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育児休職後・時短勤務の処遇に不満を抱く女性社員

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┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
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                              2016/07/01

           http://www.koyousystem.jp
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ひと雨ごとに暑さが加わってまいります。
みなさま、いかがお過ごしですか。

雇用システム研究所メールマガジン第171号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆育児休職後・時短勤務の処遇に不満を抱く女性社員

■本人を説得して職務等級を下げる企業
■時短勤務者の評価を意図的に下げる上司
■モチベーションに影響を与える評価と給与の説明
(以上執筆者 溝上 憲文)

■個別労働紛争解決の施行状況を発表
■相談件数の増加も、助言・指導、あっせんは減少
(以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)

■[編集後記] (編集長 白石 多賀子)

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◆育児休職後・時短勤務の処遇に不満を抱く女性社員

 法定を上回る育児休業期間を設けている企業も少なくないが、最近では1年未
満で復帰する女性社員も多いという話をよく聞く。それに伴い、復帰後に短時間
勤務制度を利用する人も増えているようだ。

 その一方で時短勤務の人事評価や給与を巡る不満が増えているという。消費財
メーカーの人事担当者は「時短勤務になって評価が下がり、給与も下がったとい
う声が多い。本来は上司がその理由をちゃんと説明するべきだが、事前の説明は
何もなかったと言う。
そのため『私が育児休業をとったせいなのか』とか
『復帰しても週に3回は保育園の迎えのために6時に会社を出ているせいなの
か』と勝手に思ってしまう人が少なくない」と語る。



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■■■ 本人を説得して職務等級を下げる企業 ■■■
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 もちろん、育児休業後に給与を引き下げるなどの不利益な取扱いは違法であ
る。にもかかわらず、最近ようやく制度を変更した会社もある。ゲーム開発会社
の人事担当者はこう語る。

「実は以前は休職期間中の人事評価は最低の評価にすることにしていました。な
ぜなら仕事をしていないし、何も貢献していないからという理由ですが、うちは
最低評価だと減給になる。変更のきっかけは同期のトップを走っていた女性が出
産・育休前に25万円の基本給でしたが、1年休職していたために最低評価によっ
て23万円に下がってしまった。法律にも触れるし、彼女自身も同期にも給与も追
いつけなくなるし、モチベーションも上がりません。そのため休職期間中は標準
の評価をつけるようにして基本給が変わらないようにしました」

 実は産休・育休後の短時間勤務や定時退社勤務に変わると、職務等級を格下げ
し、給与を下げることも起きている。もちろん不利益変更になる可能性がある
が、本人を説得する形で行われているという。

 外資系製薬会社の人事担当者がその手口をこう語る。
「産休・育休明けに定時退社する女性も多いですが、それを理由に、以前の等級
を下げるなどして給与を下げるのは法律的に問題です。しかし上司の中には
『君はマネージャーだけど、部下の労務管理や成果の管理もしないといけないよ
ね。でも残業しないから就業時間内しか管理できないし、それってどうなのか
な、ちょっと厳しいよね』とやんわり説得する人もいます。
そう言われれば本人も納得せざるをえない。そして部下なしの専門課長に据え
て、職務等級を1ランク下
げることをやっています」

 いったん職務等級を下げると時短勤務のままでは昇給することは難しくなる。
フルタイム勤務の同期との昇級格差が拡大し、本人のモチベーションにも影響す
るだろう。


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■■■ 時短勤務者の評価を意図的に下げる上司 ■■■
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 時短勤務者の場合はノーワークノーペイの原則に基づき、短縮時間分の給与が
減るのは致し方のないことだ。だが、中には時短勤務者の昇給評価を下げる管理
職もいる。

 IT企業の人事担当者はその実態をこう明かす。
「短時間勤務の社員がいれば、その人が会社にいる時間帯に会議を設定すること
が多いですが、それでも時間が限られる。また、上司としては働く時間が少ない
という理由で責任の重い仕事もやらせない人もいます。結果的に以前に比べて評
価を下げることになり、標準以下の評価点になり、昇給しない人もいます」

 また、顧客対応で時間の不規則な営業職になると、子育てのために残業せずに
定時退社する女性も少なくないが、評価の仕方は上司によって違うという。食品
会社の人事担当者はこう語る。

「外回りの顧客営業ができないので内勤をやってもらう代わりに、評価を下げて
昇給しなくなった女性もいます。一方、別の上司は内勤業務でも他の営業職の事
務処理業務や部下の指導を担当してもらい、以前と変わらない評価をして、昇給
している人もいます」

 本来はこうした評価のやり方の違いやそれに伴う給与の変動は人事部が指針や
方向性を示し、チェックすべきだろうが、現場任せにしている企業もあるようだ。


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■■■ モチベーションに影響を与える評価と給与の説明 ■■■
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 一般的に2時間短縮の時短勤務者は本来受け取るべき給与の8分の6になる。
それに昇級評価が加わり、支給額が変化する。外資系製薬会社では年収のベース
サラリーが500万円の場合、評価結果に基づく昇給率が2%だと、フルタイム勤
務者は年間で10万円昇級することになるが、時短勤務者の場合は年間の短縮時間
分を計算して減額しているという。仮に8分の6とすれば昇給額は7万5000円に
なる。

 同社の人事担当者は「与える目標が低いから評価を下げて昇給額を下げるので
はなく、成果を出すための時間に限りがある。成果を出してもフルタイムの人と
限られた時間で働く人と差をつけないとフェアではないという理屈です。これを
説明すればほとんどの人に納得してもらえる」と語る。

 しかし、評価の結果のフィードバックを含めてこうした賃金の仕組みを部下に
説明できる上司は少ないと指摘する。

「多くの会社では上司が人事・賃金制度の仕組みをわかっていない人が多いので
はないでしょうか。部下にどういう評価をつければどれぐらい昇給し、あるいは
下がるのかというイメージもできていないし、それを知ろうとは思わない。本来
は上司がそこまで考えて、評価結果を丁寧に説明してやれば、他の人との違いを
納得してもらえると思います。ところが何も言わずに評価結果を示すだけという
上司では不満を持つ時短勤務者は減らないでしょう」

 給与が減らされる時短勤務者ほど給与と評価に敏感だ。納得のいく説明がな
く、無理解のままでは仕事に対する意欲も失ってしまかねない。女性を戦力化
し、活躍を期待したいのであれば、評価制度に対する上司の理解度を高めること
が不可欠である。                    (溝上 憲文)



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■■■ 個別労働紛争解決の施行状況を発表 ■■■
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 平成27年度の個別労働紛争解決制度の施行状況がまとまり、厚生労働省が6月8
日に発表した。4月1日から窓口となる厚生労働省の所掌課が、大臣官房地方課か
ら労働基準局労働条件政策課労働紛争業務処理室に替わり、地方労働局において
も、総務部企画室と労働基準部労働時間課と雇用均等室の合併による雇用環境・
均等部(室)となり、総合労働相談は指導課、均等法、育介法などの相談は雇用
均等・両立支援部門が担当し、制度運用に新しい視点を導入することになった。

 全国における電話相談、面談による労働相談に対応するのは、都道府県労働
局、各労働基準監督署内、駅近隣の建物(東京都の場合は有楽町の交通会館内)
など381ヵ所の総合労働相談コーナーに749人(東京労働局は90人強)の総合労働
相談員を配置し、各相談員が相談件数を集計し、各労働基準監督署、都道府県労
働局経由で厚生労働省に報告される。

総合労働相談員は非常勤職員なので、相談者が一度に多数来署する場合、一斉に
電話がかかる場合は、労働基準監督官が対応することになる。来署相談について
は1件について1枚の相談票が作成され、問題解決あるいは相談中止に到るまで1
枚の相談票において各相談員、労働基準監督官が継続事案として対応する。
電話相談の場合は、相談内容が逼迫している相談者、近々に来署が予想される相
談者以外、相談内容は各相談員が集計するが、
1件の相談内容が複数項目、例えば割増賃金が支払われないために使用者に指摘
したところ、その後いじめ・嫌がらせに遭い、退職勧奨を経て不本意な退職(有
期労働契約者の場合は雇止め)に追い込まれたとする場合、1件の中に、長時間
労働、割増賃金不払い、いじめ・嫌がらせ、退職勧奨、不当解雇あるいは雇止め
と5件の総合労働相談件数が発生することになる。

 このうち、長時間労働、割増賃金不払い、不当解雇・雇止めの場合で通告後30
日を経過していない場合は解雇予告手当の発生の3件は労働基準法違反の疑いで
対応することになり、相談者からの申告受理、その後の行政指導は労働基準監督
官が行う。いじめ・嫌がらせ、退職勧奨、不当解雇あるいは雇止めの疑い、長時
間労働によるうつ病等の精神疾患の発症の可能性などが、いわゆる民事上の個別
労働紛争相談となり、相談者が総合労働相談員に紛争当事者に解決の方向を示す
助言・指導、紛争当事者間に第三者である紛争調整委員が介入して話し合いを促
進するあっせんの依頼を申請した場合に受理し、都道府県労働局で対応する。も
ちろん相談当事者は労働者だけでなく使用者からの相談も集計される(今回の集
計では、使用者からの相談は全相談の28%、民事上の相談の約10%)。


 以上の前提の下で集計結果を掲載する。


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■■■ 相談件数の増加も、助言・指導、あっせんは減少 ■■■
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 全国381ヵ所の総合労働相談コーナーにおける平成27年度の総合労働相談件数
は103万4936件で前年度比0.2%増、
うち民事上の個別労働紛争相談件数は24万5125件で同じく2.6%増加した一方で、
助言・指導申出件数は8925件で5.8%減、
あっせん申請件数は4775件で4.7%減となっている。
総合労働相談が増えて個別労働相談が減っている関連について、
「経済状況の良化により助言・指導の申し出、あっせん申請が減少しているので
はないか」(労働紛争処理業務室)と
予測しているが、正確なところは把握できていない。

総合労働相談件数では一人が複数の相談内容を申し出る場合も多く、相談人数を
示すものではなく、助言・指導申出件数とあっせん申請件数がほぼ件数と同じ人
数であることは前記の1枚の相談票の扱いから推計できるが、まれに助言・指導
の結果がおもわしくなく、同じ相談者があっせん申請する場合がある。
厚労省も「相談者の正確な人数は把握していない」としている。

 民事上の個別労働紛争相談の内訳は、「いじめ・嫌がらせ」が6万6566件
(22.4%)、「解雇」が3万7787件(12.7%)、
「自己都合退職」が3万7648件(12.7%)で、
相談した労働者の就業形態は、
正社員が9万2624件(37.8%)、
パート・アルバイトが3万9841件(16.3%)、
期間契約社員が2万5732件(10.5%)、
派遣労働者が1万0549件(4.3%)。

 助言・指導申出では「いじめ・嫌がらせ」が2049件(21.0%)、
「解雇」が1180件(12.1%)、
「自己都合退職」が962件(9.9%)、
「労働条件の引下げ」が804件(8.3%)となっており、
就労形態では、正社員が4219件(47.3%)、
パート・アルバイトが2117件(23.7%)、
期間契約社員が1548件(17.3%)、
派遣労働者が561件(6.3%)。

 あっせん申請内容では、「いじめ・嫌がらせ」が1451件(27.2%)、
「解雇」が1318件(24.7%)、
「雇止め」が493件(9.2%)、
「退職勧奨」368件(6.9%)となっており、
就労形態では正社員が2273件(47.6%)、
パート・アルバイトが950件(19.9%)、
期間契約社員が967件(20.3%)、
派遣労働者が300件(6.3%)であった。

 法的強制力を伴わないあっせんの処理実績は、紛争当事者のどちらか一方が不
参加であった場合は打切りとなるが、紛争当事者の双方が参加してあっせんが開
催されたものは2666件(57.0%)。
そのうち合意が成立したものは1837件(39.3%)であった。

この率が高いか低いかは他の機関(労働委員会、自治体、社会保険労務士会)と
の比較によるしかないが、厚労省の紛争解決制度の運用が平成13年の法制度創設
以来、制度変更は行われず、見直しの時期にきていることは、
同省が「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」にお
いて、制度運用の在り方と、労働基準法改正に向けた解雇金銭解決を法定化する
動きが同時進行していることからも明らかである。

 ちなみに都道府県の運用状況から東京労働局の実績をみると、総合労働相談件
数は12万1601件で全国の11.7%、
個別労働紛争相談件数は2万5337件で10.3%、
助言・指導申出件数が651件で全国の7.3%、
あっせん申請件数が1031件で同じく21.6%。
同じ大都市の大阪労働局は総合労働紛争相談件数は11万0418件で10.7%と東京労
働局とほぼ同じ件数なのに、あっせん件数が408件と全国の8.5%しか計上されて
いない。
東西の地域差については「指摘されたのは初めてで、今後の検討課題にしたい」
としている。どうやら制度創設以来、個別労働紛争解決に関与する全ての組織、
人員に独創性が欠如しつつあるようだ。マンネリ化の排除のため、所轄課の変更
に伴う人心一新、研究会の報告内容を制度見直しに活かすことなどに期待するし
かない。

 最後に関連事案として、報道でも取りあげられたが、東京地裁が株式会社長澤
運輸の正社員の定年退職後の期間1年の嘱託社員採用において、職務内容が定年
前と同一であるのに、異なる賃金体系の下に賃金を約3割減額したことに対し、
労働契約法20条の「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」を定
めていることをもって、定年再雇用賃下げは違法と判決した(被告は控訴)。
判決は原告らが労働条件に同意していることについて
「原告らは、組合を通じて、雇用条件等には同意できないが、雇用契約書を提出
しなければ就労できなくなるのでやむを得ず提出する旨を明らかにしていた」と
して、「原告らが労働条件を理解した上で雇用契約書に署名押印したことをもっ
て、特段の事情があるとは言えない」と述べている。労働契約法20条による
「特段の事情」は個別労働紛争の温床になりかねない。

 また、国際自動車の運転手の歩合制賃金と割増賃金請求については、二人の裁
判長が一次訴訟と二次訴訟で異なる判決を出した。さらに東北大学の非正規教職
員3200人が、2年後の3月31日付けをもって雇止めにすると通告され、集団紛争と
なっている。就業規則の一方的改定により5年の更新上限をかけ、しかも始期を3
年前までさかのぼらせ、2年後の平成30年3月31日から雇止めにしていくという内
容である。改正労働契約法の無期転換ルールへの予防を意図しているが、一方的
な不利益変更と、遡及になりかねない。

 民事上の労働紛争の増加傾向は労働法制の改正と表裏をなす。労働基準法の改
正により、将来、金銭解決による解雇労働者の職場復帰を拒否できることになれ
ば、金額次第によりそこに新たな民事による個別労働紛争を生み出す。労働契約
法、雇用均等法、高年齢者雇用安定法関連、法律による規程がないハラスメント
対応など、使用者にとって難問山積だが、雇用責任でもあり、使用者としての能
力発揮の場でもある。                (津山 勝四郎)



編┃集┃後┃記┃
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 先月24日、英国のEU離脱是非を問う国民投票の結果、離脱支持が全体の過半
数を超え51.9%を占め離脱が決まりました。

 離脱ニュースは全世界を駆け巡り各国で市場が大荒れ、日本では一時1ドル100
円を突破しました。

1円円高が進むだけで日本企業への影響は、営業利益ベースでトヨタが400億
円、日産が140億円のマイナスになるとのことです。

 2008年の金融危機「リーマンショック」と状況は異なるとのことですが、今後
も円高が進むと輸出企業の採算悪化による企業収益や賃金の低下につながる恐れ
があり、消費にも影響が出ます。

 英国内でも再投票や離脱交渉の先送りを求める声、スコットランドの独立問題
等で混乱が広まっている状況です。

 今は、「今後何が起こるかわからない」不安感で先行き不透明な状態です。
暫く様子見となりそうです。
円高の状況が続くと人事労務面でも対策が求められますので、想定シナリオの準
備が必要となります。

間もなく梅雨明けです。猛暑の日々、熱中症等にはお気をつけください。
                                (白石)



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発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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今月のメールマガジン第171号はいかがだったでしょうか。
お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容充実していきたいと思います。
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