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高齢者の雇用にどのように向き合うか(9)
〜70歳までの就業確保の法制化で提示された7つの選択肢〜

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┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
┗━━┛                           第211号
                              2019/11/01

           http://www.koyousystem.jp
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度重なる台風で被害が続出しています。
被害を受けられました皆様に、お見舞い申し上げます。

皆様、如何お過ごしでしょうか。

雇用システム研究所メールマガジン第211号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆高齢者の雇用にどのように向き合うか(9)
   〜70歳までの就業確保の法制化で提示された7つの選択肢〜

■努力義務の法改正を来年度に実現、義務化を2025年以降法制化
■フリーランス契約、個人の起業、社会貢献活動の企業の
 責任と支援の範囲をどうするか
■非雇用の働く人の保護と事業主の履行確保の措置をどうするか
 (以上執筆者 溝上 憲文)

◆パワーハラスメントの指針策定をめぐって
■パワーハラスメントの定義
■パワハラの判断と労災補償問題
■ハラスメントを生む要因の解消
 (以上執筆者 北浦 正行)

編集後記(白石多賀子)

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高齢者の雇用にどのように向き合うか(9)
   〜70歳までの就業確保の法制化で提示された7つの選択肢〜

 65歳から70歳までの就業機会の確保を目指す法制度の検討が厚労省の労働政策
審議会(職業安定分科会雇用対策基本問題部会)が9月27日から始まった。
65歳までの雇用確保を義務づけた現行の高年齢者雇用安定法を改正し、
いずれは義務化も視野に入れている。


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■■■ 努力義務の法改正を来年度に実現、義務化を2025年以降法制化 ■■■
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 70歳までの就業機会の確保は2段階に分けて法整備を進める。第一段階の法制
では企業に選択肢を明示し、70歳までの就業機会確保の努力規定を設ける。ま
た、厚生労働大臣が、事業主に対して、個社労使で計画を策定するよう求め、計
画策定については履行確保を求める。

 第二段階の法制では、第一段階の進捗を踏まえて現行の高年齢者雇用安定法
(高齢法)のような企業名公表による担保(いわゆる義務化)のための法制化を
検討する。この際は、かつての立法例のように、健康状態が良くない、出勤率が
低いなどで労使が合意した場合は、適用除外規定を設けることについて検討する
ことにしている。

 今秋から年末にかけて労政審の審議を経て2020年の通常国会に第一段階の法案
を提出。続いて進捗状況を見て、第二段階の義務化の法改正を検討するとしてい
る。制度の運用状況を見て、努力義務から義務化に格上げするというものだが、
その時期については高齢法の労使協定による基準が可能な経過措置の施行が完了
する2025年までは法改正を検討しないとしている。実行計画の工程表では数値目
標として65〜69歳の2025年の就業率を51.6%に設定している
(2018年:46.6%)が、目標達成を踏まえ2026年度に検討を着手するとも読み
取れる。

 努力義務から義務化の流れはこれまでの高齢法改正と軌を一にするが、これま
でと違うのは70歳までの制度は従来の雇用確保措置に加えていくつかの選択肢を
設けていることだ。それは以下の7つである。

(a)定年廃止、
(b)70歳までの定年延長、
(c)継続雇用制度導入
  (現行65歳までの制度と同様、子会社・関連会社での継続雇用を含む)、
(d)他の企業(子会社・関連会社以外の企業)への再就職の実現、
(e)個人とのフリーランス契約(資金提供など企業が支援)、
(f)個人の起業支援(企業が支援)、
(g)個人の社会貢献活動への従事(資金提供など企業が支援)

 企業は労使で十分な話し合いの上で(a)から(g)の中から採用する措置を
提示し、個々の高齢者との相談を経て適用する(努力義務)ことになる。
そして「選択肢の具体的検討に当たっては、各選択肢における企業が負う責務の
程度など、企業の関与の具体的な在り方について今後慎重に検討する」とし、
その検討が労政審に委ねられた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■■■ フリーランス契約、個人の起業、社会貢献活動の企業の
                責任と支援の範囲をどうするか ■■■
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 しかし、(a)〜(c)の従来の65歳までの雇用確保措置と(d)の他企業で
の再就職は雇用関係にあるが、(e)〜(g)の3つは非雇用であり、(g)は
いわゆるボランティア活動だ。個々の高齢者の能力・事情に応じた活躍を図るた
めに他の選択肢を用意したのだろうが、実際に労使で話し合って決めるにしても
(e)〜(g)を含めた選択肢をどのような方法で決定し、また企業がどこまで
責任を持ち、また支援すべきなのか不明確だ。

 9月27日に開催された労政審の第一回目の審議でも「7つの選択肢のイメージ
だけでは、企業がどのような対応をすればよいか見えない」「雇用ではない選択
肢については、高齢者に様々な希望がある中で、企業が全て受け止めるのは難し
い」という意見も出された。

 こうした意見を踏まえて10月25日に開催された2回目の審議で、厚労省事務局
は7つの選択肢の「措置として事業主が実施する内容」について新たな提案をした。

 定年廃止、定年延長、継続雇用制度の導入については、
「65歳までの雇用確保措置と同様の法制上の措置が考えられるのではないか」と
述べ、その内容について従来と同じ法的枠組みに組み入れる。次に(d)の「他
企業への再就職の実現」については「特殊関係事業主による継続雇用制度の導入
と同様のものが考えられるのではないか」と言っている。特殊関係事業主とは子
会社や関連会社などのグループ企業のことであり、事業主と特殊関係事業主との
間で引き続き雇用する契約を締結すればグループ企業での継続雇用が可能にな
る。これを他企業への就職でも同じ契約を締結することで認めようというものだ。

 個人とのフリーランス契約と個人の起業支援については「事業主からの業務委
託により就業することが考えられるのではないか」とする。また「個人の社会貢
献活動参加への資金提供」については「事業主が自らまたは他の団体等を通じて
実施する事業による活動に従事することが考えられるのではないか」と提起して
いる。だが、委員の間からは(e)、(f)、(g)については雇用と同列に扱
うことを疑問視する意見も出された。

 労働者代表委員は「フリーランス契約は事業主から業務委託による就業が想定
されているが、70歳までの就業を考えたときに70歳までできるような枠組みをど
うやってつくるのか、支援した企業と関係のない企業での就業も含まれるのかイ
メージしがたい。個人の社会貢献活動にしても、貢献活動を個別の労使の枠内だ
けに委ねていくということなのか」と指摘した。

 これに対し、厚労省事務局は「業務委託契約という形でどうかと提示させてい
ただいているが、継続的に続けることを考えている。社会貢献活動については企
業の適切な関与が重要である」とやや抽象的な答えにとどまった。しかし、公益
代表委員から個人の社会貢献活動の部分について疑義を呈した。

 「個人が重要だと思う社会貢献活動に対して資金提供するのが第一義的な考え
方だと思う。社会貢献活動に個人が参加の意思を表明し、活動していく中で事後
的に企業にとっても重要な社会貢献活動と認められ、資金が流れていくことが重
要だ。したがって社会貢献活動については最初から事業主が認めるものだと、幅
を狭く考えるのではなく、広いレベルでの労使の話し合いや、場合によっては何
をもって社会貢献活動と見なすのかについて行政が情報提供するなど、慎重に検
討してほしい」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■■■ 非雇用の働く人の保護と事業主の履行確保の措置をどうするか ■■■
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 この点に関して部会長の阿部正浩・中央大学経済学部教授も
「社会貢献活動も含めて、フリーランス、個人の起業も会社が主体的にやるので
はなく、個人が主体的に自営をやりたいという人もいる。個人が主体的に起業し
たいと言った場合に企業がどういう支援ができるのかという議論があってもい
い。あるいは企業が主体的にあなたとフリーランスとして契約したいがどうか、
と提案もあり得る。そのあたりがごっちゃにならないように企業が果たすべき努
力義務と個人の役割を少し明確にするように整理してほしい」と
事務局に要望した。

 また、非雇用の働き方は労働法の保護を受けられないというデメリットもあ
る。この点に関し、厚労省事務局も
「雇用によらないフリーランス、起業、社会貢献活動といった選択肢について、
労働関係法令による様々な労働者保護が基本的に適用されないことを踏まえて、
どのような対応をとることが考えられるか」と提起している。これについては使
用者代表委員からも「フリーランスなどでは様々な保護が薄くなるという点や、
企業がどこまで何をやれば義務を果たしたことになるのか」という意見出されて
おり、今後の課題となっている。

 65歳以上について定年廃止、定年延長、継続雇用制度以外の非雇用の選択肢を
認めても、結果的に早期引退につながると70歳までの就業を達成できない。努力
義務であっても事業主の履行確保を図るための行政措置の仕組みについても今後
検討していく予定だ。                  (溝上 憲文)



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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■■■ パワーハラスメントの定義 ■■■
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 パワーハラスメント(パワハラ)については、本年5月に
「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」
が成立し、大企業は2020年6月1日、中小企業は2022年4月1日から施行されること
となっている。(関係政令は本年11月下旬の予定)このため、今後の焦点はこれ
に基づく指針策定である。

 厚生労働省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会がその論議の場であるが、
10月21日の会合でその素案が提示されたが、対象となる範囲が狭いという労働側
の反論があり、まだまだ労使間の調整が必要だ。

 注意しなくてはならないのは、
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関
する法律の一部改正」というセクシュアルハラスメント(セクハラ)とは別の法
律体系の中で法制化されたことである。その意味では、対策についてもセクハラ
類似ではあるが、必ずしもまったく同じようには扱えない。一つには、パワハラ
の対象が日常的な職場生活における所作の全般に関わるという「範囲」の広さが
ある。

 また、定義自体の曖昧性である。
セクハラでは行為類型が「対価型」と「環境型」の2つに分けられており、それ
ぞれ判例の集積と体系化も行われてきた。それに対し、パワハラは該当する行為
と非該当の行為との線引きが難しくなっている。このため、法案採決にあたって
の附帯決議(両議院)でも「包括的に行為類型を明記する等、職場におけるあら
ゆるハラスメントに対応できるよう検討する」ことや、
「パワーハラスメントの具体的な定義等を示す指針を策定し、周知徹底に努め
る」ことが指摘されている。

 ここで問題となる「職場のパワーハラスメント」の定義については、既に「職
場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」提言(平成24年3月)において次
のように示されている。「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係
などの職場内の優越性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦
痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」

今回の指針案においても、基本的にはそれを踏襲している。すなわち、
(1)優越的な関係を背景とした言動、
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、
(3)労働者の就業環境が害されるもの、という要素を全て満たすことが条件と
  なる。
特に全体的な前提となっているのは、
「優越的な関係を背景とした」言動である。
これは、「当該事業主の業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が
行為者に対して抵抗又は拒絶することが できない蓋然性が高い関係を背景とし
て行われるもの」である。
具体的には、「職務上の地位が上位の者」「業務上必要な知識や豊富な経験を有
して」いる者、「集団による行為」が示されているが、これらは外形的にも判断
しやすい。

 これに対し、「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動は、「社会通念に照
らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が
相当でないもの」といったように、個々の事案ごとに多面的な検討が必要になる
ため、その判断には当事者間の意見も対立しやすい。指針素案では、「当該言動
の目的、当該言動を受けた 労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言
動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻
度・継続性、労働者の属性や状況、行為者との関係性等」の総合的な考慮を求め
ている。さらに、行動の「内容・程度とそれに対する指導の態様等の相対的な関
係性」についての留意も必要だとするなど慎重な姿勢が見られる。

 また、「就業環境を害すること」については、「当該言動により労働者が身体
的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、
能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程
度の支障が生じること」としている。 この場合、「平均的な労働者の感じ方」
を基準とすることが適当であるとしているが、この「平均的」も解釈が分かれ
るであろう。

 このように、「必要性」や「適正な」という判断要素も加わった表現で定義さ
れているため、最終的な判断は個々の事案に即して行わざるを得ない。
このため、パワハラに該当する例と該当しない例を示すことによって、具体的な
判断に資することとしている。しかし同時に、「客観的にみて、業務上必要かつ
相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については該当しない」としたうえ
で、これらの例示が「限定列挙」ではないという注記もつけるなど、慎重な表現
となっている。



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■■■ パワハラの判断と労災補償問題 ■■■
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 指針素案の例示では、

(1)身体的な攻撃、
(2)精神的な攻撃、
(3)人間関係の切り離し、
(4)過大な要求、
(5)過小な要求、
(6)個の侵害

 の6つを「行為類型」としている。

 例えば、「精神的な攻撃」は、該当する例として「必要以上に長時間にわたる
厳しい叱責を繰り返し行う」場合を、また該当しない例としてルール・マナーを
欠いた言動について「再三注意してもそれが改善されない労働者に対して強く注
意する」場合を挙げている。
これらは「叱責」と「注意」という表現の違いによって、行為自体の強さ(それ
は受ける労働者へのインパクトの強さでもあるが)を示したものであるが、程度
の差であり相対的なものであるため実際には判断に迷うことが少なくないだろう。

 いずれにしても、パワハラの判断は、「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」
言動により労働者が受ける身体的又精神的な苦痛の程度等を総合的に考慮して判
断して行うものとしている。したがって、「業務上」の必要性や妥当性といった
判断、労働者が感じる苦痛の程度(どこを平均的と考えるかによっても異なる)
の判断など、客観的には叙述しきれない要素が残る。特に労働者の感じる程度の
判断については、参議院における附帯決議において「『平均的な労働者の感じ
方』を基準としつつ『労働者の主観』にも配慮すること」を指針に明記するよう
示されている。(労働側としては、この点に限らず全体的にパワハラの判断が狭
くなるのではないかという危惧があるようである。)

 このほか、附帯決議では、同僚や部下からのハラスメント行為も対象であるこ
と、顧客等の第三者から受けたハラスメントや取引先に対して行ったハラスメン
トにも雇用管理上の配慮が求められることも、指針に掲げるよう求めている。上
司と部下という典型的な人間関係の問題だけではなく広範囲に捉えることは重要
であるが、同僚や部下の「優越」性の判断や、顧客等第三者という外部の者に対
するアプローチなどは検討を要しよう。

 パワハラが極度の心理的負荷を与える場合(身体的な被害がある場合は当然と
して)には、労災補償の対象となり得る。心理的負荷による精神障害の認定基準
として2011年に改定されており、その基準もパワハラの判断にあたっての参考と
なろう。今回もその基準改定について、指針の内容を踏まえて、本年12月以降に
専門家による検討会で議論していく方針が厚生労働大臣から表明されている。
(過労死の労災認定基準についても見直す方針である)
 現在の労災補償の基準では、「出来事の類型」を次のように整理し、それぞれ
に心理的負荷の強度を評価して判断している。

〇「仕事の失敗、過重な責任の発生等」 達成困難なノルマが課されたこと
 (例えば客観的に、相当な努力があっても達成できない場合には
  重いペナルティがあると予告されられたような場合は更に重い程度と判断)

〇「役割・地位の変化等」  退職を強要されたことや配置転換があったこと 
 (例えば退職の意思がないにもかかわらず執拗に退職を求められた場合は更に
  重い程度と判断)

〇「対人関係」  ひどい嫌がらせ、いじめ又は暴行を受けたり、同僚や部下と
  のトラブルがあったりしたこと(例えば上司の言動が業務指導の範囲を逸脱
  しており、その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれ、これが執
  拗に行われた場合は更に重い程度と判断)


 一方、事業主が講じなければならない措置としては、次のような事項が盛り込
まれている。

(1)事業主方針等の明確化及びその周知・啓発
(2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(3)職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
(4)相談者・行為者等のプライバシー保護や相談等を行った労働者の不利益取
り扱い防止等

これらの措置は、ハラスメント行為の防止のために行うものであり、そうした行
為自体を禁止するものではない。また、職場におけるハラスメント行為も、パワ
ハラのほかセクハラやマタハラ(マタニティハラスメント)など多様である。
これらを根絶するためにも禁止規定の法制化を検討すべきということは、法案制
定の段階から労働側の主張となっているが、附帯決議においても、「損害賠償請
求の根拠となり得るハラスメント行為そのものを禁止する規定の法制化の必要性
も含め検討すること」が盛り込まれている。


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■■■ ハラスメントを生む要因の解消 ■■■
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 そもそも「ハラスメント」とは、「悩ます」とか「苦しめる」というのが本来
の語義であるが、それは、相手も自分と同じ世界を共有しているはずという思い
がないと成立しないというコミュニケーションの本質に関わっているという(安
富歩「複雑さを生きる」参照)。
例えば、職場の上司と部下や同僚どうしが仲良く仕事をしようとすると、「同じ
世界」を持とうという努力が必要になる。部下や同僚のそういった姿勢を悪用し
て、相手も同じ考えや行動を取るのが当たり前という雰囲気を作り出す。そうし
た中で、段々と精神的に疲れさせて、相手の考えや行動を支配してしまうのがハ
ラスメントである。前述のように「行為」の態様に着目されがちだが、背後には
こうしたコミュニケーション不全の問題がある。

 では、このように、企業や職場における個人間のコミュニケーションがうまく
通じなくなってきたことには、どういう背景があるのだろうか。一つの問題とし
て、管理職と従業員とのコミュニケーション・ギャップを考えてみる。企業や職
場における仕事の内容や働き方が変化する中で、従業員と上司・同僚等との人間
関係にも認識のずれやひいては軋轢を生じるようなことが増えてきている。

 日本生産性本部「日本の課長と一般社員 『職場のコミュニケーションに関す
る意識調査』2012年」によれば、課長の約7割が「情報が共有されている」とし
ているのに対し、一般社員(入社2年目社員から係長・主任・職場リーダークラ
ス)の約半数は「共有されていない」という受け止めであり、大きなギャップが
存在している。また、課長の約9割は「部下を理解できる」としている一方で、
一般社員の約4割は「上司は私を理解していない」としており、これも大きな開
きがある。さらに、課長の約9割は「部下の話を聴いている」が、一般社員のほ
うは約3割は「上司は話をあまり聴かない」、課長の約9割が「部下を褒めてい
る」が、一般社員の約半数は「上司は褒めない」としている。

 このように、課長は、年長者の部下や主張の異なる相手に苦手意識を持つ傾向
がみられる。これに対し、一般社員の方も人前で話すことに苦手意識を持ってい
るため、上司とのコミュニケーションの接点が見出し得にくくなっている。ま
た、一般社員の多くは自身の能力に満足していない上に、将来に不安を感じてい
ること、また能力を高めたいと感じていても上司の方では育成に自信がなくなっ
ているという姿もうかがわれる。職場でのコミュニケーションの不足と協働の精
神の変化、更には企業の人材育成機能の縮小傾向などが弱まってきたことが問題
点であろう。

 指針素案においても、職場におけるパワハラの原因や背景となる要因の解消の
ため、「コミュニケーションの活性化や円滑化のための取組」や「適正な業務目
標の設定等の職場環境 の改善のための取組」を行うことが望ましいとしてい
る。ハラスメントは、職場における人権問題として捉える形で法制化や指針づく
りが進んでいるが、事後救済だけでなく予防に重点を置くならば、人材マネジメ
ントの問題として捉える視点が重要だといえよう。    (北浦 正行)



編┃集┃後┃記┃
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 9月の台風15号は暴風により千葉県が甚大な被害、10月の台風19号は長
野県の千曲川流域の被害をはじめ、福島県、宮城県等の各地でも阿武隈川等の流
域が氾濫、さらに台風21号で千葉県、福島県等で、半日で1ヶ月分の雨量によ
り鹿島川等が氾濫しました。
 今年は日本列島各地で台風被害が続出しており心が痛みます。

 10月の日本経済新聞に『入社直後の就活再開 急増』の見出しで、
 「20代向けの転職サービス登録者のうち、卒業後3年以内の人数は
前年比3割増、早めにキャリアアップしたいと考える人は
入社直後に就職活動を再開している。」と、

 弊所でも、新聞掲載の頃に求人募集をしたところ、25〜6歳の応募者が多
く、面接者は30歳までにキャリアを確立したいと語っていました。

今年は、例年より早くインフルエンザが流行し始めました。
気温の較差が激しくなりましたので、体調の維持に呉々もご留意ください。
                               (白石)



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発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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