近江商人「三方よし」の今日的意義
☆雇用システム研究所メールマガジン☆
第34号
2006/12/16
http://www.koyousystem.jp
心せわしい年の瀬を迎える頃となりました。
みなさま、いかがお過ごしですか?
雇用システム研究所メールマガジン第34号をお送りします。
近江商人「三方よし」の今日的意義
今回も引き続き「偽装請負」を考えていきたいと思います。
☆☆ あるべき姿の追求か、現実への適応か ☆☆
前回、《構内請負は今日の企業に必要なのだから、請負と派遣の線引きはもっと緩やかにすべきではないか》との見方があることを紹介しました。
曰く、
「もし請負の制度が無ければ国内の工場は海外にさらに移転していた」というものです。あるべき姿に向かって突き進むのか、必要悪と割り切って現実への円滑な適応を果たすのか----ですが、これは永遠になくならない対立軸です。
しかし、その「必要悪」の割を食うのは現場の請負労働者です。
請負労働者を構成するのは、多くが若者。これから家庭を築き、社会を支えていこうという世代です。彼ら・彼女らをして、キャリアを持てず、貯金もできず、結婚もできず、まして子供など持てない、という状態に追い込んでいるのなら、現状追認では事態はますます深刻になる一方です。
☆☆ 企業よし、消費者よし、現場にしわ寄せ----? ☆☆
近江商人の家訓に、
《売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし」》
という心得があります。商取引たるもの、売り手にとっても、買い手にとっても、そして社会全体にとってもためになるものでなければならない、という教えです。
しかし、今日のわが国は、高まるばかりの消費者の要求に対し、企業が律儀に適応努力を重ね、その緊張は「現場」にもたらされている、というような按配といえます。
いうなれば、企業よし、消費者よし、現場にしわ寄せ----です。これで少子化に拍車がかかっているなら、加えて「将来にツケ回し」です。
現場を軽視する社会は歪であり、決して健全とは言えません。持続可能な社会のあり方とは言えないでしょう…。
☆☆ いろいろあった2006年、現場復権の元年に… ☆☆
ライブドアと村上ファンドの両代表が被告の身となった2006年。
一方は、著書『稼ぐが勝ち』を著し、もう一方は逮捕直前の記者会見で「お金を儲けることはいけないことですか?」との名言(?)を残しました。
儲けるのは悪いことではありません。ただ、自分たちのためだけでなく、現場の働き手も含めた「三方よし」を目指していく必要があるのだと思います。
偽装請負が社会問題化した今年、あとで振り返って「現場復権の元年」であったと振り返りたいものですね。 (福島敏之)
* *
□■ ワンポイント講座
□■ ……………男女雇用機会均等法編……………
均等法が改正されます--その2
前回に引き続き、均等法の改正内容を見ていきましょう。
〈間接差別禁止規定の創設〉
間接差別とは、外見上は性中立的な取り扱いでも、実質的にはどちらかの性に不利益を与えることをいいます。例えば女性を採用・登用しなくても済むよう、女性が満たしにくい要件を課すようなことです。厚生労働省令で定める措置について、業務遂行上の必要など合理的な理由がある場合を除き、間接差別として禁止されます。
今回は、次の3つの措置が定められており、合理的な理由がないと認められる例も示されています。
【1】募集・採用における身長・体重・体力要件
(例)荷物を運搬する業務を内容とする職務ではあるが、運搬等するための設 備、機械等が導入されており、通常の作業において筋力を要さない場合に、一定以上の筋力があることを要件とする場合。
【2】コース別雇用管理制度における総合職の募集・採用に当たっての全国転勤要件
(例)広域にわたり展開する支店、支社等はあるが、異なる地域の支店等で管 理者としての経験を積むこと等が幹部としての能力の育成・確保に特に必要であるとは認められず、かつ、組織運営上、転居を伴う転勤を含む人事ローテーションを行うことが特に必要であるとは認められない場合。
【3】昇進における転勤経験要件
(例)特定の支店の管理職としての職務を遂行する上で、異なる支店での経験が特に必要とは認められない場合において、当該支店の管理職に昇進するに際し、異なる支店における勤務経験を要件とする場合。
もちろん、業務遂行に必要等合理的な理由がある場合にこれらの要件を課すことができないというわけではありません。同じ要件でもA社では合理的な理由となるが、B社では合理的な理由にならない場合があります。 (石橋)
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◆ 編集後記◆
今回の題材の近江商人「三方よし」については、ここ数年"CSR(社会的責任)"関連で大変関心があります。各企業が推進している"CSR"については、欧米から入ってきた考え方で難しいと思いがちですが、この"CSR"の考え方は日本においても既に江戸時代の近江商人「三方よし」の基本理念にあるのです。
こう考えれば、"CSR"も肩肘を張らずにできるところから取り組み、推進できるのではないでしょうか。例えば、企業側が視点をちょっと変えるだけで、労働者が"やる意欲"や"仕事の楽しさ"を感じ、企業の求める仕事を提供できるのではないでしょうか。
今年も残すところ2週間で、ますます慌ただしい日々となりますが、風邪をひきませんようお気を付けください。(白石)
■近江商人とは、
江戸時代、地縁血縁のない他国に出掛けて商売をし、自らの利益のみを追求するのではなく、行った先々の人、地域を大切にすることを心掛けて、商売を継続していました。
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発行者 雇用システム研究所 代表 白石多賀子
東京都新宿区新小川町9番5号畑戸ビル
アドレス:info@koyousystem.jp
今週のメールマガジン第34号はいかがだったでしょうか?
お楽しみいただければ幸いです。来年もさらに内容充実していきたいと思います。
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