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経営の“落とし穴”(8)〜英語の社内公用語化がもたらす弊害〜

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┃\/┃    ☆雇用システム研究所メールマガジン☆
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                                 2011/03/01


           http://www.koyousystem.jp
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 春が一歩ずつ近づいてきました。
花粉の季節ですが如何お過ごしでしょうか。
 雇用システム研究所メールマガジン第107号をお送りします。 

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  □ 目次 INDEX‥‥‥‥‥
  
 ◆ 経営の“落とし穴”(8)〜英語の社内公用語化がもたらす弊害〜

  ■楽天は日本人社員の会議でも英語  
  ■「なんで今さら」社員から怨嗟の声 
  ■人材戦略なき英語要件設定は無意味                    
                      (以上執筆者 溝上 憲文)

 ◆自己啓発支援への取り組み低下傾向

  ■時間と費用への対応が課題
        (以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)


  ■[編集後記]               (編集長 白石 多賀子)

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◆ 経営の“落とし穴”(8)〜英語の社内公用語化がもたらす弊害〜

 海外事業の拡大によるグローバル化に伴い、英語の社内公用語化をはじめ、
社員の英語力強化に取り組む企業が増えている。しかし、海外要員の養成は不可欠だとしても、国内事業も抱えているのに全員を対象にする必要があるのか。育成費用の増加はもちろん、
一歩間違えば、社員の仕事への意欲を削ぐなど副作用を招くことになりかねない。

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 ■■■ 楽天は日本人社員の会議でも英語 ■■■ 
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 英語公用語化とは社内会議を英語で行うのはもちろん、イントラネットなどの社内情報や
文書も英語に切り替えることだ。公用語化の口火を切ったのは楽天とユニクロを擁する
ファーストリテイリングだ。

 楽天の海外拠点は6カ国8拠点、海外売上比率は数パーセント程度にすぎないが、
将来的には進出国27カ国、海外売上比率を70%に高める構想を描いている。
すでに2011年度入社の新卒の外国人の割合は3割を予定している。

 昨年8月から英語公用語化に順次移行し、2012年3月までに完全に移行する計画。
公用語化の対象者は基本的にグループの全社員。その範囲は会議の英語化、
資料の英語化、会話の英語化の3つだ。資料は法定書類や顧客・サービス向け文書を
除く会議資料、議事録、規程類などのマニュアル、
電子メールなどのすべての文書が英語化される。

 会議の英語化については移行期間中の2011年4月からは1人でも外国人の社員がいる
場合は英語となる。移行期間が終わる12年4月からは日本人同士であっても英語で
会議を行うなど徹底している。

 すでに各事業部のプレゼンテーション会議や執行役員が参加する人事、開発などの
経営会議も英語で行っている。また、社内イントラネット情報などの資料はもちろん
日本語併記ではなく、すべて英語である。移行期間であっても英語が不得意な社員は
業務にも支障を来すことになる。

 公用語化を契機に昇格・昇進の要件にも英語力を課している。
係長相当の初級管理職の昇格要件としてTOEIC(990満点)600点、課長相当の
中級管理職クラスは650〜750点、執行役員手前の上級管理職は750点以上を設定している。
現実に750点に満たない管理職も存在するが、移行期間中に達成することを課している。

 たとえ仕事で高い成果を出しても英語力がなければ昇進もできない。
社員だけではなく、来年度入社予定の社員については最低でも600〜650点レベルの
英語力を求めている。
また、中途採用の要件も最低600点に設定し、
管理職クラスでの採用の場合は社内の昇格要件を適用している。

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 ■■■ 「なんで今さら」社員から怨嗟の声 ■■■ 
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 ファーストリテイリングも2020年の連結売上高目標5兆円のうち海外売上高4兆円の達成
に向け、海外出店数の拡大に乗り出している。
2011年度の新卒は国内外で約1000人を採用するが、うち日本人は250人だ。

 社内公用語化のスタートは2012年3月。

ただし、楽天と違い、母国語が異なる社員が会議に一人でもいれば英語を使うことになるが、
日本人同士の場合は使う必要がない。

 全社員にTOEIC700点以上の取得を義務づけており、現在、店長や本部社員の全社員
約2000人が、週10時間以上の英語研修を受講している。会社の全額負担であるが、
TOEICのスコアが一定以上に上がらないと自己負担になる。

 しかし、公用語化するにしてもビジネス現場で活用することがなければ、負担感だけが残り、
仕事に対する意欲も低下しかねない。楽天の業態はインターネットビジネスであり、
それほど海外要員を必要とするわけではない。
それでも同社の人事担当者は

「公用語化の副次的効果としてコミュニケーションの効率化と世界規模のアイデア、
ノウハウの共有が可能になる」と指摘する。

 だが、社員にはまだそうしたメリットが感じられていない。
同社の開発系の30代の女性社員は「会社がやれと言うから、やるしかないという雰囲気だ。
若い人はよい機会だからと一生懸命に勉強している人もいるが、年輩の社員は、
なんで今さら英語を、と文句を言いながらも必死にやっている。
家庭を持つ管理職は仕事も忙しいうえに、終わると英会話学校にも行かなくてはいけない。
顔には出さないが、見ていてかわいそうになる」と語る。
 これに対して小売業のファーストリテイリングは、
現地の社員教育と全世界で通用するリーダーシップを養うために、
日本の全店長約1000人と本部の課長職以上の管理職100人の全員を今後5年以内に
海外に派遣する予定だ。

アジアや欧米の9カ国・地域で展開する約150店舗に異動し、
原則3年以上は駐在させる。すでに今年3月から100人を超える規模の社員が海外に異動する。

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 ■■■ 人材戦略なき英語要件設定は無意味 ■■■ 
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 一応、理屈は通っているが、いずれ海外は現地化していくだろうし、
国内の地方店舗で英語を使う機会が頻繁にあるとは思えない。
両社に共通するのは、中・長期的なグローバルな事業戦略はあっても、
社員のキャリアパスを含めた人材マネジメントの方向性が明確ではないことだ。
グローバル化に対応した賃金体系や育成システムの構築こそ求められているのではないか。

 もう一つ気になるのは、英語力が昇進や賃金など労働条件を左右する内容を就業規則に
盛り込む場合である。
実際の仕事で英語を必要としない社員にも適用することがはたして
合理的と判断されるのか微妙である。

 公用語化までは踏み込まなくても、英語を採用や昇進の要件にする企業も増えている。

人事戦略なき横並び的発想だけでは英語力の向上はおろか、
いたずらに社員を疲弊させるだけではないだろうか。
                                         (溝上 憲文)
 

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◆ 自己啓発支援への取り組み低下傾向〜

 厚生労働省が毎年度発表している「能力開発基本調査」は、
企業の従業員に対する能力開発の方針などを時系列で調査する報告だが、
能力開発という計数で結果が判断できる調査でないだけに、
マスコミや国民の関心が薄く地味な調査となっている。

 この調査は常用労働者が30人以上の約7,100企業(回答率44%)と、
回答のあった事業所で働く約2万人(回答率39%)の従業員を対象に、
昨年9月1日現在で調査されたもの。

 結果をみると、正社員に対する教育方針では、
「労働者全体の能力を高める教育訓練」を重視している事業所は53.5%と、
前回の平成21年度(49.5%)をやや上回り、「選抜した労働者の能力を高める教育訓練」を
重視している事業所は46.5%と前回(50.6%)を下回った。

 教育訓練の方法については、OJTを重視するは74.5%で、前回(70.8%)を上回り、
OFF−JTを重視する企業は25.4%で、前回(29.2%)を下回った。

 さらに、正社員の自己啓発に対して、支援を行っている事業所は62.2%で、
前回(66.5%)を下回り、支援の内容をみると、受講料などの金銭的援助(82.9%)が最も高く、
教育訓練機関、通信教育などに関する情報提供(45.4%)、
社内での自主的な勉強会などに対する援助(41.2%)と続いている。

 費用面では、教育訓練に支出した費用の労働者一人あたり平均額で、
OFF−JTで1万3,000円、自己啓発支援4,000円と、いずれも前回と同額であった。

自己啓発支援ではこの他、就業時間の配慮、教育訓練休暇の付与などがあげられている。

費用面で注目すべき点は、OFF−JT、自己啓発支援ともに前回調査とはほぼ同額だが、
前々回(平成20年度)調査と比較すると、いずれも半額にまで落ち込んでいることである。

 一般に不況の時こそ従業員の能力開発を怠ってはならないと指摘されるが、
企業経営の現実はそうならないという実情を調査結果は明示している。

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 ■■■ 時間と費用への対応が課題 ■■■ 
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 一方、従業員(正社員)調査によると、平成21年度にOFF−JTを受けた者は41.5%で、
実施したと回答した事業所割合の67.1%と大きく乖離している。
つまり、事業所に制度があっても、従業員側で費用問題や時間の関係で教育訓練を
遠ざけていることになる。

また、自己啓発を行った者も41.7%で、ここでも前々回調査の58.1%を大きく下回った。

ちなみに自己啓発を行った理由をみると、仕事に必要な知識・能力を身につけるため(85.1%)、

将来の仕事やキャリアアップに備えて(57.1%)、
資格取得のため(33.4%)で、自己啓発を行っている従業員の姿勢は前向きといえる。

 自己啓発における問題では、費用と時間(仕事が忙しくて余裕がないと6割弱が
回答している)が課題となっているほか、自己啓発の結果が社内で評価されないと
回答した従業員も2割弱いた。

 厚生労働省は公共職業訓練強化で、介護、福祉、医療、情報通信等の分野で
規模22万人の職業訓練を平成23年度予算案に計上し、求職者向けの能力向上策を
強化しているが、未然の離職者対策でもある在職者向けの職業訓練に対しては、
OFF−JT向けのキャリア形成助成金で対応しているが、事業仕分けにより、
在職者訓練の本丸であった錦糸町のアビリティガーデンの廃止(現在はサラ地で
高層マンション用に民間に売却)に象徴されるように、在職者訓練は企業が責任を
持ってやりなさいという姿勢である。

 ジョブカード、ビジネスキャリア、イエスプログラムなど、
    果たして民間企業はどう評価しているのだろう。
                                       (津山 勝四郎)


編┃集┃後┃記┃
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 厚生労働省が今年1月から「主婦の年金救済策」(注)を実施しました。

 この救済策に総務省年金業務監視委員会が、
「正直に国民年金に切り替えた人は未納分があっても救済されず、
年金を減額される可能性もあり不公平」と異論を唱え、
厚生労働大臣は「総務省の意見を聞いて検討する」と制度の見直しを表明しました。

求職者支援法案が2月10日に閣議決定され、国会に提出されました。

この制度は、雇用保険が切れた長期失業者等の就職に必要な職業能力の開発及び向上を

図るためで、公共職業安定所長の指示を受けて受講する場合に
「職業訓練受講給付金」として10万円(単身世帯)が生活費として支給されるものです。
2月10日、日本経済新聞の「職業訓練は二の次で生活費目当てとみられる相談も多く、

熊本県のあるネールアーティスト専門学校には中高年の男性が行列をなした。」を読み、
技術を習得しても就職できるのか疑問を感じました。

熊本県の最低賃金643円なら月155時間労働となり、
東京都(同 821円)で121時間労働となります。

また、前回のメルマガに津山氏が、
「ある民間テレビで放映していたが、どうみても体力健全、30代の若者二人が支給されている
生活保護費で朝4時頃までカラオケに酔っている姿は・・・」と執筆されていました。

働きたくとも健康面等から働けない方々については、国・国民が救済しなければなりません。
しかし、税金、社会保険料を一生懸命働いて納めている国民が不公平を感じる仕組みは
如何なものでしょうか。

 (注)国民年金第3号被保険者は、夫(妻)が厚生年金に加入し健康保険上の被扶養者
    の認定を受けている期間は、保険料を払わなくても基礎年金を受けられます。

    しかし、夫(妻)が厚生年金加入の会社を退職すると国民年金第1号被保険者に
    切り替え保険料を納めなければなりません。
    今回の救済策は、この切り替えをおこなわなかった人を対象に、
    直近2年間分の保険料を納めればそれ以前は納めたものとみなします。

                                                (白石)

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 発行者  雇用システム研究所 代表 白石多賀子
     東京都新宿区新小川町9番5号畑戸ビル   
     アドレス:info@koyousystem.jp

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