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発刊済みメールマガジンMail Magazine

障害者雇用とどのように向き合うか(1)
〜精神障害者の採用と定着をどうするか〜

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┏━━┓    
┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
┗━━┛                           第166号
                              2016/02/01

           http://www.koyousystem.jp
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寒さの中にも少しずつ春の気配を感じるこの頃
皆様いかがお過ごしですか

雇用システム研究所メールマガジン第166号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆障害者雇用とどのように向き合うか(1)

   〜精神障害者の採用と定着をどうするか〜

■精神障害者の特性を知ることが重要
■最大のポイントは障害者の採用と定着の仕組み
■企業のブランド価値を高めた三越伊勢丹
(以上執筆者 溝上 憲文)

■メンタルヘルス対策でヒアリングによる事例研究
(以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)

■[編集後記] (編集長 白石 多賀子)

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◆障害者雇用とどのように向き合うか(1)

  〜精神障害者の採用と定着をどうするか〜

 障害者雇用を取り巻く環境が大きく変化する。2016年4月に障害者雇用促進法
の改正による差別の禁止および職場で働く場合の「合理的配慮の提供義務」が施
行される。さらに18年4月から精神障害者の雇用義務化が始まる。それに伴い障
害者の法定雇用率は現行の2.0%から2%台半ば程度に上がる可能性もある。

 また、法定雇用率を達成していない企業は「納付金」を支払う必要があるが、
2015年4月から常時雇用している労働者数が100人を超え200人以下の中小企業事
業主にも納付金制度の適用が拡大された。企業は今後どのように対応していけば
よいのか。本稿では障害者雇用の実態と企業の具体的な取り組みを紹介したい。


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■■■ 精神障害者の特性を知ることが重要 ■■■
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 日本の障害者雇用政策は1960年に身体障害者雇用促進法の制定以来、雇用率制
度を中心に促進されてきた。

76年に身体障害者の雇用が義務化され、88年には知的障害者が対象になった。そ
して新たに精神障害者が対象になることで身体、知的、精神障害の3つが障害者
雇用制度の枠内に入ることになる。

 だが、企業は精神障害者の雇用に及び腰である。その背景にはどんな人たちな
のか、どう扱ってよいのかわからないという障害特性に関する知識とノウハウの
欠如による不安がある。義務化の対象は精神保健福祉手帳を持つ人であるが、大
きく統合失調症、うつ病、発達障害などに分かれる。

 障害者雇用を専門とする文京学院大学の松井信雄教授は
「統合失調症は若年期に発症しやすく幻覚・幻聴、妄想などの症状が発生する。
発症前の予兆(前駆期)を経て急性期の精神的興奮状態に至り、その後抑制状態
から安定状態に入る。それに対してうつ病は興奮状態がなく、最初から落ち込ん
だ状態が続く。一生懸命に仕事をする真面目でいい人が多く、仕事を頼まれても
断れず、オーバーワークで発症するケースが少なくない。

発達障害には自閉症やアスペルガー症候群などの広汎性発達障害、注意欠陥多動
性障害(ADHD)などがある。3歳児までの検診でわかるとされるが、診断が
不明なまま特別支援学校ではなく普通の小・中・高校へ進む人も少なくない」と
指摘する。


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■■■ 最大のポイントは障害者の採用と定着の仕組み ■■■
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 精神障害者を雇用し、能力を発揮してもらうための大きなポイントは採用と定
着にある。厚生労働省は障害者の就業に関する相談や人材紹介機能を持つ「障害
者就業・生活支援センター」を全国の保健所圏域に設置している。支援センター
は企業と送り出す学校や親との調整機能を果たす役割も持つ。ハローワークでの
採用も可能だが、支援センター経由の採用であれば、トラブルが発生してもバッ
クアップしてもらえる。新人を採用する際に、支援センターなどの機関に登録し
ているかどうかを確認することも重要だ。

 もう一つの職場の定着は障害者の人手不足が顕在化する中で切実な課題となっ
ている。今や障害者は完全な売り手市場にあり、採用が難しいだけではなく、優
秀な人材が転職するリスクも抱えている。松井教授は「ストレスに弱い特性を考
慮すると、最初から週40時間労働は難しく、結果として精神的不調が発生する可
能性もある」と指摘する。

「例えばコアタイムを設定し、始業・終業時間を柔軟にするフレックスタイム制
の導入や週20時間労働にして出勤日を月・水・金の隔日勤務にする方法もある。
そうした柔軟な働き方からスタートし、徐々に能力を発揮してもらうための工夫
が必要だ。そのためには本人との話し合いを通じて多様な働き方を検討する必要
がある」

 さらに障害者の持つ多様な能力をいかにビジネスに活用していくのかという積
極的な視点も求められる。企業の中には障害者雇用はお金がかかるので納付金を
支払ったほうがよいとか、法定雇用率のためには仕方がないといった後ろ向きの
発想をするところもあるが、経営にとってはマイナスにしかならない。健常者と
同様に貴重な戦力としていかに自社のビジネスに貢献してもらうのかという視点
を持って活用することが重要になる。


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■■■ 企業のブランド価値を高めた三越伊勢丹 ■■■
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 障害者を活用すること企業のブランドなど付加価値を高めた事例もある。三越
伊勢丹グループの特例子会社である三越伊勢丹ソレイユのギフト用リボン作り
だ。以前は百貨店の販売員が担っていたが、接客時間の合間を縫って作業を丁寧
にこなすのに限界があった。そのためギフトボックスの組み立てなど一連の作業
を専任で行う会社としてソレイユを設立した。

 包装紙やリボンは百貨店のブランド価値を表すものといってよい。それだけに
丁寧かつ正確な作業が求められ、少しでも間違いがあると顧客の信用を失いかね
ない。その仕事を障害者が担うことで販売員が接客に専念できるという業務効率
化の実現だけではなく、ブランド価値の維持にも貢献する。それだけではない。
障害者自身にも自分たちは会社のブランドを支えているという自信にもつながっ
ている。そのことが仕事に対する意欲と定着にも貢献している。

 自社のビジネスに障害者をどのように活用するための前提として、多様な人材
を受け入れられるだけの組織風土があるのかも問われてくる。それは労働時間の
制約条件があるパートタイマーや女性の活用などダイバーシティとも大きく関わ
る。従来の従業員の働き方、働かせ方の見直しを含めて、経営トップをはじめと
する企業の考えや工夫が一層求められてくるだろう。
 次回以降は企業の具体的な取り組みを紹介したい。     (溝上 憲文)


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■■■ メンタルヘルス対策でヒアリングによる事例研究 ■■■
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 日本唯一の労働分野シンクタンクと言える独立行政法人労働政策研究・研修機
構の調査・解析部が大手・中小企業15社を調査対象とした「メンタルヘルス、私
傷病などの治療と職業生活の両立に関するヒアリング調査」をまとめ、昨年末に
発表するとともに機構ホームページにも掲載している。

 調査結果によると、メンタルヘルス対策の取り組み動機としては、
(1)近年のメンタルヘルス不調者の増加への対応やメンタルヘルス不調者発生
   の予防措置、
(2)人材の離職・退職抑制、
(3)疾患の軽度段階での早期発見、
(4)休職・復職・退職の際のトラブル防止(コンプライアンス上の問題への対
   処、雇用保障を重視する企業の社会的責任)、
(5)復職支援、再発防止、などをあげている。

(1)については若年層でメンタルヘルス不調になる者が近年富に増加してお 
 り、特に若年者の場合は職場や仕事の方向性に対するミスマッチなどを背  
 景として早期離職にいたる者がおり、このことが
(2)の人材の離職・退職抑制に連携している。
(3)に取り組む企業にとっては、予防や疾患者の早期発見、復職支援に重点が
 置かれ、
(4)については、求職者が就業規則に規程された休業期間満了となり、
それまでに復職できない者は自動退職となるため、休職者側が納得する形の円満
退社とする規程面の整備が求められ、中小企業においては、病気休職の規程はあ
るが休職者の前例がないことから、規程の不備や復職後の再発の繰り返しによる
休職者との紛争防止に苦慮している例が多いと調査は分析している。

また(5)については、休職は規定を整備すればよいが、復職はタイミングや復
職後の配慮など、職場での対応が重要となり、休職以上に復職に神経を遣う企業
が多いと指摘している。

 メンタルヘルス対策に取り組む体制と経営トップの役割として、調査は委員会
設置、休職者対応の責任部署の設置、管理部門を主導としたメンタルヘルス推進
委員会発足による長期目標の設定、労使代表による「心の健康づくり委員会」で
の職場復帰プログラムの策定、メンタルヘルスが経営課題であることを全社的に
浸透させ、全社で共有する問題として部門長を中心としてメンタルヘルス不調者
からの相談に対応できる組織編成、などの事例が紹介されている。共通している
のは、人事部主導、もしくは現場の声を経営トップに意見具申するとともに、自
社のメンタルヘルス不調者や休職者発生の状況を調査研究し、コストや逸失利益
にかかわるデータ算出により、問題を「見える化」することが、中小企業の特徴
であるトップダウン経営では、問題の重要性を認識させるうえで欠かせないと強
調している。

 調査はさらに、現在取り組んでいるメンタルヘルス対策として評価の高い施策
をまとめているが、相談体制の整備(社外相談窓口、常設の相談窓口、カウンセ
ラーなどを含む)や産業医の面談、特に精神科の産業医による面談や健康指導が
評価が高いと分析。また、職場復帰プログラムや対応フローチャートなど、
休職・復職にかかわるシステム構築も有益としつつ、失効年休積立制度や長期の
欠勤期間も、休職前の長期療養期間とすることで休職前の職場復帰を促す上で有
益な制度となっている事例として紹介している。

 若年層でのメンタルヘルス不調者発生については、採用試験での適性検査の導
入例をあげ、中小企業にとっては、なにより「前例」が働く側にとって重要な情
報として、実際に休職できるかどうか、どのように復職できるか、などの情報伝
播が気軽に相談できる体制づくりが必要であると指摘している。

 調査は最後に治療と仕事の両立に関する課題を分析しているが、職場に関連す
る「代替要員の確保困難」や「上司・同僚の理解」、「復帰のめど」が立つかど
うか、などを課題としており、復帰後の仕事の与え方についても、復職後のリハ
ビリ勤務や業務軽減措置だけでなく、特に事務系業務の少ない業態では与える仕
事がないことも重要課題としている。同時に中小企業では、休職期間中の給与保
障、両立支援制度の整備方法がわからない、制度構築における公平性の担保、
なども課題としてあげている。

 企業が相談窓口を整備しても、悩みを寄せる者は特定の層(リピーター)が多
く、それ以外の層(見えない層)の把握が難しく、対応する上司も多忙となりラ
インケアが行き届かなくなることから、調査分析では、

(1)経営トップによる健康管理重視の姿勢、
(2)健康診断と異常所見のフォローアップ、
(3)長時間労働抑制と過重労働に対する相談体制の整備、
(4)ラインケアのみならず、セルフケアを通じた
社員自身の健康意識の向上、などの異変を検知する仕組みづくりが必要であると
結論づけている。

 この調査はメンタルヘルス不調の発症原因を分析するものではないが、担当し
た調査・解析部次長が「企業の協力が非常に多く得られ、かなりのデータ提供が
あった」と述べたように、秀逸な調査結果であり、ここではふれなかった各社の
事例研究も具体的に集約しているので、機構ホームページの閲覧をおすすめしたい。

 昨年12月1日からは改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度が運用
され、労働者に対して行う心理的な負担の程度を把握するための検査や、検査結
果に基づく医師による面接指導の実施などが事業者に義務づけられた(従業員数
50人未満の事業場は当分の間努力義務)。また厚生労働省は今国会で審議が開始
された平成28年度予算案で、メンタルヘルス不調発症の最大要因である過重労働
解消に向けた取り組み、働き方・休み方の見直し、ワーク・ライフ・バランスの
実現など働き方改革の実現に552億円計上しており、ストレスチェック制度を含
むメンタルヘルス対策の周知徹底、ストレスチェックを実施する小規模事業場に
対する支援の拡充、治療等が必要な疾病を抱えた労働者への適切な理解に基づく
健康管理が行われ、労働者が治療を行いながら就労が継続できるよう、専門の相
談員による相談対応や訪問支援を実施する健康確保対策にも37億円計上している。

 社内の相談窓口や労働組合に相談したら、会社の上層部に知られてしまった、
上司からのパワハラによりうつ病を発症したが、会社はまともに取りあってくれ
ない、などの相談はよく耳にする。特に中小企業では休職制度の整備、配置転換
などの予防対策が人的にも資金的にも体制が整わず、気づいた時にはかなりの重
症という例が多くある。

 家庭環境、教育現場での未体験を経て、職場で初めて他人から叱責され、結果
として簡単にメンタルヘルス不調となる若年層への対策は喫緊の課題である。た
だ、世代の問題としてしまうと、個への対応が追いつかない。筆者は長時間労働
やパワーハラスメントに起因する若者のメンタルヘルス不調者に何人も接してい
るが、正直のところ有効な助言内容が見つからない。会社側に原因を求めるのは
簡単だが、それだけでは解決できない複合要因を捜し出さねばならないからであ
る。                         (津山 勝四郎)


編┃集┃後┃記┃
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 お正月は穏やかな日々でした。

しかし、SMAP解散騒動、廃棄食品の横流し、軽井沢の大型バス事故、さらに
暖冬が一転し全国的に強い寒気で大雪・暴風に襲われるなど、目まぐるしい月で
した。
 
特に、1月15日深夜、斑尾高原のスキー場に向かう途中(長野県軽井沢の国道
18号碓氷バイパスの入山峠付近)、大型観光バスがガードレールをなぎ倒して道
路脇に転落し、楽しく胸を躍らせて寝込んでいたと思われる首都圏の大学生13
人が死亡し大惨事となりました。
4月から社会人になる若者らの将来が一瞬で失われた悲しい出来事でした。
なぜ、関越自動車道ではなく暗くカーブが多く険しいバイパスを走行したか不思
議です。
 
 事故を起こしたバス会社の、
(1)安全コストを軽視した国の基準を下回る低価格での受注、
(2)運行前の健康確認の怠り、
(3)事故を起こした運転手は、面接時に
「長距離の経験がほとんどなく、大型バスは不慣れ」と不安を伝えていたなど、
責任の実態が明らかになりました。

近年の悲惨なバス事故の教訓が生かされておらず、バス運行会社の急増や過当な
価格競争、運転手の過重労働、高齢化等で環境改善が行われておらず、更に悪化
しています。

日本が世界に誇ってきた“安心・安全”の神話が崩壊しモラル低下が言われています。
 企業は、労働基準法をはじめ事業に関係する法律を遵守することが、企業を守
り労働者が安心して働けることで成果へと繋がります。

先月下旬、経団連会長は「企業は積極果敢な経営を通じて収益を拡大し、その成
果を賃上げにつなげるよう最大限の努力をお願いしたい」と強調されました。
しかし、中国経済の減速等で不透明感は拭いきれません。
人事関係者は、4月までは賃上げ状況の把握や決定等で慌ただしい時季となります。

風邪やインフルエンザには呉々もお気をつけください。       (白石)


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発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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今週のメールマガジン第166号はいかがだったでしょうか。
お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容充実していきたいと思います。
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