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経営の“落とし穴”(4)〜理念なき「子育て支援策」の充実は社員を蝕む〜

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┃\/┃    ☆雇用システム研究所メールマガジン☆
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                                 2010/11/01
           http://www.koyousystem.jp
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   秋を感じる間もなく、急激に寒くなりました。
   皆様、いかがお過ごしでしょうか。

   雇用システム研究所メールマガジン第103号をお送りします。 

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  □ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

  
◆ 経営の“落とし穴”(4)〜理念なき「子育て支援策」の充実は社員を蝕む〜

  ■経営者の鶴の一声で制度を実施
  ■一挙に吹き出た職場の不満
  ■社員の意識の醸成が何より重要
                       (以上執筆者 溝上 憲文)

  ■雇用・人材育成策が命運握る?
          −平成22年度補正予算(案)の審議開始−
  ■貧困・困窮者の生活支援も強化
  ■相反するベクトルの方向
        (以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)




  ■[編集後記]               (編集長 白石 多賀子)

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◆ 経営の“落とし穴”(4)〜理念なき「子育て支援策」の充実は社員を蝕む〜

 ワーク・ライフ・バランス大流行の中で、各社競うように子育て支援策の充実を図っている。

しかし、社員によかれと思って作り上げたどんなにりっぱな制度でも、実際に動かすのは
現場の社員である。その分のコスト負担はもちろん、実際に運用される職場の実態を
無視して導入すれば、結果的に職場の混乱を生み出すだけに終わってしまうという
“副作用”をもたらすことになる。

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 ■■■ 経営者の鶴の一声で制度を実施 ■■■ 
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 少子化対策を目的に次世代育成支援対策推進法が施行され、07年から企業に
子育て支援策などの「事業主行動計画」の策定が義務づけられた。また、計画を達成し、
男性の育児休業取得など一定の基準をクリアした企業は、厚生労働大臣から認定マーク
「くるみん」が付与されることになっている。

 この「くるみんマーク」は自社の商品や広告などに添付できるなど企業イメージの向上や
働きやすい会社の代名詞としてリクルート効果もあることから、
取得に積極的な企業が増えている。

 中堅不動産業のA社は、初年度の事業主行動計画は育児・介護休業法の枠内の計画
しか策定しなかった。しかし、2年目に経営者の鶴の一声で、くるみんマーク取得を目指した行動計画を改めて策定することになった。同社は人材戦略として優秀な女性の採用と
戦力化に力を入れており、マークの取得によるリクルート効果はもちろん、ターゲットとする
マンションの顧客は30代半ばの子育て世代であることから営業効果も大きいと判断したのである。

 制度改定にあたり経営企画室を中心にプロジェクチームが組織された。

メンバーは経営企画室の女性社員をリーダーに子育て中の女性や未婚の女性社員で構成。

メンバーが聴取した職場の意見をベースに、皆で議論しながら制度の素案を作っていった。
そして出来上がった制度案は、育児休業期間の拡充や育児短時間勤務制度の創設など
他の先進企業に比べても遜色のない中身だった。

 だが、女性社員の利用は増えても男性社員が育児休業をとらなければマークはもらえない。
制度案を見た経営者は
「いっそのこと子育て対象の子を持つ男性社員は全員育児休業を取得せよ」と号令をかけた。
そのため育児休業の最初の5日間を有給とし、土日を含めて
1週間の取得を半ば強制的に実施することになった。


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 ■■■ 一挙に吹き出た職場の不満 ■■■ 
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 人事担当者の中には「ノーワークノーペイの原則からいっても有給の付与は行き過ぎ」
との意見も出たが、経営者の意向には逆らえない。
そして制度がスタートしてから、育児休業や短時間勤務取得者は徐々に増えていった。

ところがそれはいいとしても、職場の同僚や上司から一挙に不満の声が上がったのである。

 じつは同社はこれまで長時間労働の削減に熱心に取り組んできたわけではなかった。
少ない人数で職場の全員が協力しながら残業することで仕事のノルマをカバーしてきた。

だが、育児休業や短時間勤務を取得すると、当然ながら代替要員の確保や早く仕事を
終えた社員の仕事の補充を同僚がしなくてはならない。

 休職中の女性に代わって派遣社員を入れることになるが、マネージャー自ら採用活動や
指導を行う必要がある。また、短時間勤務の女性のために同僚社員の仕事量が
今まで以上に増すことになる。それに加えて、営業の第一線で活躍する若手男性社員の
強制的休職により、顧客や取引先との対応もマネージャーや同僚が引き受けることになり、
仕事の負担が増した。

 仕事量の増加に対する不満が出るのはしかたがないにしても、それ以上に批判が
集中したのは取得者の態度である。同社の人事担当者は
「マネージャー層から職場の同僚を気遣うことなく、当然の権利として制度の利用を
主張する社員が増え、職場の人間関係がおかしくなっているとの批判が出た」
と指摘する。

 これまでは子育て中の社員がいても、仕事が忙しい日は残業してもらい、
比較的仕事が少ない日は早めに帰ってもらうなど、職場の皆で一致結束してなんとか
乗り切ってきた。だが、制度ができたために当然のごとく権利を振りかざす社員と
マネージャーが衝突するなど職場に亀裂が入ったという。

 一方では、子育て期から外れた中・高年の社員からは
「なぜ、子育てしている社員だけ優遇されるのか」という不満も出たという。


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 ■■■ 社員の意識の醸成が何より重要 ■■■ 
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 同社の人事担当者は混乱の原因は、
現場を無視した経営者の独断専行が根本的原因と指摘する。

「以前は妊娠してもできるだけ職場に迷惑をかけないように、産休に入るぎりぎりまで仕事を続け、
引き継ぎを終えて、上司や同僚も気持ちよく送り出してくれたし、復職しても歓迎された。
制度の充実は結構だが、制度以前に、社長自身がその目的と意義を社員に語りかけ、
理解してもらう努力をしてこなかった。
また、女性社員を使いこなすにはマネージャーの意識も変えていく必要があるが、
職場の意識の醸成を図ることもなく、一足飛びに制度の改定に踏み切ったのがいけなかった」

 いうまでもなく、いかなる制度も利用する社員のマインドを見極めたうえで実施に移さなければ、
利用されないし、また、その効果は期待できない。制度の実施に見合う職場や社員の
意識の向上をいかに図っていくかが大事となる。同社のように、仮にくるみんマークを取得しても、
職場の人間関係は以前より悪化するというまったく逆の効果を生む場合もある。
                                             (溝上 憲文)


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 ■■■ 雇用・人材育成策が命運握る?
          −平成22年度補正予算(案)の審議開始− ■■■ 
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 菅内閣が平成22年度補正予算(案)を10月26日に閣議決定、10月29日に国会に提出した。

 このうち厚生労働省関係では、総額1兆3,931億円(一般会計1兆3,888億円、特別会計43億円)
計上され、内訳は、雇用・人材育成3,170億円、子育て、医療・介護・福祉等の強化による安心の
確保1兆2,225億円、地域活性化、社会資本整備、中小企業対策等338億円となっており、
この他に執行見込額が予定を下回ったことによる予算額の減額補正がマイナス391億円となっている。

 雇用・人材育成部門を細分してみると、第1が新卒者・若年者支援の強化(500億円)において、
新卒者就職実現プロジェクトの拡充として、いわば予算執行が前倒しされる。

 内容は、「経済危機対応・地域活性化予備費」において措置された、
「3年以内既卒者(新卒扱い)採用拡大奨励金」と、
「3年以内既卒者トライアル雇用奨励金」を積み増すとともに、平成23年度まで延長する。
また、「既卒者育成支援奨励金」を創設することで長期の育成支援が必要な人への支援を行う。

 参考までに奨励金の内容を記すと、3年以内既卒者(新卒扱い)
採用拡大奨励金は正規雇用から6ヵ月後に100万円、3年以内既卒者トライアル雇用奨励金は
有期雇用(原則3ヵ月)1人月10万円、正規雇用から3ヵ月後に50万円、
創設される既卒者育成支援奨励金は有期雇用(原則6ヵ月)1人月10万円、
そのうちOff-JT期間(3ヵ月)は各月5万円を上限に実費を上乗せ、正規雇用から
3ヵ月後に50万円、となっている。

 新卒者・若年者支援対策ではこの他に、新卒応援ハローワークの機能強化で、
ワン・ストップ・サービスの推進のため「ジョブサポーター」を250人増員(1,753人→2,003人)し、
採用意欲のある中小企業等とのマッチングや定着支援、面接会の開催などを展開する。

さらに現行のトライアル雇用活用型の支給対象者(25〜29歳)の年齢枠を
25歳未満の人も対象として年齢枠を拡大する。


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 ■■■ 貧困・困窮者の生活支援も強化 ■■■ 
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 円高などによる下振れリスク対策では、雇用調整助成金の要件緩和を行い、
直近3ヵ月の生産量が3年前の同時期に比べ15%以上減少している赤字企業を対象とする。

派遣労働者対策では、派遣先での直接雇用を促進するため、
「派遣労働者雇用安定化特別奨励金」(中小企業50〜100万円、大企業25〜50万円)の
積み増しを行うとともに、昨年12月の「緊急経済対策」により拡充した「住まい対策」事業を
1年間延長し、職と住まいを失うことでホームレスとなる恐れのある人たちには、
NPOなど民間団体と協働した総合相談や一時宿泊施設の提供などによる
貧困・困窮者の再生を実施する。

さらに、介護・医療など潜在的な需要が大きい分野における雇用創造・人材育成を推進するため、
今年度からスタートしている重点分野雇用創造事業の実施期間を1年延長(平成23年度まで)し、
あわせて対象分野に教育・研究を追加する。また、現行の「緊急人材育成支援事業」
(雇用保険を受給できない人々に対する無料の職業訓練と訓練期間中の生活給付)を、
法制化が予定されている求職者支援制度の制度化まで延長する。

 成長分野等人材育成支援では、健康、環境分野及び関連するものづくり分野の生産性向上を
図るため、期間の定めのない労働者の雇入れや、異分野からの配置転換を行った事業主が、
職場以外での職業訓練を実施した場合に、
訓練費の実費相当(原則上限20万円)を支給する制度も創設し、総額500億円を計上している。


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 ■■■ 相反するベクトルの方向 ■■■ 
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 制度拡充、助成金・奨励金の強化、それぞれやらないよりやった方が良いことは
論を待たないが、ネタの出尽しと、低い実施率を指摘されて何年たつのだろう。

 雇用能力開発機構の廃止(平成23年3月末予定)で、地方の職業能力開発施設の
大幅な弱体化が、今の国会でも指摘され、一方で10月27日に実施された
労働保険特別会計の事業仕分けにおいて、ジョブカード制度普及促進事業の
関連のキャリア形成促進助成金の廃止、介護雇用管理改善等対策費の予算縮減、
特定求職者雇用開発助成金と若年者等正規雇用化特別奨励金の全面見直し、
などが同じ政権による行政刷新の対象となった。

 類似の事業を補正予算(案)では拡充、強化、事業仕分けでは廃止・見直しとなり、
一つの政権がプラスとマイナスのベクトルを構成している。

 景気浮揚による雇用対策を実現できないとなれば、間違いなく政界再編となる。
1日も早く、正真正銘の与党となってもらわなければ、国民が困る。  (津山 勝四郎)


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編┃集┃後┃記┃
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 今年も後2カ月となりました。

人事関係者は、これからの2ヶ月間は賞与計算、年末調整と慌ただしさが増していきます。

紅葉の便りも山から里へと下りてきます。
紅葉を眺めながら日頃の仕事の疲れを癒されては如何でしょうか。

 先月14日に厚生労働省が発表した「就労条件総合調査」によると、
2009年の年次有給休暇の取得率は47.1%(前年比0.3ポイント減)で10年連続50%割れです。
労働者の平均取得日数は8.5日で、有給休暇を取るのにためらいの傾向があるとのことです。
また、厚生労働省の担当者は、
「祝日の多さも取得率伸び悩みの要因の一つになっている」と分析しています。
 
 今年は3連休が6回あり確かに祝日の多さは影響していると思います。
3連休が少ないと週末と祝日の間の勤務日に有給休暇を取得して旅行などができます。


3連休の多さに私の周りでは、「祝日が週の中にある方が気分的に楽、体が休まる」との声があります。
皆様は、3連休の方がゆっくり休めますか。                             (白石)


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 発行者  雇用システム研究所 代表 白石多賀子
     東京都新宿区新小川町9番5号畑戸ビル   
     アドレス:info@koyousystem.jp

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   今週のメールマガジン第103号はいかがだったでしょうか。

   お楽しみいただければ幸いです。今後もさらに内容充実していきたいと
   思います。
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