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女性の活躍推進に向けた企業の取り組み(5)

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┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
┗━━┛                           第158号
                              2015/06/01

           http://www.koyousystem.jp
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皆様お元気でお過ごしでしょうか
これから夏日・真夏日の日々となります。
くれぐれも熱中症に気をつけ、水分補給・十分な睡眠を心がけてください。

雇用システム研究所メールマガジン第158号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆女性の活躍推進に向けた企業の取り組み(5)
   住友化学の取り組み〜

■2020年までに課長相当以上10%が目標
■直属上司も参加する「女性リーダー創生塾」
■メンター制度を通じて役員の意識も変わる
(以上執筆者 溝上 憲文)


■国会はいよいよ佳境に
■悪質な労働基準法違反も企業名公表
(以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)

■[編集後記] (編集長 白石 多賀子)

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◆女性の活躍推進に向けた企業の取り組み(5)
   〜住友化学の取り組み〜

 官民を挙げた女性の活躍推進の取り組みが本格化している。
政府は女性の活躍推進を最重要課題と位置づけ、「2020年に指導的地位に占める
女性の割合30%」の実現に向け、今通常国会に「女性活躍推進法案」を提出して
いる。しかし、企業の現場では制度の充実だけでは進まない女性の意識や男性管
理職の意識改革など重い課題が立ちふさがっている。今回は住友化学の取り組み
を紹介したい。

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■■■ 2020年までに課長相当以上10%が目標 ■■■
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 同社は中期経営計画(2013〜15年)の中で「ダイバーシティの推進」を重要な
経営課題と位置づけ、とりわけ「女性の活躍推進」を最重点テーマに据えて様々
な施策を進めている。

同社の女性課長相当職の比率は3.7%、
係長相当職11.6%(2013年度時点)とそれほど高くはない。
全従業員の女性比率が13.6%と低いこともあるが、
2020年までに課長相当以上の比率を少なくとも10%以上、
係長相当を15%以上にするというチャレンジングな目標を掲げている。

 だが、社員意識調査では管理職になりたい女性社員は13.9%、どちらかとい
えばなりたいが19.6%。合計でも3割にとどまっている。その結果について同
社の人事担当者は「女性社員の31%が目標となる人物の存在が必要と答えてい
る。これまで職場環境の改善などの施策を整備してきたが、一番の大きな課題は
女性社員自身の意識だと考えており、意識改革に重点をおいた施策に取り組んで
いる」と語る。

 その一つが2014年10月からスタートした「女性リーダー創生塾」。
係長相当職の24人を選抜。4つのセッションに分けて社内・社外の女性役員や講
師を迎えた意見交換、キャリアに対する考え方、部下とのコミュニケーションス
キル学習を実施。

最終的に自らの「キャリアプラン」と「アクションプラン」を作成する。


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■■■ 直属上司も参加する「女性リーダー創生塾」 ■■■
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 中でもユニークなのが上司と部下のペア参加による研修に組み込んでいること
だ。最後の4回目のセッションで直属の上司にきてもらい、手紙をサプライズで
部下に渡し、一緒になってキャリアのイメージを考えるという企画だ。人事担当
者は「最初はうまくいくかとても不安だった。手紙は彼女の良い点だけを書いて
ほしいと依頼したが、手紙をもらった女性のほとんどが感動したようだ。それを
きっかけに上司と相談しながらキャリアプランを作成し、最後に皆の前で発表し
たが、大変うまくいった。上司と一緒に気づきを得ることが本当は大事だと思
う」と指摘する。

 もう一つが役員による女性管理職のメンター制度だ。2013年にトライアル実施
し、14年度から役員8人と女性課長職8人で本格的にスタートした。
メンティは部長職候補者から選抜。その目的は「ロールモデルがいない中で、
女性社員の視野を広げて、上を目指してがんばろうという意識を高める」
(人事担当者)ことだ。

 メンター期間は原則1年。
女性の所属部署と異なる役員が担当し、年間5〜6回、メンティの職場を直接訪問
する。メンタリングの専門家ではない役員はとまどいもあるだろうが、依頼され
た役員は最初は嫌がるが、会社の経営課題に女性活躍推進を掲げているので断れ
ない。
 基本的には管理職の悩みなどの傾聴やアドバイスが主だ。内容について人事が
立ち入ることはない。半年を1タームとし、2〜3回の面談を実施。
原則として2タームを行うことになっている。

 東京の本社から社員のメンティに会うために地方の事業所に足を運ぶ役員もい
る。メンターの一人の役員は「年齢もポジションも違う私が訪問し、最初は相手
の女性も構えていたと思う。私自身、典型的な男性のキャリアを歩んできたし、
女性の仕事のキャリアがどういうものか、それに対する考え方や言葉すらも違
う。仕事の内容や家庭環境を聞くことから始めた」と語る。


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■■■ メンター制度を通じて役員の意識も変わる ■■■
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 男性中心の仕事をしてきた役員にとっては、メンタリングを通じて気づかされ
る部分もある。

「よくチームワークが大事と言われるが、自分が考えていたチームワークは男性
が集まってサッカーをしているイメージでそこに女性はいない。面談を通じて優
秀な女性が力を発揮することが会社の成長に貢献することを再認識した。じつは
昔も優秀な女性で家庭に入った人が何人もいた。非常に惜しいと思ったが、当時
は慰留しなかったが、今では本当に会社にとって必要な人材であれば男性と同じ
ように慰留し、活躍の場を与えるべきだと思う」(役員)

 メンターを通して役員の女性活用に対する意識も変化する。どこの会社にも
「女性にリーダーを任せられない」と言う男性幹部も少なくないが、役員は「た
ぶんその人は女性のある側面だけを見て身を処してきた人。それではいけない。
他の役員もメンターを経験すれば、女性の可能性に気づくと思う」と指摘する。
 そのほか「働く女性の立場を知ることができたという役員、違う分野の業務の
話や多様な考え方を知る貴重な機会を得たと評価する役員もいる」
(人事担当者)という。

 一方、メンティの女性にも好影響を与えている。
メンティの女性の一人は「管理職のイメージがリーダーシップを発揮して部下を
ぐいぐい引っ張るタイプなので私は性格的に違うなとずっと思っていた。
でもメンターの役員から管理職にもそれぞれの役割があり、強みもあれば弱みも
ある。自分の足らない部分は部下に補ってもらい、自分の強みを生かして自信を
持ってやればよいと言われ、安心した」と語る。

 また「経験豊富な人の話を聞いて新しい発想が生まれた」
「日頃の悩みを解決するきっかけが得られた」という声も上がっており、
メンター制度の評判も上々だ。
すぐに活躍推進に結びつくとは限らない地道な取り組みではあるが、
継続的に実施することで女性の意識を高めていくことが何よりも重要だろう。

  (溝上 憲文)

                            
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■■■ 国会はいよいよ佳境に ■■■
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 国会も6月に入り、安全保障法制の審議をめぐり、延長期間が30日間か、45日
間かがまもなく決まり、延長期間により、厚生労働省が上程している改正労働者
派遣法、改正労働基準法の審議状況に大きな影響が出る。それにしても、安全保
障法制の動向は、今後の日本の防衛体制を左右する重要法案だと思うのだが、労
働組合も学生も沈黙、特に労働組合は賃上げ問題で忙しいのか、意見提言さえし
ない。動きを見せているのは一部市民団体だけである。
一億総国民全て故大宅さんの指摘のようにならなければよいが。

 さて、労働法制をめぐる国会動向である。改正労働者派遣法は野党の主張する
廃案の根拠が官僚の失言に頼るようでは、あまりにも軽薄で無駄な抵抗と言わざ
るを得ず、成立はまず間違いない。官僚の失言というのは担当局の生田職業安定
局長の「成立が遅れると10月には派遣労働者の大量離職が出る」と言ったとする
言葉を指しているのだろうが、前回の改正派遣法成立の時期に、当時は派遣・有
期労働対策部長として連合の近江事務局次長(現UAゼンセン会長、次期連合事務
局長の有力候補)との折衝により成立にまで持っていった担当局長の言葉だけ
に、野党の指摘する短絡的な発言ではない。強行採決に及ぶこともあろうが今国
会での成立は政治スケジュールとして確実と言わざるを得ない。

 改正案そのものには、そもそも労働者派遣法の誕生以降から労働市場が荒れて
きた現実があるだけに、ここまでゆるゆるの法制をまだ緩めるのかという観は否
めないが、評価できる1点は現行で特定労働者派遣事業は届出制となっていたも
のを、一般労働者派遣事業と同様に許可制としたことにある(小規模事業主には
経過措置)。これまでも脱法が罷り通ってきた業界への一種の警告と言える。
 ところで今国会には地味ではあるが「勤労青少年福祉法等の一部を改正する法
律案」(青少年の雇用の促進等に関する法律)が提出され、こちらは参議院では
可決され、会期末までに成立することは確実視されている。

 法案の骨格は青少年の適職選択のための取組促進と職業能力開発促進法の一部
改正による職業能力の開発・向上への支援強化であるが、具体的には、職場情報
について新卒者の募集を行う企業に対し、企業規模を問わず幅広い情報提供の努
力義務化と、応募者から求めがあった場合は、募集・採用に関する状況、労働時
間等に関する状況、職業能力の開発・向上に関する状況、の3類型ごとに一つ以
上の情報提供の義務化を盛り込むとともに、職業安定法の特例として、ハロー
ワークは、一定の労働関係法令違反企業の求人者について、新卒者の求人申込み
を受理しないことができることにしている。これまでハローワークの求人につい
ては全ての求人を受付け、求人票を公開するにしても、人員・時間の制限から、
求人内容の正確性までは確認できず、結果として求職者が求人票を信用して就職
してみたら、求人票に書かれていた内容と異なる労働条件だったという事例が多
い。これは、現行で診療機関が金銭の所持しない診察希望者も来診を断れないと
いう現行医療法・医師法に似た考え方と言える。

 ただし問題はある。
第1点は「一定の労働関係法令違反の求人者」をハローワークがどう把握するか
ということ。今さら行政の縦割を持ち出すまでもなく、
労働基準監督署とハローワークが都道府県労働局、厚生労働省本局を介在した情
報開示の組織化をいかに作りあげるかにかかる。問題の第2点はハローワークだ
けでなく、民間の職業紹介機関の求人・求職の職業紹介が事実上野放しになって
いる状況である。筆者に寄せられる情報でも、入職後の労働条件の差異の原因
は、ハローワーク、民間職業紹介事業者も件数として大して変わらない。労働者
派遣にしろ、民営職業紹介にしろ、人の不安や恐れを利用して金儲けをする業界
の行儀の悪さは今に始まったことではない。事業そのものは否定しないが、他分
野での美容整形外科、審美歯科、結婚紹介業などと同様に所詮は虚業である。こ
の分野の経営者が国の会議や研究会の委員に大手を振って参加し、国家・国民の
ためではなく、自社の利益にどう結びつくのか、という観点から労働分野の規制
緩和の方向を決めていく現在の状況は、かつての金融規制と運輸規制の緩和で、
まさにその業界を代表する経営者による方針決定がなされていった状況と同じで
あろう。虚偽の求職者情報の提供を行った職業紹介事業者と派遣元事業者への行
政処分は毎月のように行われ、企業名が公表されている。


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■■■ 悪質な労働基準法違反も企業名公表 ■■■
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 企業名公表についてはもう一つある。

 塩崎厚労相は5月15日の閣議後のぶら下がり会見で、
「違法な長時間労働を繰り返している企業の指導・公表を行うことにし、基準は
二つあり、一つは複数の都道府県にまたがる企業で中小企業でないもの、二つ目
は違法な長時間労働が相当数の労働者に認められて、そのような実態が一定期間
内に複数の事業場で繰り返されていること」との所信を述べた。
 大臣指示に従い、事務方は5月18日に臨時全国労働局長会議をテレビ会議とし
て大臣室で開催し、栃木労働局長と東京労働局長が現在までの監督指導と送検状
況を報告した。

 指導・公表の対象となる企業の基準は、
(1)社会的に影響力の大きい企業(複数の都道府県に事業場を有している企業
で中小企業に該当しない)、

(2)違法な長時間労働が相当数の労働者に認められ、実態が一定期間内に複数
の事業場で繰り返されていること(労働時間、休日、割増賃金に係る労働基準法
において、1カ月当たりの時間外・休日労働時間が100時間を超えており、1カ所
の事業場において10人以上の労働者又は4分の1以上の労働者において違法が認め
られ、概ね1年程度の期間に3カ所以上の事業場で違法が認められる)、

の2項目が設定されている。

 周知のごとく全国に散在する事業場の調査・指導の権限は所轄労働基準監督署
にある。つまり、今度は都道府県労働局と所轄労働基準監督署の情報共有が課題
となる。企業にとっての試練は厚生労働省労働基準局の行政課題でもある。

 かつて障害者雇用促進法に基づく企業名公表制度が創設された時は、何年も企
業名公表はなく(全て男性課長)、女性の坂本由紀子課長(東京労働局長、厚労
省職業能力開発局長、参議院議員など歴任)が初めて周囲の反対を押し切って公
表に踏み切り、その後2回目の公表は何年か後に、現事務次官の村木厚子課長の
時だったという記憶がある。なぜ女性課長の時しか……、
この問題は深く追求しない。
今回の企業名公表は労働基準法という強行法規に基づく行政指導だけにそう
はならないことを期待したい。

 平成26年度分の毎月勤労統計調査によると、規模5人以上の事業所の所定外労
働時間は平成22年を100とした場合、製造業112.9、卸売業、小売業116.1、不動
産・物品賃貸業116.2、学術研究等114.5、飲食サービス業122.1、生活関連サー
ビス業128.0、教育、学習支援業114.3、繊維工業125.9、製造業全般116.3、規模
別では500人以上
110.0、5〜29人118.5で、長時間労働の実態は何ら変わっていない。

 今国会に提出されている過重労働対策を骨子とした改正労働基準法の成立は、
冒頭にも記したように、余程の国会延長がない限り、審議時間の確保は難しい。
与野党が改正労働者派遣法の成立との交換で、どのような国会運営を行うのかで
あろう。
                           (津山 勝四郎)


編┃集┃後┃記┃
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 間もなく梅雨入りです。
今年の梅雨明けは平年より遅れる可能性があるようです。

「大阪都構想」を巡る大阪市の住民投票で
反対票が僅差で賛成票を上回りました。
橋下徹大阪市長は、「負けは負け」と敗北を認め政界引退を表明しました。
橋下市長自身、「僕みたいな政治家はワンポイントリリーフ。
課題が出てきたときに一つそこを解決する。」と述べています。

ある新聞では、
「存在感を残した負け方。敗れてなお強し」の記述がありました。

 組織でも、自治体、企業、同業種の団体では、リーダーに求められる統率力や
カリスマ性は異なります。

リーダーの自己主張が強く、人々の声に耳を傾けないと
独裁者と言われたりします。
裸の王様にならないためには、人々の声に耳を傾けることが大切です。
また、常に自分自身を見つめ直す姿勢が大切です。

等身大の自分を把握することにより、会社や仲間と信頼関係を築けるのにと思う
労務相談が結構あります。                   (白石)



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発行者 雇用システム研究所
代表 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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今週のメールマガジン第158号はいかがだったでしょうか。
お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容充実していきたいと思います。
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