本文へスキップ

人事・労務に関する御相談は東京都新宿区 社会保険労務士法人 雇用システム研究所まで

電話での相談・お問い合わせはTEL.03-5206-5991

〒162-0825 東京都新宿区神楽坂2-13 末よしビル4階

発刊済みメールマガジンMail Magazine

厚労省の「配偶者手当見直し提言」に困惑する企業

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏━━┓    
┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
┗━━┛                           第170号
                              2016/06/01

           http://www.koyousystem.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

6月に入り梅雨の季節となりました。
今年は例年にくらべ暑い夏になるようです。
みなさま、いかがお過ごしですか。

雇用システム研究所メールマガジン第170号をお送りします。

=============================================

□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆厚労省の「配偶者手当見直し提言」に困惑する企業

■「配偶者手当」の存在が女性の就業を阻害している
■廃止すれば社員の生活に大きな影響を与える
■「専業主婦」が活躍できる職場があるのかと疑問の声
(以上執筆者 溝上 憲文)

■今後10年の政策目標策定
■新たな三本の矢を射る
(以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)

■[編集後記] (編集長 白石 多賀子)

=============================================

◆厚労省の「配偶者手当見直し提言」に困惑する企業


 民間企業の配偶者手当の見直しを提起した厚労省の有識者による「女性の活躍
促進に向けた配偶者手当の在り方に関する検討会」の報告書が4月11に出された。

 民間企業が支給する手当の問題にまで踏み込むのは極めて異例だが、検討会開
催のきっかけは「日本再興戦略改訂2015」や「GDP600兆円」実現を目指す1
億総活躍推進の緊急対策で検討が指示されていたからだ。その中で「就労促進の
観点から、いわゆる103万円、130万円の壁の原因となっている税・社会保険、配
偶者手当の制度の在り方に関し、国民の間の公平性等を踏まえた対応方針を検討
する」ことが明記されていた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■■■ 「配偶者手当」の存在が女性の就業を阻害している ■■■
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 なぜ配偶者手当を見直す必要があるのか。報告書の結論ではこう述べている。
「今後労働力人口が減少していくことが予想され、働く意欲のあるすべての人が
その能力を十分に発揮できる社会の形成が必要になっている中、パートタイム労
働で働く配偶者の「就業調整」につながる「配偶者手当」(配偶者の収入要件が
ある「配偶者手当」)については、働き方に中立的な制度となるよう見直しを進
めることが望まれる」

 企業の支給する配偶者手当が女性の就業調整を促し、結果として労働力の供給
を阻害しているという理屈だ。

 人事院の「平成27年度職種別民間給与実態調査」によると、家族手当制度があ
る事業所は76.5%。
そのうち配偶者手当を支給する事業所90.3%(全体の69.0%)。
配偶者の収入制限がある事業所は84.9%。
内訳は所得税法上の配偶者控除対象の103万円が68.8%、
被用者保険加入要件の130万円が25.8%となっている。
多くの企業が配偶者手当の支給基準を年収103万円、130万円に置いていることが
わかる。

 厚労省の「平成23年パートタイム労働者総合実態調査」によるとパート労働者
で「就業調整している」と回答した人の割合は21.0%。
その理由で最も多いのは「103万円を超えると税金を払う必要がある」
(63.0%)、続いて「130万円を超えると社会保険に加入する必要がある」
(49.3%)。そのほかに「一定額を超えると配偶者の会社の配偶者手当がもら
えなくなるから」を理由に挙げる人が20.6%もいた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■■■ 廃止すれば社員の生活に大きな影響を与える ■■■
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 配偶者手当の存在が就業調整に一定程度影響を与えていることになるが、報告
書はこの点を踏まえて、厳しく批判している。
「生産年齢人口の減少に伴い労働力人口が減少することが見込まれる日本社会に
おいては、看過できない問題である。このように、就業調整は、女性がその持て
る能力を十分に発揮できない要因となる可能性があるとともに、日本経済全体に
とっても人的資源を十分に活用できない状況を生じさせるなどマイナスの効果を
与えていると言うことができる」(報告書)

 確かに配偶者手当の存在が女性の活躍を阻んでいるとすれば問題なのかもしれ
ない。だが、個々の企業にとっては配偶者の就業調整を阻害しているという認識
は薄いし、それだけで手当の廃止を含む見直しに着手するわけにはいかない。こ
れまで配偶者手当を縮小・廃止した多くの企業は経営方針に基づく人事処遇制度
全般の改革の一環として実施している。

 建設関連会社では非管理職の配偶者に2万円弱の手当を支給し、管理職クラス
は役割給を前提に配偶者手当を含む属人手当は一切支給していない。
 同社の人事部長は配偶者手当の廃止について「政府は就業調整を問題にしてい
るが、それは小売や飲食などの限られた業種でしかない。子育てや介護をしてい
る女性が短時間勤務を望んでも他の業界では難しいのが現実だ。働きたくても働
けない女性が多い中で、配偶者手当を廃止すれば社員の生活にも大きい影響を与
える」と、手当の廃止に否定的だ。

 また、役割給制度を導入しているIT企業では管理職は家族手当を支給してい
ないが、非管理職層には配偶者と子供の扶養手当を支給していた。だが、昨年に
非管理職層の扶養手当のすべてを廃止した。だが、同社の前人事部長の子育て世
代に同情する。

「扶養手当の改廃については人事部内で長年議論してきた問題だ。管理職になる
と年収も600〜700万円になるが、非管理職の20〜30代の子育て期の若い世代は
400〜500万円が多く、全員が管理職になれるわけでもない。個人的にはある階層
までは手当を付けてあげたい気持ちもあったが、会社の判断として廃止に踏み
切った」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■■■ 「専業主婦」が活躍できる職場があるのかと疑問の声 ■■■
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 廃止に伴い、手当の原資の平均額を若手社員の基本給に組み入れたが、その結
果、独身者の給与が増え、家族を抱える社員の給与が減るという現象も生まれて
いるという。もちろん扶養手当を支給されていた社員は緩和措置で2年間は一定
金額が保障される。だが、3年後にはなくなる。

 前人事部長は政府の趣旨には賛同するが、専業主婦だった人が本当の意味で活
躍できるのか、疑問だと言う。

「3年後には5万円も減るんだよと夫に言われれば、妻も働かなければと思うだ
ろう。でも20年近く専業主婦をやってきた人の中には能力的に務まる仕事が限ら
れるし、ましてや正社員の仕事はないだろう。結果的に小売・飲食産業で働くし
かないが、これまで大手企業に務める夫の専業主婦として世間的にもプライドの
高い妻が、結局スーパーのレジ打ちの仕事しかありませんとか、夜の営業時間帯
も働いてももらいますと言われて、働く意欲が湧くだろうか。一億総活躍という
お題目はわかるが、働きたくても仕事が限られている世の中の現状も考えて対応
してほしい」

 共働き世帯が増えて、会社の中でも確かに配偶者手当の存在意義が疑問視され
はじめているのは確かだ。厚労省は今回の報告書を受けて報告書の趣旨や見直す
場合の留意点をまとめたパンフレットを作成し、都道府県労働局に置いて企業に
周知していくことを検討している。
 だが、経営者の中には政府のお墨付きがあるから廃止しようという人も出てく
るかもしれない。配偶者手当の廃止によって収入減となる人が増えれば、景気の
足を引っ張ってしまうことにもなりかねない。       (溝上 憲文)



=============================================


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■■■ 今後10年の政策目標策定 ■■■
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 5月18日、19日の二日間に、安倍総理が主宰する経済財政諮問会議、一億総活
躍国民会議、産業競争力会議の3会議が開かれ、当面の経済財政運営と改革の基
本方針(骨太の方針)が決定されるとともに、名目GDP600兆円に向けた成長戦略
(日本再興戦略2016)など3議案の閣議決定を経て、平成29年度予算編成に向け
た各省庁予算枠のシーリング、8月末の平成29年度予算概算要求となる。今号で
は三つの会議報告から、主に今後10年間の雇用対策を中心とした重点施策を展望
する。

 政策の骨格を構築する経済財政諮問会議でとりあげられているのは、子ども・
子育て支援となる地域拠点整備と保育対策とともに、最重点施策として、就業を
希望する女性・高齢者の就業促進と非正規労働者の待遇改善を掲げ、働き方改革
としての同一労働同一賃金の実現を目指し、総労働時間抑制等の長時間労働是正
への取り組み、非正規労働者の正社員転換の推進、さらに高齢者の就業率を高め
るための65歳以降の継続雇用促進と65歳までの定年引上げを行う企業に対する支
援、高齢者雇用を支える改正雇用保険法の施行など、高齢者の希望に応じた多様
な就業規則の確保を図っていく。

 女性が働きやすい環境整備で検討されている税制・社会保障制度・配偶者手当
等への見直しについては、政府税制調査会の論点整理を踏まえた幅広い税制のあ
り方についての議論を進め、社会保障制度については年金機能強化法による10月
からの大企業における被用者保険の適用拡大に加え、中小企業にも道を開くため
の制度的措置を講じていくが、その際、就業調整を防ぎ、被用者保険の適用拡大
を円滑に進める観点から、短時間労働者の賃金引上げや本人の希望による働く時
間の延長を通じて、人材確保を図る事業主を支援するキャリアアップ助成金の活
用も徹底していく。配偶者手当については厚生労働省の検討会報告の結果を踏ま
え労使による在り方の議論を促していく。

 女性の活躍推進については、「女性活躍加速のための重点方針2016」に基づ
き、長時間労働の削減など働き方改革や、男性の家事・育児等への参加促進、テ
レワーク等による柔軟な働き方の推進、女性活躍のための行動計画の策定・情報
公開等による女性の積極的な採用・登用の促進、将来指導的地位に登用される女
性の候補者の育成のための取り組みを推進していく。

 介護の環境整備では、介護離職者をなくすために自宅待機の高齢者の解消を目
的として、介護ニーズに応じた機動的な介護サービス基盤を整備し、地域包括ケ
アを推進する。介護サービスを提供するため人材確保については、介護人材の処
遇改善等、多様な人材の活用と人材育成、生産性向上を通じた労働負担の軽減、
安心・快適に働ける環境整備などを総合的に取り組んでいく。

 骨太の方針は文字通り国家政策の骨格であり、総論である。骨格に基づく具体
策は内閣府所轄の下、各省が予算に反映して財務省と協議していくことになる
が、安倍内閣は政策決定権の全権を内閣府に置き、設置された種々の会議機関の
決定事項を各省に振り分けている。その主要機関が一億総活躍国民会議で、この
会議で決定された
「ニッポン一億総活躍プラン」では具体策が盛り込まれている。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■■■ 新たな三本の矢を射る ■■■
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 プランでは新たな三本の矢として、一億総活躍社会を創っていくため、「戦後
最大の名目GDP600兆円」、「希望出生率1.8」、「介護離職ゼロ」の大きな目標
を掲げている。

 第一の矢は希望を生み出す強い経済、第二の矢は夢をつむぐ子育て支援、第三
の矢は安心につながる社会保障である。このうち、第一の矢は冒頭に記したよう
に、産業競争力会議において、「日本再興戦略2016」の閣議決定により、新たな
有望成長市場の創出、ローカルアベノミクス(サービス産業の生産性向上、中
堅・中小企業・小規模事業者の革新、攻めの農林水産業の展開と輸出促進、観光
立国の実現)の深化、国内消費マインドの喚起、生産性革命を実現する規制・制
度改革、イノベーション創出とチャレンジ精神に溢れる人材の創出(この項目に
長時間労働是正と女性の活躍推進が取りあげられている)、海外の成長市場の取
り込み、などの戦略が具体的なGDPの拡大となる数値目標を明示した上で掲げら
れている。プランでは、新たな第一の矢による成長の果実なくして新たな第二、
第三の矢は放てないとして、新たな第二、第三の矢を新たな第一の矢の実現によ
る「分配」と位置づけ、「成長と分配の好循環」を創りあげることが、成長か分
配か、どちらを重視するのかという長年の論争に終止符を打つことになるとして
いる。

 「成長と分配の好循環」の効果を定量的に示すことを目的として、プランは子
育て支援の充実、介護支援の充実、高齢者雇用の促進、非正規雇用者の待遇改
善、最低賃金の引上げの5項目を評価の対象政策として政策効果を試算している。

 試算によると、労働供給は2025年度までに約204万人増となり、非正規雇用者
の待遇改善と最低賃金の年率3%の上昇により、賃金総額は約29.5兆円増、これに
よる可処分所得増が約24.3兆円となる。さらに出生率の改善に伴う消費支出増も
あり、消費支出は約20.4兆円増と試算。これらの政策効果により更なる労働供
給の増加と賃金の上昇を後押しすることも期待できるとしている。
プランが実行されれば日本の将来は何も危惧することはないと言うわけだが、結
果はあくまでもプラン実行に伴う予算配分と、プラン実行には雇用者側の負担増
が前提とされるだけに、報告通りに読めないのは今後の課題である。

 新たな第二の矢(希望出生率1.8の実現)の具体策をみると、希望どおりの結
婚の実現として若者の雇用安定と待遇改善をあげており、非正規雇用労働者の正
社員転換、有期雇用契約の無期転換が本格的に導入されることに伴う多様な正社
員の導入など人事制度の見直し、
若者雇用促進法の施行と取り組みと強化、若者の能力開発とキャリア形成、社会
生活面からの子ども・若者等の就労・自立の支援、希望どおりの人数の出産、子
育てのための保育サービスを支える多様な人材の確保と生産性の向上(特に保育
士の待遇改善)、
仕事と育児が両立できる環境整備による働き方改革(プランではここ3年間の最
大のチャレンジと位置づけている)、
最低賃金は全国加重平均1000円を目指す、
女性の活躍推進策としての企業への働きかけと女性活躍推進法の施行と見直し、
などが重点施策となっている。

 新たな第三の矢(介護離職ゼロの実現)では、高齢者に対する虚弱予防として
の多様な就労機会の確保(関連法の施行と4年後の継続雇用延長・定年の引上
げ)、在職老齢年金も含めた年金受給の在り方についての検討、介護人材の確
保、健康寿命の延伸と介護負担の軽減、地域共生社会の実現、などを掲げている。

 プランは結論として、新たな三本の矢それぞれについて、政策を課題と方向性
と対応策の3部門に整理して示し、合計43項目からなる対応策については工程表
による目標年度を指標として示し、その他の政府計画と連携して実施していくと
している。

 プランの実現には当然ながら国家予算が必要となる。一部日刊紙は予算の裏付
け(総額2000億円と推計)がないと批判していたが、予算は平成28年度予算で既
に導入されている施策と平成29年度予算において新規施策として計上されてい
く。ただ、予算のマイナスシーリングが続く限り、特に厚生労働省予算について
は、他の分野における国民負担増に頼らざるを得ない。消費税増税の先送りが決
定的となり、社会保障財源の確保が不透明になってきた現状で、厚生労働省の予
算編成のやりくりだけではプランの実現は困難であることは以前にも指摘してい
る。                        (津山 勝四郎)



編┃集┃後┃記┃
━┛━┛━┛━┛********************************************************

 5月に、国際規格のISO/IEC27001と国内規格JISQ27001の認証取得が完了し
ました。

 マイナンバー制度導入により情報管理体制が厳しく求められている中、
情報の機密性、完全性、可用性をバランスよく維持・改善しリスクを適切に管
理する「情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)」を運用していくこと
が、お客様の安心と信頼関係につながると思い取得しました。

 医師専用の情報交換サイトが、医師に対してAI(人工知能)に関するアン
ケートを行ったところ、
「20年以内に診療を担う時代が来る」と7割が答えたそうです。
調査結果では、「10年超20年以内」が最も多く33%、
次いで「5年超10年以内」が23%です。

生命に関する医療現場で数値データの解析等では効果があると思いますが、
病名や治療方法は医師から直接、聞きたいですので、AI(人工知能)の診断は
補助的に活用して欲しいと願っています。

高温多湿の時季、水分と塩分補給に心がけ、熱中症にお気をつけください。
                                (白石)




-------------☆ ☆ ☆ --------------

発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

今月のメールマガジン第170号はいかがだったでしょうか。
お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容充実していきたいと思います。
ご感想は info@koyousystem.jp にお願いします。

「こんな記事が読みたい!」というリクエストも、遠慮なくどうぞ。

次回の配信は7月初旬頃情報を送らせて頂きます。

e-mail: info@koyousystem.jp

[過去のメルマガ随時更新]⇒ http://www.koyousystem.jp
=============================================
メールマガジンの配信が不要な方は、お手数ですが、
こちらhttp://www.koyousystem.jp/mail_magazine.html から
配信停止を行って下さい。


社会保険労務士法人
雇用システム研究所
雇用システム研究所

〒162-0825
東京都新宿区神楽坂2-13
        末よしビル4階
TEL 03-5206-5991
FAX 03-5206-5990