生活習慣病対策と企業1
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☆雇用システム研究所メールマガジン☆
第63号
2008/03/01
http://www.koyousystem.jp
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春まだ浅いこの頃
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
雇用システム研究所メールマガジン第63号をお送りします。
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□ 目次
-----生活習慣病対策と企業1-----
◆ シリーズ:今春からの生活習慣病対策、企業はどう向き合う?
1 メタボリックシンドロームって何?
…医療制度改革と生活習慣病予防
◇死の四重奏≠ネる、4つの危険因子
◇突然死や寝たきりの元≠断つ
(以上執筆者 福島敏之)
◆ 「緊急違法派遣一掃プラン」を実施
◆ 成長一途の市場、それだけに野放し
(以上執筆者 津山 勝四郎)
[編集後記](編集長 白石多賀子)
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シリーズ:今春からの生活習慣病対策、企業はどう向き合う?
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ここ数年、きわめて頻繁に使われるようになった言葉の一つに、
「メタボリックシンドローム」 があります。
略して「メタボ」と呼ぶこともありますね。
もう既にTVの各種健康番組とか新聞等でご案内かと思いますが、《内臓脂肪が一定以上たまったことが引き金となって、体の代謝に異常が発生し、動脈硬化を起こしやすくなった状況》のことを指します。
この「メタボ」をめぐって、この4月から新たな仕組みが設けられることとなりました。国の医療費の伸びを抑えるために、今後はもっと「予防」に力を入れていこう、という政策転換なわけですが、実は、これが企業の労働安全衛生や労務管理に微妙に影響してきます。なので、今号から5回程度にわたって、「シリーズ=今春からの生活習慣病対策、企業はどう向き合う?」をお送りしてまいります。
1 メタボリックシンドロームって何?
…医療制度改革と生活習慣病予防
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初回はイントロダクションということで、なぜいま急に「予防」なのか、それほどまでに国の医療費は抜き差しならぬことになっているのか----といったような背景を俯瞰してまいりたいと存じます。
■■■ 死の四重奏≠ネる、4つの危険因子 ■■■
労働安全衛生の世界では、過労死の危険因子として「肥満」「高血圧」「高血糖」「高脂血」が取り上げられてきました。一つひとつのリスクは高くなくとも、合併することでより雪だるま式にリスクが膨張することから、俗に死の四重奏≠ネどと言われたりします。実際、これら4つの危険因子のうち2つを併せ持つ人は、まったく持たない人に比べ、心臓病の発症リスクが10倍近くに、3〜4つ併せ持つ人では31倍にもなることがわかっています。
(2001年4月から、これらの4因子がすべて有所見だった労働者は、労災で二次健診が受けられるようになっています)
■■■ 突然死や寝たきりの元≠断つ ■■■
そして、今日の死因の3割は心筋梗塞や脳卒中などの「循環器系」の疾患です。また、寝たきりになる原因の3割も、同じく「循環器系」。これらは動脈硬化に起因するもので、単純化すればいずれも「メタボ」に端を発していると言えます。
逆にいえば、メタボの段階で状態悪化を防いでおけば、突然死や寝たきりになるのを防げるということです。
国は、そうすることによって医療費や介護費の伸びの抑制を図ろうとしています。2025年の時点で「2兆円」節約する、というのが厚生労働省の目標です。
国の進める医療制度改革では、長期入院の是正や、現役並み所得のある高齢者の負担割合引き上げや、後期高齢者医療制度の創設などが実施されていますが(或いはこれから実施されますが)、そのなかでも最右翼に位置づけられているのが、このメタボ対策=生活習慣病予防です。
* *
とはいえ、これまでにも健診や保健指導は実施されてきていました。とすると、今春からの制度はどこがどう違うのでしょうか?
…詳細は次号以降に譲りますが、一言でいえば「ターゲットを絞り込んで、効果の出る指導方法に変えていく」ということです。いろいろ批判もある制度ではありますが、それらも交えて、次号以降、ご案内してまいりたいと存じます。
(福島敏之)
■■■ 「緊急違法派遣一掃プラン」を実施 ■■■
厚生労働省が法令違反がまかり通っている日雇派遣について、日雇派遣指針の制定を含む労働者派遣法施行規則の改正を行い、緊急違法派遣一掃プランとして4月1日から施行する。
労働者派遣法全体の改正については、周知のごとく今国会での改正が労使の基本的考え方(労働者派遣制度は原則自由であるべきか、本来は限定的なものであるべきか)の違いにより見送られ、同省職業安定局需給調整事業課は学識経験者5人で構成される「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」を立ちあげ、法的、制度的な考え方を集約した上で労働政策審議会で検討し、再び制度改正への議論を行っていく。
今のところ来年の次期通常国会に改正法案が提出される見通しだが、公明党が法改正に強い意欲を持っており、早まることも政局がらみでありうる。
今回見直された日雇派遣指針の見直しは・・・---------------------------
(1)派遣元と派遣先は労働者派遣契約を結ぶ前に、互いに就業条件を確認し、 協力して契約期間を長くする。
(2)同時に契約解除の際には派遣先と派遣元が連携して、就業のあっせん、派遣先の責による解除は新たな就業の確保又は派遣元への損害賠償。
(3)派遣先、派遣元による就業状況の確認、巡回による就業条件の確保。
(4)労働・社会保険の適用促進、などが盛り込まれ、そもそも日雇派遣を行っている派遣元には事業報告書での報告の義務づけ。
もちろん、厚生労働省自らの指導監督の強化は当然のことである。
さらに、派遣法規則の見直しでも、日雇派遣でも派遣先責任者の選任を義務づけ、派遣先管理台帳の作成の義務化として、台帳に従事した業務の種類、従事した事業所名と所在地、などを派遣元に通知しなければならないことも追加した。
■■■ 成長一途の市場、それだけに野放し ■■■
ところで労働者派遣事業は、派遣元事業所数が5万1千所を超え、派遣先事業所は86万所を超えている(平成18年度)。また派遣労働者数も、総数で321万人、このうち登録者数は234万人、常用換算労働者数でも152万人となっており(同年度)、経済規模では、平成18年度の年間売上高は5兆4千億円超で、対前年度比34%増となった成長産業で、産業規模の拡大に行政の指導監督がついていけないのが現状である。
こんな話しがある。
社会保険庁がマイクロフィルム化して管理している厚生年金と船員保険の被保険者台帳からの年金記録の転記作業について、労働者派遣会社と契約して作業を進めているが、契約会社の中に(株)フルキャストが昨年12月7日から今年1月31日まで、466人の登録者に作業を委託していた。この企業は新聞紙上で明らかになったように、社会保険庁と同じ省である地方労働局から違法派遣で業
務停止の処分を受けた企業である。
しかも登録者の中に外国籍を有する派遣労働者が88人おり、案の上、転記ミスが多く、日本人派遣労働者によって誤りの補正を行うという二重手間をかけることになった。もちろん入札・落札時点で派遣元の業務停止期間が切れていることから法令上の問題はなく、日雇派遣として登録した外国人を批判するものでも
ない。要は同じ厚生労働省でありながら、業務停止処分を受けた派遣元を期間があけたからといって、すぐに入札指名するという行政の対応である。落札決定にあたり、派遣事業管轄の需給調整課に問い合わせがあった形跡はない。
指針の見直し、法則の改正はもちろん行う必要がある。問題はその後の指導・監督である。行政側には国全体の定員削減の方針の下で、職業安定行政にしろ、労働基準行政にしろ、人員を増やすことが現実に不可能な時に、少なくとも、縦割行政を1日も早く解消していかなければ、伸び続ける労働派遣市場に行政が青息吐息で追いかけるだけでは、ただでさえ“お行儀が悪い”と言われる業界に
面従腹背を許すことになる。 (津山 勝四郎)
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◆ 編集後記◆
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かつて、「1億総タレント時代」と言われた時代があったことを覚えていますか。今は、「1億総評論家時代」と言えるのではないでしょうか。
「自分なら○○ができる」と自信があるから、他人の言動を批判するのでしょう。例えば、仕事で同僚の言動を批判するからには、彼自身は当然できるのだろうと思って、いざ仕事を与えてみると、何一つできない。そこで、注意すると「親にも叱られたことがないのに、なぜ他人から怒られなくちゃいけないのか・・・」等と言い、自分のしている行為を全く認識できずに、その責任を他人に転嫁したりします。
皆さんの周辺にそんな社員はいませんか。
最近、「自己主張ばかりする社員」や「自分の主張が通らないと会社を飛び出す社員」等の問題社員の相談が増えてきました。こんな社員を「シュガー社員が会社を溶かす」(田北百樹子著:ブックマン社)で取り上げています。
この本によると、「シュガー社員の親の多くは、昭和30年代に生まれた世代で、核家族、少子化時代の初代といえる世代、子供を過大評価する傾向があり、そのような家庭環境で育ったシュガー社員は、『詫びる気持ちや感謝の気持ちよりも、自分の気持ちよさが一番大切で、そのためなら人からどのように思われようと自分の目的を達成させます。』」とのことです。
さらに、親が会社へクレームをつける「ヘリ親(ヘリコプターペアレンツ)」も増殖中のようです。
人事には予測を超える課題が次から次へと発生しています。 (白石)
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発行者 雇用システム研究所 代表 白石多賀子
東京都新宿区新小川町9番5号畑戸ビル
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