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深刻な社員の介護問題と企業の取り組み(1)
     〜親の介護に直面する社員の増加と介護離職〜

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┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
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                              2014/09/01

           http://www.koyousystem.jp
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夏も終わり、気温も下がり涼しい気候になりました。

皆様いかがお過ごしでしょうか。

雇用システム研究所メールマガジン第149号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆ 深刻な社員の介護問題と企業の取り組み(1)
   〜親の介護に直面する社員の増加と介護離職〜

■40代後半以降世代は2人に1人が介護リスク
■経営リスクに直結する社員の介護不安
■短すぎる法定の介護休業期間
(以上執筆者 溝上 憲文)

■安倍総理の政治信条を創りだした背景は
■女性が活躍できる社会環境整備法案に着手

(以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)

■[編集後記] (編集長 白石 多賀子)

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◆ 深刻な社員の介護問題と企業の取り組み(1)
   〜親の介護に直面する社員の増加と介護離職〜

 経営者にとって中高年社員の「介護離職」リスクが現実の問題と
なりつつある。
ダイヤ高齢社会研究財団が上場企業15社の社員4320人に対して行った調査
(「超高齢社会における従業員の働き方と企業の対応に関する調査」
2014年3月、以下上場企業調査)を発表している。

その結果は、どこの企業にも共通する問題が浮き彫りになっている。

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■■■ 40代後半以降世代は2人に1人が介護リスク ■■■
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 夫婦の両親4人(単身者は2人)を対象に介護が必要な人数を1人以上抱えている割合は、「56〜60歳」層が最も高く23.5%。
ほぼ4人の1人の割合だ。次いで「51〜55歳」が21.3%、「46〜50歳」が15.8%である。

 これに近々介護が必要となる可能性がある親を加えると「51〜55歳」が最も高く51.4%と半分を超える。

「46〜50歳」も42.7%。2人以上の複数の介護の可能性があるとする
「51〜55歳」も28.6%に上る。

2人に1人が介護リスクを抱えていることになる。
この年代はいうまでもなく管理職世代。課長・部長職の平均年齢が45〜55歳に
集中している企業も多い。
会社の中核人材として事業の正否に関与し、部下の指導・育成などマネジメント
でも重要な役割を果たしている。

 30代が中心のイクメン世代と違い、介護休職などで職場を離脱すれば代替要員
もおらず、経営上の損失も大きい。さらに怖いのが介護による離職者の増加だ。

 両親が重度の要介護状態になった場合、離職の可能性が大きいと回答した人が
11.4%もいる。
男女別の内訳では男性7.1%であるが、女性は26.3%と高い。
自分が介護をしなければならないと自覚している女性が多いということだろう。

加えて被介護者との住居の距離(同居、近居、遠居)による離職の可能性の違い
は注目に値する。


 離職可能性が最も高いのは「同居」(26.6%)で、近居(14.6%)、
遠居(11.9%)をはるかに上回る。しかも男女別では、「同居」の女性が離職
する可能性が大きいと回答したのは43.8%、男性は19.4%である。女性の半分
近くが離職するかもしれないのだ。

 一般的に両親と同居している女性は親の助けを借りて、出産・育児と仕事の両
立がしやすいといわれるが、皮肉なことに同居している女性ほど介護離職が高ま
る結果になっている。せっかく育児との両立リスクを乗り越えた女性が再び介護
と仕事の両立で離職の危機に直面することになる。

 現在、2020年の女性の管理職比率30%の政府目標の達成に向けて各企業は
女性社員の活用を積極的に推進している。

仮に大多数の女性が管理職に昇進しても、
離職の危機が待ち受けていることになる。


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■■■ 経営リスクに直結する社員の介護不安 ■■■
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 個別企業でも総合商社の丸紅が40代・50代の社員に実施した調査(2011年)で
は「現在介護中」と回答した社員が11%。このうち80%が「主たる介護者」だと
いう。さらに今後5年以内に介護をする可能性があると回答した社員は84%に上
り、うち96%が
「将来直面する介護に何らかの不安をもっている」と答えている。

 この数字に危機感を抱いた同社は現在、介護支援策の充実を図っている。
最大の理由は社員約3000人のうち800人強を占める海外駐在員が介護で異動でき
なくなるという経営上のリスクと直結しているからだ。

 同社の人事担当者は「被介護者を抱える世代は海外の主要な役割を果たす社員
が多い。

介護に対する不安から海外の人事異動を躊躇してしまうことは会社にとっても大
きな問題であり、社員の介護問題は経営にも影響する」と語る。

 もちろん離職リスクは同居世帯に限らない。
遠距離介護の世帯にとっても同じだ。
現在の大企業の50歳代の世帯は専業主婦が多いので妻が介護の中心になれる。
しかし、30代、40代になるとフルタイムの共働き世帯が多く、
いずれ介護適齢期を迎える。

兄妹が少ない中で双方がそれぞれの両親の介護をせざるをえなくなり、
近くに呼び寄せることになれば同居と同じリスクを抱えることになる。

 仮に妻が介護を担うにしても夫も無傷ではいられない。
1人を介護するのに家族と介護のプロをあわせ、4人の手が必要という専門家の
意見もある。夫も介護に向き合わざるをえなくなり、心身が消耗することになる。
メンタルヘルスの不調や身体の健康を害することになれば、
会社の仕事も十全に果たすことはできなくなる。

 また、将来的には近年の晩婚化や未婚率の上昇も介護リスクを高める。
子供の教育期間と親の介護期間が重なり、公的介護施設に入れず、
高額の介護施設に入れようものなら教育費と
介護費用のダブルパンチに見舞われる。
独身者は自分が主たる介護者になるしかなく、
親の介護から逃げることはできない。


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■■■ 短すぎる法定の介護休業期間 ■■■
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 一方、介護に対する国・企業の支援体制は十分とは言えない。
法定の介護休業制度は要介護状態の対象家族1人につき93日まで取得でき、
休業中は雇用保険から給与の40%の介護休業給付金が支給される。

そのほかに年間5日の介護休暇制度がある。
上場企業調査では介護のために利用した介護休暇の取得者は5.5%、
介護休業に至っては0.6%。
介護者の90%以上が年次有給休暇を利用していると答えている。

 なぜ介護休業制度を利用しないのかについて、ある不動産会社の人事課長は
「親の介護をしていることが周囲に知られ、キャリアに響くことを恐れて言い出し
にくいのではないか」と推測する。50歳過ぎの管理職にとっては、
会社に知られることで部長や役員など幹部になるチャンスを逃したくないという
思いもあるかもしれない。

 そもそも法定の介護休業期間の93日では短く、それを使い切ってしまうことに
対する不安もあるとの指摘もある。現在、国や企業はもっぱら仕事と育児の両立
や女性の活躍支援などの施策の充実に注力している。介護支援に熱心な先進的な
企業でも取り組み始めたのはこの3〜4年にすぎない。
迫り来る社員の介護リスクにどう対応していくのか。

次回から企業各社の取り組みを紹介したい。
                            (溝上 憲文)
                            
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■■■ 安倍総理の政治信条を創りだした背景は ■■■
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 著名なドキュメンタリー作家である工藤美代子氏が一昨年に発刊した
「岸信介伝」が文庫本になって発売されたので読んでみた。

多少こじつけにはなるが、岸元総理は戦前戦中戦後の日本を吉田茂氏とともに
牽引してきた政治家であったことは誰も異論を挿まないだろうし、
現総理が父である安倍晋太郎氏よりも祖父であった岸氏から、さらに遡って
長州の松下村塾人脈からの影響を強く受けているのではないかとの筆者勝手の考
えから文庫を手にした。

 文中には、岸氏のエポックを成す60年安保闘争の折、デモ隊に邸宅を囲まれて
外出できなくなった時に、孫二人と遊んでいた逸話が紹介されており、
その一人が外孫として遊びに来ていた現安倍総理だった。
俗に内孫より外孫の方が可愛いと言われ、二人の孫が
「アンポ ハンターイ」と部屋を走り回っていたという、
微笑ましい小咄も盛り込まれている。

 外交問題、靖国問題、内政での政治手腕、そして直近では広島における大災害
時での対応、など批判されるのが判っていながらの行動は、そこに長州を中心と
した歴史上の思想家、そして母方の祖父につながる大政治家からの影響が、
安倍総理の政治信条に繋がっているのは否定できないだろう。

ちなみに工藤さんの文庫本には女性は殆ど登場せず、
岸氏の実弟である佐藤栄作氏の妻だった佐藤寛子氏が
時折コメンテーターとして登場しているぐらいだ。

 前置きが長くなったが、その安倍政権の大命題となっているのが、
およそ長州閥の歴史では無視されていた女性の登用と活躍推進である。

 6月に閣議決定された「日本再興戦略−改訂2014」では、
女性の活躍推進のための新たに講ずべき具体的施策として、
新たな法的枠組みの構築を掲げ、
「国・地方公共団体、民間事業者における女性の登用の現状把握、目標設定、
目標達成に向けた自主行動計画の策定及びこれらの情報開示を含め、
各主体がとるべき対応等について検討し、各主体の取組みを促進するため、
設定などの仕組みやインセンティブの付与など実効性を確保するため、今年度中
に結論を得て、国会への法案提出を目指す」ことが書き込まれた。

 さらに安倍総理は7月25日の日本経済再生本部の締め括り発言で、
実行へのスピード感の裏付けとして、

「秋の臨時国会に向けて、地方の創生と女性の活躍に係る法案を準備していきた
い」と発言し、工程の加速を各大臣に要請した。



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■■■ 女性が活躍できる社会環境整備法案に着手 ■■■
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 先の通常国会で次世代育成支援法とパート労働法の改正を成立させたばかりの
厚生労働省雇用均等・児童家庭局(局長は異例と言える労働出身の女性官僚が2
代連続就任。
また、予定より1年早く事務次官に就任した村木次官も留任、労働出身の男性局
長二人を退任させ、女性の雇用均等・児童家庭局長を、
本来は退任又は中央労働委員会事務局長就任となるところを、
本省の労働政策担当政策統括官として異動)では、夏休み返上で
労働政策審議会雇用均等分科会を開催し、
「女性が活躍できる社会環境の整備の総合的かつ集中的な推進に関する法律案」
の制度設計を臨時国会開会中の10月末頃までに議論をとりまとめる予定を組んで
いる。

 分科会に提出された資料では、第1条(目的)に続いて、
第2条の基本理念では、
(1)職業生活その他の社会生活と家庭生活との両立が図られる社会の実現
(2)女性がその有する能力を最大限に発揮できるようにする
(3)少子化社会対策基本法及び子ども・子育て支援法の基本理念に配慮する、

と続き、第3〜5条(国等の責務)、
第6条(法制上の措置-法施行後2年以内を目途)の次に第7条以下から基本方針を
明記している。
基本方針は第1に時間外労働等の慣行の是正(第7条)をあげ、女性の活躍や男性
の育児、介護などへの参加を妨げる時間外労働などの慣行の是正を図るため、時
間外・休日労働の大幅削減の促進と就業形態の多様化の促進をあげている。

 次に支援体制の整備(第8条)として、女性が人生の各段階における生活の変
化に応じて社会における活動を選択し、活躍できるよう、
保育、介護などに係る体制の整備・支援の促進、児童の遊び・生活・学びの場及
び療育体制の整備の促進などを図るとしている。

 第3は税制・社会保障制度の在り方(第9条)で、
女性の就業形態・雇用形態の選択に中立的な税制・社会保障制度の在り方につい
て検討し、結果に基づいて所要の措置を講ずるとしている。

 第4が法律案の目玉とも言える指導的地位への女性の登用促進(第10条)で、
平成32年までに指導的地位にある者に占める女性の割合を3割
(現在は企業規模100人以上の管理職に占める女性割合は、課長職8.5%、
課長級以上7.5%、部長職5.1%、全体の国際比較ではアメリカ43.7%、フランス
39.4%、イギリス34.2%、ドイツ28.6%、タイ28.2%などに対し日本は11.2%、
韓国11.0%)とすることを目指し、そのための実行計画の策定・改定、積極的改
善指導措置の実施の検討、情報取得のための環境整備、事業者への支援促進、女
性の活躍の阻害要因、社会に与える影響などについての調査研究の推進、などを
展開していくとともに、
第5として国民の理解・協力の促進(第11条)をあげ、国民、
とりわけ男性の理解・協力を促進していくことになる。

 総合的な連絡調整機関として「女性の活躍推進連絡会議」(第13条)を
関係行政機関の職員構成で設置し、実行計画の策定・改定・実施のための連絡調
整を行う。
どうやら、この連絡会議の法的権限と官邸の後押しが実行に向けた
鍵を握りそうだ。

トップ層の女性の登用促進のための絵柄は現行の法制度の見直しを含めた整備と
目標設定である程度見えており、
民間側も経団連を中心に女性の活躍推進を加入企業中心に展開している。
政界、官界、大企業では少しずつでは進んでおり、
平成32年までには数値上の結果は目標に近づいていくだろうが、
課題は目標値にある女性管理職以外の女性労働者の就業状況だ。

現在、女性の雇用者数は2406万人(平成25年)で、
女性の割合は雇用者総数の43.3%を占めるまでにきたが、
男女間の賃金格差は勤続年数、年齢や学歴などを調整した数値をみても
男子の71.3%(厚生労働省推計)となっており、
ここでも欧米各国より10ポイント近く低い。

また、正規社員における女性従業員の割合は、1〜29人で36%、
30〜99人で32.6%であるのに対し、
1000人以上では23.3%、500〜999人では29.1%と、大企業ほど低いという、
管理職登用割合とは逆の数値となっている。

政府の目標設定が大企業や官庁などの大規模組織に片寄ることなく、国民全体、
全女性労働者への底上げにも十分留意して施策展開していくことが望まれる。
「上層部で実現していけば、下部労働市場にも浸透していく」との一部意見を聞
くと、「画餅にならなければ・・・」と想いが強くなる。

8月26日に決定した厚生労働省の平成27年度予算概算要求では、
女性活躍推進のための新法に合わせて、課題の調査や行動計画を策定し公表した
企業に対して、
企業規模に応じて15万〜20万円を計1200社に助成する事業予算として
4億4000万円を要求している。

                            (津山 勝四郎)


編┃集┃後┃記┃
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 先月20日に起きた広島大規模土砂災害には心が痛みます。

災害による死亡者数、行方不明者数が日ごと増加、
また巨岩・流木、二次災害の危険などから
復旧作業もままならない状態です。

狭い日本では平地が狭いため大雨の度に甚大な被害が発生していますが、
今年は特に災害に見舞われる地域が多いです。

謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

 理不尽な働き方を学生アルバイトに強いる「ブラックバイト」の言葉は、
中京大学の大内裕和教授が昨年から使い始めたそうです。
学生500人のアルバイトの実態を調べたところ、

・長時間労働
・販売のノルマを達成しないと自費で買い取り
・希望した日・時間を無視してシフトを組まれる。14日連続勤務のこともある
・正社員並みの義務や学生生活に支障が出るほどの重労働など

 過酷な労働による若者らを使い捨てにする「ブラック企業」対策として、
厚生労働省は、仕事が終わった夜間や土曜・日曜の休日に無料電話労働相談を今
月から開設しました。

 最近、「ブラック企業」のレッテルを貼られた企業では、
人手不足による店舗閉鎖をしています。

 正社員、非正規社員すべての労働者に対して、
雇用環境の整備・教育の実施が重要となっています。

                                (白石)

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発行者 雇用システム研究所
代表 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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今週のメールマガジン第149号はいかがだったでしょうか。
お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容充実していきたいと思います。
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次回の配信は10月初旬頃情報を送らせて頂きます。

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