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残業時間の削減をいかに進めるか(1)
〜政府の上限規制案に対する企業の反応〜

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┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
┗━━┛                           第180号
                              2017/04/01

           http://www.koyousystem.jp
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春爛漫の美しい季節となりました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。

雇用システム研究所メールマガジン第180号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆残業時間の削減をいかに進めるか(1)

〜政府の上限規制案に対する企業の反応〜

■企業は上限規制による「仕事の積み増し」と「持ち帰り残業」を懸念
■100時間未満は「長すぎる」「短すぎる」の異なる声
■残業削減のしわ寄せが管理職にいくことを懸念
(以上執筆者 溝上 憲文)


◆働き方改革実行計画の策定

■働き方改革実現会議の終了
■働き方改革実行計画の意義
■長時間労働の是正
(以上執筆者 北浦 正行)

■[編集後記] (編集長 白石 多賀子)

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◆残業時間の削減をいかに進めるか(1)

〜政府の上限規制案に対する企業の反応〜

 政府の「働き方改革実行計画」に時間外労働の上限規制が盛り込まれた。現行
の労使で結ぶ協定(36<サブロク>協定)の限度基準告示である月45時間、かつ
年間360時間を法律に明記し、これを超えた場合は罰則を課す。

 さらに特例として労使協定を前提に年間の残業時間の上限を720時間(月平均
60時間)とする。その範囲内で月45時間を超えるのは6ヶ月までとし、繁忙期は
「2〜6ヶ月の平均で80時間を超えない」かつ「きわめて忙しい1ヶ月の上限は
100時間未満」とする歯止めをかけることになった。

 つまり残業時間が年間720時間を超えた場合に限らず、
1ヶ月100時間超、2ヶ月や3ヶ月平均でも80時間を社員が1人でも超えた場
合、確実に摘発・送検される絶対的な上限規制になる。



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■■■ 企業は上限規制による「仕事の積み増し」と
                「持ち帰り残業」を懸念 ■■■
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 上限規制の趣旨は労働者の健康確保にあるが、企業にとっては摘発・送検され
ると、公共事業の発注中止に追い込まれるなど社会的信用を失うだけに絶対に避
けたいところだろう。そのため残業規制をより一層厳しくしようとするが、その
結果、別の影響も懸念される。建設関連企業の人事担当者は「上限規制で残業制
限を厳しくすれば、社員は陰に隠れて早出してやるとか、家に持ち帰ってやるな
どサービス残業をやってしまう社員も出てくるかもしれない」と不安がる。

 東京商工リサーチが企業に対して実施した「『長時間労働』に関するアンケー
ト調査」(2017年3月10日)では「残業時間の上限が決まり、現在より労働時間
が短縮する場合に予想される影響とは何か」を聞いている(複数回答)。大企業
では、トップの「仕事の積み増しが発生する(31%)」に続いて「持ち帰り残業
が行われる懸念(16.7%)」が挙がっている。そのほか「従業員の賃金低下
(11.1%)」にも影響すると回答している。

 これは残業時間が減れば、仕事の積み増しが発生する。その分を持ち帰り残業
というサービス残業でカバーするが、残業代が出ないので社員の給与が減る――と
いうふうになると解釈できる。もし予想通りになれば“ヤミ残業”が横行し、心身
もへとへとになるという健康確保とは眞逆の結果になりかねない。


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■■■ 100時間未満は「長すぎる」「短すぎる」の異なる声 ■■■
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 日本に罰則付きの絶対的上限規制が設けられることは画期的なことだが、企業
の人事担当者はどのように受け止めているのか聞いてみた。

 ネット広告業の人事部長は「これまで社内の働き方の見直しを実施して社員の
月平均残業時間を45時間程度に減らすことができた。それでも60時間を超える社
員もいるが、最大80時間であればなんとかクリアできると思う。また、今回の政
府案は単月最大100時間未満まで認めているが、これでは何のための上限規制か
わからなくなる。国が絶対にやらなければいけないのは健康管理のはず。その意
味では過労死が発生しかねない100時間を認めるのはおかしい」と指摘する。

 逆に上限規制に危機感を募らせるのはゲーム関連会社の人事課長だ。
「うちも様々な残業削減策を講じているが、ゲームクリエイターの中には帰れと
言っても帰らない社員も少なくない。それだけ仕事が楽しくてしょうがないとい
うことだ。自宅でも寝ないで平気で仕事に没頭する社員もいるし、人事が注意す
ると『好きで仕事をやっているんだからほっといてくれ、倒れそうになったら自
分で休むから大丈夫だ』と反発してくる。法律が施行されたら立件される恐れが
あり、なんとかしないといけないが、できれば職種による適用除外を検討してほ
しいものだ」


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■■■ 残業削減のしわ寄せが管理職にいくことを懸念 ■■■
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 建設業の人事課長は今回、月最大100時間、2カ月平均80時間が認められたこ
とで何とかクリアできそうだと言う。

「以前は80時間、100時間超えの社員は珍しくなかった。現在では社員の月平均
残業時間を45時間程度にまで下げたが、繁忙期があるうえに、取引先との関係で
どうしても突発的な仕事も発生する。政府案は妥当な線ではないかと思う。だ
が、同業他社や知っている企業では80時間を超える社員が多く、時短に苦労して
いるところもある。仮に法律が施行されたら非管理職は60時間を限度に仕事をさ
せるとしても、残った作業を時間管理が適用除外されている管理職が担うことに
なると言っていた。そうなると一番働いている管理職の負担がより重くなるかも
しれない」

 企業の反応は様々だが、最大の問題は前述の建設関連企業の人事担当者が危惧
するように上限規制に対応して残業規制を厳しくしても、サービス残業が横行
し、結果として総労働時間が変わらなくなることは避けたいところだ。形式的な
「ノー残業デー」「定時退社」のみを実施しても“隠れ残業”が横行することになる。

 政府が実施する残業時間の上限規制はあくまでも企業が長時間労働を是正する
ための誘導策にすぎない。それに実効性を持たせるかどうかは、企業自身の取り
組みにかかっている。具体的には、経営主導による全社的な職場・個人単位の業
務プロセスや業務量の見直しによる仕事の効率化を進めるなど地道な取り組みが
必要になる。次回からは企業の残業削減に向けた具体的取り組みについて紹介し
たい。                          (溝上 憲文)



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◆働き方改革実行計画の策定

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■■■ 働き方改革実現会議の終了 ■■■
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 働き方改革実現会議は、3月28日に会合を開き「働き方改革実行計画」を決定
して議論を終了した。昨年の9月に設置され10回の会合が開催され、最終局面で
の時間外労働の上限規制をめぐる議論など官邸主導のもとに総理のイニシアティ
ブが強く働いた運営がなされてきた。

この決定された「働き方改革実行計画」は、そのまま効力を持つわけでなく、す
べて厚生労働省をはじめ関係省庁における具体化の手続きを経て実行に移され
る。とりわけ同一労働同一賃金や時間外労働規制などは、労基法などの改正を必
要とするものは、労働政策審議会での第2ステージでの議論に移行する。
したがって、これまでのような大枠の議論ではなく、公労使という三者構成の場
における利害調整の作業を精密に行う必要があり、
まだ時間がかかることが予想される。

 同計画には、本文のほかに詳細な工程表が示されており、それによれば焦点と
なる同一労働同一賃金や時間外労働規制の問題については、2017年度に労働基準
法改正など関係法案の提出までは明記されているが、具体的な施行時期はこれか
らの問題として残されている。もちろん、総理主催の下での決定事項という意味
合いは重く、行政主導ではなかなか進みがたい問題について、世論喚起も図りな
がら決着をつけていこうという姿勢は成功したと言える。しかし、これらの早急
な法案化という指示も出ているが、計画が決定されたからすべて即実行というわ
けには行かない。

 今後は「働き方改革フォローアップ会合」を開催していくという手法も、これ
までと同様であり、それを通じて関係省庁の政策実行をチェックしていくことと
なっている。ただ、具体的な施策の実行状況の報告はあっても、その内容につい
ての審議を行う場とはなり得ないであろう。また、法案については、現に提出済
みの労基法の改正も進んでいないように政治情勢によって大きく左右される可能
性も考慮せざるを得ない。恐らく、同一労働同一賃金や時間外労働規制のように
大きくクローズアップされた問題については、その帰趨が強く意識されるであろ
うが、その他は関係省庁の所管の事項として委ねられていくのではないだろうか。


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■■■ 働き方改革実行計画の意義 ■■■
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 「働き方改革」はだれのために行うのか。実はこの問題が難しい。

当然、働く人のためだと誰しも思うであろう。この働き方改革は、新3本の矢で
は、「働き方改革による労働参加率の向上、イノベーションによる生産性向上」
という形で、「希望を生み出す強い経済」という「新・第1の矢」に位置付けら
れている。すなわち、GDP600兆円という目標に向けた経済政策的色彩が強い。
そうした目で読むと、賃金引上げや非正規労働者の処遇改善は雇用者所得の増
加、若者・女性・高齢者・外国人は労働力供給の増加と質向上、転職や副業等の
支援は労働移動の円滑化といったように、各項目は一つの流れに沿っているよう
にも思われる。

 会議の構成員も各界の代表という形で選定されたため、労使の代表は少数であ
る。しかし、最終局面の時間外労働規制で問題になったように、労働条件に関わ
ることは当事者である労使間の議論という枠組みでないと結論が出せない。その
意味では、働く現場での実態を踏まえた議論への展開は今後の課題となっている
といえよう。もちろん、前述の工程表には
「働く人の視点に立った課題」という整理がなされている。

 しかし、これは必ずしも労働の実態と問題点の分析を行ったものではなく、ま
ず対策の方向があって、それを根拠づけるような事実を列挙したような形にとど
まるのが残念だ。

 実は、「計画」とは言っているが、かつての政府計画との違いはここにある。
今回取り上げられた9つの検討事項も、廃止された経済計画や雇用対策基本計画
があれば、そういう場での議論になったであろう。その際には、経済や雇用の展
望を描くとともに、関係の白書での分析等を踏まえた問題点整理という作業が前
提となっていた。経済成長率や失業率などの目標数字を掲げることにより、各政
策間の整合性や実効性も論議されるような仕組みであった。

 もちろん、長時間労働や非正規労働者のように社会問題化した事項をクローズ
アップさせて、その解決の処方箋を速やかに示すという成果は大きい。

 ただ、長時間労働が是正されることが他の項目の課題解決にどのように連鎖す
るのか、全体として相互に矛盾する課題はないのかなどの吟味はむしろこれから
ではないか。例えば、副業・兼業の推進という項目があるが、その副業・兼業の
捉え方によっては、むしろ長時間労働を助長している形にもなってしまう。

 転職や自立というキャリア選択を円滑に行うためのプロセスに、副業や兼職が
有効に作用することは指摘されており、そうした志向を持つ者にとっては、その
環境づくりを進めることはよい。しかし一方においては、所得収入が低い者が生
計補助のためにやむを得ず行うような副業や兼職も実態としてあり、企業が時短
を進めても、個人としての就業時間は長いということも考える必要がある。


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■■■ 長時間労働の是正 ■■■
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 9つの項目の中で、もっとも働く人の視点が色濃く出たのは、長時間労働是正
の問題である。時間外労働の上限規制が青天井になることへの批判はかねてより
あったが、なかなか手を付けられなかったことも事実である。
単月100時間という上限の高さは最後まで労働側のからの反発があったが、とも
かく法律レベルに規制を引き上げ、罰則も強化したことは相当のインパクトを与
えることは間違いない。
自動車運転や建設などにも適用除外を認めず猶予期間の設定で決着させたことも
総理のイニシアティブが強く効いたことも評価できる。過労死問題やいわゆるブ
ラック企業問題などが背景となって強力に進んだともいえるが、労働時間に天井
があることをはっきりと認識させた効果は大きいであろう。

 すでに建設業界をはじめ、労働時間対策が経営課題としても今後の大きなテー
マとなってきている。コンプライアンスの主要事項として位置づけられること
で、企業評価に関わるだけに経営トップの関心も強まるであろう。しかし、問題
はその実効性をどのように担保するかという点である。生産性の向上が前提とさ
れるが、その方策は何か。生産性といっても時間だけを短縮して過密な労働をつ
くり出す形となってはいけない。宅配業界のように、労働時間を減らすなら業務
量の削減そのものにも手をつけなくてはならないということも出始めた。

 売上高や収入を落とすことなく労働投入量をどう引き下げるかという難しい問
題の解決が急がれる。労働投入量は人員×労働時間であるから、その両方のファ
クターが限界に来ているという認識が必要なのである。労働力不足がさらに深刻
化していく中で、時短による要員の振り替えを探し出すことは難しくなってき
た。だから外国人労働力の導入という声も強まるであろう。その一方、AI、ロ
ボット、IoTなど新技術革新による生産性向上への期待も強まっているが、その
実用化に時間がかかることや高コストであることがネックとなっている。それが
故に、製造業でのムダ取り手法や生産管理技法の経験を活かした業務改善が差し
当たりの焦点となるであろう。

 しかし、長時間労働の是正の問題は時間外労働規制だけで解決するものではな
い。一つには、年次有給休暇など休暇取得の奨励も大きな課題であることも忘れ
てはならない。特に業務量に繁閑がある場合には、繁忙期においては休暇取得や
今回提起された勤務間インターバルなどによって全体としての適正な労働時間の
姿を作る努力も必要だろう。さらには、単純な時間制限でなく、年次有給休暇の
時間取得、フレックスタイムや出退勤時間の変則化など多様な対応と合わせて考
えるべきである。その意味で、継続審議中の労基法改正案と今回の計画に盛り込
まれた事項とを含めた総合的な労働時間対策の姿を早急に描くことが重要ではな
いか。要は、長時間労働の問題は残業規制だけの対応ではなく、労働時間制度の
柔軟化・多様化、更にはその裏質としての業務改革とワンセットで検討していく
ことである。                      (北浦 正行)



編┃集┃後┃記┃
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 桜の開花宣言後に真冬の寒さとなり、例年より満開が遅れています。

先月20日、国連が「世界幸福度報告書2017」を公表しました。
調査対象155カ国中、最も幸せな国はノルウェー、最も幸せでない国は中央ア
フリカです。そして日本は51位です。
上位5カ国のうち4カ国が北欧諸国で、社会福祉や自由の度合いなど幸福に資す
る主な要因のすべてで高評価とのことです。

 先月28日、政府は働き方改革実現会議で、9分野における改革の方向性の実
行計画を発表しました。
働き方改革の実現の結果、生産性向上や成長底上げを掲げています。
例えば、働き方改革を実施する場合には、仕事の質の見直しも同時に行わない限
り生産性向上には結びつきません。
今後、働き方改革を実施する企業は、“成果に結びつく仕事の質”が連動している
ことを認識して取り組んでいただきたいです。        (白石)



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発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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お楽しみいただければ幸いです。
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