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従業員の働きがいと意識改革(3)〜テルモ〜

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┃\/┃    ☆雇用システム研究所メールマガジン☆
┗━━┛                             第87号
                               2009/07/01
           http://www.koyousystem.jp
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  うっとおしい梅雨の季節まっただ中、蒸し暑い日が続きます。
  皆様、いかがお過ごしでしょうか。

  雇用システム研究所メールマガジン第87号をお送りします。  

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  □ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

  ◆従業員の働きがいと意識改革(3)〜テルモ〜

  ■安易に人を切ることは絶対にしない
  ■経営情報の「見える化」を推進
  ■昇格要件は「会社を変えられるのか」

                    (以上執筆者 溝上 憲文)


  ◆急速な雇用状勢悪化に直面する勤労者生活

  ■所得階層の低い世帯ほど高い物価上昇影響
  ■雇用安定のため、職業能力向上と産業、雇用構造の高度化を

                    (以上執筆者 津山 勝四郎)

  ■[編集後記]           (編集長 白石多賀子)

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◆従業員の働きがいと意識改革(3)〜テルモ〜

 正社員のリストラが加速している。

好況期に“社員重視経営”を広言していた多くの経営者が手の平を返したように
コスト削減に血眼になっている。しかし、こうした状況下でも
「社員はコストではなく、企業成長の資産」の考え方を堅持している会社もある。

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 ■■■ 安易に人を切ることは絶対にしない ■■■ 
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 90年代初頭に3期連続の赤字という経営危機に陥った医療機器メーカー大手テルモの和地孝社長(現会長)は当時、こう言って社員を鼓舞した。

<人は資産であってコストではない。どんなに経営が厳しくなっても、
 リストラは最後の手段。安易に人を切ることは絶対にしない>

 リストラの不安に苛まれていた社員は胸をなで下ろすとともに、再建に向けて奮い立ったのはいうまでもない。その後、見事に経営再建を果たしたテルモは14期連続増収、8期連続増益(08年3月期)という偉業を成し遂げることになる。

 しかし、単純に雇用を守るだけで社員が奮起し、会社の成長を促すわけではない。
人を大切にすることは決して甘やかすことではない。テルモは資産を資産たらしめ、その資産を数倍、数十倍の価値に高めるために社員のポテンシャルを絶えず最大限に引き出す活動を実践している。

 同社は社員を「アソシエイト」と呼ぶ。アソシエイトとは「自ら考え自ら行動する主体的な人」という意味だ。指示待ち体質のぶら下がり社員や縦割り組織によるセクショナリズムが横行していた風土を転換するために「会社に帰属する従業員という発想はやめよう。自ら考えて、自ら行動する社員になっていかなければ会社は成長できない」(人事担当者)という理由から生まれたものだ。


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 ■■■ 経営情報の「見える化」を推進 ■■■ 
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 同社ではアソシエイト・スピリッツを浸透させるために、アソシエイトとは何かについて職場単位で徹底的に議論し、認識の共有化を図るとともに、「自ら考え自ら行動する」ことを可能にする組織・職場環境の変革も同時に進めた。その1つが徹底した経営情報の公開と「見える化」の推進だ。

 同社では月初に各職場で「毎月ビデオニュース」を放映する。例えば4半期ごとの決算を経営企画室長が解説する場面や国内の工場や海外の拠点でどういうビジネスがどう展開されているかなどビジネスのトピック情報を20分程度のビデオで流す。本社や営業拠点は会議室、工場は社員食堂に全員が集まって観ながらコミュニケーションをとっている。管理職など一部の層に限られた情報の壁を排除し、なるべくオープンに情報を出すことが狙いだ。

 開かれた風土は人事諸制度においても貫かれている。たとえば自ら手をあげて新たなキャリアにチャレンジする社内公募制もその1つだ。業務の拡大や新規事業などで人材を確保したい部署が募集し、社員は上司や同僚に知られることなく直接人事部に応募するシステム。これまで200人以上の応募者があり、約80人が異動した実績を持つ。加えて08年からBRICsなどの海外駐在員候補生の募集も実施している。基礎的語学力など一定の要件を満たせば部署に関係なく応募でき、あくまで挑戦意欲を重視している。

 また、将来のテルモの経営を担う次世代経営人材の育成コースへの参加も公募制を導入している。グローバル経営人材の育成を目指したLEO(リーダー・エグゼクティブ・オーガニゼーション)セミナー定員は約30人。和地会長自ら塾長を務める。一般的に経営人材の育成は会社や部門の推薦による選抜方式をとる企業が多いが、同社はあくまで「機会の平等」にこだわる。


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 ■■■ 昇格要件は「会社を変えられるのか」 ■■■ 
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 一方、賃金・昇格制度は徹底した能力貢献度主義を貫く。同社の社員区分は大きく一般職(組合員層)、主任格、課長・部長格の3つに分かれ、昇格するには登用試験をパスする必要がある。試験は論文と面接が中心だが、主任格から課長・部長格の場合は、さらにアカウンティングの通信教育修了が要件となる。最も重視しているのは面接であり、面接官は当該部門の役員、人事部長など4人が担当。面接のポイントはずばり「会社を変えられるのかという1点。どんなに真面目にこつこつやっていても期待できない人はだめ」(人事担当者)ということになる。

 ちなみに07年度の主任格の最年少の合格者は30歳、最年長は50歳。課長・部長格の最年少は35歳、最年長は48歳であり、年功序列色は完全に払拭されている。しかも昇格してもその地位は決して安泰ではない。同社の等級は一般職10等級、主任格5等級、課長・部長格4等級に分かれる。そして年1回実施される能力評価が昇給や上の級に進む昇級の是非に反映されるが、評価しだいでは降格の対象になる。

 能力評価の着眼点は
【1】企業立案(企画・構想力等)
【2】実践行動
【3】対人組織(リーダーシップ、人材育成)
【4】自己革新(セルフマネジメント、執着心)――の4つ。

最終的にE(excellent)、H(high)、M(middle)、L(low)、N(No-good)
の5段階で評価される。主任格の場合、2年連続でLの評価がつくか、あるいはN評価が1回でもあると人事部からイエローカードが発行される。さらに翌年も成長が見られずLまたはN評価を受けると降格の対象になる。実際に過去5年間で60人の降格者を出している。

 年齢給的要素を排除し、賃金制度でも完全に年功序列色を払拭している。厳格でメリハリのある成果主義的人事制度は運用によっては社員の離反を招く恐れもある。しかしテルモは導入後9年目を迎えるが、増収体質を維持する一方、社員の離職率はわずかに1・3%(08年)と驚異的な数字を誇る。

 同社流の人材活性化策が奏効した結果でもあるが、それでも満足していない。同社の人事担当者は「まあ、この程度でよいだろうと思った瞬間から、テルモは再び危機に向かうと経営陣は考えている。風土改革に終わりはなく、それを支援する人事制度もその時々の状況に合わせて、常に見直していく必要がある」と手綱を締める。

 さまざまなチャレンジの仕組みを絶えず生み出していく背景には、社員が成長志向を失えば企業も成長しないとの考えが根底にある。人を切らない経営を堅持する一方、資産としての社員の成長を常に促すことで会社の発展を図るという揺るぎない信念こそ重要であることを改めて教えてくれる。            (溝上 憲文)



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◆急速な雇用状勢悪化に直面する勤労者生活 〜

 厚生労働省が「平成21年版労働経済の分析」(雇用の安定を基盤とした安心できる勤労者生活のために)を6月30日の閣議に提出した。


 今年の通称「労働経済白書」は、賃金、物価、雇用の動向と勤労者生活を分析テーマとし、2007年後半から2008年度までの高い物価上昇により、実質所得、消費が停滞し、その後、急速な雇用状勢の悪化に直面している勤労者生活について、消費支出を中心とした内需の動きを賃金、物価をもとに分析し、雇用の安定を基盤に仕事の働きがいを通じて経済・産業活動を活発化させるとともに、経済活動の成果を適切に分配することで、豊かで安心できる勤労者生活を実現できる雇用システムの構築が需要であると結論づけ、取り組むべき課題を提示している。

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 ■■■ 所得階層の低い世帯ほど高い物価上昇影響 ■■■ 
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 賃金と物価の動きをみると、総務省統計局の消費者物価指数を分析し、2008年7月にピークを迎えた消費者物価は勤労者世帯平均で対前年同月比2.3%の上昇となったものの、年間収入の低い方から順に並べ5等分し、収入の低い方から第I、第II、第III、第IV、第V階級とした場合、
第I階級は2.6%、
第II階級と第III階級は2.4%、
第IV階級と第V階級は2.2%のそれぞれ上昇となり、
所得階層の低い世帯ほど高い上昇率となっている。白書はこの状況を、消費者の購入品目は、所得階層別に異なり、所得階層の低い世帯ほど生活必需品の購入割合が高まるが、輸入穀類の商品市況の値上がりなど、輸入物価の上昇や石油価格の上昇が生活必需品の価格上昇につながり、所得の低い世帯により大きな影響を与えたと分析している。

一方、賃金は2002年以降の景気回復で2005年にいったん上昇したものの、2007年以降再び低下し、特に5〜29人の小規模事業所の賃金は、2005年を100とした場合、97にまで低下(30人以上は99.5)し、物価上昇による影響と合わせた実質賃金は大幅に低下したと白書は指摘している。
 結果として、経済成長の成果を勤労者生活へと行きわたらせることができず、これが内需停滞を招くとともに、2008年からの外需縮小がそのまま我が国経済の収縮へ直結したと分析し、今後、国内需要を着実に回復させていくためには、雇用の安定を基盤に、すそ野の広い製造業の技術、技能の基盤と人材育成を通じて、所得を底上げし消費を拡大させ、将来の成長分野で質の高い雇用創出を行うなどの課題に取り組む必要性を強調している。


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 ■■■ 雇用安定のため、職業能力向上と産業、雇用構造の高度化を ■■■ 
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 白書は結論として、豊かで安心できる勤労者生活を実現するためには、まず、大きな経済収縮のもとにあっても、政労使の一体的な取組みによる雇用の安定の確保と、長期雇用システムの基盤を守り、優れた技術・技能を有する人材を組織の中に確保しておくことは、企業経営としても経済活動としても合理的であるとし、具体的には非正規労働者も含めた雇用維持に向けたワークシェアリングの強化と、セーフティネットの整備による職業紹介、職業訓練など、再就職の促進に向けた対応が重要であると提言。

 さらに、雇用安定機能と人材育成機能を備える雇用システムのさらなる拡張のため、職業能力の向上に支えられた所得の拡大を実現することと、産業・雇用構造の高度化に裏付けられた内需の着実な成長を目指すため、社会全体として、労働生産性の向上と質の高い雇用の創出に努めていき、人々の将来の成長に対する確信こそが高い生産力に裏付けられた内需を創り出すと分析している。

 平成21年版の労働経済白書は、労働ビックバン思想への警告を強く出した昨年の白書と異なり、いわゆる大向うをうならす内容とは言えないが、「着実な指数分析による多くの試算の提示による問題提起を行った」(厚生労働省労働政策担当参事官室)内容は、学識経験者などに評価される内容となっている。     (津山 勝四郎)


              

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編┃集┃後┃記┃
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 08年度、経済情勢の悪化による職場環境の厳しさから、仕事によるストレスが原因でうつ病などの精神障害の労災が認められた件数は過去最悪となりました。

 年齢別では、30代が最も多いです。

“うつ病”の特徴は、几帳面で他者配慮的、全般的な意欲の低下といわれていますが、この特徴は従来型で、最近は“現代型うつ病(ディスチミア親和型うつ病)”が増加しています。

現代型うつ病の特徴は、

・規範的てきなく、規範に閉じこめられることを嫌い、仕事熱心という時期が見られないまま、常態的にやる気のなさを訴える

・遊びは大丈夫だが、仕事や職場の活動では意欲を失い、漫然とした抑うつ気分と他者への非難

・病前の性格は、未熟な人格で、余り仕事熱心でなく、自己中心的で、小さな挫折で職場に来られなくなり発病

・治療と予後は、休養と服薬の効果は部分的で、「うつ」の自分に固執して脱却できずに慢性化しやすい傾向がある

 これらの特徴は、従来型うつ病と大きく異なりますので、
人事面での対応も更に大変になってきました。

 職場で注意深く観察して、早期な対応を心がけてください。      (白石)

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 発行者  雇用システム研究所 代表 白石多賀子
     東京都新宿区新小川町9番5号畑戸ビル   
     アドレス:info@koyousystem.jp

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