人事・労務に関する御相談は信頼と実績の雇用システム研究所

社会保険・労働保険の御相談は信頼と実績の雇用システム研究所

雇用システム研究所 トップページ雇用システム研究所 個人情報保護方針雇用システム研究所 メールマガジン雇用システム研究所 お問い合わせ
雇用システム研究所 >> メールマガジン >> 「組織を変え、人を変える」意識改革運動(1)

「組織を変え、人を変える」意識改革運動(1)
     〜良品計画・松井忠三会長の哲学〜

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏━━┓    
┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
┗━━┛                             第124号
                                 2012/08/01

           http://www.koyousystem.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

節電が叫ばれている昨今です。

猛暑の日々、熱中症対策として水分補給、塩分補給、そして睡眠を充分にとって猛暑を乗り切ってください。
雇用システム研究所メールマガジン第124号をお送りします。

==========================================================================

  □ 目次 INDEX‥‥‥‥‥
  
 ◆ 「組織を変え、人を変える」意識改革運動(1)〜良品計画・松井忠三会長の哲学〜

  ■教育だけでは社員の意識改革はできない。
  ■ビジネスモデルに基づく組織改革と仕組み作りが前提
  ■トップが体を張って最後までやり切る                  

                        (以上執筆者 溝上 憲文)

  ■最賃引き上げ「目安」は全国平均で7円  
  ■生活保護水準との比較に課題
         (以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)

  ■[編集後記]               (編集長 白石 多賀子)

==========================================================================

◆「組織を変え、人を変える」意識改革運動(1)〜良品計画・松井忠三会長の哲学〜

 ビジネス環境の変化により業績が低迷し、部門の統廃合など全社的な構造改革に
着手する企業が少なくないが、それだけでは会社は変わらない。事業構造改革と
並んで重要なのが、会社の体質や社員の働き方の変革を促す意識改革運動である。
組織競争力や事業競争力を強化するためにどのような意識改革の取り組みをしているのか。

 第1回目は西友と良品計画の人事畑を歩んできた良品計画の松井忠三会長の
社員の意識改革に対する考え方を紹介したい。

==========================================================================


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ■■■ 教育だけでは社員の意識改革はできない。 ■■■ 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 良品計画の松井忠三会長は、経営不振に陥った同社をV字回復させたことで知られる。

1999年まで右肩上がりに伸びていた同社の業績は2000年以降急落し、
02年2月期には大幅減益に陥った。01年に社長に就任した松井氏は経営体質を含めた構造改革に着手。大胆な業務の効率化や社員の意識改革など生産性向上に向けた
さまざまな取り組みを実施し、02年度から増収増益基調に転換させた。

 その松井氏の持論の一つが、教育では意識改革などはできないというものだ。

松井氏はこう語る。

「教育や制度の変更で意識改革はできませんし、無理です。
経営トップが体を張ってやらなければだめなのです。しかも、
一人が徒手空拳でがんばってもしょうがない。
組織を使い、仕組みをつくって実行しなければいけません」

 人事制度の改革はあくまで意識変革を促すツールにすぎない。

トップが全面に出て仕組みを作って実行してこそ意味がある。

じつは松井氏のこの考えは西友の人事部時代の苦い経験から生まれたものだ。

 松井氏が教育課の課長補佐時代の87年に「アクション25」と呼ぶ全社的な
経営改革運動があった。
当時の西友はイトーヨーカドーやイオンが台頭する一方で業績が低迷していた。
そこで再び成長軌道に乗せるために企業体質を改革しようとしたのである。

 事業構造改革と並行して経営幹部の意識改革を図ることになり、
松井氏がその担当になった。役員と部長の300人を対象に、都内のホテルでの
2泊3日の研修を行うことになったが、プログラムの内容は大変厳しいものだった。
事前に参加者の360度評価を実施したうえで、研修でその評価結果をぶつける。
つまり、一人ひとりが皆の前で自分の欠点を赤裸々に告発される。
それによって自分自身の評価との誤差を認識させ、行動を改めてもらおう
というものであった。

 7〜8人が1組となり、車座形式で椅子に座る。そのうち1人が評価を受ける。
仮に被評価者が部長ならば、残りの6人が上司の役員、同僚の部長、
部下の課長役になり、事前に実施した360度評価結果のデータに基づいて、
長所と短所を指摘していく。自分の評価とあまりに違うことに驚き、
ショックを受ける人も多かったという。

 松井氏としては、このぐらいのことをやらなければ意識改革などできない
という思いで企画したという。ところが、夜の懇親会の席に“出頭”を
命じられた松井氏は役員連中から口々に怒りの叱責を浴びたという。

「お前はなんでこんな研修を始めたんだ!」

「いったい何を考えているんだ。こんものが役に立つと思っているのか、バカヤロー!」

 本来なら研修を命じ、プログラムを了承した経営トップが矢面に立つべきであろう。

しかし、トップが旗を振ることなく一担当者の松井氏に任せた結果、
意識改革が実を結ぶことはなかった。結局、全社的な改革運動で
西友が息を吹き返すことはなく、低迷を脱却できないまま、後年、
外資のウォルマートに吸収された。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ■■■ ビジネスモデルに基づく組織改革と仕組み作りが前提 ■■■ 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 なぜ改革に失敗したのか。松井氏はこう語る。

「1つは総合スーパーというビジネスモデルが崩れだしているときに、
本質的な部分に改革の焦点が当たっていなかったこと。

本来ならビジネスモデルをどう修正するのか、
出店のやり方、店舗の作り方、販売の仕組み、それに対応する教育訓練を
どうするのかという点に注力しなければいけなかったのです。
その一環として意識改革運動を展開すれば、
たぶんうまくいったのではないかと思っています」

 この教訓は良品計画の再生に生かされた。2001年に社長に就任した松井氏は、
現場を知ることなくして経営改革はできないと考え、全国の店舗を回り、
店長たちとの対話を繰り返した。そこで浮かび上がった会社の構造や仕組みの
問題点を検証し、新たな仕組みを作り出した。その代表的なものが業務を
標準化した「ムジグラム」だ。

良品計画のV字回復は、まさにこうした仕組みづくりと対話による
意識改革が原動力となって実現したものである。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ■■■ トップが体を張って最後までやり切る ■■■ 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 会社の構造改革を成功に導くには、意識改革を含めて経営の実行計画を
経営トップが体を張ってやり切ることだと指摘する。

「経営の実行計画がはるかに大事であり、それを実行するとなれば自ずと
社員の教育体系をこう変えなければいけない、という方向に持っていくことが
大事です。例えばキャリアプランにしても、
経営のあるべき姿に基づいて入社後の育成計画が決まり、研修内容も決まってくる。
研修内容はその時々の経営のニーズに合わせて教育メニューを変えないといけません。


実行計画に基づいて確実に実施していくことが重要なのです」

 意識改革ありきではない。ビジネスモデルを描き、
そのために会社や組織をどう変えるのか。
そのビジョンに基づいて社員の働き方をどう変えていくのかかが意識改革の最大の
目的である。そのすべてのプロセスに経営トップが体を張って関わることなしには
成功しない。松井氏はそう言っている。

(溝上 憲文)

                                 
==========================================================================

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ■■■ 最賃引き上げ「目安」は全国平均で7円 ■■■ 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 厚生労働省の中央最賃審議会が7月26日、今年度の最低賃金(時給)の引き上げ
額の目安を小宮山厚労相に答申した。目安の全国平均引き上げ額は7円で、
平成23年度全国加重平均の737円から、平成24年度は744円になる見通しになった。

 周知のごとく、最低賃金は最低賃金法により労働者に保障される最低保障の賃金で、
労使代表と公益委員の3者構成による中央最低賃金審議会の小委員会で議論されるが、
労使の金額主張は毎年妥結することはなく、最終的には公益委員見解による
目安が示され、厚労相に答申され、この目安をもとに都道府県最低賃金審議会が
具体的な引き上げ額を都道府県労働局長に示し、各労働局長が10月施行を
目途に決定する。

 特にここ数年広がってきたワーキングプアの問題により、平成20年には最低賃金
と生活保護水準との逆転現象の解消することを定めた改正最低賃金法が施行されて
以来、翌年度の生活保護水準の見直しで、一度は解消した逆転現象が再び
生活保護水準の方が高くなるという、いたちごっこが特に東京都などの大都市圏で
続いている。昨年度の逆転現象は最低賃金の引き上げで3道県に減っていたが、
今年度の生活保護水準の見直しで再び11都道府県に増えた。

 生活保護水準の変動は主に住宅扶助実績値の変動が主因となるもので、
最低賃金(各都道府県の最低賃金額で月173.8時間働いた場合の税・
社会保険料を考慮した可処分所得の総所得に対する比率0.849を乗じた金額)が
前年度の生活保護水準を下回ったのは、
北海道、青森、宮城、千葉、埼玉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫、
広島の11都道府県となり、乖離額から今年度の引き上げ額では逆転現象が解消
しないことになる。仮に平成23年度の引き上げ額と同額の引上げ額が今年度実施
されたとしても、北海道16円、青森3円、宮城18円、埼玉3円、千葉2円、東京4円、
京都6円、大阪8円、兵庫5円、広島6円の逆転となり、
かろうじて神奈川だけが生活保護水準と同額となる。東日本大震災による
青森と宮城は特別としても、今年度の引き上げだけでは解消できず、
2年度間もしくは3年度間での解消を目指すことになる。ただし、
その間に生活保護水準が引き上げられれば、いたちごっこは続くことになる。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ■■■ 生活保護水準との比較に課題 ■■■ 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 小委員会での労働側意見は、元々が政労使で合意された雇用戦略対話に盛り込まれた
「全国最低800円」の確保と生活保護との乖離解消にあり、
経営側意見は雇用戦略対話における合意の前提となる経済成長率は実績値を用いるべきで、
平成23年度はマイナス2.0%であることから、議論に及ばないと強く主張するとともに、
生活保護水準が毎年逃げ水のように上昇を続けており、最低賃金と生活保護水準の
整合性の在り方そのものの再議論が必要であるとしている。一方、公益側意見は
最低賃金法第9条第3項の趣旨に基づき、「できるだけ速やかに解消を図ることが適当」
として、最低賃金と生活保護水準の比較そのものの議論の必要性には言及していない。

 7月26日の中央最賃審議会の答申後のマスコミ報道も、
各社が「生活保護水準との乖離解消のための最低賃金引き上げが緊急課題」との一色で、
わずか1社が社説において、国庫負担が3兆7000億円にもなる生活保護の認定基準の
見直しを訴えていた。また、芸能界における親への生活保護支給が国会において
とりあげられたのも耳に新しい。

 もちろん、働らく人にとって賃金は高いに越したことはない。

だが、その引き上げ基準の目安が、生活保護水準との比較のみが過大視され、
中小企業の支払能力、ずっと下がり続けている労働者の実質賃金動向、
そして生活保護支給の緩るい認定基準の見直し、
等が反映されているとは言えない現状は、単年度という短かい視点ではなく、
次の最低賃金法の改正、生活保護法の改正に向けて、労働力提供による賃金と、
働らくことができないから憲法に基づく生活保障となる生活保護を、
同じ土俵で議論する整合性そのものを議論する必要があるのでは。

3兆7000億円の何%かを、小手先の助成金制度でなく、
第3のセーフティネットといわれる求職者支援制度の拡充に手当することで、
生活保護受給者を減らすことである。本当に生活保護が必要な人のための
生活保護支給であるのなら、最低賃金を上回ったとして、
問題はないと思うがいかがだろう。          (津山 勝四郎)


編┃集┃後┃記┃
━┛━┛━┛━┛********************************************************

 2011年の合計特殊出生率が1.39と発表されました。人口を維持するために
は2.07程度が必要とのことです。

また、2011年の平均寿命では、女性の平均寿命が27年ぶりに
世界一の座を明け渡し第2位(85.9歳)、
男性は前年4位から第8位(79.44歳)となり、
大震災と20代の自殺が増えたことが影響しているとみられています。

2012年版の「高齢社会白書」では、65歳以上の高齢者人口は23.3%を占めています。
学校を卒業した子と同居する60歳以上の親のうち、
子の生活費の全部または一部の面倒をみている親は62%とのことです。

津山氏の「最賃引き上げ『目安』は全国平均で7円」に
今年の最低賃金について詳細が述べられていますが、
各都道府県の最低賃金審議会がスタートしました。

8月、猛暑のなか、熱い論議が戦われることとなりました。      (白石)


-------------☆  ☆  ☆ --------------

 発行者  雇用システム研究所 
 代表 白石多賀子 東京都新宿区新小川町9番5号畑戸ビル
 アドレス:info@koyousystem.jp

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 


 今週のメールマガジン第124号はいかがだったでしょうか。  
お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容充実していきたいと思います。 
ご感想は info@koyousystem.jp にお願いします。

「こんな記事が読みたい!」というリクエストも、遠慮なくどうぞ。

次回の配信は9月初旬頃情報を送らせて頂きます。 

e-mail: info@koyousystem.jp 

[過去のメルマガ随時更新]http://www.koyousystem.jp 
=================================================================
メールマガジンの配信が不要な方は、お手数ですが、   
こちらhttp://www.koyousystem.jp/mail_magazine.html から
配信停止を行って下さい。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ・『雇用システム研究所メールマガジン』に掲載された情報を許可なく転載することを禁じます。


雇用システム研究所 事業案内
雇用システム研究所 組織づくり
雇用システム研究所 人事制度
雇用システム研究所 教育・研修
雇用システム研究所 メンタルヘルス
雇用システム研究所 お客様向けサービス
雇用システム研究所 個人情報保護方針
雇用システム研究所 お問い合わせ
雇用システム研究所 事務所所在地




Copyright(c) 1998-2015 KOYOU SYSTEM Co.,Ltd. All rights reserved.