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障害者雇用とどのように向き合うか(2)
〜精神障害者の採用と定着をどうするか〜

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┏━━┓    
┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
┗━━┛                           第167号
                              2016/03/01

           http://www.koyousystem.jp
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3月の誕生花は「桜」だそうです。早く桜の花が咲くような暖かい季節になると
いいですね。まだまだ寒い日が続きますがいかがお過ごしですか。

雇用システム研究所メールマガジン第167号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆障害者雇用とどのように向き合うか(2)

   〜精神障害者の採用と定着をどうするか〜

■スタッフ全員が発達障害などの精神障害者
■障害特性に応じた業務の「仕組み化」
■仕事の意欲と成長を促す業務目標の“見える化”
(以上執筆者 溝上 憲文)

■同一労働同一賃金の実現は可能?
■男女間、企業規模別の現状
(以上執筆者 日本労働ペンクラブ 津山 勝四郎)

■[編集後記] (編集長 白石 多賀子)

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◆障害者雇用とどのように向き合うか(2)

 〜株式会社サザビーリーグHRの取り組み〜

 障害者雇用を取り巻く環境が大きく変化する。2016年4月に障害者雇用促進法
の改正による差別の禁止および職場で働く場合の「合理的配慮の提供義務」が施
行される。さらに18年4月から精神障害者の雇用義務化が始まる。それに伴い障
害者の法定雇用率は現行の2.0%から2%台半ば程度に上がる可能性もある。

 企業は今後どのように対応していけばよいのか。障害者雇用に積極的に取り組
んでいるサザビーリーグHRの事例を紹介したい。


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■■■ スタッフ全員が発達障害などの精神障害者 ■■■
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 服飾雑貨ブランドを展開するサザビーリーグの特例子会社サザビーリーグ
HR(以下、HR)の設立は09年4月。管理部の下に横浜と千葉県市川に業務サ
ポートセンター(SC)があるが、2014年11月に物流業務の拠点を市川に開設。
15年4月からIT・ウェブ系の業務を横浜に集約。従業員は横浜と市川に管理者
とスタッフの約20人が勤務している。

 スタッフの全員がアスペルガーなどの発達障害者。当初は身体障害者などをピ
ンポイントで採用していたが、知名度や小売という業態の関係もあってなかなか
集まらない。発達障害の就労支援と紹介をしている事業者と出会った。ITなど
集中してやる仕事に向いた人もおり、最初に11人を採用したのが始まりという。
 精神障害の一部である発達障害者の中には特定の分野に関しては高い集中力を
発揮する人もいるが個々の症状は同じではない。

「集中してやれるIT向きの人もいれば、大勢の人がいる中で体を動かしてやる
仕事に向いている人もいる。無理矢理ウェブを勉強しなさいと言っても長続きし
ない。そこで市川の物流センター業務の一部を始めた」(同社担当者)という。


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■■■ 障害特性に応じた業務の「仕組み化」 ■■■
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 市川では出荷する商品と伝票のチェックなどの業務を担当している。横浜の業
務は大きく
(1)システム、
(2)ライター、
(3)企業情報管理、
(4)画像、
(5)庶務――の5つ。
システムは社内ウェブコンテンツの構築などIT専門業務、ライターは社長の訓
辞など音声テープの文字起こしと記事作成の広報関連業務。企業情報管理はブラ
ンドの会員カード申込書など顧客情報の電子化業務、画像はECサイトや各ブラ
ンドのホームページに掲載する写真撮影か加工まで行う業務、庶務は名刺の作成
やファイリング業務だ。

 IT関連業務に絞り込んだのは、仕事の広がりのある業務であり、専門的能力
も身につけやすいのが理由という。当初は本人の経歴を参考にやりたい職務に配
置する。3〜6ヶ月間のOJTを通じた仕事ぶりを観察しながら適性を見極めて
チームを入れ替える場合もある。仕事は本人の希望を尊重し、柔軟に対応してい
る。「たとえば写真撮影のセンスはあるが、静かな場所での作業が不向きな人
は、市川に画像チームの一部を置いて出荷時に商品の写真撮影を行う流れを作る
など、個々の動機や特性に応じて仕事のやり方も組み立てている」(担当者)

 仕事の進め方に対する配慮も徹底している。新規の仕事が発生した場合、業務
フロー、作業内容、納期までのスケジュール表など業務標準書を管理者と一緒に
チームごとに作成する。いつまでにどんな品質で仕上げるのか、指示や作業手順
が明確でなければ動きにくいという発達障害の特性に配慮したものだ。


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■■■ 仕事の意欲と成長を促す業務目標の“見える化” ■■■
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 また、業務の生産性向上と社員個々の成長を促す仕組みを支えているのがHR
の「運営の原則」だ。その1つがスタッフ7人に対して管理者1人を配置する7
対1の原則。第2の原則は定例業務の6割を維持し、それ以外は学習を含むス
ポット業務を3割、かつ新規チャレンジ業務を1割とする6:3:1の原則だ。

「定例業務は必達目標。効率よく仕事をこなし、残りの3割は3ヶ月に1回程度
のスポット業務を入れ、1割は今までやったことのない新しい業務の開発にチャ
レンジしようというもの。これは自己成長を促すためであり、空いた時間に新し
いスキルや資格取得の勉強をしてもらってもかまわない」(担当者)

 実際に秘書検定にチャレンジし、資格を取得した庶務の社員もいる。
第3の原則は「品質第一」「納期第二」「コスト第三」。
通常の仕事は品質、納期、コストの3つをバランスよく守ることが要求される
が、ここでは全部を守るのは難しい。労力をかけて納期が多少延びてもよいが、
品質を第一に考えることを徹底している。

 生産性の向上と社員の仕事に対する意欲を喚起する仕組みとして当初から人事
評価においては目標管理制度を導入している。
年初に(1)遅刻、欠勤などの勤怠、
(2)仕事に対する取り組み姿勢、
(3)成果――の3つを軸に管理者と話し合って目標を設定し、達成度を評価する。

 もう一つの取り組みが個々の業務ごとに達成した成果を貨幣価値に置き換える
仕組み。たとえばウェブのページ作成単価は一般的に相場が決まっている。同様
に個々の業務の製造単価を調べ、達成した数量を合計すれば全体の生産金額がわ
かる。

「昨年の生産金額が3000万円だったのが、今年5000万円にアップすれば1人当た
りの生産性がどれだけ上昇したかが数字でわかる。社員も自分の仕事の価値がい
くらになるのかわかり、自ずと数字を上げようと思うようになるし、あるいは
もっと価値の高い仕事にチャレンジしようと思うようになればと期待している」
 数値による“見える化”を通じてモチベーションを高めようというものだ。

いかに意欲を持って仕事に取り組んでもらうのかという工夫が従業員の定着だけ
ではなく生産性の向上にもつながる。            (溝上 憲文)


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■■■ 同一労働同一賃金の実現は可能? ■■■
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 2月18日に開かれた経済財政諮問会議に4人の民間議員が提出した
「アベノミクスの下での経済成長と今後の取組について」では、各省が集計する
労働経済調査を分析した結果として、総雇用者所得(名目・実績)の動向を報告
している。

2005年を100とした数値は、名目においては2010年の景気後退期の底(101)から
上昇し、消費税引上げの影響が出た2015年7月に再び底を打つが、現時点では106
にまで回復している。一方、実質では、やはり消費税引上げの影響が大きく、
2010年から2011年にかけて104にまで回復していたものが、2014年7月期には100
にまで落ち、その後も102と103の間で浮き沈みしている。報告は同時に実質総所
得(GNI)は実質GDPの成長率0.6を上回る1.2に達しているとして、日本経済は着
実にしっかりとした成長を実現してきており、20年近く続いたデフレ状況ではな
くなり、名目GDPも実質GDPを上回り、名実逆転は解消したとして、アベノミクス
を支持すると結論づけている。

 分析結果を下に報告は就業促進と働き方改革の推進策として、非正規労働者の
待遇改善(賃金・手当・賞与、130万円の壁への 対応を含めた被用者保険の適用
拡大、教育訓練など)や非正規から正規への転換、同一労働同一賃金の実現、長
時間労働の抑制、保育士・介護士の待遇改善、高齢者の就業拡大などの環境整備
加速を政府に要望している。また3月16日が統一回答日となっている春季労使交
渉について、事前の調査において4月からの賃金引上げ見通しが定昇込みで2.12%
推移にとどまっていることから、業績が向上した企業については企業全体の賃上
げの流れを牽引すべきとしている。民間議員のなかには経団連会長も入っている。

 報告のなかで「働き方改革の推進」に盛り込まれた同一労働同一賃金という文
言に食いついた日本経済新聞は、2月20日付け朝刊1面トップで「同一労働同一賃
金の実現は指針で」の見出しで、1面の相当部分を割いた。内容は賃金のあり方
として当然の考え方で、土曜日朝刊のいわゆる暇ネタであった。

 賃金に関して日本の現行法は、最低賃金の遵守と賃金支給規程、割増賃金の支
給規程、労使で合意した退職金の支給を法定化しているだけで、賃金の上げ下
げ、正規・非正規、男女、勤続年数、年齢などによる賃金格差は基本的に労使の
自治であるが、立場の弱い労働側に対して行政としての助言・指導と位置づけた
指針や通達を運用基準として発布することになる。
日経の「指針で」の部分は、行政通達から法律で義務となる指針に格上げされる
ことになるという報道である。指針は今国会で早くも継続審議と言われている改
正労働基準法で対応するのでなく、一億総活躍関連の新法(パート労働法、労働
契約法、派遣労働法の改正を一括で審議)で盛り込むことが検討されている。


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■■■ 男女間、企業規模別の現状 ■■■
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 同一労働同一賃金の実現は統計上からは難しい。厚生労働省が2月18日に公表
した「平成27年賃金構造基本統計調査」は、日刊紙各紙が同省の資料見出しの通
り、「女性の賃金 過去最高」とのタイトルで、いかにも男女の賃金格差が解消
に向かっているとの印象を与えたが、実態はまだまだ実現は程遠い。

 調査によると、全国主要産業6万5745事業所(10人以上常用労働者・回答5万
785事業場)の月額賃金は男女計で30万4000円(前年比1.5%増)で、男性33万
5100円で(同1.7%増)、女性24万2000円(同1.7%増)となっており、報道通り
女性の賃金は過去最高となっているものの、男女間格差(男性100)は過去最少
となった前年と同水準の72.2と何ら変わっていない。

男女間賃金格差を年代別にみると、平成元年の60.2から徐々に改善されている
が、年齢(男43.1歳、女40.7歳)、勤続年数(男13.5年、女9.4年)のデータが
示す通り、賃金格差の主な要因は勤続年数による。ただ、男女別の賃金カーブで
は男女共に50〜54歳がピークとなり、その後下降しているが、下降カーブは男性
に比べ女性の方が緩やかになっている。

 企業規模別では、大企業の賃金を100とすると、中企業は男性82.6、女性で
89.6、小企業では男性74.4、女性では80.6となっており、雇用形態別では、正規
100とすると、正規以外の賃金は男女計で63.9、男女別では男性65.8、女性69.8
となっており、賃金格差が大きいのは、企業規模別では大企業で56.9、中企業
65.9、小規模71.7で大企業での賃金格差が大きい。日本の労働市場を牽引する大
企業での同一労働・同一賃金の実現こそが、最初の課題であろう。

 以上の統計資料から、同一労働同一賃金を政府はどのように実現するのか、ど
ういう工程を模索しているのかが何も見えてこない。単に選挙前の単なる前宣伝
であってはならない。ちなみに、厚生労働省が2月8日に発表した「毎月勤労統計
調査平成27年分結果速報」によると、常用労働者4776万人(一般労働者3321万
人、パート労働者1455万人)の実質賃金は消費者物価指数1.0%の上昇により、
0.9%減となっている。国民の生活観は何ら向上していないことになる。

 アベノミクスをマクロでみるか、ミクロでみるか。国民は報道されるニュース
や記事から判断するしかないだけに、報道側にも今一歩の分析力が望まれる。

 最後に今号の主題とは直接関係ないが、注目される最高裁の判決が出た。山梨
県の金融機関の2度にわたる合併によって、退職金が大幅な減額又は実質的にな
くなることに対し、第2法廷(千葉勝美裁判長)は労使の書面上の合意だけでは
不十分で、使用者が具体的な内容を示す必要があるとして、1審、2審の判決を覆
し、高裁での審理やり直しを命じた。要するに署名・捺印がどんな設定でなされ
たかなど、使用者側の合理性が問われることになり、解雇や雇止めを含む雇用契
約全般に大きな影響を及ぼすことになる。        (津山 勝四郎)



編┃集┃後┃記┃
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 テレビで、北海道大学大学院農学研究院の長谷川准教授らが英科学誌に掲載し
た「働かないアリも集団維持に必要」と興味深い研究成果を
取り上げていました。要約すると、

「アリの集団が長い期間存続するためには、常に働いているアリだけでなく働か
ないアリもいる必要がある。アリの世界では、働き者のアリが疲れて働けなくな
ると怠け者のアリが「交代要員」として働き始める」という。
例えば、働き者のアリが疲れて働けず「卵を放置する」と、怠け者だったアリが
働き始めるという。

 アリやハチなどの「社会性昆虫」の集団には、ほとんど働かない個体が常に
2〜3割存在するとのことです。
研究の結果、働くアリだけの集団では全員が疲れると集団が維持できなくなり、
働かないアリもいる集団は、怠け者アリも働き者アリが疲れると最後は
「交代要員」として働き始めるため、長期的に集団が維持できるとのことです。


今、「ローパフォーマー」が話題になっています。
企業が「ローパフォーマー」を切り捨てても新たな「ローパフォーマー」が
生まれるといわれています。

アリと同じく人間も休まず働き続けることはできません。
社員が交替で働き続ければ、「ローパフォーマー」と言われる人材は発生しない
はずです。
労務管理の相談で多いのは、「ローパフォーマー」社員に対する対応策です。

今年は、例年より遅いインフルエンザの流行です。
また、花粉の時季でもあります。
三寒四温の時季、健康管理にはお気をつけください。        (白石)



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発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容充実していきたいと思います。
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