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働き方改革をどのように進めていくか(10)
〜2019年の諸課題と対策〜

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┏━━┓    
┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
┗━━┛                           第201号
                              2019/01/01

           http://www.koyousystem.jp
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あけましておめでとうございます。
皆様には、よりよい一年となりますよう祈念申し上げます。

雇用システム研究所メールマガジン第201号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆働き方改革をどのように進めていくか(10)
     〜2019年の諸課題と対策〜

■勤怠管理・労働時間把握のためのシステム整備が急務
■急がれる非正規と正社員の諸手当の合理性の検証
■外国人受け入れの是非の検討とパワハラ対策
■現実味を帯びる65歳定年、70歳継続雇用への準備
(以上執筆者 溝上 憲文)


◆「平成」の労働政策の振り返りと今後の展望 (1)

■外国人労働者の導入拡大
■労働力不足の進展
(以上執筆者 北浦 正行)


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働き方改革をどのように進めていくか(10)
    〜2019年の諸課題と対策〜


 2019年は8本の法律を束ねた近年最大の労働法の改正である働き方改革関連
法、外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法、パワハラ防止対策な
ど諸課題が山積している。

 働き方改革関連法制は基本的には大きな枠組みを整備したものにすぎない。
それを企業の実状や中・長期的な企業ビジョンに基づいて、働く人が幸せや豊か
さを感じながら意欲的に働ける環境を作るために労使が互いに知恵を絞り出して
いくことが求められている。


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■■■ 勤怠管理・労働時間把握のためのシステム整備が急務 ■■■
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 柱の1つである「罰則付き時間外労働の上限規制」は 労基法36条の改正に
よって残業時間の上限が法律で規制される。労基法は1日8時間、1週40時間の
法定労働時間を超えて働かせることを禁止し、それを超えて働かせる場合は労使
協定(36協定)を締結し、労働基準監督署への届出が必要になる。協定による限
度時間は大臣告示に規定された1ヶ月45時間、1年360時間であるが、あくまで
も目安であり、法的拘束力はなかった。また「特別条項付き36協定」を締結すれ
ば例外的に年間6ヶ月まで限度時間を超えることができるが、上限時間がなく、
実質的に無制限であった。

 今回の改正では法律で時間外労働の上限を定め、これを超える残業ができなく
なる。時間外労働の限度時間は原則として月45時間、年360時間。臨時的な特別
の事情がある場合の上限について

(1)年間の時間外労働は720時間以内、
(2)休日労働を含んで、2ヶ月ないし6ヶ月平均は80時間以内、
(3)休日労働を含んで単月は100時間未満、
(4)原則の月45時間を超える時間外労働は年間6ヶ月まで――

という制限を設けている。
この限度時間を超えて働かせると刑事罰の対象になる。

 ただし、2ヶ月ないし6ヶ月平均は80時間以内、単月100時間未満は過労死認
定基準に近く、国会の付帯決議でも限度時間にできるだけ近づけることとされ
た。そのため36協定を締結する際に歯止めになるような措置として新たに指針が
設けられた。指針の第3条1項で「使用者は、時間外・休日労働協定において定
めた労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時
間の範囲内で労働させた場合であっても、労働契約法第五条の規定に基づく安全
配慮義務を負う」と明記している。


 限度時間を超える労使協定を結んだ場合の実務上の課題も少なくない。とくに
従業員個別の労働時間管理が重要になる。労働時間管理に詳しい元労働基準監督
官の北岡大介社会保険労務士は「2ヶ月ないし6ヶ月平均80時間以内と単月100
時間未満の規制には法定休日労働も含まれている。これまで別々に管理していた
時間外労働と法定休日労働をどう管理していくのか。仮に特別条項で1ヶ月あた
りの上限時間を99時間と定め、ある月の残業時間が90時間であれば翌月の早々に
は、今月は70時間までですというアラームを人事や上長が出さないといけない。
2ヶ月だけではなく、6ヶ月まで規制が入るので常にデータを取って上限を超え
させない体制を確立していく必要がある」と指摘する。


 従業員の残業時間を月末に締めたら上限を超えていたではすまされない。勤怠
管理システムが自動化されていない企業も多く、今まで以上に制度の高い労働時
間の把握が求められる。


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■■■ 急がれる非正規と正社員の諸手当の合理性の検証 ■■■
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 同一労働同一賃金については、「パートタイム・有期雇用労働法」と改正労働
者派遣法によって裁判の際に判断基準となる「均衡待遇規定」と「均等待遇規
定」が整備された。また2018年12月に出された「同一労働同一賃金ガイドライン
案」を整備した「不合理な待遇の禁止等に関する指針」が策定された。

 パートタイム・有期雇用労働法8条は、労働契約法20条を削除して統合したも
のだ。

(1)職務内容、
(2)職務内容・配置の変更範囲、
(3)その他の事情を考慮して
  不合理な待遇差を禁止するという均衡規定だ。また基本給、賞与、役職手 
  当、食事手当、福利厚生、教育訓練などのそれぞれの待遇ごとに、当該待遇
  の性質・当該待遇を行う目的に照らして適切と認められる事情を考慮して、
  判断されるべきとしている。

 9条の均等規定では
(1)職務内容、
(2)職務内容・配置の変更範囲が同じ場合は差別的取扱いを禁止している。

 均衡待遇とは考慮要素に違いがあっても、違いに応じてバランスをとって待遇
差を解消することであり、均等待遇は考慮事項が同一であれば同一の待遇にしな
さいということだ。また、事業主は有期雇用労働者に対し、本人の待遇内容およ
び待遇決定に際しての考慮事項に関する説明義務を課し、本人が求めた場合は正
規雇用労働者との待遇差の内容・理由等の説明義務も課している。


 ただし基本給については多くの企業の正社員は職能資格賃金など独自の制度に
基づく月給制であるのに対し、非正規社員は職務ベースの時給であり、賃金制度
は分断されている。実際にどのように均衡を図ればいいのか極めてわかりにく
い。北岡氏は「まず手をつけるべきは手当だ。非正規社員から見ても顕在化しや
すい職務関連手当、賞与、生活関連給付について優先順位をつけて確認する。手
当が支給されていなければ、合理的理由が言えるかどうかを検証し、言えないと
すれば施行までに検討しておく必要がある」とアドバイスする。


 一方、諸手当を巡る労使交渉において正規社員の手当をなくして待遇を下げる
ことで格差を是正しようとする企業が増えることが懸念されている。今回の指針
ではそれを踏まえ、事業主が正社員と非正規社員の不合理な待遇差の相違の解消
を行う際は「基本的に労使で合意することなく通常の労働者の待遇を引き下げる
ことは、望ましい対応とはいえない」と釘を刺している。


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■■■ 外国人受け入れの是非の検討とパワハラ対策 ■■■
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 2019年のもう一つの目玉が改正出入国管理法による今年4月からの外国人労働
者の受け入れ拡大だ。これまで「専門的・技術的分野」の高度人材しか受け入れ
てこなかったが、深刻な人手不足に対応するために単純労働者にも門戸を開く。
新たな在留資格は通算5年滞在できる「特定技能1号」と在留資格が更新できる
専門技術的な労働者の「特定技能2号」の2つだ。1号の対象者は農業、介護、
建設など人手不足が深刻な14業種。政府は2019年度から5年間の類型で最大34万
5000人を受け入れる見込みであるが、そのうち現行の「技能実習生」からの移行
が45%と見込んでいる。

 「技能実習制度」は途上国への技術移転を目的に創設されたが、企業の人手不
足解消策の労働力として利用されているのが実態だ。また、悪質なブローカーの
介在、受け入れ事業者が最低賃金以下で働かせる法違反、人権侵害、失踪などの
トラブルが後を絶たず、現行の技能実習制度の問題点が改善されないままに新制
度を導入することに反対の声も根強く、新制度の具体的内容を注視していく必要
がある。

 さらに職場のハラスメント防止対策に関して厚生労働省は事業主に対して社員
がパワーハラスメント(パワハラ)を受けることを防止するための雇用管理上の
措置を義務づける法改正案を今年の通常国会に提出する予定だ。同時に職場のパ
ワハラに関する紛争解決のための調停制度や、助言・指導等の措置が法律で規定
される。対策を取らない企業は是正勧告や企業名公表などの行政指導を受けるこ
とになる。すでにセクシュアルハラスメントについては法律で事業主の防止措置
が義務づけられているが、新たに自社の社員が社外の社員や顧客などからセクハ
ラを受けた場合も雇用管理上の措置義務の対象とすることにしている。小売、飲
食、医療・介護の現場の顧客・患者からのハラスメントが増加している実態を踏
まえたものだ。2019年は法律改正を含めてハラスメントに対する世の中の視線が
一層厳しくなるだろう。


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■■■ 現実味を帯びる65歳定年、70歳継続雇用への準備 ■■■
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 また、政府の「未来投資会議」では65歳までの雇用確保措置を義務づけた高年
齢者雇用安定法の継続雇用年齢を70歳に引き上げる法改正の検討が始まってい
る。言うまでもなく高齢者の雇用促進は人手不足の緩和や社会保障財政の安定化
を狙ったものだ。政府は今年夏までに実行計画を策定し、労働政策審議会の議論
を経て2020年の法改正を目指しているとされる。

 政府による70歳現役社会の包囲網が狭まるなかで、おそらく次のステップは70
歳までの雇用を見据えた法定定年年齢の65歳への延長だろう。政府も65歳定年制
の導入を推奨しているが、ほとんどの企業が選択しているのは再雇用制度などの
継続雇用制度だ。定年年齢が60歳の企業が約8割を占め、定年年齢が65歳以上の
企業は17.0%、定年のない企業と合わせても2割にも満たない(厚生労働省
「平成29年高年齢者の雇用状況」)。 

 それを後押しするのが公務員の65歳定年制の導入だ。人事院は8月10日、国会
と内閣に対し「定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正に
ついての意見の申出」を行った。公務員の65歳定年制導入を推進する自民党厚労
族の国会議員は定年引き上げの理由について「中小企業はすでに65歳定年を超え
て70歳、73歳でも継続して働いているが、変わっていないのが実は大企業と公務
員。今までいろんな議論があったが、まず公務員の現場から変えていくことで、
民間も含めて65歳現役社会にしていこうという思いがある」と語る。

 政府は国家公務員法など関連法案を今年の通常国会に提出する予定だ。公務員
の定年引き上げと並行して法定定年年齢の65歳への引き上げ、70歳継続雇用が現
実味を帯びてくる。企業は高齢者雇用も視野に入れた人事諸制度の抜本的改革を
含む働き方改革の取り組みが求められてくるだろう。     (溝上 憲文)




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「平成」の労働政策の振り返りと今後の展望 (1)

 平成も残すところわずかとなった。いま外国人労働力導入の問題が大きな議論
となっているが、奇しくも昭和から平成に遷る頃にも、この問題は、あたかも開
国か否かといったような国論を2分するような論争が展開された。

 今回は、この臨時国会で改正入管法が成立して新しい在留資格が創設されるこ
ととなり、外国人労働者の門戸は急速に開かれた。しかし、平成のはじめ頃と比
べると、世論も外国人の受け入れに対して肯定的になってきている。この30年間
で我が国もグローバル化したといえよう。この問題にとどまらず、平成という時
期を通じて、我が国の労働をめぐる情勢は構造的に変化した。特徴的な変化を振
り返りながら、次の時代に向けての労働政策の課題を整理したい。
(関係予算案の概要も付記)


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■■■ 外国人労働者の導入拡大 ■■■
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 まず挙げられるのは、外国人労働者の導入拡大への政策転換である。
バブル期においても、一時的に人手不足が深刻化したため、外国人労働力の導入
が大きな議論となった。
しかし、結論としては、国内の雇用問題の解決が先決であり、安易に外国人に依
存しない方針が取られた。

 とはいえ、グローバル化の波は労働面にも徐々に影響を及ぼしてきた。
単純労働力入れないという1960年代からの一貫した基本方針は維持しつつも、専
門職の人材の積極的受け入れが増えるとともに、外国人技能実習制度の創設
(1993年)による技能実習生の受け入れが始まった。また、留学生の資格外労働
(アルバイト)が増加したほか、ブラジル、ペルーなどの日系人の就労を認める
など、事実上、外国人労働力は貴重な労働力となったといえる。1993年当時は
9.7万人であった外国人労働者数は、2017年には127.9万人に達した。外国人技能
実習生も、2017年には約26万人になったが、制度運用の適正化を図るため新たに
「技能実習法」(2016年)が制定されたところである。

 こうした経緯のもとで、外国人労働者受け入れの枠組みは徐々に広がってきた
が、それを一気に加速化させるべく、今般、入管法が改正されて新在留資格が創
設された。この問題については、既にこのコラムでも取り上げて、いくつかの問
題点に触れた。2019年4月の施行に向けて、運営の基本方針と分野別の方針は策
定されたが、運用にあたっての細則の整備がまだ途上である。最近の状況を見る
限りでは、追加的な課題として次のような点が挙げられよう。

(1)発表された受け入れ数の34万人が、上限となるのかどうかはまだ不鮮明で
あるが、業界別に示された数値の積み上げであり、それぞれの業界ではそれなり
の期待感が出ている。しかし、新規受け入れにあたっては、一定の技能水準や日
本語能力の確認を行うことが条件となっており、業界によってその準備状況に差
がある(準備が整っているのは、介護、外食などと報じられている)。このた
め、多くの業種では当面は技能実習生(第2号)からの移行によって確保する方
針であるとされている。

 技能実習制度は国際的な技能移転が本旨であり、その根拠法にも規定されてい
るように労働力不足対策として実施するものでない。したがって、移行させるに
してもその兼ね合いをどう整理するのか。また、実習生自身も第2号修了後に帰
国を予定している者も少なくないと思われるので、必ずしも全員が移行を希望す
るとは限らないであろう。単に数合わせで技能実習を併合してよいのかどうか、
あまり議論されていない点である。

(2)出入国在留管理庁が発足することにより、新在留資格「特定技能」に関す
る管理はこの行政機関が「司令塔」となることとされた。外国人労働者はにとっ
て最も重要なことは、自らの在留資格が認められることであるから、その権限を
持つ行政機関がコントロール機能を持つことは言うまでもない。しかし、受け入
れ機関に就労してしまった後は、その実態も含めて把握し、指導監督していくこ
とは、この機関だけでは難しいだろう。

 このため、就労管理については労働監督機関との「連携」が前提とされてい
る。具体的には、労働基準監督署やハローワークなどが関与する形が不可欠とな
るが、国会では専ら法務省主導で議論されてきており、関係省庁の取り組みにつ
いてはまだ全貌が明らかではない。重要なことは、技能実習制度と異なり「転
職」が認められる点である。この結果、転職によって居住地も含めて変わった時
にどう把握していくのかという問題が出てこよう、場合によっては認められてい
ない職種に移るような不法行為も生じることが懸念される。政府は来年度施策と
して、相談体制の整備や自治体の支援の強化などを図るとしているが、まず大事
なことは就労管理の適正化である。



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■■■ 労働力不足の進展 ■■■
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 今後の最大の課題の一つは労働力不足問題への対応であることは論を待たない
であろう。前掲の外国人受け入れの加速化もその表れである。
平成の30年間を振り返ると、バブル期とその後のバブル崩壊による景気停滞期、
ミレニアム後にはデフレの長期化やリーマンショック時の金融不況、それらを経
て今日の「いざなぎ景気」を超える好況の持続といったように、経済情勢は激変
の時期であった。

 労働力需給を表わす有効求人倍率も、1998年の1.25倍が1999年には0.48倍にま
で落ちんだが、その後回復して2017年には1.50倍にまで上昇している。
労働力供給の不足の要因は様々な点が指摘されるが、一つには人口構造の変化
が大きい。平成の30年間における人口面での労働に関わる変化としては、次のよ
うな点が指摘できる。


(1)生産年齢人口や労働力人口が1990年代の半ば以降をピークとして減少傾向
  にある。

(2)高齢化が進展しており、高齢化率(65歳以上)の上昇が続いている。

(3)少子化の帰結として18歳人口が減少しており今後も1割程度の減少が見込ま
  れる。

(4)1990年代の半ばに共稼ぎ世帯数が専業主世帯数を上回りその差は拡大傾向
  にある。

(5)女性の労働力が上昇しており「M字型カーブ」の形状もなだらかになってき
  ている。

 労働力需給が逼迫するなかで、労働力の給源としては女性、高齢者等への期待
が高まっている(これに外国人労働力が加わることは前述のとおり)。政府が描
く労働力確保対策のシナリオは、これら労働力の参加率を高めることで成り立っ
ている。

 特に女性の労働参加は既にかなり高まっており、そろそろ労働力の増大も限界
ではないかという意見も聞かれる。しかし、企業内での戦力としての期待は大き
く、その定着を高めるとともに、管理職への登用を増やすなど、女性の活躍を一
層推進する努力が求められる。しかし、現状を見ると、就職した女性の7割近く
は、妊娠出産などを契機にして、育児休業の取得にまで至らないうちに辞めてし
まうとともに、管理職比率も諸外国と比べて格段に低い状況にとどまっているこ
とは変わっていない。女性活躍推進法における行動計画の策定とそのフォロー
アップが今後の中心政策となる。
※平成31年度予算案では、女性活躍推進法の取り組みが努力義務である300以下の
企業に対し、相談支援や助成金活用に加え女性管理職セミナーの実施、「えるぼ
し認定」取得支援を行うことのほか、男性の育児参加、育児休業取得促進を図る
セミナー等の開催を図る。

 一方、高齢者については、人生100年時代をにらんで70歳以上への雇用延長や
就労支援が課題となっている。特に65歳以降に新たに雇用される者を雇用保険の
適用の対象とする措置が2017年から施行された。これにより、65歳以上の者も雇
用政策の対象とすることが明示されたといえるが、今後の焦点は70歳まで働ける
環境づくりに移ってきており、政府の「未来投資会議」において、法改正を含め
てその具体的な推進策の検討が行われている。

※平成31年度予算案においては、初めて中高年齢者を採用する企業に対する助成
金の拡充、就業希望者の取込みや在職中からのセカンドキャリア支援等を行う
「生涯現役支援プロジェクト」の実施、ハローワークの「生涯現役支援窓口」の
増設による求人開拓の実施、助成措置の活用による継続雇用延長等の環境整備や
65歳超雇用推進プランナー等による提案型の相談援助などを図る。
今後の課題としては以下のような点の検討が必要であろう。

(1)65歳までの継続雇用措置の流れを振り返ると、まずは60歳定年後の継続雇
用の努力から始まり、65歳までの継続雇用制度の導入の努力義務、希望者全員へ
の制度適用の義務化といった順序で進められてきた。今後の65歳以上の継続雇用
の推進についても、まずは継続雇用制度の導入努力を促すところから入り、徐々
に制度適用の義務強化の方向を図ることが想定される。ただし、この議論は、公
的年金受給開始年齢の再引き上げとの関係で、そのスピードが変わってくること
も留意しておくべきだろう。年金財政については、今後かなり厳しい見通しが出
てくる可能性は高い。

 定年延長については、経営側の態度は消極的であり、労働力不足の対応に迫ら
れる一部の業種・企業を除いては動きは鈍い。当面は65歳までの再雇用制度等が
主流になっている現状を定年延長に切り替えられるかどうかが焦点となるが、定
着した制度を変更することはなかなか難しいものと考えられる。また、定年延長
の前提には定年前の現役労働者の人事処遇制度の見直しが不可欠であるというの
が経営側の主張であり、労働側からは年功的な処遇の急速な変更が不利益をもた
らすことへの懸念が強く、労使間の争点になろう。

(2)高齢者雇用の推進の必要性は多くの企業も認めるところであるが、実際に
は65歳以上の対応についてはまだ様子見の段階という企業が多いようだ。基本的
には政府の具体的な方針がまだ決まっていないというのが大きな理由だが、一つ
の背景としては企業内での「団塊ジュニア」層がシニアの世代になってきたこと
により、その人事処遇が大きな課題となってきたこともあろう。

 このことへの対処には、既に「団塊の世代」層が増えたことが企業の人件費の
増大の要因となり、その対応が必要とされたという経験が参考になる。管理職ポ
ストが不足する中で「管理職待遇」のポスト設置や専門職への転換等が進められ
たり、出向や転籍など企業外への異動を促したりした経緯がある。このため、定
年延長にも当然ネガティブな姿勢となり、再雇用制度で、それも「選別」による
対応が取られたと考えられる。今後、団塊ジュニアの存在が高齢者雇用政策のあ
り方にどのような影響を与えるか注視する必要があろう。

(3)65歳以上は、体力や健康状況の個人差が大きくなるとともに、職業能力が
低下する可能性も高くなる。このため、高齢者の長年培ってきた知識・技能・経
験を活かせるような職域の開拓はもちろん、仕事やり方の工夫や人事管理の見直
しが重要な課題となる。ただし、高齢者の労働災害が増えていることから、安全
に働けることや健康に配慮することが求められている。(中央労働災害防止協会
「高年齢労働者の活躍促進のための安全衛生対策」平成29年参照)

 もうひとつの問題点は、60歳定年を起点とした継続雇用制度の設計が続くので
あれば、70歳までの雇用では10年間の非正規雇用の制度を考えることである。全
員が70歳以上の雇用を希望するわけではないとしても、長い期間の再雇用制度は
どういう意味を持つのか。いずれにしても、今後の高齢者雇用の制度設計は、究
極的には定年延長も想定しながら、高齢者の健康状況等を考慮して、短期及び中
長期の継続雇用という複線型の選択を考える必要があろう。(内閣府「高齢者の
地域社会への参加に関する意識調査」(2013年)によれば、60歳以上の高齢者を
対象にすれば、長くても65歳を上限という者は約3割であるが、その「就業」に
は社会参加的な活動も含まれる。また、別の調査では、現役の中高年世代に限れ
ば65歳から70歳の間ぐらいが上限とする者が多い。なお、この種の調査は総じて
現在の年齢より5―10年先を回答することが多いのがこれまでの傾向だ。)
                             (北浦 正行)


編┃集┃後┃記┃
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新しい年を迎えました。
今年一年間、充実した日々をお過ごしください。


 昨年6月に成立した「働き方改革関連法」のうち、4月より労働基準法・労働
安全衛生法・労働時間等設定改善法の改正が施行されます。

 また、昨年12月に成立した「出入国管理法」も4月から施行です。

 企業は、4月の法改正に向けて社員の働き方の改善や就業規則の見直しを推進
しているところですが、通達等が公表されていないため詳細部分が決められない
状況となっています。

 さらに、今年の通常国会で「パワハラ防止対策」の法制化を目指しています。
 今年も、法改正等に追われるようです。            (白石)



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発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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