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“65歳定年制”時代の再雇用・定年延長制度(2)
     〜大和ハウス工業の取り組み〜

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┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
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                              2014/07/01

           http://www.koyousystem.jp
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早くも7月となりました。

突然の豪雨など天候の異変が続いています。
皆様どのようにお過ごしでしょうか。

雇用システム研究所メールマガジン第147号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆ “65歳定年制”時代の再雇用・定年延長制度(2)
    〜大和ハウス工業の取り組み〜

■経営トップの後押しで65歳定年を実施
■賞与制度の改訂で年収が増加
■61歳以降もライン継続、報酬アップ策を検討
(以上執筆者 溝上 憲文)

■「日本再興戦略」の展開

(以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)

■[編集後記] (編集長 白石 多賀子)

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◆ “65歳定年制”時代の再雇用・定年延長制度(2)
   〜大和ハウス工業の取り組み〜

 65歳までの雇用を義務化した2013年の4月の改正高齢法の施行を機に新たな継続雇用制度を打ち出す企業が増えている。

その中には65歳まで定年を延長する企業もある。
実質65歳定年制時代を迎え、高齢社員を積極的に活用したいとの狙いがある。
今回は2013年4月1日から定年年齢を65歳に引き上げた大和ハウス工業を紹介したい。

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■■■ 経営トップの後押しで65歳定年を実施 ■■■
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 同社は2012年度まで定年後の61歳以降の社員に嘱託再雇用制度を適用し、
原則希望者全員を1年更新により65歳まで継続雇用していた。
61歳以降は原則としてポストから外れ、60歳到達時の職能資格給に応じて
「専任部長」「専任次長」「専任課長」の専門職的呼称で呼んでいた。

 働き方はフルタイム勤務が前提であるが、労働時間は所定内労働時間内とし、
一部短時間勤務も認めていた。給与は60歳時の職位・資格給区分
(一般職クラス、主任クラス、課長クラス、部長クラス)に基づいて
金額を設定。
また、賞与は2ヶ月の固定としていた。
その結果、61歳以降の年収は、部長クラスは60歳時の40%、
課長クラスは50%の水準だった。

 だが、年収が下がったことで再雇用者のモチベーションが上がらない、
必要な人材の社外流出も発生するという問題も抱えていた。
そこで2013年4月から定年年齢を60歳から65歳に一気に引き上げることにした。

 その理由について同社の人事担当者は「何より経営層の理解があり、
経営トップを含めてあまり年齢にこだわっていなかった。

逆に仕事ができる人間を60代後半でなぜ切るんだと言っているほど。
当初は定年年齢を1歳ずつ延長していくことも考えたが、経営トップの後押しも
あり、やるのであれば一気にやろうということで65歳定年にした」と言う。

 トップの勇断で65歳定年制を導入したのはオリックスや
サントリーホールディングスも同じだ。
また、他の65歳定年企業は制度導入開始後に61歳を迎える人から対象になるが、
同社は嘱託再雇用している人についても希望者全員を正社員に戻した。


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■■■ 賞与制度の改訂で年収が増加 ■■■
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 65歳定年制になって大きく変わったのは給与水準だ。賞与の固定2ヶ月を60歳以前
と同様に業績連動型に変えた。
具体的には61歳以降の月例給×出勤率×支給率で決まるが、この支給率が事業所業
績と個人査定で変わるようにした。ただし、支給率は60歳以前の3分の2に抑え
ている。

 その結果、年収は部長クラスで60歳前の60%、課長クラスは70%の水準になる
ようにしている。
そのほか、退職金については退職一時金を以前と同様に60歳到達年度の翌年度に
支払うことにした。
支払い時には退職所得控除が適用される。
また、企業年金は60歳以降に退職した場合は受給できるが、65歳定年延長によ
り、加入者全員の同意を得て支給開始年齢を引き上げた。
当然、その間は年金額の積み上げが継続される。

 2013年の4月1日以降に61歳になった社員のうち定年延長で引き続き働いてい
る人が約85%。
2014月に61歳を迎えた人の約95%が引き続き働いている。
残りは体の具合や家庭事情などでリタイアしている。

 ところで賞与制度の支給率の改定で昨年の賞与は実際に増えたのか。
人事担当者は「61歳以降の社員の賞与については、60歳前の社員の標準額の
3分の2を想定している。
実際の昨年冬の社員の標準額は4.3ヶ月。
その3分の2が61歳以降の標準になるが、対象者の中でも評価が高かった人はか
なりもらったのではないか。
業績がよい事業所で査定が高い人は、
現役時代と変わらない賞与を受け取っている人もいるだろう」と語る。

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■■■ 61歳以降もライン継続、報酬アップ策を検討 ■■■
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 現在、65歳定年制の第2弾の改革を進めている。65歳定年制に移行後、
60歳を役職定年とし、61歳以降はポストを外れることにしているが、
60歳以前と同様にライン長を継続し、さらに報酬水準も上げていこうというものだ。

 具体的には「ライン長継続」「生涯現役」「シニアメンター(指導役)」の
3つのコースだ。61歳以降も引き続き、現役のライン長として働いてもらい、
報酬も従前と遜色のない形にしていく。
生涯現役は、営業職などのように自分はまだ現役でばりばりやれるという人のた
めのコース。
ライン長にはならないが、残り5年間を専門職として現役でやってもらう仕組みだ。

 シニアメンターは元部下や新任・後任の管理職を5年かけて指導するコース。
今まで培ってきたノウハウや人脈など自分の持てる能力を後任や後輩に引き継い
でもらいたいという思いがある。

「しっかりと引き継ぐには1〜2年の期間では無理。65歳まで5年かけて伝承す
る役割を担ってもらうことを考えている。
とくに『あの人がいるからお願いしたい』という人脈は簡単に引き継ぐのは難し
いし、時間をかけてちゃんと引き継げるように指導してもらう。
給与体系にも教育指導の対価として報酬を上げる仕組みを検討している」(人事
担当者)

 同社は将来的には「70歳現役社会」を目指しており、実質的な65歳定年に向け
たファーストステップと位置づけている。
「本来のあり方から言えば、60歳と61歳の間に制度上の違いを設けることがよい
のか疑問。報酬にしても同一労働価値同一賃金の考え方からすれば、能力が高い
のに報酬を下げるのはよくない。1970年代の55歳定年のときに目指していた
定年延長後の60歳の処遇と同じように、65歳定年であれば、
能力が高ければそれに見合った処遇をする
のが本来の姿だと思う」(人事担当者)

 61歳以降も同じ給与水準にすれば、当然、人件費は膨れあがる。
だが、同社は「仕事や役割に見合った働きをして、その結果、業績が上がり、
売上高が増えれば人件費原資も増えても問題はないはず」(人事担当者)
との姿勢を貫いている。

                            (溝上 憲文)
                            
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■■■ 「日本再興戦略」の展開 ■■■
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 安倍内閣が6月24日に閣議決定した「日本再興戦略」は戦略の鍵となる施策と
して、女性の活躍促進と働き方改革を総論で掲げたうえで、第二章となる3つの
アクションプランでは、

(1)日本産業再興プランのなかでは雇用制度改革と人材力の強化策として、
働き方改革の実現、予見可能性の高い紛争解決システムの構築、外部労働市場の
活性化による失業なき労働移動の実現、女性の活躍推進、若者・高齢者等の活躍
推進、外国人材の活用を具体的施策としている。

ちなみに3つのアクションプランとしては、
(2)戦略市場創造プランとして、国民の「健康寿命」の延伸、高品質な農林水
産物と食品を生み出す豊かな農山漁村社会、世界の多くの人々を地域に呼び込む
社会をあげ、
(3)国際展開戦略としては、対内投資残高倍増の推進体制強化、
クールジャパン推進体制の構築、などが盛り込まれている。

個々の施策をあげる。

-----◎女性の更なる活躍推進

 いわゆる「小1の壁」を打破し次代を担う人材を育成するため、現行の
「待機児童解消加速化プラン」に加えて
「放課後子ども総合プラン」を策定し、2019年度末までに30万人の放課後児童ク
ラブの受け皿を拡大するとともに、1万カ所以上の場所で放課後児童クラブと放
課後子供教室の一体化を行う。

 女性の働き方に中立的な税・社会保障制度への見直しは、税・社会保障・配偶
者手当等について予算編成の年末までに総合的に検討していく。

 さらに女性の活躍加速化のために、
女性の登用に関する国と地方自治体、
民間企業の目標・行動計画の策定、
女性の登用に積極的な企業へのインセンティブ付与等を内容とする新法を今年度
中に結論を出し、
次期通常国会への法案提出を目指す。

 女性の活躍推進策は実現のための施策がほぼ出尽くしており、残るは企業や出
産・育児後の
復帰労働者への男女共通の直接金銭援助が求められるほか、
何よりも社会や企業の受入れ側の意識改革が更に必要であることは、
先日の東京都議会での低俗な発言に象徴されている。

-----◎柔軟で多様な働き方の実現

 働き過ぎ防止の取組み強化として、法違反の疑いのある企業等への監督指導の
徹底と、目玉政策の1つとして、時間ではなく成果で評価される働き方を希望す
る働き手に応える施策として、一定の年収要件(少なくとも年収1,000万円以
上)を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者を対象とし
た「労働時間制度」を創設するため、次期通常国会を目途に所要の法的措置を講
ずる。

 マスコミ等が頻繁に取上げることから、騒ぎが大きくなっているが、
対象労働者数は一部大企業と産業分野に限られるため、
現在の管理・監督者にどれだけ上乗せされるだろうということと、
仮に年収1,000万円以上であれば、
所得把握を具体的にどう行い、高度な職業能力とは何を指すのか、など事務的課
題を多く含み、
現行の労働基準法、あるいは個別労働紛争解決法における紛争の温床になりかね
ない。

-----◎外国人が日本で活躍できる社会へ

 現行の外国人技能実習制度を見直し、対象職種の拡大、技能実習期間の最大3
年間から最大5年間への延長、受入れ枠の拡大などを来年度中に実施する。

また、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けた時限的措置とし
て、建設分野において、即戦力となる外国人人材の活用促進を図るための新体制
を導入するため、
造船分野も含めて来年度初頭から開始するとともに、
国家戦略特区における外国人家事支援人材の受入れ、
介護福祉士等の国家資格を取得した外国人留学生の卒業後の国政における就労を
可能とするため、在留資格の拡充を含む制度設計を年内目途に行う。

 外国人の登用は日本の労働人口構成上避けて通れない施策となるが、
以前から指摘されている賃金問題、社会・労働保険の適用など入管制度を含めた
行政機関の連携強化が求められる。

-----◎働き方改革の実現

 働き方改革の実現では、前出の働き過ぎ防止と時間ではなく成果で評価される
制度創設の他に、現行の裁量労働制を対象範囲や手続きを見直し、労働者が真に
裁量を持って働けるよう次期通常国会を目途に法制上の措置を講ずるほか、フ
レックスタイム制も見直し、
月をまたいだ弾力的な労働時間の配分を可能とする清算期間の延長、などを盛り
込み次期通常国会を目途に現行の労働基準法改正など法制上の措置を講ずる。

 既に動き出している「多様な正社員」については導入モデルの公表、
労働契約法の解釈の周知、就業規則の規定例など、制度の拡大・普及のための
政策的支援(予算措置)を来年度から実施する。

-----◎予見可能性の高い紛争解決システムの構築

 労働紛争解決手段として活用されている
「あっせん」「労働審判」「和解」事例を今年度中に
分析・整理し、労働者の雇用上の属性、賃金水準、企業規模等の各要素と解決金
額との関係を可能な限り明確にすることで、活用可能な方法・手段を1年以内に
整備するとともに、
今年度中に「あっせん」など事例の分析とともに、諸外国の関係制度・運用に関
する調査研究の結果を踏まえ、透明かつ公正・客観的で国際的にも通用する紛争
解決システムの在り方を来年中まで検討を進める。

 中央労働委員会では既に労働紛争の調整事例と解説を個別労働紛争事例とし
て、労働契約・就業規則における労働条件の不利益変更、
成果主義人事制度への変更、
労働関係の展開としては、パワーハラスメントと使用者責任、
試用期間終了後の本採用拒否、
有期契約労働者の雇止め、
事業場外みなし労働時間制の適用、
変形労働時間制における休日・労働時間の特定、など多数の事例を労働者側、使
用者側からの意見、関係条文等を細かく分析してホームページで公開している。

 行政機関は政権が安定していると判断すると動きが速い。
政情に対する公務員の嗅覚は長年訓練されてきているだけに、一般国民には予想
できないほど鋭い。
かつての中曽根内閣、さかのぼって佐藤内閣、
そして直近では小泉内閣、それぞれ後になって評価あるいは批判の的となるよう
な行政の動きがあった。
現在の安倍内閣がそれに匹敵していくかどうかは、財政、防衛、外交を含めて
もう少し時間が必要である。
前出の都議会議員、そして現職大臣の発言が、
かつての政権与党の驕りからくる自滅の再現とならなければよいが。

                            (津山 勝四郎)


編┃集┃後┃記┃
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 “富岡製糸場と絹産業遺産群”が世界遺産に登録されました。

 富岡製糸場は、明治政府による日本近代化のために設置された模範器械製糸場
で、中学校の教科書に写真入りで記載されていました。

 1987年(昭和62年)3月に操業が停止され、
2005年に市に無償譲渡するまでの18年間、民間企業の立場で片倉工業株式
会社は管理していました。

 当時の社長の「誰にも売りません。貸しません。壊しません」精神が引き継が
れ、建物が守られてきました。

操業停止から数年後に日本は長い不況時代に入ります。
工場管理に社員3人が常駐し、維持管理費に年間1億円前後かかったそうです。
そのような状況でも維持していただき感謝したいです。

 中学校の教科書に記載されていたページを思い出しながら尋ねたいです。

日本生産性本部による平成26年度「新入社員働くことの意識」調査結果で、
「人並みで十分」が今年度は更に増加し52.5%(昨年49.1%)となり、
担当者の分析では「将来が見通せず、リスクより堅実さを好む傾向の現れ」
とのことです。
 
 先週は久しぶりに「パートタイム労働者の人材活用」で外部講演を
2日間行い緊張しました。

 有効求人倍率が約22年ぶりの高水準となり「人手不足」状態、
時給単価を上げてもきつい仕事等には人が集まらない状況です。
企業は「パートタイム労働者が能力発揮できる環境を整備して活用する対策」
が求められています。

梅雨明けは7月下旬頃、最近は局地的に豪雨による想定外の被害が
発生しています。
皆様、体調管理が難しい時季です。呉々もご自愛ください。

                            (白石)


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発行者 雇用システム研究所
代表 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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今週のメールマガジン第147号はいかがだったでしょうか。
お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容充実していきたいと思います。
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次回の配信は8月初旬頃情報を送らせて頂きます。

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