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残業時間の削減をいかに進めるか(3)
〜あいおいニッセイ同和損保の取り組み〜

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┏━━┓    
┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
┗━━┛                           第182号
                              2017/06/01

           http://www.koyousystem.jp
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気温が高く入梅の季節となりました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。

雇用システム研究所メールマガジン第182号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆残業時間の削減をいかに進めるか(3)

〜あいおいニッセイ同和損保の取り組み〜

■目標退社19時、水曜日の18時早帰り日を推進し、
 月平均残業時間20時間未満を達成
■有給休暇取得を労使一体で推進。消化率85%を達成。
■「プレミアムフライデー」を活用し、さらなる休暇取得を促進
(以上執筆者 溝上 憲文)


◆同一労働同一賃金問題の焦点 その1

■同一労働同一賃金とは
■ガイドラインの総論と各論
■労政審議会での検討状況
(以上執筆者 北浦 正行)

■[編集後記] (編集長 白石 多賀子)

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◆残業時間の削減をいかに進めるか(3)

〜あいおいニッセイ同和損保の取り組み〜

 官民を挙げた働き方改革が進んでいる。とくに長時間労働の是正や休暇の取得
はどの企業にも共通した課題だろう。しかし組織や社員に染みついた長時間労働
体質を払拭するのは容易ではない。

 経営主導による全社的な職場・個人単位の業務プロセスや業務量の見直しによ
る仕事の効率化を進めるなど地道な取り組みが必要になる。実際にどのようにし
て働き方改革を推進しているのか。今回はあいおいニッセイ同和損保の取り組み
を紹介したい。



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■■■ 目標退社19時、水曜日の18時早帰り日を推進し、
                月平均残業時間20時間未満を達成 ■■■
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 同社は10年前から残業時間削減策に取り組んでいる。

所定就業時間は9時から17時までの7時間(休憩1時間)。
目標退社時間を設定し、本社に自動消灯設備を導入した。その目的は電気が消え
ることで時間は有限であることを意識させるとともに、その中で仕事のやり方を
工夫してもらうことにあった。

 最初は22時消灯からスタートし、段階的に21時、20時と消灯時間を早め、現在
は19時消灯となっている。もちろん繁忙期や突発的な事情により残業せざるをえ
ない場合もある。職場単位で月に8日を上限に消灯延長を認め、9日以上になる
場合は事前に人事部に申請しなければならない。

 また、職場単位で残業時間削減の意識を高めるために毎月1回、部・支店長に
各部門の労働時間を集計した一覧表を提供している。その狙いは「ある部門は消
灯延長が少ないのに自分の部門は10回もあると、守れていないことに恥ずかしい
気持ちになる。まずは上から意識を変えてもらう」(同社人事担当者)ことにある。

 この他に毎週水曜日を早帰り日(目標退社時刻18時)にしている。実効性を持
たせるために当初は人事部と経営企画部が「残業パトロール」を実施。今では部
門ごとに管理職が2人1組となり残業パトロールを実施している。

「人事主導だと人事部だけがやっていると受け取られかねないし、部門が自主的
に取り組む姿勢が大事だと考えた。18時になったら部門の管理職が各フロアを巡
回し、残業している社員が帰るまで退社を呼びかける。最初は反発もあったが、
今では定着し、本社部門は9割5分以上が18時に退社している」(人事担当者)

 昨年の熊本地震では保険金の支払いなど損害保険サービス部門を中心に多忙な
時期が続いたが、その後、取り組みを強化。現在は時間管理対象者の月平均残業
時間を20時間未満に抑制するなど成果を上げている。ちなみに同社の36協定の月
間の労働時間の上限は社員資格ごとに20時間と30時間、特別条項でも月60時間と
短い。政府の時間外労働時間の上限の方向性が示されたが「社員は常に60時間を
意識しているので法違反になることはないだろう」(人事担当者)と見ている。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■■■ 有給休暇取得を労使一体で推進。消化率85%を達成。 ■■■
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 また、2015年4月に休暇制度を再編し、有給休暇の取得率向上に努めている。
同社は年次有給休暇の20日以外に連続特別休暇5日、新特別休暇、夏期休暇など
多くの休暇を用意していたが、特別休暇や夏期休暇などは利用しても有給休暇の
取得率は約33%と低かった。そのため連続特別休暇を有給休暇に加えて25日にす
るなど休暇制度を拡充した。

 同時に休暇を取得しやすい風土や多様な働き方の実現に向けて、労使協定によ
る有給休暇の「計画的付与制度」の導入などの施策を推進した。
「これまでは有休を取得できる人とそうでない人のバラツキが大きかった。夏期
休暇など名称がつくと休みやすいとか仕事がヒマであれば取れるという受け身の
人が多い。また、ライン長自身も休暇取得に対する認識が希薄だった。しかし生
産性の高い働き方をしようとすると、あらかじめ休暇日を決め、そのためにどの
ように仕事を工夫すればよいのか考えてもらいたいという思いがあり、労使で協
議して改革を進めた」(人事担当者)

 社員が積極的に有休を取得するには本人だけではなく、上司の役割も重要であ
る。同社は休暇取得推進のポイントとして以下の4つを掲げている。
1.取得者本人が主体的に休暇計画を立てること
2.休暇取得は、上司の責務であると認識すること
3.上司が率先して休暇を取得すること
4.休暇の計画を職場で共有すること

 計画的付与制度の導入をはじめ、労組が休暇取得計画表を独自に職場に配布す
るなど労使一体となって有休取得率の向上に注力した。その結果、15年度
79.8%、16年度85%を達成している。


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■■■ 個人別残業時間を公開し、ヒアリングで是正を促す ■■■
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 そして今年度のさらなる有休取得向上のツールとしてMyプレミアムフライ
デーを導入。仕組みは社員個々に1ヶ月のうちいずれかの金曜日を設定し、時間
単位有休や午後半休取得を推奨するものだ。

「有休取得の起爆剤として活用したいと思ったが、月末金曜日に一斉に休むとお
客様に迷惑をかけるのでそれは難しい。一方、職場によっては月末が忙しくない
ところもあれば、個人の事情によっても違う。そうであるなら全員が休暇をしっ
かりと取得するには個人ごとに取りやすい金曜日を決めてもよいのではないかと
考えた」(人事担当者)

 3月に本社部門で試行実施し、4月から本格実施したが「全員が取得できたわ
けではないが、職場の会議で全員の予定を決めているところもあり、浸透してい
くのではないか」(人事担当者)と見ている。      (溝上 憲文)


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◆同一労働同一賃金問題の焦点 その1

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■■■ 同一労働同一賃金とは ■■■
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 政府の働き方改革は9項目にわたるものであったが、その目玉となる改革提案
は、「同一労働同一賃金」と「残業削減による長時間労働の抑制」にあることは
周知のとおりである。
いずれも厚生労働省の労政審議会に場を移し、法制化に向けて第2ラウンドの議
論に入っている。最近では、件の時間外労働の上限規制問題が専ら話題の中心に
なった感があるが、昨年末に働き方改革推進会議から
「同一労働同一賃金ガイドライン案」(以下「ガイドライン」という。)が公表
されたことは世間の注目を大きく浴びたことはまだ記憶に新しい。
 
 ただ同一労働同一賃金といっても、全産業の労働者の均等均衡化を図ったもの
ではない。あくまでも、「『同一労働同一賃金』原則に踏み込み、非正規社員の
待遇改善を実現する方向性を提示」したという注釈が置かれている。すなわち、
「同一労働同一賃金は、 いわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働
者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)
の間の不合理な待遇差の解消を目指すもの」であり、今や雇用者全体の約4割を
占める非正規労働者の賃金等の改善が眼目にある。その意味では、これも立派な
労働者の賃金引き上げによる経済対策の一環ともいえなくもないだろう。

 本来の意味での「同一労働同一賃金」を目指すならば、産業を横断するような
賃金決定を志向するのが本筋だ。フランスやドイツでは、産業別労働協約による
横断的賃金決定がその役割を果たし、イギリスでは労働市場の流動性が高く横断
的な賃金相場形成が築かれるといったように、欧米ではこの問題は「社会的」に
論じられる。しかし、我が国の場合には、企業別の労働条件設定が中心であり、
雇用流動性もそれほど高くないというように労働市場構造が異なる。このため、
この「同一労働同一賃金」問題は、専ら企業内における賃金等の待遇改善の問題
となり、とりわけ正規労働者と非正規労働者との待遇格差の是正の問題に翻訳さ
れることとなった。

 もちろん、非正規雇用労働者の待遇改善を企業ごとに進めるというアプローチ
は、欧米のような方策がとりにくい我が国の現状から見て現実的なものといえよ
う。しかし、産業間や企業規模間の格差も忘れてはならず、また同一の職種(仕
事)の企業間の格差も依然として解消されない。それを実現するのは、我が国の
場合、産業別労使による賃金協定か、あるいは法定最低賃金(とりわけ業種・職
種別に設定される特定最低賃金)などということになるが、ガイドラインでは言
及されてはいない。しかも、本質的な改善は賃金以前に雇用の在り方そのものを
問うのことが不可欠である。そのため、企業における正規・非正規の待遇格差の
改善が主題となり、企業の人事施策の問題、とりわけ人事評価に関わる領域に焦
点が当てられることとなった。
その点が政府の会議でどうしてここまで踏み込むのかという印象を与える要因だ
と言えよう。


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■■■ ガイドラインの総論と各論 ■■■
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 このガイドラインは、一つの企業において、正規雇用労働者と非正規雇用労働
者との間で、待遇差が 存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであ
り、いかなる待遇差は不合理なものでないのかを示したものだ。基本給や賞与、
各種手当などについて、それぞれ問題となるかならないかという形で具体例を付
して示したことが特徴であることは周知のとおりである。このため、これが企業
における賃金決定の準則を示したもので、これに従うことが義務付けられたかの
ような受け止めも見られる。

 しかし、これらは個別具体的な事案について裁判所が判断する際の拠り所とな
るものであり、そのまま法制化されるという性格のものではない。この点につい
ては、「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」中間報告(平成28年12月16
日、以下「中間報告」という。)において注記されており、それらの文脈でこの
ガイドラインを読み解くべきだろう。例えば、中間報告では、「賃金決定は民間
(労使)に委ねるべき」こと、ガイドライン案は「第一義的には現行法解釈の明
確化と位置付け」られることが、まず指摘されている。そのうえで、「民間(労
使)の取組が十分出来ていないと、職務分離などの副作用や企業経営への過度な
影響のおそれ」があることや、「ガイドラインの制定・ 発効には過不足のない
時間軸の確保が重要」であるとしている。

 このように、民間の自主的努力を前提にしたうえでのガイドラインであり、企
業の実情に全く関わりなく、一律的な取り扱いを示したというものでもない。ガ
イドラインでは、基本給など個別の対象について原則を示した各論の部分がア
ピールされているが、冒頭の総論部分は中間報告の趣旨が繰り返されており、丁
寧な議論を要することが謳われている。このように各論だけを一人歩きさせるこ
となく、総論も含めた全体を読み取るべきである。

 各論についても、同一の「職業経験・能力」「業績・成果」「貢献」「役職・
責任」などの要素があることを要件として、同一の支給等を行うべきという表現
が並ぶ。すなわち、同一労働の「労働」とは、単に職務が同じというのでなく、
このようなスペックの集合体として理解されている。言い換えれば、我が国にお
いては、こうした属人的要素も含まれた形で賃金等の処遇が決定されているので
あり、「職務」が「能力」と融合したような形で決まるのが特徴だともいえよう。

 したがって、基本給部分は、その決まり方が複雑であり、決まり方の明確化や
比較可能にすること等が必要であることから「段階を踏んだ取組が必要」である
ことが中間報告でも指摘されている。そのため、比較的決まり方が明確な「手当
を優先的に」して取り組むべきとされ、ガイドライン案では諸手当の決め方が列
挙されている。しかし、これらの多くは職務などに関連して判断されるため、そ
の解釈によって正規・非正規の差の合理性の説明も異なってこよう。その中で無
条件に同一の支給を求めているものは「通勤手当」等と「食事手当」である。同
様に、福利厚生についても「病気休暇」などが無条件になっている。こうした手
当については、見直しが進む可能性は高いと考えられるが、場合によっては制度
そのものをなくしてしまうことで解決させるという逆の動きも起こり得るのでは
ないか。


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■■■ 労政審議会での検討状況 ■■■
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 本来であれば、この種のガイドラインは法改正の後に論議されるべきものであ
ろう。しかし、現在進められている労政審議会での検討事項は別表のとおりであ
り、非正規雇用労働者間における均等・均衡待遇規定をそろえること、違いがあ
る場合の使用者の説明の義務化が焦点である。ガイドラインで示された賃金の取
り扱いは、これを直接法制化することは議論の主題ではなく、むしろ労使に対し
て自主的に取り組むことを促すメッセージという性格が今のところ強い。

----------------別表 労政審議会での論点の全体像-------------------


T 短時間労働者・有期契約労働者関係

1 労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備関係
2 労働者に対する待遇に関する説明の義務化
3 行政による裁判外紛争解決手続の整備等
4 その他

U 派遣労働者関係

1 労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備関係
 (1)派遣先の労働者との均等・均衡による場合
  (2)労使協定による一定水準を満たす待遇決定による場合
2 労働者に対する待遇に関する説明の義務化
3 行政による裁判外紛争解決手続の整備等
4 その他

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この項続く                  (北浦 正行)



編┃集┃後┃記┃
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 厚生労働省の調査で、過去3年間に企業で働く従業員の3割がパワーハラスメ
ントを受けたとのことです。
パワハラ対策をしている企業は52.2%と過半数を超えますが、
「特に取り組みを考えていない」企業が25.3%です。

もう一つの厚生労働省調査によると“うつ病”による休暇等から復職して5年以内
に再発する従業員が半数近くおり、病気休暇第1回目は平均107日、第2回は
157日と約1.5倍長くなっています。
再取得が特に多い職場は、仕事量の多い職場ほどリスクが高く、企業は仕事の負
荷の軽い短時間勤務の導入対策が必要としています。

さらに、29年度から長時間労働が疑われる企業を労働基準監督署が監督・指導
をする際に、パワハラ実態も調査するようです。
また、厚生労働省はブラック企業の社名を公表し話題になっています。 

“うつ病”の要因の一つに上司によるパワーハラスメントがあります。
パワハラの内容は、暴言・脅迫・侮辱等の精神的攻撃が過半数を占めています。
会社として、パワハラ防止のメッセージの発信や研修等の対策をしましょう。
                              (白石)


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発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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今月のメールマガジン第182号はいかがだったでしょうか。
お楽しみいただければ幸いです。
今後もさらに内容充実していきたいと思います。
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