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残業時間の削減をいかに進めるか(2)
〜企業各社の長時間労働対策の取り組み〜

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┏━━┓    
┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
┗━━┛                           第181号
                              2017/05/01

           http://www.koyousystem.jp
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緑がまぶしく日中は汗ばむような季節となりました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。

雇用システム研究所メールマガジン第181号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆残業時間の削減をいかに進めるか(2)

〜企業各社の長時間労働対策の取り組み〜

■部署別労働時間を一覧表にして経営会議に提出
■個人の仕事ぶりを観察し、仕事量を調整する
■個人別残業時間を公開し、ヒアリングで是正を促す
(以上執筆者 溝上 憲文)


◆新外国人技能実習制度のスタート

■高まる外国人労働力への関心
■外国人技能実習機構の発足
■焦点となる技能実習3号の創設
■介護職種の技能実習生受入れ
(以上執筆者 北浦 正行)

■[編集後記] (編集長 白石 多賀子)

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◆残業時間の削減をいかに進めるか(2)

〜企業各社の長時間労働対策の取り組み〜

 官民を挙げた働き方改革が進んでいる。とくに長時間労働の是正はどの企業に
も共通した課題だろう。しかし組織や社員に染みついた長時間労働体質を払拭す
るのは容易ではない。

 経営主導による全社的な職場・個人単位の業務プロセスや業務量の見直しによ
る仕事の効率化を進めるなど地道な取り組みが必要になる。実際にどのようにし
て残業削減に取り組んだのか企業3者の取り組みを紹介したい。



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■■■ 部署別労働時間を一覧表にして経営会議に提出 ■■■
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 住宅設備メーカーでは2005年頃から業務プロセスの見直しを含む残業削減の努
力を続けてきた。かつては月の残業時間が80時間を超えるのは当たり前の世界
だったという。同社の人事担当者はこう語る。

「残業は当たり前で、役員の中には『何が残業するなだ。長時間労働は当たり前
じゃないか、それを前提に事業計画が成り立っているんだよ』と広言する人もい
ました。さすがに社長に『何を言っているんですか、コンプライアンスを無視し
てビジネスは成り立たない』ときつく叱られました。
それ以来、トップ主導で改革を進めました」

 業務プロセス改革では仕事の配分する管理職の自覚を促すための研修を今も実
施している。

「能力のある人に仕事が集中する傾向があるが、そうではなく部下の育成の観点
から仕事を与えるのが管理職の責任と役割であることを認識してもらうこと。
それから決めるべきことを決めないムダな会議を減らし、会議の出席者も減ら
す。また会議が増えるほど資料も増えます。会議の前にこんな質問されたら困る
ということで女性社員を巻き込んで夜中まで資料づくりをすることになります。
こうしたムダな作業を極力減らす活動も展開しました」(人事担当者)

 一方人事部では各事業部の部署別の毎月の労働時間を厳しくチェックし、それ
を一覧表にして経営会議に提出した。事業部の責任者が集まっている席でどの部
署の労働時間が長いのかが一目瞭然となる。経営陣からどうして長いのかと質問
を受けることもあり、事業部長に部内の改革を促す契機となっている。
こうした積み重ねの結果、現在の月の平均残業時間は40時間ぐらいに収まってい
るという。



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■■■ 個人の仕事ぶりを観察し、仕事量を調整する ■■■
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 同様に経営トップが旗を振り、全社の残業時間の削減に取り組んだのが大手ア
ウトソーシング会社である。4年前は残業時間が月80時間を超える社員も珍しく
なかったが、取り組み開始以降「この2年で全社の月平均残業時間が45時間から
35時間に減った。今がベストな状況」(同社人事担当者)にまで至った。

 同社がとった手法も住宅設備メーカーと同じ残業時間の
“見える化”と部署別管理だ。

「部門ごとに残業削減対策を推進し、その実績を毎月経営会議で報告します。会
社全体の残業時間の推移、部門ごとの実績のほか部門長の名前も明示します。部
門長は他の部署より残業時間が多ければ部署に持ち帰り、課長など管理職と協議
して改善を進めることになります」(人事担当者)

 だが会社や部門の平均残業時間が下がっても、36協定の上限時間を超える社員
が発生すれば法的リスクを伴う。そのため人事が主体となって個人別管理も実施
した。

「例えばある年度の目標として月の残業時間45時間を6回超えてはならないとい
う目標を設定しました。5回に達した社員については所属長に連絡し
『あなたの課のAさんはあと1回で6回ですからね』と注意を促します。
さらに本人の仕事ぶりを観察し、仕事量が多すぎる場合は他の人に仕事を任せる
か、人を入れ替えることを考えるように指示します」(人事担当者)

 もちろん働き方改革も同時進行で実施した。在宅勤務やフレックスタイムのほ
か「例えばクライアント先の業務開始が10時であれば、今まで9時に行くように
していたが、10時前に行くように工夫するなど労働時間の効率化も推進した」と
言う。




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■■■ 個人別残業時間を公開し、ヒアリングで是正を促す ■■■
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 一方、建築設計業では労働時間の短縮と並行して長時間残業している社員の働
き方の見直しも実施している。同社は専門業務型裁量労働制の社員も多い。

 人事担当者は「裁量労働手当として月30時間分を支払っていますが、会社とし
ても30時間を目標に労働時間の管理と仕事の配分などを決めています。しかし中
には60時間に達する社員も出てきます。例えばその社員が取引先に出向く時間が
多ければ、会社に残り、他の社員が取引先に行くように指示して30時間に戻すよ
うにしています」と語る。

 同社も先の2社と同様に労働時間の“見える化”を実施している。部門別、個人
別の残業時間の実態を人事部が経営会議で報告し、改善を促す。同時に残業時間
の多い社員については個人別にヒアリングし、改善を促している。

 ところで残業時間の多い社員はほぼ固定化されてくるというが、その特徴につ
いて人事担当者はこう語る。

「優秀で成果も出している社員が1割ぐらいいますが、3割は成果も出せないで
ダラダラと非効率な仕事をしている社員です。そういう人に同じ仕事をさせてい
たら必ず残業するので、いつか36協定の上限を超えるなど法的リスクを冒す危険
もあります。そのために今の仕事をさせないようにする、場合によっては配置転
換して残業がない部署に異動させるようにしています」

 確かに1人でも協定の上限を上回る社員が出れば労基署の臨検や是正勧告を受
けるリスクもある。会社全体の平均残業時間を減らすと同時に残業常習社員の対
策も並行して進める必要があるだろう。          (溝上 憲文)



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◆新外国人技能実習制度のスタート

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■■■ 高まる外国人労働力への関心 ■■■
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 有効求人倍率がバブル期以来の高水準になるなど、労働力不足の傾向は一層強
まってきている。景気も安定してきており、労働力需給はひっ迫の様相を強める
ことも必至だ。その背景には、需要面だけでなく生産年齢人口の減少によって労
働力供給そのものの増加が難しくなってきたことが大きい。

 そのため、労働力として外国人に対する関心が高まっており、今回の「働き方
改革推進会議」においても、当初は主要議題にという動きもあった。しかし、同
一労働同一賃金や長時間労働改善といった大きな問題に論議が集中したため、前
面には出てこなかった。報告においても、以下のような取りまとめであり、おお
むね既定方針の確認である。

「専門的・技術的分野の外国人材については、我が国の経済社会の活性化に資す
ることから、積極的に受け入れることが重要。 他方、専門的・技術的分野とは
評価されない分野の外国人材の受入れについては、ニーズの把握や経済的効果の
検証だけでなく、日本人の雇用への影響、産業構造への影響、教育、社会保障等
の社会的コスト、治安など幅広い観点から、国民的コンセンサスを踏まえつつ検
討を進める。」

 要するに、専門人材の積極的な受け入れがメインであり、更に在留資格を大幅
に広げることについては慎重な姿勢であることは変わりない。自民党内には、中
間的な技能労働者までも受け入れていくべきという議論も強いというが、このス
タンスを変えることには抵抗が大きい。もちろん、経済特区を使って実質的に開
放していくという考え方もあるようだが、全面的に行うには上記に示されたよう
な広範な角度で議論が必要だ。ことに、わが国だけでなく、世界的にも移民問題
に対して保守的な意見が強まっている情勢でもある。

 そうした中で、専門人材以外で技能労働者受け入れが認められてきた方途は、
平成28年6月で約21万人が在留している外国人技能実習生に焦点が当てられ
よう。もとより、外国人技能実習制度は、開発途上国等の外国人を技能移転とい
う趣旨の下で受け入れる国際貢献の仕組みだ。ただ、在留期間において、実際に
就労しながらOJTで技能習得する形は、我が国の未熟練労働者を雇用して育成す
るのと同じような意味合いを持つ。そのため、中小企業等の不足する人材確保の
手段の一つという側面も持ち合わせる。



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■■■ 外国人技能実習機構の発足 ■■■
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 改正外国人技能実習法は昨年成立したが、その施行には
「外国人技能実習機構」という厚生労働省と法務省が所管する認可法人の成立が
不可欠であった。
それが、本年2月に設立登記され、本部はもちろん、全国13か所の地方事務所・
支所(札幌、仙台、水戸、東京、名古屋、富山、長野、大阪、広島、高松、松
山、福岡、熊本)もすべて開設された。4月7日には改正法の政省令も公布され
て、業務体制は整ってきた。機構の発足以外の改正法の内容は,11月からの施行
となっているが、まず制度の根幹をなす監理団体の許可も6月1日から受け付けが
始まることになっている。

 外国人技能実習法の改正は、監理団体や実習実施者の義務・責任 が不明確で
あり,実習体制が不十分、民間機関である(公財)国際研修協力機構が、法的権限
がないまま巡回指導、実習生の保護体制が不十分などといった制度に対する批判
への対応を図ったものである。その要は、これらの外国人技能実習制度の適正な
実施と技能実習生の保護を図ることを目的として、監理団体については許可制、
実習実施者については届出制とし、技能実習計画は個々に認定制とすることであ
る。新機構(理事長は弁護士)はその任に当たる中核的な存在となっている。



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■■■ 焦点となる技能実習3号の創設 ■■■
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 改正法の中で注目されているのが、技能実習の在留期間の延長となる技能実習
3号の創設である。技能実習2号が終了した後、1か月以上一旦帰国し、再来日
したら技能実習3号として2年間の在留期間が認められる。合計で5年間という
技能実習は、終了時に技能検定2級程度の能力形成が期待されており、受け入れ
企業としてもその間の就労は貴重な戦力という意味合いを持つだろう。また、実
習生本人も本国を離れる期間は長くなるが、実践的な能力開発と合わせ一定の収
入確保はメリットとなっていると考えられる。

 新制度では、節目ごとに能力習得の確認を行うことを義務付けている。
2年目の技能実習2号への移行の際には基礎2級の試験(学科及び実技、現在も
義務)、技能実習3号への移行に当たっては3級の試験(実技)とその終了時に
2級の試験(実技)が新たに義務付けられた。技能検定3級は、我が国でも高校
卒で就職する際の標準的な技能水準と考えられており、その意味では新卒者と同
水準ないしそれ以上の技能習得が予定される。そのため、今回は、実習計画が認
定制となり厳しくチェックされることとなった。

 また、第3号技能実習生の受入れは、優良な実習実施者と監理団体に限定して
認められることとになっている。優良な実習実施者と監理団体となれば、受入れ
人数枠も2倍になるが,その優良性の要件は表のようになかなか厳しい。

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(1) 技能との習得に係る実績   技能検定の合格率等
(2) 技能実習を行わせる体制   技能実習指導員等の講習受講歴
(3) 技能実習生の待遇      第1号と最低賃金との比較、昇給
(4) 法令違反・問題の発生状況  改善命令、失踪
(5) 相談・支援体制       母国語での相談等
(6) 地域社会との共生      日本語教育の支援、地域社会との交流
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■■■ 介護職種の技能実習生受入れ ■■■
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 介護職種については、要介護者の増加に伴い、特に労働力不足が深刻になって
いるが、同時に、我が国は高齢化の先進国であり、認知症なども含めその先端的
な介護技術が着目されている。

このため、ヴェトナムなどの送り出し国側の関心は高く、現地にも送り出し機関
が多く設立され日本語教育などの準備が進んできたと報じられている。既にイン
ドネシア、フィリピン、ヴェトナムの3カ国はEPA(経済連携協定)に基づき、
介護福祉士試験受験予定者の受け入れが行われてきており、一定の実績を積んで
いる。

 ただ、介護職種は、これまでの技能実習職種の中にはない、対人サービスであ
るため、特にコミュニケーション技術が重要だとされる。このため、厚生労働省
の「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会」で検討した結果、訪問介護
は対象として認めないこと、日本語能力は2号移行時にN3の水準であることを
要件とすることなどが付加された。
新技能実習法により適正な制度運営が担保できるようになるとともに、これら介
護固有の要件を加えることで、現場の利用者や職員の不安に応えることとしてい
る。現在、「技能実習制度への介護職種の追加に向けた準備会」が医療・介護関
係団体を構成員として開かれ、この介護固有の条件や試験制度等の体制整備につ
いて話し合いが持たれている。

 初めてのサービス関係職種であり、また日本語能力に限らず特にコミュニケー
ション能力が重要なカギを握るため、外国人介護人材の受入れには、期待と懸念
とが入り混じった感想が聞かれる。しかし、日本の介護技術に対する海外の評価
は高く、その移転を図るという観点から言えば、今秋の実施までに内外の関係者
の声も段々強まってくるのではないか。           (北浦 正行)



編┃集┃後┃記┃
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 GWは如何お過ごしでしょうか。

 経済産業省は、企業の経営人材育成状況に関する調査結果を
とりまとめました。

そのうち「5年後に適当な人材が不足する」との回答が3割に達しました。
将来の経営を担う人材育成だけでなく、多方面から人材育成に苦慮している声が
聞こえてきます。
 
 先日、「SPORTSウォッチャー」(テレビ東京)で、巨人坂本勇人選手の2年間
にわたる密着取材が特集で放送されていました。

 その中で、坂本選手の進化の理由は、先輩・後輩の関係なく質問攻めにして自
分の形を作り上げていく姿と、最近の若い選手が先輩に対して質問しないため成
長していくために必要な努力不足への警告を語っていました。

 青山学院大学陸上競技部監督 原 晋氏の
「人を育て 組織を鍛え 成功を呼び込む 成功への哲学157」の中で、
「『自分の頭で考えなければ、成長しない』では、分からないまま、人に質問も
しないまま、分からないことを明日に残す部下は成長しづらい。
自分の頭で考えなければ、成長しないのだ。」

また、長野五輪複合団体5位メンバーの東海大准教授 森 敏氏が、
上達のコツは「観察」と「まね」。
「僕は本能的に『この集団で一番うまいのは誰か』を探すんです。
いくら理論で言われても、やっぱりうまい人をまねるのが基本です。」

人それぞれ技術や知識の習得方法は異なります。
語り手により表現は異なりますが、どの業界等でも基本は同じようです。 
自立できるよう自分で考え行動できる「気づき」を与える
導きが必要のようです。                   (白石)



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発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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今月のメールマガジン第181号はいかがだったでしょうか。
お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容充実していきたいと思います。
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