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“65歳定年制”時代の再雇用・定年延長制度(3)
     〜オリックスとYKKの取り組み〜

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┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
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                              2014/08/01

           http://www.koyousystem.jp
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暑い日が続いております。
皆様いかがお過ごしでしょうか。

雇用システム研究所メールマガジン第148号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆ “65歳定年制”時代の再雇用・定年延長制度(3)
    〜オリックスとYKKの取り組み〜

■「高齢社員は宝の山」。戦力化が最大の目的
■選択肢として再雇用制度の存続
■段階的に65歳定年。報酬とポストは現役と同じ
■降格・降給による労務費とポスト管理を厳格化
      (以上執筆者 溝上 憲文)

■過重労働に健康障害を発生させた事業場の9割弱に法令違反
■労働時間違反、割増賃金等の未払いが上位

      (以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)

■[編集後記] (編集長 白石 多賀子)

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◆ “65歳定年制”時代の再雇用・定年延長制度(2)
   〜大和ハウス工業の取り組み〜

 65歳までの雇用を義務化した2013年の4月の改正高齢法の施行を機に新たな継続雇用制度を打ち出す企業が増えている。

その中には65歳まで定年を延長する企業もある。
実質65歳定年制時代を迎え、高齢社員を積極的に活用したいとの狙いがある。
今回は2013年4月1日から定年年齢を65歳に引き上げた大和ハウス工業を紹介したい。

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■■■ 「高齢社員は宝の山」。戦力化が最大の目的 ■■■
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 オリックスは再雇用制度を06年に導入。

@勤務成績が標準以上、
A心身共に健康であること、
B会社が用意した仕事に応諾する――の3つを再雇用の条件に掲げてきた。

2012年以降は@の基準を撤廃し、原則として希望者全員の雇用に切り替えた。

 再雇用者の身分は1年更新の契約社員。
勤務形態はフルタイムとし、職場は現職を外れ、主に監査や営業管理部門のバッ
クオフィスの事務の仕事がメイン。報酬額は現役時代の職務等級によって決定し、
概ね3〜4割の水準だった。具体的には課長職であれば300万円から360万円。
部長なら400万円超という水準。300〜450万円程度の幅で推移していた。

 再雇用率は原則全員を雇用することにしたので辞退する人も発生せず、
雇用率は100%だった。ただし、同社の退職者はそれほど多くなく、
オリックス単体で15〜20人。今後は毎年30〜40人ずつ増え、
10年後には600人ぐらいになる予定という。
65歳定年制の導入を決めた理由は、再雇用制度の経験を踏まえたものだ。

 同社の人事担当者は「再雇用制度はやりがいを持って働いていたかとなると疑問。
当社は営業主体の会社であり、長年営業をやってきた人の中には継続して営業を
やりたいという人もいる。
そうであるなら今までのキャリアや経験を活かせる仕事のほうがやりがいも出る
し、会社としてもバックオフィス部門ばかり増えても生産的ではないし、定年を
延長し、あくまでも戦力として活躍してもらうほうがお互いによいと考えた」と
語る。

 また、65歳定年の決め手になったのは
「高齢社員はコストではなく、宝の山と思え」という
経営トップの後押しもあった。


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■■■ 選択肢として再雇用制度の存続 ■■■
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 65歳定年制を導入することで働き方や処遇体系も一新した。
60歳以降は原則として役職は外れるが現在の部署で働く。
上長を補佐するアドバイザー的役割や専門職など新たな役割を担う。
現役時代と同様に会社命令による異動もあれば転居を伴う異動もあり得る。

 報酬制度は再雇用の3〜4割の水準から原則として5〜6割に引き上げた。
同社の賃金制度は役割や職務をベースとする役割給であるが、60歳以降については
新たな役割を設定し、それに基づいて賃金を決定する。
また、現行の再雇用者には賞与はなかったが、役割の大きさ成果に応じて賞与を
支給する。
さらに60歳以降も重責を担う人については現役時代と同じ給与を支払う仕組みも
用意している。

 一方、現行の再雇用制度は65歳定年制度を導入しても維持する方針だ。
すでに再雇用制度を前提にライフプランを計画している人もおり、
柔軟な働き方の選択肢として残した。


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■■■ 段階的に65歳定年。報酬とポストは現役と同じ ■■■
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 一方、YKKグループは2013年度から厚生年金の支給開始年齢の引き上げに
合わせ、段階的に65歳への定年延長を行う仕組みを導入した。
2013年度から定年は61歳。
その後、3年に1歳ずつ延長し、2025年度に65歳定年制が完成する。

 同社の最大の特徴は働き方や処遇は現役時代と変わらない点だ。
再雇用制度では、仕事は変わらないのに処遇が下がるという不満や管理職が役職
から外れて一担当になり、意欲が低下するケースもあった。

会社としても60歳以降の社員を60歳までと別枠で管理するのは人事制度の理念に
合わないという問題を抱えていた。

 その結果、60歳以降も役職は継続し、処遇も維持することにした。
だが、それによって人件費が増加し、ポストが増えるという問題も発生しかねない。
そのため同社は2007年人事制度を一新。

「役割を基軸とする人事制度」を導入し、管理職層(マネジメント職群、専門専
任職群)は役割等級と実力等級に基づいて昇給・昇進を決定。
一般社員層は実力等級に基づく「実力給」に一本化している。

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■■■ 降格・降給による労務費とポスト管理を厳格化 ■■■
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 役割等級に基づく賃金は等級(9段階)ごとの単一給、実力等級に基づく賃金
は等級ごとの範囲給となっている。

年齢や勤続年数で自動的に昇給する年功的な仕組みではない。
一方、役割の責任が果たせなければ等級が下がる「降格」もあれば、実力給の
「降給」もある仕組みだ。

当然、60歳以降も他の社員と同じように評価によって降格、降給もあり得る。

 ただ、降格はあるといっても昇級するなど定年まで上がり続ける傾向があった。
そのため、今後は事業規模に応じた役職ポストを厳格に管理し、
必要以上にポストが増えないように制度の運用をしていくことにしている。
同社の平均年齢は41歳。国内従業員約1万7000人のうち、50代の社員は
1歳当たり400人前後である。

 定年年齢の段階的引き上げによって60歳以降の社員が増えることになる。
現役社員も含めた労務費とポストの適正な管理がより求められることになる。

 実施的な65歳定年時代を迎え、高齢社員の雇用を福利厚生のコストと見なす
制度では生産性の向上は期待できない。
会社への貢献度を高める働きがいのある環境をいかに整備していくのか。
現役世代を含めた年功を廃した制度の見直しと現場の運用力がその成否を握って
いる。


                            (溝上 憲文)
                            
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■■■ 過重労働に健康障害を発生させた事業場の9割弱に法令違反 ■■■
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 東京労働局が7月22日に発表した、管下18の労働基準監督署(支署)におけ
る、平成25年度に実施した過労死・過労自殺など
過重労働による健康障害を発生させ、労災申請が行われた事業場に対する監督指
導結果によると、監督指導を実施した107事業場のうち、全体の88%にあたる94
事業場において、労働基準法、労働安全衛生法の法令違反があったことが明らか
になった。

 監督実施事業は、長時間労働などにより腦・心臓疾患(脳出血、心筋梗塞な
ど)や、精神疾患(うつ病など)といった健康障害を発生させたとして、
労働基準監督署長に対し労災請求が行われた事業場で、

@業種別では、製造業13(比率12%)、建設業12(11%)、運輸交通業9(8%)、
卸・小売業23(21%)、金融・広告業10(9%)、ソフトウェア・情報処理業
13(12%)、病院・介護施設5(5%)、飲食店6(6%)などが上位を占め、

A規模別では10〜49人及1000人以上が25(23%)と最も多く、
10人未満6(6%)、50〜99人14(13%)、100〜299人20(19%)、
300〜999人17(16%)となっている。また、

B被災労働者の従事業務別内訳をみると、営業職と事務職(管理部門など)が
15人で最も多く、以下、販売員14人、システムエンジニア11人、自動車運転者9人、
工事現場管理者7人、編集者5人、コンサルタント、デザイナー、
医療従事者、技術職、調理師が4人と続いている。


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■■■ 労働時間違反、割増賃金等の未払いが上位 ■■■
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 労働基準法関係の法違反の状況をみると、
労働時間(法32条)違反が79事業場(74%)、
割増賃金(法37条)が49(46%)が抜きんでて高く、
以下、賃金台帳(法108条)21(20%)、就業規則(法89条・10人以
上)19(19%)、
労働条件明示(法15条)17(16%)、
法令等の周知(法106条)11(10%)、
休日(法35条)7(7%)となっている。

 労働時間関連の違反では、時間外・休日労働に関する協定(三六協定)の届出
がなく
時間外・休日労働を行わせていた事業場が28で、
内訳は知らなかった16、
届出を忘れていた10、
労働者代表が不適格又は労働者代表と締結協議中のもの2で、
1年のうち6ヵ月まで三六協定により定められた時間外・休日労働する時間を
特別延長時間まで延長できる特別条項付き三六協定の運用状況では、
特別延長時間を超えて時間外・休日労働をさせていた17、
手続きが適正に行われていない9、
延長できる月数を超えて時間外・休日労働を行わせていた7、
特別の事情によらない2という結果で、不適切な労働時間管理が多く認められる。

ただ、事業場指導により、知らなかった、忘れていた、という回答が多いのは、
事業主側の無知とは言え、すぐに是正できるものだろう。

 ちなみにほぼ全事業場(106)で労働時間の把握を行っており、
内訳は自己申告32(30%)、
タイムカード20(19%)、
ID・ICカード15(14%)、
併用39(36%)となっており、事業主が労働時間を把握している実態は、
望む、望まないにかかわらず、労使共に長時間労働を行わざるを得ない就労状況
にあることを裏付けている。

 労働安全衛生法関係の法違反の状況では、
衛生管理者の選任(法12条・50人以上)4(5%)、
衛生推進者の選任(法12条・10〜49人)
11(対象事業場の49%)、
衛生委員会の設置(法18条・50人以上)
13(17%)となっており、ここでは衛生管理体制の不備が課題となっている。

過重労働の実態があった業種別状況では、監督実施数に占める違反割合はどの業
種でも高く、

製造業(46%)、
建設業(42%)、
運輸交通業(89%)、
卸・小売業(61%)、
ソフトウェア・情報処理業(77%)、
教育・研究業(50%)、
飲食店(50%)、などである。

 東京労働局では「今後も一層積極的に監督指導を行っていく」(労働基準部監
督課)とし、長時間労働者の医師による面接指導実施の徹底、衛生管理体制の
整備等の徹底、労働時間管理、健康管理等に関する法令遵守のための監督指導、
などを重点的対策として推進していくことになるが、何せ、国家公務員の定員削減
により、監督指導の実行部隊である労働基準監督官の増員も非常に難しく、
その労働基準監督官も法違反への事後処理に多くの時間がさかれ、
法令違反の事前予防となる定期監督や臨検に人員を配置できない実状である。

長時間労働の定義とすれば、第1段階として1ヵ月45時間、
次に60時間、そして最後は1ヵ月100時間超え又は2〜6ヵ月平均80時間超えのス
テップで、労使共にこの3ステップ段階ごとで話し合っていく必要がある。

 今回の東京労働局での集計でも、母体は健康障害を発生させたとして
労働基準監督署長に対し労災請求を行った事業場で、いわば何らかの法令違反が
あって当然とも言える。まさに氷山の一角でしかない。

 労災があっても届け出ない、小・零細企業の長時間労働の実態、
時代の要請に伴なって急成長を遂げる分野(IT、エネルギーなど)での労務管
理、労災請求まで到らない時期での退職・解雇、もともと長時間労働が労使とも
に当り前となっている業界(IT、広告・宣伝、マスコミ)、
賃金体系など労務管理の実態そのものを秘匿する業界(金融、生保、損保な
ど)、などに対して、行政機関からの指導だけでは日本社会に根付く長時間労働
解消は無理だろう。
もちろん時間外労働そのものは、労基法による割増賃金支払いが約束されていれ
ば、労働者側にとっても必要(所得確保)だし、事業主にとっても経営上の重点
課題である。

 6月に閉会された前国会ではようやく改正労働安全衛生法が成立し、
ストレスチェック制度の創設により、当面は50人以上の事業場における医師、
保健師などによるストレスチェックの実施が事業主に義務づけられ(50人未満は
努力義務)、事業主は、ストレスチェックの結果を通知された労働者の希望に
応じて医師による面接指導を実施し、その結果、医師の意見を聴いた上で必要な
場合には適切な就業上の措置を講ずることが義務となった。
また、重大な労働災害を繰り返す企業には企業単位で改善計画の作成と、その計
画を実現する仕組みを創設させることにし、計画作成指示などに従わない企業に
は勧告を経て企業名が公表される制度も創設された。

 精神障害に対する労災請求は平成25年度全国集計でも1409件と過去最多(厚労
省集計)となり、働きざかりである30歳代と40歳代で6割を占める。ところが、
政府はこの世代を対象として労働時間関連の規制緩和を進めようとしている。仕
事と家庭の両立、ワークライフバランス、女性の登用推進、企画業務型裁量労
働、短時間正社員など、労働時間制度という舞台で踊る言葉だけが一人歩きしな
いことが望まれる。

                            (津山 勝四郎)


編┃集┃後┃記┃
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 梅雨が明け、連日猛暑・熱帯夜が続いています。
 皆さん、夏休みの計画は進んでいますか。

 この1か月間、世界中で多くの事故・事件が発生しました。
 マレーシア航空機の撃墜事故、台湾・澎湖島墜落事故、アルジェリア航空機墜
落事故と悲惨な飛行機事故が続きました。

日本においては、中国上海市にある食品加工会社が期限切れの肉を使用したチキ
ンナゲット等を日本マクドナルドとファミリーマートで販売されていました。
TVの映像では、カビの生えた肉、床に落ちた肉をそのまま使用するなど信じら
れない現実を見せつけられました。
問題の食品加工会社の品質管理確認は、定期的にマクドナルド、ファミリーマー
トと輸入商社が実施しており、日本へ入荷後も検査を実施し問題なかったそうです。

ベネッセコーポレーションの顧客情報漏洩事件からは、企業のリスク管理の甘さ
が問われました。

また、長崎県・佐世保市における高校1年生による同級生殺人事件では、県教育
委員会が、この10年間「命の教育」を県内小中高校で、保護者や地域住民も加わ
り実施しており衝撃が大きいようです。

凄いスピードで国民の意識は多様化しており、企業の社員教育が追いつかない状
況が見受けられます。
今後の社員教育制度の構築は、事前に小中高校生の意識を分析して社会人1年目
になるときの対策が必要な時期にきたのでしょうか。

人事担当者の課題は尽きないですね。

                            (白石)



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発行者 雇用システム研究所
代表 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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今週のメールマガジン第148号はいかがだったでしょうか。
お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容充実していきたいと思います。
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次回の配信は9月初旬頃情報を送らせて頂きます。

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