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経営の“落とし穴”(5)〜メンタルヘルス休職者の増加が経営を圧迫する〜

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┃\/┃    ☆雇用システム研究所メールマガジン☆
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                                 2010/12/01
           http://www.koyousystem.jp
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   早くも師走。何かと気ぜわしいこの頃となりましたが
  皆様、いかがお過ごしでしょうか。

   雇用システム研究所メールマガジン第104号をお送りします。 

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  □ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

  
◆ 経営の“落とし穴”(5)〜メンタルヘルス休職者の増加が経営を圧迫する〜

  ■休職日数は身体的傷害者の5倍
  ■休職者10人で1億円の損失
  ■休職規定の不備は要注意
                       (以上執筆者 溝上 憲文)

  ■メンヘル2次専門機関を定義  
  ■人事労務管理の要となってきたメンタルヘルス対策
        (以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)


  ■[編集後記]               (編集長 白石 多賀子)

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◆ 経営の“落とし穴”(4)〜メンタルヘルス休職者の増加が経営を圧迫する〜

 メンタルヘルス不調による休職者問題で悩む企業が増えている。
休職者の増加にとどまらず、いったん復職しても休職を何度も繰り返す社員など、
休職期間の長期化も頭の痛い問題になっている。

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 ■■■ 休職日数は身体的傷害者の5倍 ■■■ 
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 社員数1万人規模の外資系企業の人事担当者は「傷害などのフィジカルの休職者に比べて、
メンタル休職者数が年々増加している」と語る。

 09年時点の休職者数は、メンタルとフィジカルの割合は1対1とほぼ同じであるが、休職日数の比率はメンタル1に対して0.2の割合。仮にフィジカルの平均休職日数が20日とすれば、メンタル休職者は5倍の100日になる計算だ。
人事担当者は「業績が厳しい状況にあって、休職者の増加と期間の長期化はコストの損失も大きく、経営的にも解決すべき課題だ」と指摘する。

 また、最近は20代の休職者も増加しているという。外部EAP(従業員支援プログラム)
企業の社長は「以前は30〜40代が休職者の8割を占めていたが、20代が相対的に増えている」
と指摘する。とくに入社まもない20代前半の社員も少なくない。

 例えば、入社後の3ヶ月の新人研修の期間中に医師の診断書を持ってくる社員もいる
という。研修の厳しさゆえか、人事の教育担当者に叱責され、それがショックでうつになり
休職に入る人が目立つそうだ。

 また、IT系企業の人事担当者は「開発・設計部門では、休職者のほとんどが新入社員から
入社3年目までの20代前半で占めた時期もある。対人関係能力や問題解決力を含めて、
総じてストレス耐性が低い人ほど増えている」と指摘する。

 若年層の休職者の増加の背景には「新型うつ」も影響している。
学説的には定まっていないが、新型うつによる若年層の休職者に悩まされている
人事担当者は多いとの指摘もある。


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 ■■■ 休職者10人で1億円の損失 ■■■ 
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 労務行政研究所の調査(08年)によると、1社当たりの休職者の平均は9.5人。
全従業員に対する比率は平均0.5%。従業員200人に1人が休職していることになる。

だが、この数字はまだ健全なほうだという声もある。
外部EAP会社の社長は「1ヶ月以上、休職している人の割合は
0.8%から1%程度いるのではないか。
ひどいところでは4%という事業所もある」指摘する。

 驚くことに従業員の10%が休職している企業もあると。
同社は大手企業系列の部品製造会社であるが、常に親会社から製品の納期や品質を厳しく
問われる環境にある。同社の人事関係者は「親会社の決定が遅れても、
納期の遅延は許されず、社員も必死にならざるをえない。子会社の宿命とはいえ、
締め付けが厳しすぎることもあってか、うつになり、休職している人が多い」と語る。


 増加の理由はそれだけではない。親会社で体の具合が悪くなった人も送られ、
全体の休職者数を押し上げているという。

 これは極端な例であろうが、休職者の増加と休職期間の長期化は、
いうまでもなく経営的にも大きな損失を与える。通常は、年次有給休暇や特別傷病休暇の
消化後、一定の欠勤期間を経て休職に入る。これだけで半年程度になる。
休職期間中は原則無給であるが、健康保険組合や共済会の補填があり、
実質有給扱いとなる。加えて会社は社会保険料も支払わなくてはならず、
コスト負担はばかにならない。

 休職期間は短い人で3ヶ月、長い人は3年にも及ぶという。
外部EAP会社の社長は「平均休職期間は10ヶ月であるが、休職者が10人いれば単純に
1億円の損失となり、休職者発生による上司・同僚の仕事量の増加や欠員補充による
コスト負担を加えると、倍の2億円の損失になる」と指摘する。


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 ■■■ 休職規定の不備は要注意 ■■■ 
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 コスト負担を減らすには、もちろん休職者を出さないことであるが、仮に休職者が出た場合は、
その対応が大きな鍵を握る。
就業規則に休職規定を設けている企業は多いが、中小企業の中には規定がないところも少なくない。
また、休職期間は決めてあっても、通算規定がないために復職後に再発し、再び休職に入り、
それを長期にわたって繰り返し、給与をずっと払い続けることになるという規定の不備もある。

 一度うつを発症すると、再発率は50%、2回目の人の再発率は70%、3回目は90%の再発率
といわれている。放置すれば、延々と休職が続くことになる。

 メンタルヘルス研修もしていない企業では、上司や同僚も本人がうつであるとは気づかない。
遅刻がちになり、そのうち休みが続くようになる。
上司が風邪でもひいたのかと思っていると、抑うつ状態と書かれた診断書が送られてきて
傷病休暇に入る。
とくに真面目なタイプは主治医に「復職可」の診断書を書いてもらい、治らない状態で復帰するが、
再発して休職を繰り返すようになる。
会社もあわてて産業医をつけ、相手によかれと思い、
「まだ戻るのは無理でしょう」と言っても、今度は会社が退職させようとしている、と家族が反発。
結果的に労使紛争になるケースも少なくない。

 再発させないためには、復職前のリハビリ勤務や復職後の業務や労働時間の軽減が必要になる。
一方、最近は100%の状態で復職できない社員をリストラしようとする傾向もある。
ただし、リスクは大きい。仮にうつで休職した社員が長時間労働を行っていたとなれば、

安全配慮義務違反を問われ、損害賠償訴訟に発展するなど、かえって会社側の損失を
大きくすることになる。

 休職者に対する無作為の姿勢や後ろ向きの対応が続く限り、事態はさらに悪化し、
会社が被る損失も拡大する。
人材投資の観点からも、休職・復職支援対策が極めて重要になっている。          
                                              (溝上 憲文)



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 ■■■ メンヘル2次専門機関を定義 ■■■ 
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 来春の次期通常国会で現行の労働安全衛生法が改正され、
事業主に職場の分煙体制の整備の義務、職場における有害化学物質対策による従業員
の健康確保、そして従業員のメンタルヘルス対策の強化として、事業主の選択肢の一つとして、
メンタルヘルスの面接など、複数の産業医の有資格者が産業医の職務を実施する
外部専門機関を活用できる仕組みが設けられることになった。

 特に該当する従業員の病状など個人情報を就業する職場に明らかにしてはならないことが
改正安衛法に盛り込まれることから、これをどう担保するのかが大きな課題となっていた。

 厚生労働省の「事業場における産業保健活動の拡充に関する検討会」
(座長・中原俊隆京都大学大学院医学研究科教授)が11月22日にまとめた報告書は、
その外部専門機関の要件として、所属する産業医有資格者などの資格の確保、
医師等の間での情報共有、機関の管理者による調整や監督を担保するような
一定の要件を満たすことを定義づけ、外部専門機関が要件に適合し適正な業務を
行っているかについて、
行政が確認して事業者に周知するとともに、必要な指導を行うことにする。

 具体的には、外部専門機関に事業場に対する業務を総括する医師(総括医師)を定めた上で、
総括医師が主担当となり他の産業医有資格者と連携を図りながら職務を提供すると同時に、
一定の見識(経験年数、産業医更新回数など)を有する産業医有資格者(産業医長)が
機関に属する産業医有資格者を指揮・管理する体制整備を義務づけ、
整備した機関を厚生労働省が指定する新たな枠組みを改正安衛法施行までに創りあげ、
2次専門機関を選任する。


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 ■■■ 人事労務管理の要となってきたメンタルヘルス対策 ■■■ 
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 いくつかのデータがある。厚生労働省が平成20年にまとめた
「平成19年労働者健康状況調査」では、仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスを
感じる労働者の割合は58.0%と半数を超え、具体的には「職場の人間関係」(38.4%)、

「仕事の質」(34.8%)、「仕事の量」(30.6%)となっており、
過去1年間にメンタルヘルス上の理由で連続1ヵ月以上休業、
又は退職した労働者がいる事業所の割合は7.6%に達している。

 また厚生労働省がまとめた平成21年度における脳・心臓疾患及び精神障害等に係る
労災補償状況によると、精神障害等に係る労災請求件数が前年度を209件も上回る1136件となり、
平成21年度に支給決定された234件のうち、
時間外労働時間数に関係なく業務上と判断された123件を除くと、
7割近くが80時間以上の時間外労働を行っていたことから、
長時間労働が個々の労働者に与えるメンタルヘルスの影響が非常に大きく、
事業場の人事労務管理者が従業員の深刻なメンタルヘルス対策に着手するのならば、
まず、自社の長時間業務をいかに減少させていくのかが解消への第一歩であることは間違いない。

 もちろん、従業員個人の理由、特によく指摘されている過去の生活習慣
(友人、家族、教育の場における孤立)からくる本人の心の弱さにも大きな原因があるが、
これに固執して解決策を見出すことは、管理者というより精神医療分野の問題である。

 もう1つのデータを見る。

 厚生労働省の労働保険審査会がまとめた平成21年度の労働保険再審査事件処理状況
(監督署の原処分、都道府県労働局決定に不服の場合に60日以内に再審査請求)では、

審査件数は毎年度増加の一途で、前年度を79件増の678件となり、
その大半(639件)が労災保険関係となっており、さらにそのうち業務上外が376件と、
こちらも毎年度増加の一途である。

 同時に発表された業務上外関係の26件の裁決例
(いずれも労働保険審査会のホームページで詳細を閲覧できる)をみると、

(1)トラック運転手の過重労働による急性副腎不全(原処分取り消し)、
(2)店長及び先輩からの長期にわたる暴力による適応障害(同)、
(3)時間外労働の増加による精神的負荷での自殺(同)、
(4)常夜勤勤務によるうつ病(同)、
(5)恒常的長時間労働と業務トラブルに対して会社の不十分な支援による中等症うつ病(同)、
(6)上司の感情的な叱責、罵倒が毎日続き、1日のうちに2階級降格によるうつ病(同)、

など、別添の解説をみると、こんな事業場や上司が存在するのかとさえ感じる。つまり、
偶発ではなく、確信的なハラスメントが実存する現状である。

 企業の人事労務担当者にとって、従業員の日常の労務管理は企業の成長のために
必須なことだが、要は自分たちの眼の届かないところで毎日何が行われているのかを
把握しなければならない。セクハラ、パワハラなどのハラスメントは、
歴史的にも重要課題となってきたのはここ10年程度のことで、
経営側にも労働側にも解決への知識、手順、法的関係など経験が浅い上、
若年者だけでなく、管理者に課題の多い第2世代が就任する時代になってきた。
「1人や2人なのだから、放っておけば時間が解決してくれる」というのでは、管理者失格であろう。
                                               (津山 勝四郎)



編┃集┃後┃記┃
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今年も、残すところ1カ月となり慌ただしくなりました。

昨年10月より民法・債権法改正の審議が開始されています。
来春4月に中間論点整理が発表され、
2012年の通常国会に上程が予定されているようです。

民法・債権法の改正は、労働契約等の労働法への影響が発生しそうです。

検討項目は、
「雇用全般」・「契約の成立」・「労働契約の展開」・「労働契約の終了」・「有期労働契約」です。
現時点では、“使用者側への利害”、“労働者側への利害”については、
労働者側に有利な項目が多いようです。
民法・債権法の改正により、労働関係への影響は使用者側に厳しい状況となりそうです。

今冬は例年より寒さが厳しいようです。皆様、くれぐれもご自愛ください。   (白石)


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 発行者  雇用システム研究所 代表 白石多賀子
     東京都新宿区新小川町9番5号畑戸ビル   
     アドレス:info@koyousystem.jp

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