしています。

厚生労働省研究班が「健康寿命」の20大都市別データをまとめました。

健康寿命とは、生活に支障なく過ごせる期間の平均を示しているとのことです。
第一位は、男女ともに浜松市で男性72.98歳、女性75.94歳です。

健康寿命が長い都市は、就業率が高く
喫煙率は低い傾向にあるそうです。

日々、人に迷惑をかけず元気に過ごし続けたいですね。
                            (白石)


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発行者 雇用システム研究所
代表 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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今週のメールマガジン第146号はいかがだったでしょうか。
お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容充実していきたいと思います。
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次回の配信は7月初旬頃情報を送らせて頂きます。

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