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発刊済みメールマガジンMail Magazine

企業成長のカギを握る人材活用術(3)
〜企業が取り組むタレントマネジメント「サントリーホールディングス」〜

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┏━━┓    
┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
┗━━┛                           第178号
                              2017/02/01

           http://www.koyousystem.jp
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春に向かい少しずつ寒さが和らぐ頃となりました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。

雇用システム研究所メールマガジン第178号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆企業成長のカギを握る人材活用術(3)

〜企業が取り組むタレントマネジメント「サントリーホールディングス」〜

■独自の「考動評価」と頻繁な異動によって能力を磨く
■本人の希望に基づく「キャリアビジョン面談」で異動を決定
■先輩社員の職務・キャリアを公開し、キャリア自立を促す
(以上執筆者 溝上 憲文)


◆キャリアコンサルタント制度の新展開

■「働き方改革」とキャリア支援
■キャリアコンサルタント制度の強化
■厚生労働省の組織改編
(以上執筆者 北浦 正行)

■[編集後記] (編集長 白石 多賀子)

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◆企業成長のカギを握る人材活用術(3)

〜企業が取り組むタレントマネジメント「サントリーホールディングス」〜

 大手企業を中心に「タレントマネジメント」が流行っている。

その目的はビジネスニーズに直結する人材(リソース)を活用し、最終的に企業
の成果を生み出していくことにある。人手不足の深刻化や就業に対する価値観の
多様化する中で、従来の集団的な人事管理の枠を超えて社員一人ひとり個性・能
力に焦点を当て、自主的にキャリア開発を促すことを支援し、
会社全体のパフォーマンスを高めていくことが求められている。
今回は「人が命」を合い言葉に全社員一人ひとりが生き生きと働ける会社を目指
しているサントリーホールディングスの取り組みを紹介したい。


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■■■ 独自の「考動評価」と頻繁な異動によって能力を磨く ■■■
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 同社はこれまで全社員が生き生きと働ける仕組みを目指し、人材の評価、育
成、配置に関して積極的に取り組んできた。人事評価制度は成果評価と独自の
「考動」考課の2軸で見ている。MBO(目標管理制度)によって年初に目標を
設定し、その達成度を見る成果考課はストレートに賞与に反映されるが、昇給と
昇格では考動考課を重視している。

 考動の中身は非管理職のメンバー層は5項目、マネージャー層は9項目の評価
指標がある。共通の評価項目には「グッドパーソン」「やってみなはれ」という
ユニークなものもある。グッドパーソンとはサントリーの経営理念やバリューを
理解し、社内外でも模範となる行動を実践していること。やってみなはれ、はサ
ントリーのDNAでもある未知の分野への挑戦を意味し、メンバー層は資格ごと
に求められる考動レベルを評価している。

 メンバー層の社内資格はCB(チャレンジベーシク)1,CB2,CD(チャ
レンジデベロップメント)と,CL(チャレンジリーダーシップ)の4つがあ
る。CB1とCB2の滞留期間は大体6年、CD、CLもそれぞれ3年ぐらい。
基本的には入社後の10年間は大きく差をつけないで営業を含めた現業の仕事に打
ち込んでほしいという思いがある。
 ただし、昇格では大きな差はつけないが、異動によって能力のある人には大き
な仕事を任せるようにしている。

「入社2年目の社員でも大型投資する新商品の担当に据えるなど、ハードルの高
い仕事を与えて鍛える。サントリーは持株会社制だが、ほぼ全員がホールディン
グスに籍を持ち、出向という形で各事業部門に出している。人の異動やローテー
ションをしっかりとやるために会社の壁を作りたくないという狙いもある。
したがって事業部門間の異動も頻繁に実施しているし、例えば営業の社員でも創
造性を発揮できそうな人を商品開発の担当に異動させてより大きな仕事をさせる
ようにしている」(人事担当者)


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■■■ 本人の希望に基づく「キャリアビジョン面談」で異動を決定 ■■■
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 人事異動に際しては、人事部の個別人事の異動担当者がグループ各社と部門の
人事窓口と話し合って異動を決めている。
ビール会社であれば企画部長が窓口になり、小さい会社であれば社長自ら窓口と
なって人事異動のシーズンに調整を行う。メンバー層の社員は約3500人いるが、
異動担当者は情報収集を含めて年間500人の社員と30分間の1対1の面談を実施
しているほか、入社4年目と9年目の社員全員と面談している。
面談では今の職務に対する思いや将来どんなキャリアを歩みたいのかについて聞
き、そこで得た情報を人材プールとして蓄積している。

 そのほかに年に1回、上司に希望を伝えるキャリアビジョンの面談を実施して
いる。将来のキャリアを見据えて、10年後にどうありたいのかを考え、中期的に
はどうしていくのか、直近では何をやりたいのかについて短・中・長期で書いて
申告してもらう。人事との調整前に、入社5年目で1回も部署を異動していない
社員に人事が印をつけて、必ず異動先を書いてもらうようにしている。
書いていなければ人事が直接上司に会って「どうして異動先を書いていないの
か」とプレッシャーをかけることもある。

「あくまで異動はキャリアビジョン面談がメイン。1年以内に異動したい人、
2年連続で1年以内に異動したい希望を持っている社員はすぐに検索できるの
で、それをリスト化して『異動させないのはなぜですか』と質問し、異動を促す
ように話し合っている」                  (人事担当者)


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■■■ 先輩社員の職務・キャリアを公開し、キャリア自立を促す ■■■
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 適正な異動・配置を実施するための人材情報のデータベースの仕組みとして
5年前にROSICと呼ぶ新たな人材把握システムを導入した。社員本人がイン
プットしたキャリアビジョンなどの基礎情報と上司から見た現職の適性、強みや
弱み、中長期のキャリアの方向性やアドバイスなどの情報をはじめ、過去の人事
考課や異動の発令履歴、新任マネジメント研修のアセスメント結果、人事部との
面談記録などの小さな情報も入っている。

 異動の調整時期には、社員本人の希望や上司のアドバイスなど過去にインプッ
トした記録が集約されたA4用紙1枚の裏と表に書かれたキャリアシートを使
い、面談で活用している。

 ユニークなのは自立的に将来のキャリアを考えてもらうために先輩社員の職
務・キャリアを公開していることだ。イントラネット上に各部署が自分の組織の
仕事内容を紹介した「組織紹介」のページに加えて、個々の社員がどのようにし
てキャリアを築いてきたのかを自身で書いたものを紹介する「キャリアビジョン
情報サイト」も用意している。入社4年目から9年目、マネージャーを含めた10
年目から14年目の社員に部署ごとに書いてもらっている。

 中身はこれまでのキャリアだけではなく、仕事のやりがいや部署が求める人材
像まで幅広く掲載し、先輩社員の全員のキャリアシートをまとめて検索して見る
ことができる。便利なのは若手や女性、子育て中の社員などいろいろな軸で検索
できることだ。これを参考にしながら自分のライフステージに応じてキャリアビ
ジョンを描くことも可能になる。社員自身が自らのキャリアを描く、キャリア自
立を促すことに結びついている。             (溝上 憲文)


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◆キャリアコンサルタント制度の新展開

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■■■ 「働き方改革」とキャリア支援 ■■■
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 政府の推進する「働き方改革」では、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の
議論が注目されがちだが、我が国の雇用の在り方を根本的に見直すものだという
点をもっと意識すべきだろう。それは、日本的な集団主義からの脱却という大き
な転換を目指すものだという点である。それは、「個」に着目した人事諸制度や
管理の見直しであり、更に進んで「この国の企業のかたちを考える」という取り
組みだともいえよう。

 その背景には、経済活動のグローバル化、ICTの進展など技術革新が進む中
で、業績の変動も激しくなってきているだけでなく、先行きの不透明感も強まっ
ており、企業組織も統合・合併や業態変更など「変化」を余儀なくされることも
増えていることがある。その帰結として、経営姿勢が短期的な視点を重視する傾
向が強まることになる。しかし、一方において、長寿化によって社会的な活動期
間も長期化しており、雇用の上限年齢も60歳定年からだんだんに引きあがってお
り、今や70歳以上も労働力として考える時代となってきている。そのため、より
長期的な展望を持った職業キャリアの設計が求められることとなる。

 このように短期志向に傾斜してきた経営と長期志向が必要とされる従業員個人
との関係をどう調和させるか。それが我が国の「働き方改革」のより根本的な課
題にほかならない。そのために、一方で個人の自律性を重視した新しい組織の在
り方や人事諸制度の検討が急がれるとともに、従業員に対しても環境変化に対応
する柔軟性とチャレンジ精神をもって主体的な取り組みを促すことが不可欠にな
る。その一つの表れが、キャリア支援によって自律的な人材を育成していこうと
いう流れである。

 政府も、こうしたことからキャリア支援の施策の充実は、重要な政策課題と位
置付けている。雇用保険制度における教育訓練給付の活用、社内検定制度等によ
る職業能力評価体制の推進、最近では「グッドキャリアアワード表彰」が行われ
ている。しかし、基軸となるのがキャリアコンサルティングの推進であり、「セ
ルフキャリドック」はその一つの活用例である。これは、節目の年に従業員に
キャリアコンサルティングを受ける機会を与え、自らのキャリア形成に気づきを
与えるという取り組みで2016年から実施されている。
キャリアコンサルティングは、このような個人の意識変革を通じて更に組織の変
革を促すインパクトを与えるものと位置付けられよう。


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■■■ キャリアコンサルタント制度の強化 ■■■
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 では、キャリアコンサルティングを行う専門家であるキャリアコンサルタント
の現状はどうか。平成26年6月に閣議決定された
「『日本再興戦略』改訂 2014−未来への挑戦−」においては、 キャリアコンサ
ルティングの体制整備があげられた。これを受けて、厚生労働省においては、平
成 26 年 7 月に「キャリアコンサルタント養成計画」を策定した。これは、標
準レベルのキャリアコンサルタント及びキャリア・ コンサルティング技能士の
累積養成数について、平成36年度末に10万人とすることを数値目標として掲げて
いるが、とりわけ企業領域での活躍を期待することでその達成が最大の課題である。

 このように徐々にキャリアコンサルタントの養成が進んできたが、
平成28年4月より国家資格になったことにより、専門家としての位置づけがより
強化されたことは大きな促進要因だといえる。これによって、キャリアコンサル
タントは登録制(5年の更新)の名称独占資格とされ、守秘義務・信用失墜行為
の禁止義務が課された。したがって、これまで養成機関によって個々に試験が行
われていた現状が改められ、現在、キャリアコンサルティング協議会と日本キャ
リア開発協会(JCDA)の2機関で統一的な試験が実施されている。また、従来の
標準キャリアコンサルタントは、経過措置として国家資格に移行させることとな
り、平成27年12月末現在のキャリアコンサルタントの登録者数は22,183人となった。

 このキャリアコンサルタントは、企業、需給調整機関(ハローワーク等)、
教育機関、若者自立支援機関などの幅広い分野で活躍している。しかし、前述の
養成目標にはまだほど遠い状況にあるとともに、とりわけ企業領域での普及に問
題を残している。まだ、キャリアコンサルティングの必要性についての問題意識
が希薄な企業も多く、従来型の教育研修の実施で人材育成を図ればよいという考
え方も根強い。

 企業の現状をみれば、若年者の定着と育成、女性の活躍支援、高齢者の雇用延
長、企業外へのキャリアチェンジ、障害者の雇用促進など、職業キャリアを円滑
に進めるために解決すべき課題が目白押しである。これらに共通なのは、それぞ
れ個人が将来の希望も含めて自らのキャリアを考え、生活事情も考慮した自律的
な進路選択が行われることだ。これからの企業にとっても、不確実な環境変化に
対応でき、また新たな発想で付加価値を生む人材が求められることは間違いない
だろう。その意味で、人材力を強化するには、組織依存でなく、組織との適切な
距離感を持った自律的な行動が可能な人材を増やすことである。これからの人材
育成は、企業が「人を育てる」のではなく、「人が育つ」のを企業が支援すると
いう発想転換が必要とされていると考えたい。


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■■■ 厚生労働省の組織改編 ■■■
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 こうした中で、最近のトピックとして、「働き方改革」の推進を睨んで厚生労
働省の組織再編の査定結果(平成29年度 厚生労働省機構・定員査定)が発表
されたことがある。
その関係部分は別表のとおりであるが、本稿に関連しては、職業能力開発局が人
材開発統括官のもとに再編成されたことが注目される。「生産性向上」の課題に
応える部局として位置づけられたことが発表の際の説明となっているが、これは
職業能力開発を単に教育研修や職業訓練の施策としてではなく、経営戦略の中に
位置付けていこうという趣旨ともいえよう。

 したがって、キャリアコンサルティングも、企業の人事施策の中枢に位置付け
ることも可能となり、前述した人事上の経営課題の有力な解決手段としての評価
が高まることも期待されるのではないだろうか。

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(1) 雇用環境・均等局の設置等 非正規労働者の処遇改善、女性活躍推進や均等
処遇、ワーク・ライフ・バランスの実現等働き 方改革を推進するため、
雇用環境・均等局を設置。雇用環境・均等局に、
6課(総務課、機会均 等課、均等待遇推進課、職業・生活両立課、在宅労働推
進課、勤労者生活課)を設置。

(2) 子ども家庭局の設置等 保育・子育て人材や児童相談所等の子育て支援基盤
の一体的整備や切れ目のない子育て仕事両 立支援の推進、
虐待防止対策と連携した社会的養育の総合的な推進体制の強化を図るため、
子ども家庭局を設置。子ども家庭局に、5課(総務課、子育て支援課、社会的養
育・虐待防止対策推 進課、保育課、母子保健課)を設置。

(3)人材開発統括官(局長級)の設置等、若者の雇用安定や働く方の能力開発の
促進を支援し、生産性の向上を図るため、人材開発統括官を設置。人材開発統
括官に、参事官5人(人材開発総務担当、人材開発政策担当、若年者・キャリ
ア形成支援担当、能力評価担当、海外人材育成担当)を設置。
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                            (北浦 正行)


編┃集┃後┃記┃
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 先月の大相撲初場所で、稀勢の里関が優勝し19年ぶりに日本人横綱が誕生し
ました。嬉しいニュースです。

さて、安倍首相の施政方針演説の中の「一億総活躍の国創り」では、次の項目を
掲げています。

1.働き方改革
2.女性の活躍
3.成長と分配の好循環

政府は「働き方改革」として、長時間労働に制限を設け、残業時間の上限を繁忙
期も含めて年間720時間、月平均60時間を超えないよう企業に義務づける政
府原案をまとめました。

長時間労働問題を抱えた経営者達は、経営課題の最優先事項として「労働環境の
改革」を掲げています。

企業の長時間労働改善策が、下請への発注で片付けられると中小企業は改善でき
ませんし、根本的な改善にはなりません。
恒常的な人材不足も背景にありますが、人材教育、短期成果の要求等による長時
間労働の体質を分析して、改善して行く必要があります。

AI等の急速の発達により第4次産業革命と言われている今、AIに代替される
可能性の仕事があると言われています。
今後は、AIとの共存を含めて社員教育の充実が重要となります。   (白石)



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発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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今月のメールマガジン第178号はいかがだったでしょうか。
お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容充実していきたいと思います。
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