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発刊済みメールマガジンMail Magazine

大企業に採用されない“異能・異彩人材”
〜中小・ベンチャー企業に獲得のチャンス〜

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┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
┗━━┛                           第164号
                              2015/12/01

           http://www.koyousystem.jp
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師走に入り、日ごと慌ただしさが増していきます。
皆様いかがお過ごしでしょうか。

雇用システム研究所メールマガジン第164号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆大企業に採用されない“異能・異彩人材”
 〜中小・ベンチャー企業に獲得のチャンス〜

■「一緒に働きたい」と思えない学生は落とす大企業
■異能・異彩人材の育成に失敗。じゃまする組織風土
■ゼロベースで人材を育成する中小企業に期待
(以上執筆者 溝上 憲文)


■個別労働紛争解決システムの見直し開始
■連合新執行部への期待
(以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)

■[編集後記] (編集長 白石 多賀子)

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◆大企業に採用されない“異能・異彩人材”
 〜中小・ベンチャー企業に獲得のチャンス〜

 10月1日現在の就職内定率は66.5%。前年同期比1.9%減と2010年以来5年
ぶりに低下した(文部科学・厚生労働両調査)。
その理由として経団連加盟企業が選考解禁を8月に繰り下げたことで中小企業の
選考がずれ込んだことが挙げられている。
中小企業は大企業に落ちた学生を中心に採用することになるが、その中には荒削
りだが優秀な“原石”も混じっている。

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■■■ 「一緒に働きたい」と思えない学生は落とす大企業 ■■■
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 今年の就活では改めて学生の大企業志向が浮き彫りになった。
大企業の選考前に内定を出した企業も多かったが、蓋を開けてみれば8月以降に
内定辞退者が続出。
必要な人材を確保できずに、9月以降も採用を継続している企業も少なくない。

 だが、大企業を落ちた学生の中にも優秀な人材が少なくない。その一つが異
能・異彩人材だ。ビジネス環境の大きな変化の波にさらされている今、新たな商
品・サービスを生みだし、ビジネスモデルの転換を起こせるイノベーター人材を
必要としている企業は多い。多くの企業も新卒の人材要件にも変革志向やイノ
ベィティブな人材を掲げている企業も少なくない。

 しかし、そんな思いとは裏腹にイノベーター人材は初期の面接段階で篩い落と
される可能性がある。なぜなら多くの企業では、優秀だと評価する基準は大学の
偏差値と「人柄」の大きく2つだろう。偏差値の高い大学出身者は地頭力、つま
り学習能力が高く、論理的思考力があると見なす。一方、人柄には協調性やチー
ムワークなど組織の一員としての規律を守れるかどうかも含まれているだろう。

 入社試験の一次面接では人事部ではなく、選ばれた一般の社員が行うことが多
い。その際の評価基準としてよく言われるのが「一緒に仕事をしたいと思うか」
であり、人柄の重要な部分を占めている。異能・異才タイプがこの基準をクリア
するのは難しいだろう。

 実際に大手コンサルティング会社の人事担当役員もこう言う。
「当社はクライアントと接点を持つサービス業。部下、上司、クライアントから
リスペクトされる人が究極のサービス業にふさわしい人材です。誠実さが求めら
れ、勉強ができるだけの社会性に欠ける人はいらない。この人と一緒に働きたい
と思えるのかどうかが大事であり、少しでも疑わしいなら落とせと言っています」


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■■■ 異能・異彩人材の育成に失敗。じゃまする組織風土 ■■■
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 もちろん、協調性と誠実さを備えた異能・異彩人材もいるかもしれない。
だが、人並み外れてクリエイティビィティを持つ人材ほど、得てして人間的な欠
陥をどこか併せ持っているものだ。たとえばアップル創業者のスティーブ・ジョ
ブズにしても人間的には非常にクセがある風変わりな人物だったと言われている
が、創造性を発揮し、世界の一流企業に育て上げた。こうした人材が会社の救世
主となる可能性もある。

 大手企業の中には可能性を秘めた“とんがった”学生を別枠で採用するところも
ある。だが、結果的に失敗した企業も少なくない。大手消費財メーカーの人事部
長はこう語る。

「どう見ても協調性があるようには見えないし、人間的にはとんでもなくふざけ
た人物なんですが、異能・異才というか、マーケッターとしては何か天才的に光
るものを持っている人を何人か採用したことがあります。しかし、一人は職場の
人間に嫌われて数年後に辞めてしまいました。また、別の人間は力を発揮できる
ような仕事をさせてもらえずに、職場を追い出され、いろんな部署にたらい回し
にされ、最後は自ら辞めました。こうした人材を受け入れる土壌がなかったこと
が原因です」

 結局、新卒での採用は諦めたという。人事部長は「当社に限らず、大企業では
人間的には最低であっても、イノベーターの可能性を秘めた人材を受容できる風
土がない」と言い切る。

 同じような経験を持つIT関連企業の人事部長も失敗したと語る。
「見るからにわがままそうで、社会常識に欠けるところがありましたが、商品の
開発に関しては天才的な片鱗を持つ人物を採用しました。だが、せっかく採用し
たのに、教育担当や組織運営の担当者に渡したとたんに、うまく育てられない。
力を発揮できずに組織に埋没してしまいました」と語る。


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■■■ ゼロベースで人材を育成する中小企業に期待 ■■■
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 だが、そうであってもイノベーター人材が欲しいことに変わりはない。ではど
うすればよいのか消費財メーカーの人事部長は「中途で採用し、能力や才能を生
かす部署を人工的に作る必要があるかもしれません。もちろん、そういうタイプ
は部下の指導などマネジメントは無理なので特別職として処遇するしかない。エ
キスパートとしての身分を保障し、優秀な人材には部長職ぐらいの給与を支払う
ことがあってもよいのではないか」と語る。

 また、IT関連企業の人事部長は「社長直轄の部署をつくり、マネジメント担
当として本部長クラスの人を配置する。もちろん、報・連・相などは必要ない
し、本部長は進捗状況を確認するぐらいの役割でもよいのではないか」と指摘する。

 実際に大企業でクセのある異能・異彩人材を育成し、力を発揮してもらうには
かなり大変なようだ。もちろん、チームワークや協調性は中小企業にとっても大
事な要素だし、それができない人間はいらないという企業もあるだろう。

 だが、知名度も低く、一般に優秀といわれる人材を獲得できない中小企業ほ
ど、ゼロベースから鍛え直して一人前に仕上げるノウハウを持っているところも
少なくない。伝統的大企業では難しくても、中小企業やベンチャー企業ならうま
く活用し、戦力化することも可能かもしれない。       (溝上 憲文)

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■■■ 個別労働紛争解決システムの見直し開始 ■■■
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 厚生労働省が「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討
会」を労働基準局内に発足させ、10月29日の初会合に続き、11月26日には土田道
夫同志社大学法学部・大学院法学研究科教授のプレゼンテーション、全国社会保
険労務士会連合会と日本弁護士連合会からヒヤリングを行った。
検討会は我が国の労働法曹界を担う10人の法学者と弁護士、そして労使団体から
の15人で構成されている。

 労働紛争はかつては、賃上げ・一時金要求などの合意形成をめぐる
「利益をめぐる紛争」が中心で、昭和40年代半ばに争議件数がピークを迎えた
が、労働組合と企業との間における集団的労働紛争は、長期雇用システムを基盤
とした企業別組合と経営間の労使協調路線が形成されたことにより、昭和50年代
からは減少傾向に転じ、特に大企業におけるストライキは事実上終焉した。

 一方で昭和60年代から平成に入り、バブル崩壊後の長期経済低迷における雇用
情勢の悪化と人事管理の多様化、非正規雇用の増加を背景として、労働者個々人
と企業との個別労働関係紛争が、特にリーマンショック以降高水準となり、そこ
に政府が一連の司法制度改革を推進したことから、平成13年10月に現行の個別労
働紛争解決制度を厚生労働省が発足させ、具体的には誕生したばかりの都道府県
労働局における総合労働相談、紛争当事者に対して解決の方向を提示する助言・
指導、紛争当事者が採るべき紛争調整委員による金銭解決のあっせん案を提示す
る制度が始動した。同時に都道府県労働委員会、労政主管部局における労働相談
やあっせん、都道府県社会保険労務士会によるあっせん、などの紛争解決制度も
スタートし、現在に至っている。平成18年4月には、裁判所における労働審判制
度が誕生した。

 余談ながら、平成13年の法律作成時、厚労省大臣官房地方課個別労働紛争対策
室長として、孤軍奮闘しながら国会対策、法律条文の構成、そして省内外の根回
しを行ったキャリア官僚と、筆者の属する記者クラブにおいて、制度設計につい
て議論したことが想い出される。論点は強制力のない民事上の紛争解決制度をど
のように浸透させていくのかということと、人員配置をどうするのかであった。
ちなみに担当した官僚は、その後何人も着手しようとしては失敗したパート労働
法の改正を行い、3.11では安全衛生部計画課長として東電原発問題に対応、そし
て本年12月から施行される改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度の
創設などに関わり、現在は労働アタッシュとしてインドネシアに赴任している。

 10月29日の第1回検討会に話題を戻す。

 現行の個別労働紛争解決制度は6月30日に閣議決定された「『日本再興戦略』
改訂2015」と「規制改革実施計画」において、民事訴訟と比較して低廉な額で紛
争が解決される傾向(最大分布は都道府県労働局10万円以上20万円未満、労働審
判100万円以上200万円未満、裁判上の和解100万円以上200万円未満、月収では都
道府県労働局1月分未満、労働審判、裁判による和解ともに6月分以上9月分未
満)にあることと、労使双方の事情から解決無効判決後の職場復帰比率が低く、
解雇等の雇用終了をめぐる時間的な予見可能性の低さなどが指摘された。

 検討会の検討項目は大きく2項目で、

(1)既に制度化されている雇用終了をめぐる多様な個別労働紛争の解決手段が
より有効に活用されるための方策(現行の助言・指導、あっせんへの労使の任意
の参加規程と簡易・迅速との兼ね合いの検討)、
(2)解雇無効時における金銭救済制度の在り方、特に雇用終了の原因、補償金
の性質と水準とその必要性(和解金額に個々の事案に応じた一定の枠を設定する
かどうか)、となっている。

 検討会の初日には、委員である八代尚宏昭和女子大学グローバルビジネス学部
特命教授が意見具申し、
「解雇紛争の解決の基準となる実定法が不十分なため、解決手段の違いで金銭補
償の額に大きな差が生じていることから、解雇の金銭解決の基準を法定化するこ
とは、民事訴訟における長い審理期間に対応する余裕のない労働者を救済する有
効な手段となる。具体的には労働者の賃金水準に比例した金銭補償の上限と下限
を法定化する。従来の判例法における解雇権濫用法理では、不当解雇に対して民
事訴訟に訴える労働者を救済できず、一部の企業に対して不当な利益を与えてい
る」とした上で、
「長年にわたって放置されてきた労働法制の不備を改善するために、解雇の金銭
補償ルールの法制化を速やかに進めるべき」と強調している。

八代委員が日常展開している持論として、個別労働紛争解決制度と労働基準法の
連携強化を主張したもので、現在、国会に提出され継続審議となっている改正労
働基準法の成立を経て、民事上の解雇の金銭補償ルールを強行法規である労働基
準法にいかに挿入させていくかが、今後の大きな課題となる。


確かに現行の個別労働紛争解決促進法は
労働双方に出席も和解も解決策提案も義務としていないだけに、
現実には労働者にとって有効な救済措置とは言えない。

特に中小企業に就労する労働者にとって、あっせんによる金銭補償の支払能
力がなく、また助言・指導による解決提示も、人員規模や職場規模から有効な提
示が行われない。例えば、一人の労働者が経営側からのいじめ・嫌がらせの解消
のため、助言・指導を申し出て、経営側が仮に善処を約束しても、職場に戻れば
同じ部署、同じ上司、同じ部屋となると、かえって居づらくなるだけで、場合に
よっては申し出たことで更なるいじめ・嫌がらせに遭遇することになりかねない。
もちろん法律には不利益扱い禁止が盛り込まれているが、現実はその通りに
展開しない。
労働局に助言・指導を申し出たことで解雇され、金銭補償としてあっせんを申請
したが、経営側との和解は成立せず、
「さあ、今後はどうしよう。労働審判で弁護士を依頼すると、費用もかかるし」
と悩む労働者は絶えない。

 厚生労働省の発表では、平成26年度における個別労働紛争解決制度において、
全国での民事上の個別労働紛争相談件数は23万8806件、助言・指導申出件数9471
件、あっせん申請件数5010件と、全体的に減少傾向にあるものの、総合労働相談
件数は100万件を超えている。これに労働委員会、労政主管部局、労働審判、全
国と都道府県社会保険労務士会のあっせん件数(全体で5000件程度と推計)が加
わる。

 手続きが迅速かつ簡便、費用は無料(労働審判は手数料を徴収)という制度を
維持しつつ、問題解決の実績向上を図ることは、容易ではない。 

                           (津山 勝四郎)



編┃集┃後┃記┃
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 皆様のお手元に「通知カード」は届きましたか。
 40都府県で510万通が12月にずれこみ、遅いところでは12月20日と
のことです。
 10月5日の個人番号付与開始とともに、自治体による住民票等への個人番号
表示、日本郵便による誤配送等でトラブルが発生しています。
 先日、大阪に出張した折、大阪の方から「焼肉店で個人番号12桁の中に『い
い肉(1129)』があれば4名分無料」の話を聞きました。大阪の面白い話題
ではすみません。マイナンバーに対する知識が徹底されていない状況に不安を感
じています。

 向寒の折、乾燥で風邪やインフルエンザにかかりやすい時季です。うがい・手
洗い・睡眠を充分にして慌ただしい日々をお過ごしください。    (白石)



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