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企業成長のカギを握る人材活用術(4)
〜企業が取り組むタレントマネジメント「オリエンタルランド」〜

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┏━━┓    
┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
┗━━┛                           第179号
                              2017/03/01

           http://www.koyousystem.jp
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春とはいえまだ浅く、寒さの名残が感じられる日が続きます。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。

雇用システム研究所メールマガジン第179号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆企業成長のカギを握る人材活用術(4)

〜企業が取り組むタレントマネジメント「オリエンタルランド」〜

■人材要件を改定。業務と育成に直結した評価制度に一新
■全員をテーマパークの現場に配属、組織全体で異動を決定
■部下に成長意欲を持たせる管理職の教育を徹底
(以上執筆者 溝上 憲文)


◆また改正が迫られる雇用保険制度

■雇用保険法の改正の意味
■平成29年度改正の動き
■残された若干の課題
(以上執筆者 北浦 正行)

■[編集後記] (編集長 白石 多賀子)

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◆企業成長のカギを握る人材活用術(4)

〜企業が取り組むタレントマネジメント

 「オリエンタルランド」〜

 大手企業を中心に「タレントマネジメント」が流行っている。その目的はビジ
ネスニーズに直結する人材(リソース)を活用し、最終的に企業の成果を生み出
していくことにある。
 人手不足の深刻化や就業に対する価値観の多様化する中で、従来の集団的な人
事管理の枠を超えて社員一人ひとり個性・能力に焦点を当てた育成の支援や、
ふさわしい仕事に配置する人事異動を通じて会社全体のパフォーマンスを高めて
いくことが求められている。今回は本人の能力・適正を踏まえた育成計画を策定
し、成長を促す仕組みを強化しているオリエンタルランドの取り組みを紹介したい。


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■■■ 人材要件を改定。業務と育成に直結した評価制度に一新 ■■■
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 オリエンタルランドは1人ひとりの社員の能力をきちんと把握し、人事部門と
各組織が連携しながら育成を支援していくことを目指している。2014年に商品本
部など部門ごとに10年後のビジョンを策定。
15年度から実施に移すとともに、一般職や管理職層などステージごとに求められ
る人材要件を改定した。評価制度は期初に業務面と行動面の目標を設定し、期末
に達成度合いを評価するが、従来の行動面の評価項目は20を超えるなど、オリエ
ンタルランドの社員として何を重視するかが不明確だった。それを全役職員共通
に求める行動をシンプルに
「より良く」「やり切る」「一丸となって」という3つの軸に改めた。

 実際に一般職社員の行動面の評価はこの3つで評価している。例えば「より良
く」にはお客に対して現状に満足することなく、もっとすばらしいサービス提供
していこうという思いが根底にある。実際の「より良く」の評価では「良いもの
を生み出すために社内・社外の変化を知る高いアンテナを張っているか」「解決
すべき真の課題を見つける力」「解決するためのプランの作成」という大きく3
つのステップの達成度を見ている。

 また、一般職の最上位のリーダーと管理職層は「掘り下げる」「決めきる」
「引っ張る」「育てる」という4つで評価している。評価は一般職が半期に
1回、管理職は年に1回実施する。
4つの行動評価のうち「掘り下げる」「決めきる」「引っ張る」については、上
司との話し合いでいずれか1つの目標を立て、「育てる」については期初に必ず
メンバーの育成に関する目標を立てるなど、育成を重視した運用ルールにしてい
る。「実際の運用でも管理職からは、行動評価の着眼点が以前に比べて明確に
なったことで部下とのコミュニケーションがやりやすくなったという声もある」
                          (同社人事担当者)


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■■■ 全員をテーマパークの現場に配属、組織全体で異動を決定 ■■■
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 総合職は入社時に2ヶ月の新入社員研修を経て、全員がオペレーション部門に
配属される。同社のメインであるテーマパーク事業のフロントラインでしっかり
と経験を積み、エリアごとの一人前の「時間帯責任者」を目指すことになる。現
場には直接お客と接してサービスを提供している大勢のアルバイトがいるが、そ
の人たちのモチベーションを上げて、いかに質の高いサービスを提供していくか
が問われることになる。

 現場での経験や実績を踏まえて、一定年数を目安に次の部門に異動させる。同
社ではゼネラリストの養成が育成のベースにあり、特定の部署に留まることなく
ローテーションを通じて経験を積むことで本人の成長を促していくやり方をとっ
ている。必ずしも異動先が決まっているわけではないが、人事と各部門が連携し
て育成と配置を進めている。

 年に1回全社員に自己申告書を書いてもらい、マネージャーとキャリア面談を
実施する。マネージャーはそれを踏まえて部下1人ひとりについて3年間の育成
方針を立てる。さらに部門の会議でどのように育成していくかを議論する。

「本人の能力・適性に沿って次に経験させるべきことは何かを話し合い、場合に
よっては異動させて新しい仕事にチャレンジしてねらうことも議論し、最終的に
部門長がメンバー全員の育成の計画を参考に配置案を策定している」
                            (人事担当者)

 人事部は各部門長と育成の計画だけではなく、日常的にコミュニケーションを
取りながらあらゆる情報を共有し、異動に際しては各部門のニーズを把握するな
どサポートしている。

 また、自ら異動先を申告する「仕事チャレンジ制度」がある。年に1回、社内
イントラネット上に紹介された各部門の業務紹介を見て、この仕事をしてみたい
と思う社員が自発的に申し込む制度だ。エントリーした希望者を人事部が部門に
仲介し、部門が了解すれば面談を経て異動の可否が決まる。実際に異動する人は
2桁程度だが、今後は自ら手を挙げて社内・社外の違う仕事を経験することで成
長意欲をかき立てるような仕組みも検討している。


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■■■ 部下に成長意欲を持たせる管理職の教育を徹底 ■■■
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 個々の社員のパフォーマンスを最大化していくためには何といっても管理職の
役割が需要だ。2015年に各ステージ別の要件を改定したのはメンバーに対して会
社が求める成長の方向性わかりやすくするためであり、成長意欲を持たせるには
実際に運用する管理職の力量が問われることになる。

 とくに上司に求められるのは、メンバーの把握、育成計画の策定、業務アサイ
ン、育成・支援、評価・振り返りという5つの育成サイクルを一気通貫で回して
いくことだ。これまで全管理職を対象にステージ別要件や評価制度の見直しなど
人事戦略に関して2回の説明会を開催してきた。

 今後は行動面で明確化したオリエンタルランドで活躍が期待される人材像を実
現するために、評価の精度の向上、従来の自己申告書の見直しや育成計画の策定
と育成会議などのすべての人事施策がしっかりと回していくことを目指してい
る。                          (溝上 憲文)


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◆また改正が迫られる雇用保険制度

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■■■ 雇用保険法の改正の意味 ■■■
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 このところ、雇用保険法の改正が急ピッチで進んでいる。

昨年の改正では、65歳以降に新たに雇用される者を雇用保険の適用の対象とする
こととされ、平成29年1月から施行されている。この改正は、特に労働政策上の
意義が大きい。それは、戦後労働法制が整備されてきた中で、労働政策と社会保
障政策の分水嶺は65歳という不問律が崩れてきたことともいえるからだ。

すなわち、一般的な労働市場からの引退年齢を65歳と置き、これに合わせるよう
な形で雇用保証の制度と年金制度を設計してきたことが揺らいだことにほかなら
ない。新たな秩序の形成はこれからである。
雇用政策は65歳を超えて70歳以上も視野に入れて雇用年齢の上限の引き上げが図
られている。公的年金制度については、厳しい財政事情の下で65歳という受給開
始年齢の引き上げも必至な情勢にあることも周知のとおりだ。

 我が国では、労働市場からの引退は、60歳代を通じてなだらかに進むと長く理
解されてきた。しかし、世界に秀でる長寿大国になった今日、しかも人口減も相
まって労働力不足の傾向を強めてきた中で、この図式も変化してきている。ま
た、労働者も就業ニーズが多様化しており、雇用と年金の接続はだんだんに個人
差を意識しなくてはならなくなったといえよう。その帰結は、雇用政策面では、
生涯現役を目指すような本格的な雇用機会を高齢者に提供することであり、現行
の「定年制」の抜本的な見直し(場合によっては廃止によるエイジフリー化)も
いよいよ検討課題になり得る時代となったことだ。

 雇用保険が注目されるもう一つの理由は、特別会計財源としての機能の大きさ
である。言うまでもなく、国の予算は、一般会計だけでなくその約4倍の特別会
計によって成り立っている。とりわけ、雇用政策に関しては、平成29年度予算に
おいて、一般会計がわずか433億円であるのに対し、労働保険特別会計の雇用保
険2事業分は5234億円とその依存度が高い。戦後の流れをみても、失対事業の縮
小・廃止によって一般会計による雇用政策は後退し、産業界の互助的な雇用政策
(その大部分は助成金制度)に切り替わってきたといえる。
このため、雇用保険法は、失業給付等の措置を実施するという側面と雇用政策の
財源法としての意味合いを持つことになっており、このことが頻繁な改正を行っ
ている大きな理由でもある。


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■■■ 平成29年度改正の動き ■■■
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 前年度に引き続き雇用保険法の改正が予定されている。

既に「雇用保険法等の一部を改正する法律案」は、この1月に閣議決定され、現
在衆議院で審議中である。その緊要度から見て、介護保険法等の改正法案とあわ
せて日切れ法案として3月末に審議され成立する見込みが強い。特に「雇用保険
料や国庫負担の時限的な引下げ等」については、雇用情勢が安定的に推移してい
ること等を踏まえ、平成29年度(2017年度)から実現することが、未来への投資
を実現する経済対策(平成28年8月2日閣議決定)に盛り込まれており、その実
行は必至となっている。

 雇用情勢の改善が進み、基本手当の受給者実人員は減少傾向をたどり、積立金
残高が過去最高、雇用安定資金残高が過去最高に近い水準となっている中での財
政調整的な意味合いが強い。すなわち、当然予定された改正ともいえるが、もう
ひとつこのところの地域別最低賃金の大幅な引き上げの影響という側面もある。
すなわち、基本手当の算定基礎となる賃金日額の下限は、平均給与額の変化率に
応じて自動変更(低下)してきたが、その一方で最低賃金が引上げられた結果、
最低賃金額と逆転する現象が出てきたことである。このようにある意味で必然的
に行われる改正だといえるが、その一方で給付日数の見直しによって、一部の拡
充も行い、蓄積された財源の利用を進めている点も特筆される。

 財源活用という意味では、専門実践教育訓練給付の給付率を、費用の最大70%
に引き上げこと〔最大60%→70%〕、育児休業の再延長に伴って、育児休業給付
の支給期間も延長することも注目される。前者は、労働者の能力の向上のみなら
ず、円滑な労働移動の促進という効果も狙ったものと考えられる。

後者については、待機児童問題が遅々として改善が進まない中で、
保育園に入れないという不満を背景に最大2年間の育児休業給付をかのうにした
ものである。
それぞれ喫緊の政策要請に基づくものと言えるが、前者については約12万人の一
般教育訓練に比べ、専門実践教育訓練は6000人程度と利用実績は少ない。

また、後者についても2年間という休業期間の長さが職場復帰にどう影響するか
がひとつの課題である。

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雇用保険法等の一部を改正する法律案(概要)
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1.失業等給付の拡充(雇用保険法)

(1)暫定措置を終了する一方で、雇用情勢が悪い地域に居住する者の給付日数
を60日延長する暫定措置を5年間実施。また、災害により離職した者の給付日数
を原則60日(最大120日)延長。

(2)雇止めされた有期雇用労働者の所定給付日数を倒産・解雇等並みにする暫
定措置を5年間実施。

(3)倒産・解雇等により離職した30〜45歳未満の者の所定給付日数を引き上
げ。〔30〜35歳未満:90日→120日 35〜45歳未満:90日→150日〕

(4)基本手当等の算定に用いる賃金日額について上・下限額等の引上げ。

(5)専門実践教育訓練給付の給付率を、費用の最大70%に引き上げ。〔最大
60%→70%〕

(6)移転費の支給対象に、職業紹介事業者等の紹介により就職する者を追加。

〈施行は(1)〜(3)平成29年4月1日、(4)同8月1日、(5)〜(6)
は平成30年1月1日〉

2.失業等給付に係る保険料率及び国庫負担率の時限的引下げ
(雇用保険法、徴収法)
保険料率及び国庫負担率を3年間(平成29〜31年度)時限的に引き下げ〔保険料
率 0.8%→0.6% 国庫負担率(基本手当の場合)13.75%(本来負担すべき額
(1/4)の55%)→2.5%(同10%)〕〈施行は平成29年4月1日〉

3.育児休業に係る制度の見直し(育児・介護休業法、雇用保険法)
育児休業を6か月延長しても保育所に入れない場合等に限り、更に6か月(2歳
まで)の再延長を可能。これに合わせ育児休業給付の支給期間を延長。〈施行は
平成29年10月1日〉

4.雇用保険二事業に係る生産性向上についての法制的対応(雇用保険法)(略)

5.職業紹介の機能強化及び求人情報等の適正化(職業安定法)(略)


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■■■ 残された若干の課題 ■■■
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 雇用保険制度による失業給付は、すべて労使折半の互助原理だけで賄うことで
よいのか。この点は、古くからの基本問題である。前述のように、一般会計によ
る雇用政策のウエイトは小さくなっており、国庫負担の縮小はその更なる交代を
意味するともいえる。このため、国庫負担率の臨時的な引き下げという異常事態
は早く解消し、国としての失業対策に対する責任の姿勢を明確すべきという議論
も根強い。

 また、雇用保険の適用が65歳を超えたことから、これら60歳台後半層の給付は
どのようなものとして設計するかという問題がある。本格的な給付として現役世
代の延長として捉えるか、それとも引退期における部分的な所得補償として捉え
るか。これは、高齢期の雇用をどのように描くかによっても違ってくると同時
に、今後における年金制度改革との整合性を考える必要がある。また、こうした
ことから考えれば、所得補てんの性格を持つ高年齢者雇用継続給付の見直しにつ
いても議論が出てこよう。

 さらに、新しい問題として、マルチジョブホルダーに対する雇用保険の適用を
どうするかという問題もある。これは、 働き方改革の検討項目の一つである
「副業・兼業」を推進することによって早急な議論が必要となるであろう。な
お、労災保険についても、その適用の在り方を議論すべきことは同様である。
 以上のように、現在の「働き方改革」の論議は、雇用保険制度のありようも大
きく変化させていく可能性がある。
本来の目的である失業補償という性格を超え、労働者のキャリア展開に潜む様々
なリスクに対応し、生涯にわたる安定的なキャリアの形成に資する保険制度へと
変化していくのではないだろうか。            (北浦 正行)



編┃集┃後┃記┃
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 先週から“プレミアムフライデー”が始まりました。
毎月末の金曜日に早期退社を奨励し、消費喚起を促すことが目的です。
“プレミアムフライデー” イベント開催をする小売や飲食業に働く労働者にとっ
ては、逆に多忙となります。次回は3月31日年度末の日です。
“プレミアムフライデー”は定着するのでしょうか。

 ヤマト運輸が労使で宅急便の荷受量の抑制を検討しているようです。
この10年間にアマゾン等ネット通販の爆発的な普及で、取扱量が5割増しとなり
ドライバー達の労働環境が厳しくなっているそうです。
私も翌日に品物が届く便利さで大変助かっていますが、確かに不在のため再配達
をお願いすることがあり二度手間をかけています。

今後、業界に関係なく、人手不足と人件費高騰は大きな問題であり、新たなビジ
ネスモデルの構築が急がれています。               (白石)



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発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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お楽しみいただければ幸いです。
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