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最新コア人材育成法(4)
     〜帝人の選抜型経営幹部候補の育成術〜

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┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
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                                 2013/05/01

           http://www.koyousystem.jp
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ゴールデンウィーク真っ只中、
若葉が薫る頃となりましたが、いかがお過ごしですか。

雇用システム研究所メールマガジン第133号をお送りします。

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  □ 目次 INDEX‥‥‥‥‥
  
 ◆ 最新コア人材育成法(4)
〜帝人の選抜型経営幹部候補の育成術〜

  ■執行役員の8割が選抜研修の「認定者」
  ■人事考課上位30%以内から厳選
  ■選抜から漏れた人材の底上げにも注力           
       
                       (以上執筆者 溝上 憲文)

  ■空回りする解雇ルールの議論  
  ■人事労務管理の実態と強い連関

            (以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)

  ■[編集後記]               (編集長 白石 多賀子)

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◆最新コア人材育成法(4)
  〜〜帝人の選抜型経営幹部候補の育成術〜〜

 年功序列制度が崩れ、優秀な人材を早期に育成し、戦力化する企業が増えている。
かつては昇格・昇進の年次制限を設けて同期に一律の研修を施し、
じっくりと育て上げる教育法が主流であった。だが変化の激しいビジネス環境や海外との競争に対応するために、選抜型の経営人材の育成が加速している。

従業員5000人以上の企業では4割が選抜型研修を実施しているとの調査もある
                         (日本生産性本部)。

今回は帝人の取り組みを紹介する。


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 ■■■ 執行役員の8割が選抜研修の「認定者」 ■■■ 
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 帝人の人材育成は入社後からきめ細かい仕組みを用意している。
同社は持株会社の下に炭素繊維、樹脂、フィルムなどの各事業会社がある。
まず、新入社員は育成の観点から持株会社に在籍したまま各事業会社に出向し、
5年経過した段階で個々の適性を見て転籍する。

 そして入社後10年の間に営業、技術、スタッフなどの職種の分野で専門性を
身につけさせるのがSDP(スペシャリティ・ディベロップメント・プログラム)
と呼ぶ教育プログラムだ。グループ企業横断で実施され、
この10年間は「アウトプットを求めるのではなく、10年間は“ただ飯”でもいい。
じっくりと専門性を磨く期間」(同社人事担当者)と位置づけている。

 その後は30歳代の中堅社員と初任管理職を対象にしたSLP
(ストラテジック・リーダーシップ・ディベロップメント・プログラム)、
課長クラスの「ストレッチ(Stretch)2」と部長クラスの「ストレッチ1」の
3つの選抜型研修コースを用意している。
いずれも研修期間は3年間。毎年、SLPが40人、ストレッチ2が約30人、
ストレッチ1が約15人程度選抜される。

 選抜された社員は「認定者」と呼ばれ
「ストレッチ2は部長や事業部長などの幹部候補、ストレッチ1は役員候補という
位置づけ。必ずしもストレッチを経ないと役員になれないということではないが、
先々の役員という意味ではストレッチ1から選ばれる可能性が高い」(人事担当者)
という。実際に02年からスタートしたストレッチ修了者が執行役員の
8割を占めている。


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 ■■■ 人事考課上位30%以内から厳選 ■■■ 
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 選抜されるには、所属する各事業グループ長の推薦を得る必要がある。

推薦の要件は該当する社内資格を満たし、なおかつ人事考課が基本的に
上位30%以内であること。
加えて、厳密ではないが、ストレッチ1と2は48歳以下の社員を推薦するように
依頼している。課長、部長層になるとどうしても年齢が高くなる。
40代の役員を輩出していくためには、課長や部長という職務の要件を緩和し、
若手を数多く入れていく方向にある。

 推薦された社員はさらに2段階の審査を受ける。
ストレッチ2の候補者は各事業グループ長が集まる人事会議での承認を受けた上で、
執行役員クラスの選考委員6人によるプレゼンの審査を行う。
ストレッチ1の候補者は取締役で構成する人事会議でプレゼンを行い、それによって
認定するかどうかが決まる仕組みになっている。

 ストレッチ研修は経営マインドの醸成を目的に、直面する経営課題を学ぶ
集合研修や他社のトップレベルとの交流を行う外部研修が主体となる。
一方で語学力に関しては3年間でTOEIC730点以上、もしくは会話能力を計る
TSSTのレベル5以上を必達目標にしている。

 もちろん研修だけでは経営人材は育たない。
修了に関係なく研修期間中でも現在の仕事を外し、より責任の重い業務に配置して
鍛えることもやっている。社員の異動の権限は事業グループ長が持つが、
ストレッチ認定者は帝人本体のCEOが人事権を持つ。
優秀な社員ほど事業会社は手放したくないと思うものだが、それを排除するために
人事権を持株会社のトップに持たせている。

「重点戦略事業に優秀な人材を配置し、鍛えるとともに成果を出させることは
育成する上で非常に大事だ。認定者の戦略的育成で重視しているのは、
海外でのビジネスの経験を積ませること、一つの事業だけではなく複数の事業を
経験させること、もう一つは営業にとどまらず、管理部門など複数の機能を経験
すること。
この3つの経験をしているかどうかを確認し、配置を実施している」(人事担当者)



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 ■■■ 選抜から漏れた人材の底上げにも注力 ■■■ 
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 ストレッチ認定者は所属の事業グループを超えて異動し、
今までの違う事業・職務を経験しながら経営幹部の道を歩むことになる。
ストレッチの受講者は約120人。同社の中核事業会社の課長クラス以上の約15%に当たる。
もちろん、認定されなくても昇進は可能であるが、経営に関する知識の教育と配置
による事業経験の厚みを考えても認定者が有利であることは間違いないだろう。

 だが、推薦を受けて「認定者」となるのは一部の社員。選抜から漏れた社員の
モチベーションがどうなるのか気になるが
「選抜された社員は当然、選ばれていることは知っているが、周囲には基本的に
誰が選ばれているかは積極的にオープンにしていない」(人事担当者)と配慮を
示している。

 同社はライン管理職の新陳代謝や活性化を促すために、役割や職責を評価して
昇格・降格する「役割等級制度」を導入している。これによって年齢に関係なく
有能なマネジメント職の適材適所の配置を実現するとともに、
それと別に特定の専門技能を持ち、成果を発揮する社員を「高度専門職」という
役割を設けて処遇している。技術・事務職に限らず有能な高度専門職は、
課長職と同等に処遇し、モチベーションを高めようとの狙いがある。

 選抜型経営人材の育成と併行して、
中堅人材の全体的な底上げも図ろうとしているのも同社の特徴だ
                              (溝上 憲文)

                                 
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 ■■■ 空回りする解雇ルールの議論 ■■■ 
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 政権交代から4カ月を経過し、新政権は政策の内容もさながら、
実行までのスピードを重用視していることは評価されてよい。
特に働く人のための生活が第1と主唱してきた前政権では、働く人のために
推進される労働政策において、無知と未経験からくるスピード感の欠如は、
労働者派遣法、労働契約法、高年齢者雇用安定法などの改正が行われたにせよ、
パート労働法改正、労働安全衛生法改正が積み残しとなった。

 スピード感欠如の原因はその時の与党首脳の国会運営の不手際にあるが、
特に閣僚の失言によって何度も国会審議が止まったことにある。
また、具体的に国民の眼にはとどかないが前政権が中央官庁の官僚を使う能力・
識見がないことをよそに、官僚を敵とみなし、官僚の志気をそいだことにある。

 政権が変わり、「行政推進のスピードは相当早くなった」(厚労省首脳)
ことは、中央官庁といえど、人の組織である以上、
働きやすい環境がいかに業務推進に大きな影響を及ぼすのかという格好の例
となった。
政治判断が必要でない政策実行は現場に任せる度量が組織のトップに求められるのは、
何も政治と行政の関係だけではないが。

 さて、政権交替の目玉である政策推進のための
“3本の矢”を具体的に推進していく産業競争力会議と規制改革会議では、
人材力強化と雇用制度改革について議論が進められているが、
一部マスコミによって解雇ルールの明確化、すなわち解雇補償金制度の創設が
近々にも実現するかのような報道がなされている。
特に保守層を中心とした経営者側に足場を置く何紙かは、安倍総理や
甘利経済再生担当相が「当面は早急で単純な金銭解雇制度の導入は考えていない」
と国会答弁した翌日の朝刊にまで、一方的な経営者側に立った報道記事を掲載しており、
これに注目した民主党議員が厚生労働省労働基準局に対して
「総理の真意はどこにあるのか説明して欲しい」と連絡してきたという。

もちろん一官僚に総理の真意を説明できるはずもない。

 事の始まりは、3月15日の第4回産業競争力会議において、
雇用制度改革のテーマ別会合で長谷川閑史主査(武田薬品社長)が
「雇用維持型の解雇ルールを世界標準の労働移動型ルールに転換するため、
再就職支援金、最終的な金銭解決を含め、解雇の手続きを労働契約法で明確に規定する」
とした上で、「民法627条に明記されている解雇自由の原則を労働契約法にも明記し、
判例に基づく解雇権濫用法理による解雇ルール(労働契約法第16条)を見直し、
どういう場合に解雇を禁止するか、あるいは解雇の際に労働者にどういう
配慮をすべきか、といった規定を明文で設けるべき」と強調し、
「その際、若手・中堅世代の雇用を増やすため、例えば、解雇人数分の半分以上を
20代〜40代の外部から採用することを要件付与する等も検討すべき」
との個人的見解を述べた。

 まことに経営者らしい発想に前記の一部マスコミが飛びついた。

 さらに3月28日に開催された規制改革会議の雇用WG第1回会合において、
鶴光太郎座長(慶応義塾大学大学院)が、労使双方が納得する解雇規制の在り方
について、今後の議論のポイントとして、地域・職務限定型の正社員の雇用ルールの
整備、整理解雇四要件のあり方と解雇補償金制度の創設、をあげた。

マスコミの報道を一般国民は「金銭提供により経営者はいつでも労働者を解雇できる」
と理解できるような記事も掲載されただけに、一般国民だけでなく、
冒頭の民主党議員のような動揺もあった。


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 ■■■ 人事労務管理の実態と強い連関 ■■■ 
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 言うまでもなく、解雇には労働者側の理由による懲戒、普通の二つと、
使用者側の理由による整理、の3分類があり、
解雇に関する一般的ルール(解雇権濫用法理)として、
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、
その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法第16条)がある。

 厚生労働省の考え方も、解雇権濫用法理の見直し要求については、
「解雇権濫用法理は、個々の人事労務管理の実態に対応し、労働者の雇用継続に
対する期待が、保護すべき合理的なものであるかどうかを個別のケースごとに
司法判断するもの」との基本的認識で、雇用システムの実態を変化させることなしに
解雇規制を緩めることは困難で、これまでの人事労務管理の下で働いてきた
正社員について、期待権を著しく侵害することになり、大きな混乱を招くとした上で、
「そもそも労働契約の出口のとこだけで経営側の意見に追従していくのは、
行政としてアンフェアになる」(厚生省首脳)と、早期導入には慎重な意見である。

 そもそも、金銭解決制度については、諸外国の立法例で、
一定額の支払いをすれば使用者は労働者を解雇できる旨の制度を導入している国はなく、
例えば、ドイツなどの金銭解決制度は、裁判所で解雇無効とされた場合の救済方法として、
原職復帰の代わりに一定の金銭を支払うことで労働契約を解消することを選択できる
制度を設けている国はある。
そのドイツでも使用者側からの申立については使用者側に相当の補償金の支払いを
命じる厳格な運用がなされている。

 産業競争力会議や規制改革会議が解雇規制の緩和を主張する理由の一つに
労働力移動の円滑化による多元的な働き方へのシフトがあげられている。

 4月23日に開かれた産業競争力会議では、金銭解決制度の導入には否定的な
意見が多く、翌日のマスコミ報道も各社の思惑で掲載されているだけで、
6月の成長戦略に何が盛り込まれるのかは不確定。「失業なき労働移動」、
「待期児童ゼロ」という台詞は10年前から言われている。

せっかく政権が変ったのだから、もうそろそろ言葉の遊びはやめようよ、
というのが国民の気持ちだろう。

 厚生労働省は今後の成長のための八つのアクションプランを策定しており、
その中の多元的な働き方の普及、拡大策として、これまでの正社員と非正規労働者
という二極化を分散し、正社員と非正規労働者の中間労働者の位置に、
勤務地限定正社員、職務・職種限定正社員、短時間正社員、専門職型派遣などを
導入するとともに、この3分類間を固定化せず階段を昇り降りできる仕組みの構築、
また、4月19日の総理記者会見にあったように保育体制の強化を中心とした
ワークライフバランスの促進なども展開していく。

 自民・公明の与党は昨年の総選挙において多くの長老と呼ばれる議員が引退し
(もう少し残っているが)、いわゆる業界、団体からの拘束から解放され身軽に
なっている分、政策展開のスピードに現れている。政界だけでなく経済界、
学界など各分野において昭和後期を動かしてきた世代は
そろそろ身を引く時にきているのでは。

                            (津山 勝四郎)


編┃集┃後┃記┃
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 皆様の職場では、新入社員の皆さんは元気で働いていますか。

 新たな夢や思いを描いてやる気満々で入社した新入社員が、
職場環境に適応できず“うつ病”等の症状が「5月病」といわれる
ゴールデンウィーク明け頃から発症することが多いです。

 新入社員の“うつ病”では、
「将来、会社の経営陣になる目標をもって入社したが、最初の配属先が工場勤務で夢破れ、
会社は自分を正しく評価していない」と発症した例があります。

多分、会社は幹部候補生として早めに現場の状況等を学んで欲しいから
工場勤務を命じたと思われます。

 4月1日の日本経済新聞社の「私の履歴書」で、
JXホールディングス相談役の渡文明氏が、ご自身の新入社員時代を振り返って
「新入社員研修後に新潟製油所勤務を命じられ、島流しに遭うようなイメージで落胆した」
と述べています。
その新潟時代はよく学び・遊び、その後の糧になったようです。

 大学新卒者の早期退職は「3年で3割」と高いため、
新入社員の定着を目指してメンター制度を導入し、メンタル面も含めて
手厚くサポートする企業が増えてきました。

日本能率協会の「2013年度新入社員『会社や社会に対する意識調査』結果のうち、
新入社員に対し上司や先輩に「どのような対応(指導)を期待しているのか」の回答では、

1.頻繁にコミュニケーションを取ってくれる  50.1%
2.チャレンジする機会・場を与えてくれる   42.0%
3.仕事について事細かに教えてくれる     31.7%
4.困ったときは助けてくれる         29.9%

 上司世代では、「仕事は先輩の仕事の仕方を盗め」や「チャンスは自分でつかめ」等で
経験を積んでこられたでしょう。

今は、仕事の質や量が変わり、また育った時代環境が違います。
きめ細かなコミュニケーションをお願いします。

                                   (白石)


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 発行者  雇用システム研究所 
 代表 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
 アドレス:info@koyousystem.jp

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 今週のメールマガジン第133号はいかがだったでしょうか。  
お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容充実していきたいと思います。 
ご感想は info@koyousystem.jp にお願いします。

「こんな記事が読みたい!」というリクエストも、遠慮なくどうぞ。

次回の配信は6月初旬頃情報を送らせて頂きます。

e-mail: info@koyousystem.jp 

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