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発刊済みメールマガジンMail Magazine

障害者雇用とどのように向き合うか(4)
〜富士ソフト企画株式会社の取り組み〜

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┏━━┓    
┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
┗━━┛                           第169号
                              2016/05/01

           http://www.koyousystem.jp
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このたび発生した熊本県を中心とする地震により
亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、
被災された皆さまには、心からお見舞い申し上げます。


雇用システム研究所メールマガジン第169号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆障害者雇用とどのように向き合うか(4)

   〜富士ソフト企画株式会社の取り組み〜

■障害者と健常者の昇給・昇格の基準は同じ
■能力本位で配置。障害者同士が助け合う仕組みを用意
■上司と部下のコミュニケーション促進の仕組み
(以上執筆者 溝上 憲文)

■平成28年熊本地震について
■検討進む同一労働同一賃金問題
(以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)

■[編集後記] (編集長 白石 多賀子)

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◆障害者雇用とどのように向き合うか(4)

 〜富士ソフト企画株式会社の取り組み〜

 障害者雇用を取り巻く環境が大きく変化する。
2016年4月から障害者雇用促進法の改正による差別の禁止および職場で働く場合
の「合理的配慮の提供義務」が施行された。
さらに18年4月から精神障害者の雇用義務化が始まる。それに伴い障害者の法定
雇用率は現行の2.0%から2%台半ば程度に上がる可能性もある。

 企業は今後どのように対応していけばよいのか。障害者雇用に積極的に取り組
んでいる富士ソフト企画の事例を紹介したい。



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■■■ 障害者と健常者の昇給・昇格の基準は同じ ■■■
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 富士ソフト企画は2000年に富士ソフトグループの特例子会社の認定を受けてい
る。今では精神障害者60人超を含む約130人の障害者が勤務している。

 経営理念として「自立と貢献」と「生涯働ける会社」を掲げている。
とくに自立に関しては「自分で考え、自分で判断し、自分の責任において行動す
ること」を重視している。
障害者に限らず、自立することは生きていく上での基本であるが
「障害を持っている人は小さい頃から誰かに支援してもらうことが当たり前に
なり、自立の感覚が希薄になる傾向がある。自立し、仕事を通じて成長し、働く
ことで世の中に貢献することを目指している」(同社担当者)という。

 同社は障害者も健常者も昇給・昇格の人事評価などの処遇において区別しな
い。職階はサブリーダー、リーダー、主任、課長などに分かれ、年3回の人事評
価で5〜1の5段階評価の3.5以上の評価を連続4回以上取得した人が昇格候補
者になる。実際に精神障害者を含む障害者のリーダーや主任もいる。

 精神障害者をマネジメントするうえでの最大の課題は、安心できる職場環境を
醸成することにある。精神障害のある人は何らかの不安を抱えている。「たとえ
ば昇格しても自分にその役割が果たせるのか不安になり『給料が下がってもいい
ので降格してくれ』と言ってくる人もいる。昇進すると責任が重くなるというプ
レッシャーは健常者にもあるが、それに加えて同僚から給与が上がって羨ましい
と思われているのではないかという不安、実際に悪く言われていなくても、悪く
思っているのではないかという思い込みが自らの不安を増幅させる」(担当者)
という。

それが身体の不調につながる場合もある。



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■■■ 能力本位で配置。障害者同士が助け合う仕組みを用意 ■■■
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 そうした不安を取り除くためのいくつかの取り組みを実践している。
その一つが新入社員に先輩社員を張り付けて仕事の面倒を見る
「ブラザー・シスター制度」を設けている。
親会社にも同じ制度があるが、仕事上の悩みの相談などマンツーマンで指導する
人を指定し、入社後1年間を目途に丁寧にフォローする。

 もう一つが障害者同士で助け合うピアサポート。同じ業務を2〜3人のチーム
で作業し、一人が欠けても他の2人が仕事をフォローする仕組みだ。
「精神障害者は突然不調に陥り、休まざるを得ない場合もある。仮に休むことに
なっても周囲に迷惑をかけるという不安感を感じなくてもすむ」(担当者)
という。

 また、障害特性によって担当する仕事を区別していない。大きく精神障害、発
達障害、知的障害、身体障害者がいるが、能力本位で適材適所の配置をした結
果、違う障害の人が一緒に仕事をするケースが多い。

「たとえば特別支援学校出身を出たばかりの知的障害者を他の障害者がいる職場
に配属したことがある。知的障害の若い社員の純粋で真面目な振る舞いが職場を
和ませたり、生きることの辛さを感じている精神障害の社員にとって彼の存在が
癒しになることさえある」(担当者)

 お互いの障害に対する理解を深めることを目的に全社員が受講する
「教養講座」も開設している。
障害者に対する偏見は無知と誤解が生み出しやすい。
障害に対する理解を促すために、2ヶ月に1回の講座では障害に関するビデオを
イントラネットで上映し、全員にアンケートで感想を寄せてもらう。
回を重ねるごとに感想の文字量が増えており
「自分も苦しんでいるが、自分とは違う障害の苦しさを理解できた」という感想
が多く返ってくるという。


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■■■ 上司と部下のコミュニケーション促進の仕組み ■■■
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 不安感を取り除くには社員間のコミュニケーションも大事だ。
とくに上司の役割は重要であり、部下が何を考え、何を目標に生きているのか、
何を大切にしているのかを知るようにしている。そのための取り組みの一つがカ
ウンセリング会議だ。以前は不調になった精神障害者の対応を検討するのが目的
だった。今は部下を持つチーム長以上の全員が集まる会議に変え、部下の一人ひ
とりがどんなことに興味を持ち、今は何に取り組んでいるのかについて全員に報
告してもらい、情報の共有化を図っている。

「部下が5人いれば、5人がどんな趣味を持っているのか、今の仕事ぶりについ
て本人が直接情報収集することになり、上司が部下に声をかけるきっかけにもな
る。さらに幹部全員が社員全員の情報を共有することで、励ましの言葉をかけや
すくなり、社員も自分に関心を持ってくれていることに喜びを感じるなど社員と
のコミュニケーションの活性化にもつながる効果もある」(担当者)

 また社内表彰制度の特別賞として仕事以外の趣味などを表彰する「趣味を楽し
みま賞」「自己啓発賞」を設けているが、社員間のコミュニケーションにも一役
買っている。さらに職場内のコミュニケーション活動の促進するために新入社員
の歓迎会などチーム員が集まって懇親会を開催する場合、半期に1回、懇親会の
補助金を支給している。

 企業にとってこれまでの障害者雇用はお荷物を抱えるという発想でしかなかっ
た。しかし後ろ向きの採用では生産性にも悪影響を及ぼし、経営にもマイナスに
なる。優秀な人に来てもらえるように環境を整備し、育成と定着を図ることが企
業経営の重大なポイントになっている。          (溝上 憲文)



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■■■ 平成28年熊本地震について ■■■
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 その時、

「これで消費税と衆参同時選の問題は飛んだ」

と感じた人は相当いたに違いない。だが口に出してはいけない。
ましてや、政党の代表が、である。

 4月14日に発生した平成28年熊本地震は、東日本大震災の津波、阪神・淡路の
火災が発生しなかった分、死者は少ないが、復興には何年もかかる。
この地震については、スポーツ界や芸能界、そして団体・民間企業、一般国民か
ら多くの寄付がなされているが、この行為に対して、売名行為であるとしてネッ
ト上で炎上しているという。
今必要なのは、被災者と被災地の復興であり、そのために大量の物資を必要とす
る事は論を待たず、売名とか偽善とかの論争は幼稚である。批判する人達の思考
回路は、自分達がCO2タレ流しの生活を謳歌しながら原発反対を主張する人達に
似ていなくもない。寄付や献金を匿名で行うという考え方は、今ネットを賑わし
ている浅はかな議論ではなく、人間の根源的な思想であると言えよう。

 被災地に対する当面の緊急雇用・労働対策は、大きく
(1)雇用を維持・確保しようとする企業への支援
(雇用調整助成金の要件緩和)、
(2)労働保険料の申告・納付期限の延長
(例年は6月1日から7月10日までに申告・納付)、
(3)就職活動中の学生等に対応した職業相談や企業への働きかけの実施、
(4)復興作業を行う人達の安全・健康(保安用品の提供、労働災害防止への要
請や安全パトロール)、
(5)賃金など労働条件面の不安や疑問への対応(労働基準法関係、未払賃金の
立替払制度の周知と申請手続きの簡略化)、の5項目を重点としている。

 厚生労働省の出先機関である熊本労働局でも本省の方針に沿って、
(1)ハローワークに来所できない求職者のための失業認定日の取扱い
(認定日の変更)、
(2)災害時における求職者給付の支給に関する特例措置
(災害救助法の適用を受けた熊本県内45市町村に所在する事業所に雇用される人
が、事業所がやむを得ず休業することになったため一時的な離職が余儀なくさ
れ、離職前の事業主に再雇用されることが予想され、雇用保険に6カ月以上加入
している等の要件を満たす人を雇用保険上の失業者とみなして雇用保険失業給付
の支給対象者とする)、
(3)相談窓口として、ハローワークでは事業主や労働者に対する雇用維持や雇
用保険、職業紹介に関すること、労働基準監督署では賃金・解雇などの労働条
件、安全衛生、労災補償に関すること、労働局労働保険徴収室や雇用環境・均等
室では、事業場の労働保険料の申告・納付に関することと、解雇など労働条件等
不利益取扱いに関すること、
などの災害救助法適用による緊急雇用対策を実施している。

また、政府は4月25日に熊本地震を激甚災害に指定し、26日から施行した。

 阪神・淡路、新潟、長野、東日本に続いて、国民は4度目の大きな宿題を与え
られ、次はどの地域で災害が発生するのだろう。どうやら国民全員が覚悟を決め
ておいた方が良さそうだ。


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■■■ 検討進む同一労働同一賃金問題 ■■■
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 厚生労働省職業安定局内に設置されている「同一労働同一賃金の実現に向けた
検討会」(座長・柳川範之東京大学大学院経済学研究科教授)が3月23日の第1回
から、4月22日には早くも第3回目の会議を行い、積極的に活動している。

 第3回目では今後の検討に向けた各委員の意見集約が行われ、同一労働同一賃
金実現にあたっては、不利益取扱いが合理的なものとして許容される「正当化事
由」の詳細な把握のための判例法理の収集において、比較対象者や考慮事項など
の分析を重ねた上でガイドラインの策定に向けた一定の考え方を抽出していく必
要性があること、企業の賃金実態を把握した上で検討していくことと同時に、待
遇の違いの合理性について、裁判における正当化事由の説明が可能であるかどう
かが、EU諸国のように枠組みが出来ている場合でも、基本的に労使に委ねられて
いることから、最終的に裁判でしか決着がつかないというリスクを労働者が負う
のであれば、結局、今の状態と大きく変わらない可能性があり、個々の労働者が
紛争解決手段に訴えない場合であっても、各企業において自主的に賃金体系の合
理性を問い直す契機が必要で、そのためには賃金に対する透明性を高めていく視
点が重要であるとの意見などが集約されている。

 さらに水町委員(東京大学社会科学研究所教授)からは同一労働同一賃金の推
進に向けた具体的なQ&Aが補足資料として提出され、賃金以外の給付や職務内容
と関連していない給付も「合理的理由のない処遇格差の禁止」という形で法規範
の対象となること、同一労働の定義、給付の性質・目的によって異なる「均等」
(通勤手当、食堂の利用、出張旅費、安全管理など職務内容に関連しない給付)
も、「均衡」(職務内容に関連する基本給、職務手当、教育訓練など)も「合理
的理由のない処遇格差の禁止」のなかに含まれると解釈できるとの意見が出された。

 さらに合理的理由(ガイドライン)の考え方として、水町委員は、職務内容と
関連性の高い給付(基本給、職務手当、教育訓練など)、
勤続期間と関連した給付(退職金、企業年金、昇給・昇格、年給日数など)、
会社への貢献に対して支給される給付(賞与、移動手段の快適度など)、
会社からの収入で生計を立てている者に対する生活保障的な給付(家族手当、住
宅手当など)、
同じ会社・場所で就労する者として必要な費用・設備・制度等に係る給付
(通勤手当、出張旅費、社内食堂、休憩室、化粧室、安全管理、健康診断、傷病
休業など)、労働時間の長さや配置に関連する給付(時間外労働手当、深夜労働
手当、食事手当など)、雇用保障(優先的に人員整理の対象とすることの可否)
など7項目を例示し、重要なのは労使の話し合いによる制度と手続きの合理性を
基礎づけることもガイドラインに明記することであると結論づけている。

 水町委員は検討会で示した考え方を、政府(内閣官房)に設置されている一億
総活躍国民会議においても参考人として意見を述べ、同一労働同一賃金原則によ
り、非正規労働者の処遇の改善(公正な処遇)を促し、多様で魅力的な就業環境
を整えていくことが不可欠であると主張した。

 検討会の庶務が労働基準局でなく、職業安定局派遣・有期労働対策部企画課に
置かれている。議論の進捗によっては労働契約法、パート労働法、労働者派遣
法、個別労働紛争解決促進法の改正も視野に置くことになるが、労働基準局が今
国会に提出されている改正労働基準法の動向が全く未定なところに、長時間労働
解消も一億総活躍推進のための重点施策となっているため、非正規労働者対策に
対応している職業安定局に庶務を行わせることになった。

 今号の最後に、前号で掲載した連合集計の今季賃上げの結果を補足する集計と
して、経団連が4月18日に発表した東証一部上場、従業員500人以上、主要21業種
大手249社(143社回答)における第1回賃上げ集計をあげる。妥結額は製造業平
均で7237円、2.23%増、非製造業平均で6943円、2.06%増となり、いずれも前年
を989円、963円下回ったことを追加しておく。      (津山 勝四郎)



編┃集┃後┃記┃
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 熊本地震被災者の皆様にお見舞い申し上げます。
 4月14日午後9時26分と16日深夜午前1時25分に震度7の地震が発生、2度目の
地震が本震で14日が前震と発表がありました。

特に本震による被害は甚大でテレビから流れる画面に衝撃を受けました。
余震が多発しており範囲も拡大しています。
一日も早い終息宣言により復興活動が安心してできることを祈るばかりです。

厚生労働省は、1カ月の残業が100時間に達している事業所に対して労働基準監督
署の立ち入り調査をしていますが、今度は対象範囲を広げ80時間を超える事業所
も監視強化をすると発表しました。
また、中小企業が無理な納期で受注したり、極端な安価で仕事を請負って利益確
保のために長時間労働を強いられている原因が親事業者からの「下請けいじめ」
が疑われる場合は、中小企業庁や公正取引委員会へ通報を始めます。
実際に違反行為が確認できた場合は、公正取引委員会は改善を指導する又は会社
名とともに違反内容を公表します。
長時間労働により脳・心臓疾患、精神疾患に罹患、また、寝不足等よる疲労や集
中力の欠落により事故が発生しかねません。

長時間労働削減は、経営者トップの判断とメッセージの発信です。

ゴールデンウィークは日頃の心身の疲れを癒してください。

                                (白石)




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発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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今週のメールマガジン第169号はいかがだったでしょうか。
お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容充実していきたいと思います。
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次回の配信は6月初旬頃情報を送らせて頂きます。

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