ゆとり教育世代の採用戦略(1)〜「一芸採用」〜
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┃\/┃ ★雇用システム研究所メールマガジン★
┗━━┛ 第118号
2012/02/01
http://www.koyousystem.jp
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連日厳しい寒さが続いております。
インフルエンザも流行っておりますが皆様いかがお過ごしですか。
雇用システム研究所メールマガジン第118号をお送りします。
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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥
◆ ゆとり教育世代の採用戦略(1)〜「一芸採用」〜
■プレゼン5分間と2回の面接で決定
■求める資質は「バイタリティ」
■“一番”であればナンパでもいい
(以上執筆者 溝上 憲文)
■9件の新規改正法案を上提予定
■改正パート労働法上提は見送り
(以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)
■[編集後記] (編集長 白石 多賀子)
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◆ゆとり教育世代の採用戦略(1)〜「一芸採用」〜
新卒採用の季節である。企業各社は優秀な学生を獲得するために、学校訪問や会社説明会などに奔走している。
だが、学生は就職氷河期と言われるが、企業側からすれば、これはと思う学生になかなか出会えないと嘆く声も多い。
そのために欲しい学生を獲得するために様々な工夫をしている。
数回にわたって企業の取り組みを紹介したい。最初は「一芸採用」である。
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■■■ プレゼン5分間と2回の面接で決定 ■■■
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富士通は2011年度新卒採用から通常の選考とは別枠で、学生時代を含めて過去に
高い実績を上げた学生を対象に“一芸選考”を実施している。
実績を上げた分野は問わない。スポーツや起業経験、NPO活動などなんでもいい。
選考プロセスも通常は適性検査を経て5段階の面接を実施するが、一芸選考では
適性検査もなく、わずか2回の面接で合否を下す。
面接では「なぜ富士通を志望したのか」、「将来どんな仕事をしたいのか」と
いったよくある質問はしない。まず最初の5分間で過去の実績について自由に
プレゼンしてもらう。その後、実績の内容を確認しながら、「挑戦するマインド」、
「実績に至るプロセス」、「その経験によって得た自信や自立心」などに主眼を置き、
30〜40分間の質疑応答を通じて評価する。
IT企業であるが、ITの知識がなくてもかまわない。
入社後に勉強する機会はいくらでもあり、あくまでも過去の実績だけを見て採用する。
スタートした2年前の応募者は379人。11年に12人が入社した。
2年目の2012年度採用では343人が応募、昨年の倍の24人に内定を出した。
採用者の顔ぶれも多彩である。明治神宮野球大会で優勝したチームのメンバーや
シンクロナイズドスイミング日本代表キャプテンなどのスポーツ系。
全国学生俳句大会で特選になった学生、国際的なビジネスコンテストで優勝した学生や
公認会計士試験に合格した学生もいた。
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■■■ 求める資質は「バイタリティ」 ■■■
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なぜ、富士通はあえて一芸選考枠を設けたのだろうか。
同社の採用担当者は「確かに通常採用枠には毎年8万人がプレエントリーし、
1万人が応募し、有名大学出身の優秀な学生も多い。しかし、一方ではゆとり教育
などの影響でおとなしい若者が増えている。
有名大学の学生よりももっとバイタリティのある元気で挑戦心を持った人材がほしい
という思いがあったと語る。
もう一つは、富士通がIT企業ということで当初からIT企業を志望する学生が
数多く応募してくるが「ITの知識は入社後の教育で修得できる。
従来、当社に応募しなかった層の幅広い人材を集めたかった」(採用担当者)という。
それでも当初はいったいどんな学生が応募してくるのか不安もあった。
だが、実際に面接すると、それぞれの分野で実績を上げた人だけに自信に溢れた
自立心旺盛な人材が多く集まったという。もちろん実績の高さだけではない。
「たとえば全日本ライフセービング選手権でボードレース優勝を果たした女性は、
たった一人で大学にライフセービング部を創設。部員を20人に拡大するなど多くの
困難を乗り越えて頂点に上り詰めるなど、実績につながるプロセスも人並み外れた
経験の持ち主ばかりです」(採用担当者)
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■■■ “一番”であればナンパでもいい ■■■
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じつは富士通が「一芸選考」をやるらしいと聞きつけて、富士通に選考方法を聞いて、
一足先に実施したのがソフトバンクである。
孫正義氏の会社だけにさすがにやることが早い。
同社では「NO.1採用」と呼んでいる。
通常の選考はエントリーシート提出や筆記試験を経ないと面接に進めないが、
NO.1採用はいきなり面接から始まる。学生時代に勝ち取った我こそは一番と思う
ものを5分間でプレゼンしてもらう。
NO.1以外は死を意味し、事業でトップを取ることが使命というソフトバンクイズム
にちなんだものであり、NO.1はなんでもいいという。
「スポーツや勉強はもちろん、ナンパは誰にも負けない、飲み会を仕切らせたら
一番とかでもいい。採用としてはNO.1になるために命がけで熱中し、そこで獲得
した経験なり、プロセスを聞いて評価しようというものです」(採用担当者)
2010年は約550人の応募があり、11年度に7人が入社した。その中にはゴルフの
全米女子アマオープンで優秀した人、技術系のコンテストで優勝した人など様々な
分野のNO.1が集まったという。
両社に共通するのは、「一芸採用」により、これまで会社を志望することはなかった
学生層、つまり新しい“鉱脈”を掘り当てたことだ。
今後、真似をする企業が出てくるかもしれない。
(溝上 憲文)
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■■■9件の新規改正法案を上提予定 ■■■
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第180回国会が始まっている。最大の焦点は消費税法案の動向である。
与野党共に消費税を上げる必要性を認めてはいるものの、そこは政局。
成立しても否決されても、次は解散・総選挙との見方が強い。
厚生労働省が今国会に上提を予定している改正法案は、9件で、1月30日現在、
既に2件の改正法案が上提されている。冒頭のように、国会が仮に解散ということ
になると、未審議の法案は廃案となるだけに、政治は一寸先が闇とは言え、
各法案の担当局は慎重にならざるを得ない。9件の改正法案を網羅する。
(1)雇用保険法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案
労働者の生活と雇用の安定を図るため、失業等給付及び雇用安定事業費の財源に
かかる暫定措置を2年間延長する(予算関連、上提済み)
(2)児童手当法の一部を改正する法律案
平成24年度以降の恒久的な子どものための金銭給付制度について所要の措置を
講ずる(予算関連、上提済みだが、国会前半の与野党対決法案)。
(3)国民健康保険法の一部を改正する法律案
国民健康保険制度の安定的な運営を確保するため、財政基盤強化策を恒久化する
とともに、財政運営の都道府県単位化の推進、都道府県調整交付金の割合の引き
上げなどの措置を講ずる(予算関連)。
(4)国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案
長期的な給付と負担の均衡を図り、年金制度を将来にわたって持続可能なものと
するため、平成24年度以降の基礎年金国庫負担割合を2分の1とするとともに、
老齢基礎年金などの年金額の特例水準を解消するなどの措置を講ずる。(予算関連)。
ここまでが日切れ法案(3月末までの成立が必要)ほか、予算関連法案で、
順調に審議が進めば4月中にも可決・成立する。
厚生労働省はこれら予算関連法案の審議開始前に、参院先議を含め、先の臨時国会で
継続扱いとなった、改正労働者派遣法、改正労働安全衛生法、国民年金法の一部改正案
(主婦年金追納法案)の3件の成立を意図しているが、消費税法案の審議状況との
からみもあり、予断できない。
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■■■ 改正パート労働法上提は見送り ■■■
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予算関連法案4件の後に5月連休明けからも審議に入いる5件の改正法案が続く。
(5)高年齢者等の安定等に関する法律の一部を改正する法律案
高年齢者の雇用の確保を促進するため、事業主が継続雇用制度の対象となる高年
齢者にかかる基準を労使協定により定めたときは、希望者全員を対象とする継続雇
用制度を導入したものとみなす現行の制度を廃止するなどの措置を講ずる。
(6)労働契約法の一部を改正する法律案
期間の定めのある労働契約について、一定の要件を満たす場合に、労働者の請求
により期間の定めのない労働契約に転換させる仕組を設けるなどの措置を講ずる。
(7)厚生年金保険法等の一部を改正する法律案
現行の年金制度について最低保障機能を強化するため、低所得者等の年金額の加
算、受給資格期間の短縮、高所得者の年金額の調整、被用者年金の一元化、産休期
間中の保険料免除、短時間労働者に対する適用拡大などの措置を講ずる。
(8)医療保険制度の安定的運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案
高齢者医療制度について所要の見直しを行うほか、所得水準の高い国民健康保険
組合に対する国庫補助の見直しなどの措置を講ずる。
(9)障害者自立支援法等の一部を改正する法律案
障害者基本法の改正を踏まえ、全ての国民が障害の有無にかかわらず共生する社
会の実現を図る観点から、障害者の自立した日常生活又は社会生活のための支援の
充実を図るため、障害者の範囲の見直し、地域生活を支援するためのサービス体系
の整備、その他の措置を講ずる。
以上が今国会に上提予定の9件だが、厚生労働省雇用均等・児童家庭局が労働政策審
議会雇用均等分科会に審議を委ねている短時間労働者の雇用管理の改善等に関する
法律の一部を改正する法律案は、前回改正の附則に「3年後の見直し」が盛り込まれ、
その3年後が今国会にあたることになるが、年金制度改正で短時間労働者の加入が
上提されていること、そして何よりも今国会の審議時間がどれだけ確保できるかの予定が立たないため、今国会への上提は見送られた。つまり、政府としては
「先が読めない」今国会と言える。
上提される9件も、予算関連法案以外はあくまでも予定で、複数の改正法案
の一括審議などにより、何件かの改正法案を成立させることを政府(厚生労働省)は
意図している。特に労働分野での改正法案は、事業主側の負担増となる法案ばかりで、
労使の意見調整も固まっているとは言い難い。
眼が放せない国会である。
(津山 勝四郎)
編┃集┃後┃記┃
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寒中お見舞い申し上げます。
小学館発行の「ビックコミック」の漫画をお読みですか?
知人から「労働基準監督官が主人公の『どらコーボク』が連載されている」と
メールをいただき、早速購入して読みました。
取材協力は東京労働局です。
私が読んだテーマは「通勤災害」で、ベテラン労働基準監督官と“労働Gメン”
に憧れて労働基準監督官になった新人のコンビが事実関係を調べていきます。
物語は、「労働者が通勤帰宅途中にバイク事故で怪我をして入院します。その妻が
労働基準監督署へ相談します。
当初、会社の“労災隠し”と思われる展開から、最後は労働者の私的立ち寄り後
の事故と判明して終わります。
難しいといわれる労働法関係を漫画でわかりやすく解説することにより、
労働者に起こりえる事案に関心を持ってもらうことは大切です。
情報社会での中、意識を高めていく労働者に対して、企業は法令を遵守し、
トラブルが発生しない雇用環境を整備することが急務となっています。
今後は、どのようなテーマを取り上げていくのでしょうか。
労務管理をされる立場の皆様も、関心を持っていただければと思います。
○労働基準監督官○
厚生労働省の職員で、労働基準法、労働安全衛生法等における捜査や逮捕権限を
もつ特別私法警察官です。 (白石)
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発行者 雇用システム研究所 代表 白石多賀子
東京都新宿区新小川町9番5号畑戸ビル
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