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経営の“落とし穴”(1)〜業務委託契約をめぐるトラブルに注意〜

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┃\/┃    ☆雇用システム研究所メールマガジン☆
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                               2010/08/01
           http://www.koyousystem.jp
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   暑さ厳しい日々が続いています。
   皆様、いかがお過ごしでしょうか。

   夏の夜空には花火。華やかに舞う光とともにドドドーンとおなかに響く音は、
   ひとときの癒しを与えてくれます。
    
   睡眠・水分を十分にとって、この夏を元気にお過ごしください。

   雇用システム研究所メールマガジン第100号をお送りします。 

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  □ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

  ◆ 経営の“落とし穴”(1)〜業務委託契約をめぐるトラブルに注意〜

  ■業務委托契約を交わしても“労働者”と判断
  ■事業者の4分の1が違法性強いと推定
  ■厚労省が個人請負業者の保護策を推進
                       (以上執筆者 溝上 憲文)

  ◆ 高齢者医療制度
     〜厚労省、新たな高齢者医療制度案を示す
     「年齢区分を“解消”し、負担の明確化は維持した」と自賛するが…〜

  ■適用は元の老人保健制度の様相に
  ■厚労省は自賛するも、「形だけ」「新たな不公平」と批判噴出
  ■高齢者の保険料の伸びを抑える仕組みを新設?
                        (以上執筆者 福島 敏之)


  ■[編集後記]               (編集長 白石 多賀子)

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◆  経営の“落とし穴”(1)〜業務委託契約をめぐるトラブルに注意〜

 会社と個人が請負契約や業務委託契約を結んでも、その実態は「雇用労働者」に極めて近い働き方をしている「個人請負型就業者」が増えている。
コスト削減を目的に、新規の雇用ではなく専属の請負契約を結ぶ、あるいは正社員を請負契約に切り替える事業者が増える一方、個人請負型就業者との間で労働法上の義務や権利をめぐる紛争も多発している。

 厚生労働省もこうした実態を問題視し、ガイドラインの策定を含む行政指導に乗り出す構えを見せている。

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 ■■■ 業務委托契約を交わしても“労働者”と判断 ■■■ 
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 いうまでもなく雇用労働者は労働基準法や労働組合法の適用を受け、社会保険や労働 保険などの社会的権利が保証されるのに対し、業務委託契約の場合は雇用関係にあるわけではないために、そうした権利は発生しない。

 もちろん形式的に業務委託・請負契約を交わせば労働者の資格がなくなるわけではない。
労基法上の労働者かどうかは「使用従属性」、つまり「指揮監督下の労働」という労務提供の形態や「賃金支払い」という報酬の労務対償性によって判断される。

 厚労省の「労働基準法研究会報告」(平成8年)が労働者の判断基準を示している。

要約すれば、
(1)指揮命令の有無、
(2)諾否の自由、
(3)時間的拘束性、
(4)場所的拘束性、
(5)代替性、
(6)時間に応じた報酬、
(7)機械・設備などを持つ事業者性の有無――が労働者性の判断要素となる。

実際にはこうした諸要素を勘案して総合的に判断される。

 裁判でも同様だ。実際に「労働者性」を巡ってクリーニングチェーンの店舗に勤務していた女性が請負契約に切り替えられて訴えた事案がある。
女性の仕事は窓口での衣類の受け渡し業務であったが、そのまま同じ業務の運営を委託 された。しかし、会社の指示で朝9時から夜8時まで店を開け、しかも会社が借りた商業ビルのテナントのため、ビル自体が休業しなければ本人も休めず、実際の年間休日はわずかに6日だったという。

 もし労働契約であれば、有休休暇もあれば、週1日休ませる必要があり、その場合は会社から代替要員を派遣するのが普通だ。裁判では会社側と労基法の適用を受ける労働者かどうかをめぐって争った結果、女性が勝利した。

 裁判所の判断のポイントは、労務提供の実態、つまり業務場所が特定され、始業・終業時間や就業日も特定されていて、請負契約なのに最低保障給もらっていたこと。また、店舗は会社が借りたテナントであるなど設備関係で本人が購入したものが少ないことから事業者性がないと判断。さらに会社の指揮監督下で単純な労務を提供していたことから、労基法上の労働者と判断され、休日出勤や残業手当を含む損害賠償を会社に命じた。


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 ■■■ 事業者の4分の1が違法性強いと推定 ■■■ 
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 厚労省は昨年8月に「個人請負型就業者に関する研究会」を発足させるとともに、実態調査に乗り出した。
その結果、たとえば求人募集では業務委託契約にもかかわらず契約期間の記載がない求人が89.3%もあったほか、報酬金額の決め方についても27.4%の求人で記載がないことがわかった。
また、業務委託募集であっても

「そもそも業務委託募集でよいのか、労働者ではないかと思われる募集が相当数あった」
(厚労省担当者)という。

 厚労省は事業者に対するアンケートの中に、以下の7つの質問を設定し、労働者性の有無を調査している。

(1)報酬を決める要素が時間に応じている
(2)業務場所が会社の指定した場所である
(3)毎日決まった時間に出社する必要性がある
(4)仕事の進め方の裁量が限定されている
(5)あらかじめ決められた業務以外の業務を行わせることがある
(6)仕事を断ることができない
(7)他者に業務を代行させることができない

 1つの質問に当てはまる場合を1点とし、4点以上を労働者性が高いと見なし、集計した。
その結果、4点以上の事業者は26.7%、5点以上は9.2%も存在した。

業務委託契約を結んでいたとしても、労働基準監督署なり裁判に持ち込まれれば、労働者性を疑われる可能性が高い形で活用している実態が浮き彫りになった。


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 ■■■ 厚労省が個人請負業者の保護策を推進 ■■■ 
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 実態調査を踏まえて研究会の報告書が今年4月末に公表されたが、厚労省は報告書の 提言に沿って、今後以下の政策を実施していく予定である。

(1)求人情報掲載ガイドラインの作成
(2)企業が守るべきガイドラインの作成
(3)業務委託・請負で働くことの周知・啓発の実施
(4)トラブルの相談窓口の周知
(5)わかりやすい労働者性の判断基準の提示

 企業が守るべきガイドラインについては、契約は書面で行う、契約の適正化(報酬や支払期日の設定等)、雇用で募集し、業務委託・請負で働くことを提示することを禁止といった項目を検討している。
事業者との間でトラブルが発生した場合の相談窓口については、都道府県労働局に設置 している総合労働相談センターを活用していく予定だ。

 労働者性の判断基準については、現在、労働基準局の監督課で検討作業を進めている。

具体的中身については、ガイドラインになるのか、あるいはもっと踏み込んだ指針の形になるのか、今後の検討によって決まる。厚労省としては現段階では法改正を義務化は想定していないが、請負型就業者の保護を目的に指導を強化していく予定だ。

 周知・啓発などの施策が実施されれば、個人請負業者が広く知ることになり、トラブルが一層多発することが予想される。
請負契約や業務委託契約の内容をしっかりと確認しておいたほうがよさそうだ。
                                             (溝上 憲文)


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  ◆ 高齢者医療制度
     〜厚労省、新たな高齢者医療制度案を示す
     「年齢区分を“解消”し、負担の明確化は維持した」と自賛するが…〜

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 ■■■ 適用は元の老人保健制度の様相に ■■■ 
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  「たたき台」は、これまでの改革会議の審議に沿う形で、市町村国保を都道府県単位化して後期高齢者医療制度と統合する方向性を打ち出している。
施行半年後に舛添前厚労相が打ち出した「舛添私案」とも似通う案だ。

 適用についてみれば、年齢の区分なく、会社勤めを続けていれば職域の被用者保険に、 退職すれば住所地の市町村国保に加入するという仕組みで、保険証も変わらず、世帯主でなければ保険料の納付義務はない(世帯主がまとめて払う)。

配偶者や息子・娘らが被用者保険に加入していれば、その被扶養者として健保加入することも可能。その場合、保険料負担はなくなる。つまり、見かけ上は2008年3月までの老人保健制度と同様の状態に戻されるわけだ。

 これにより、現在約1400万人の後期高齢者医療制度対象者は、国保に1200万人、被用者保険に200万人が移動することになると見られている。

 もともと、75歳になるや否や有無を言わさず得体の知れぬ別制度に移されるということへの高齢者の拒絶感情が「制度バッシング」の源流となっており、その勢いを呼び込んで政権に就いた民主党にとっては、この年齢区分を廃止することは一丁目一番地の課題であった。この点、「たたき台」はクリアしているかに見える。


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 ■■■ 厚労省は自賛するも、「形だけ」「新たな不公平」と批判噴出 ■■■ 
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 ただ、中身の細部をみれば、年齢区分は実はそっくり温存されている。

 たとえば、後期高齢者の8割を受け容れる国保において、制度移行に伴う個々人の負担の増減を抑えるため、高齢者の保険財政と現役世代の保険財政を「別勘定」として管理することとを打ち出している。運営単位についても、高齢者は都道府県単位で運営しつつ、現役世代については当面の間、現行と同じく市町村による運営を続ける。

つまり、運営主体も財政もまったく別構造というわけだ。

 厚労省はこうした仕組みについて、「高齢者と現役世代の負担の明確化を維持しつつ、 年齢で区分されることのない制度。元に戻るのではなく前へ前へ進んでいくものだ」と自賛する。
しかし、改革会議に参加する高齢の委員からは「この案では国保の中にまた年齢区分が残ることになる。現在の後期高齢者医療制度のもとでの年齢区分と変わるところがない」と憤りを隠さない。

 また、被用者保険の被扶養者に戻れる高齢者が保険料負担不要になることについても、「負担が軽くなる人は喜ぶだろうが、逆にその分負担が上がる人がいるということ。
この『不公平』は無視されえないのではないか」と疑問視する声が早くも上がっている。


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 ■■■ 高齢者の保険料の伸びを抑える仕組みを新設? ■■■ 
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 「たたき台」は、制度の細部はことごとく先送りしている。
(1)どこが新・国保の運営主体となるのか、
(2)財政調整の方法はどうするのか、
(3)公費投入の在り方はどう改めるのか、
(4)高齢者の範囲を「65歳以上」とするか「75歳以上」とするか――。

これら制度の“肝”ともいえる部分が固まっていないのだ。

 もっとも、これらは、利害対立の最も先鋭化する部分でもあるため、
先送りされるのも当然といえば当然かもしれない。だが、「たたき台」には、さらに見逃せない火種が組み込まれている。
今後の高齢者の保険料が現役世代と比して伸びが大きくなり過ぎることがないように、

「財政安定化基金を活用して高齢者の保険料の伸びを抑制できる仕組みを設ける」との 一節が書き込まれたのだ。要は、高齢者医療費がグンと伸びても、高齢者の保険料は負担可能な範囲におさまるように手立てを講じましょう、
ということである(これも詳細は先送りとされている)。

 医療費が伸びるなか、高齢者の保険料の伸びを抑えるということは、どういう仕組みを講じるにせよ、その分を税金や現役世代の保険料で補うという構図になることに違いはない。
たしかに、収入が年金給付に限られる高齢世帯において保険料が歯止めなく伸びれば、

特に低所得で資産の乏しい世帯はで家計の窮乏化が避けられまいが、かといって現役世代の負担増を無制限に繰り返せるわけでもない。
改革会議でも、さっそく「現役世代の負担能力の限界についても秋以降に議論していくべきだ」
という声が上がっており、今後のホットスポットの一つとなりそうだ。      (福島 敏之)


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編┃集┃後┃記┃
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 韓国で「キロギ・アッパ(雁父さん)」が社会現象になっていると日本経済新聞の“春秋”に取り上げられていました。

 母国語並みの外国語を習得するために幼い子を母親同伴で海外留学させ、父親は自国で学費や生活費を稼ぎ、年1回程度、妻子のもとへ訪ねるため、渡り鳥になぞらえています。
 しかし、語学習得程度では就職は厳しいようです。 

 最大手のサムスン電子では、私学の成均館大学と組み、学部で半導体、大学院は携帯電話学科をつくり、学費も生活費も会社持ちで全国から優秀な学生を集め、企業が欲する未来の研究者を育て、卒業後はサムスン電子へ入社となります。これを「注文型教育」と呼んでいるそうです。

 最近、日本企業の採用でも、市場のグローバル化にともない中国・韓国・インド人等の優秀な人材獲得競争が始まっていますが、市場のグローバル化だけでなく日本人の優秀な人材確保が難しい実情もあるようです。

 企業は「やる気」のある人材を求めています。
 自分の考えを的確に表現する力と行動力が欲しいですね。             (白石)

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 発行者  雇用システム研究所 代表 白石多賀子
     東京都新宿区新小川町9番5号畑戸ビル   
     アドレス:info@koyousystem.jp

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