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発刊済みメールマガジンMail Magazine

新型コロナウィルスの事業活動への影響をどう減らすか
 〜2009年新型インフルエンザの教訓と自社独自のBCP
                   (事業継続計画)の策定〜

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┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
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                              2020/04/01

           http://www.koyousystem.jp
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世界中に新型コロナウイルスの感染がひろまり
不安な毎日を過ごしている方も多くいらっしゃることと存じます。
皆様いかがお過ごしでしょうか。

雇用システム研究所メールマガジン第216号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆新型コロナウィルスの事業活動への影響をどう減らすか
 〜2009年新型インフルエンザの教訓と自社独自のBCP
                   (事業継続計画)の策定〜

■会議や採用イベント、出張禁止など事業活動を制限
■世間との認識の違いによる「風評被害」にも注意
■「緊急事態宣言」を想定した要員確保などのBCPの準備
             (以上執筆者 溝上 憲文)

◆雇用保険法等の改正案等の成立

■環境が変わってきた働き方改革
■高齢者雇用対策の新しい展開
■労働基準法その他の改正
             (以上執筆者 北浦 正行)

編集後記(白石多賀子)

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新型コロナウィルスの事業活動への影響をどう減らすか
 〜2009年新型インフルエンザの教訓と自社独自のBCP(事業継続計画)の策定〜

 新型コロナウィルスの感染拡大が企業活動に深刻な影響を与えている。
東京商工リサーチの調査(3月19日)によると、新型コロナウィルスの影響に
言及した422社の上場企業のうち151社(35.7%)が売上高や利益の減少など業績へ
悪影響を挙げている。

 また3月初旬の企業調査(1万6327社)では「すでに影響が出ている」と
回答した割合が高いのは「道路旅客運送業」の100%、
宿泊業が96.5%、
飲食店91.7%、
旅行業・葬祭業・結婚式場業などの「生活関連サービス業」が90.0%
と高い比率を示している。

 企業にとっては就業員の感染防止を行いつつ、
いかに事業を継続していくかが問われるが、
すでにさまざまな対策を講じている企業も多い。


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■■■ 会議や採用イベント、出張禁止など事業活動を制限 ■■■
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 具体的には、国内外の出張を中止・延期、時差出勤の許可・奨励、集合型社内研修
の中止・延期、在宅勤務・テレワークの指示・推奨、職場での懇親会等の中止・延期、
採用関連イベントの中止・延期などである。
実際に建設関連業の人事担当者は対策についてこう語る。

「個室に多数が集まる集会や宴会、またそのような場所への参加は原則自粛を要請
している。全社レベルの会議やイベントも中止し、PCや幹部のみの会議に限定する
ことにしている。さらに、社員には時差通勤や在宅勤務を奨励し、国内外の出張も
規制している。国や自治体の指導方針に頼っていては遅すぎるし、
今後も状況に応じて独自の対策を検討し、発信していく」

 すでに事業にも深刻な影響を与えている。
人事担当者は「クライアントなどとの打ち合わせが制限され、
すでに受注している仕事の納期が遅れている。継続してきた在宅勤務での事業継続も
限界があり、大打撃を受けつつある」と語る。

 災害時に会社としていかに事業を継続するかを決めるのがBCP(事業継続計画)だ。
日本では阪神淡路大震災を契機に策定が進み、これまで大きく2009年の
新型インフルエンザと11年の東日本大震災で実効性が試された。
新型インフルエンザでは、連休前の4月25日には、WHOがメキシコでの
新型インフルエンザがパンデミックにつながる可能性があると示唆し、
日本でも大騒ぎとなった。

また、日本政府が09年2月に強毒性のH5N1型鳥インフルエンザを想定した
ガイドラインを公表し、企業もそれに向けた準備をしていたこともあり、
弱毒性のH1N1型であることが判明してからも対応をめぐって混乱が続いた。
弱毒性とわかって以降も、5月8日に国内感染者が発生した大阪地区では、
マスクを必死になって買い求める人々の姿がテレビでも映し出され、
マスクを求める人々が日本中に広がった。


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■■■ 世間との認識の違いによる「風評被害」にも注意 ■■■
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 当時も情報が乏しいなかでBCP(事業継続計画)を策定し、独自の対応を行った
企業も少なくなかった。大手システム開発企業はアメリカのCDCの情報をベースに
致死率は1%以下と判断し、通常の季節性インフルエンザ並みの軽度被害として対応した。
一方でどう変異するかわからないので、予防策として業務出張や個人旅行はできるだけ
見合わせることにし、海外出張や個人旅行も極力禁止し、
セミナー・研修などのイベントも見合わせることにした。

 大手製薬会社はBCPに則り、派遣社員を含めた全従業員の健康と安全を守るための
冊子を作成し、全員に配布するとともに、サージカルマスクや手洗い用アルコール、
食料などの備蓄品の購入を進めてきた。新型インフルエンザ発生時には、
感染国から帰国した社員は10日間の出社停止と国内外の出張を禁止した。
国内で感染者の発生が確認された地区での病院の訪問などのMRの営業活動は
中止することにした。従業員には会社から支給されたサージカルマスクの着用と
外出から戻った際の手洗いをするように求めた。また、毎朝、検温することとし、
37.5℃以上の熱があった場合は自宅待機扱いとした。

 ただし、会社としては適切に対処していても、世間との認識のギャップによる
風評被害もある。当時、同社の総務課長は「感染そのものよりも風評被害も大きい。
弱毒ではあっても社員が感染した場合、事業所を閉鎖しないと世間から非難を浴びる
のではないかという懸念も拭えなかった。
世間が見てどう思うのかという観点と、事業を継続していくことの難しさを痛感した」
と語っていた。今回の新型コロナウィルスではこの時の教訓が生きているのか、
56社の上場企業が従業員に感染者が出たことを公表し、
濃厚接触者などの自宅待機を命じている(3月19日時点)。


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■■■ 「緊急事態宣言」を想定した要員確保などのBCPの準備 ■■■
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 09年の新型インフルエンザは弱毒性であることがわかり、
しだいに沈静化していったが、新型コロナウィルスは今後感染爆発も懸念されている。
09年当時は、仮に強毒性のウィルスだった場合、事業の継続をどうするべきなのかも
検討された。
前出のシステム開発企業のCSR部長は「パンデミック対策は電気やガス、鉄道や通信
などの社会機能が維持されるという前提で企業の対応を議論した。
具体的には発生を機に事業活動や社会機能維持のために必要な業務と要員の確認を実施し、
協力会社の社員を含む対応社員候補をリストアップし、
本人への説明と協力依頼を行うことにした」という。

 新型コロナウィルスの感染拡大によっては「緊急事態宣言」が発動され、
自治体から事業の自粛や従業員の自宅待機を要請される事態も起こりうる。
東日本大震災時には原則自宅待機とし、100%の休業補償をした企業もあった。
ただし、事業継続には出社を必要とする社員もいる。当時、消費財メーカーでは、
顧客などの対応にどうしても必要な部署は輪番制で出勤することも可とした。
当時の人事担当者は「事業に支障を来す社員は自宅待機期間中でも上司の承認があれば
出社してもよいことにした。人事部は管理職以上の社員が交代で出社したが、
他の部署も管理職の間で当番制にした」と語っている。

 事業を継続するために在宅勤務などのテレワークを推奨する企業も多い。
しかし、実施している企業は大企業が33.7%であるが、中小企業は14.1%と低い。
例えば東京都はテレワークを導入企業への補助金を支給している。
在宅勤務が可能な社員を対象に整備を進めることも必要だ。
また、事業継続上、出社が可能な最低限の社員数をリストアップして備えて
おくことも重要だ。

 その場合、業務命令で出社を指示された社員が感染した場合の補償の問題も
考慮しておく必要がある。
今後、新型コロナウィルスの感染拡大が長期にわたって影響を与えるのは
避けられない情勢だ。
事業へのリスクを極力抑制するためにもBCPの策定など独自の危機管理体制の構築
を急ぐべきだろう。                   (溝上 憲文)

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雇用保険法等の改正案等の成立

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■■■ 環境が変わってきた働き方改革 ■■■
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 今国会において、雇用保険法等の一部改正法案及び労働基準法の
一部改正案が成立した。
高齢者雇用安定法関係などは、施針・細則の策定等なお議論を要する事項も多いが、
雇用保険料率など新年度から即実行すべき予算関連事項も含まれることから、
年度内ぎりぎりの採決となった。
折から、新型コロナウイルス感染症の発生とその対応が喫緊の課題となる中で、
あまり報道されることがなかったが、今後における我が国の企業の人事管理の
ありようにも大きな影響を与える重要法案である。

 既に景気は昨年秋以来転換局面にあったといわれるが、
新年度早々に発表された日銀短観によっても、新型コロナウイルス感染症等を背景
とした経済情勢の悪化の傾向は明瞭になっている。
高水準を続けてきた求人倍率も低下しているだけでなく、事業休止や縮小に伴い
雇用調整が本格化するものと予想されている。こうした認識は、衆議院厚生労働委員会
における雇用保険法等の採決の際の附帯決議(以下「附帯決議」という。)
に次のように盛り込まれている。

「十二 新型コロナウイルス感染症により我が国経済は大きな影響を受けており、
今後雇用への影響の拡大が懸念されることから、雇用の維持に向け、
雇用安定資金も活用して、雇用調整助成金をはじめとする雇用保険二事業により
十分な支援を行うこと。」

 今回の法改正は、失業者の減少を背景にした雇用保険収支の好調を前提にした
財政改革という意味合いがある。料率や国庫負担の引き下げ、雇用保険二事業の
弾力条項の引き下げといった負担軽減を図る一方、育児休業給付の経理区分を
別建てとして大幅に財源移譲を図るなど従来の雇用保険制度の性格が大きく
変化してきている。
雇用情勢の悪化は、当然に失業等給付の増加をもたらすことは必至であり、
状況の推移によっては財政面での見直しも今後必要になってくる可能性もある。
 また、今回の法改正も働き方改革の一連の制度整備を行ったものであるが、
この4月1日からは、周知のように、時間外労働の上限規制が中小企業にも適用
されるとともに、大企業に対しては正規・非正規雇用労働者間の不合理な待遇差の
禁止の条項が適用される。これも現状をみれば、労働時間の短縮はおろか一時休業
を余儀なくされる企業も増えているとともに、非正規雇用労働者に対する「雇止め」
や人員削減など、雇用調整への対応が直面する大きな課題となるなど当初の想定した
環境との違いが大きい。

 「働き方改革」は「三本の矢」から始まったように、経済政策としての位置づけが
強調されてきたともいえる。新型コロナウイルス感染症が沈静化し、
経済情勢が回復してきた後の世界が果たしてどのようなものになるか。
いずれにしても、新しい環境の下において、改めて労働政策としての意義を再吟味
する必要があるのではないか。

こうした中で、テレワークによる在宅勤務の推進が「働き方改革」の実現を表す者
との議論もある。これまで掛け声だけではないかといわれたテレワークの意義を
認識させるには確かに大きな効果があったが、現在はBCPという危機管理対応であり、
平時のテレワークとは若干性格が異なることも注意を要する。
在宅での就業環境、コミュニケーション、
人事評価など人事管理上の位置づけ等まだ努力すべき問題は少なくない。


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■■■ 高齢者雇用対策の新しい展開 ■■■
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 今回の雇用保険法等の改正の目玉となるのは、高齢者雇用安定法の改正である。
70歳までの安定した雇用を推進するため、65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置
を定め、定年引上げ、継続雇用制度の導入、定年廃止のほか、
雇用以外の措置(労使で同意を前提)として、継続的な業務委託契約により創業を
支援する制度、社会貢献活動に継続的に従事できる制度の導入のいずれか)を講ずる
ことを企業の努力義務にした。【令和3年4月施行】

 この場合であっても、あくまでも65歳までの高年齢者雇用確保措置が全ての企業に
おいて確実に実施されるこが基本であり、附帯決議でも
「事業主に対する周知を強化するとともに、違反事業主に対する指導等」を促している。
また、高年齢者就業確保措置の選択肢が複数示されたことから、
「個々の労働者の意思を十分に尊重することを指針等で明確にすること」が
求められている。

 継続雇用制度については、既に同一企業だけでなくグループ企業や関連企業も
受け入れ対象とされているが、今回これに加えて次のような条項が入った。

「第10条の2 3項 事業主は、他の事業主との間で、・・・・・定年後等に当該他の
事業主が引き続いて雇用することを約する契約を締結し、・・・・当該高年齢者の雇用
を確保する制度が含まれるものとする。」

 従来から置かれている再就職あっせんの規定との関係が問題となるが、
ここではおそらく出向・転籍のような「失業なき移動」を想定したものではないかと
思われる。労働者の意思の確認、移動後の労働条件、復帰の可能性などクリアすべき
課題は少なくないが、(公財)産業雇用安定センターなど公的な機関が仲介する形を
とれば、トラブル防止なども図られるのではないか。

 雇用以外の措置については、他の措置と性格を異にする。
もともと定年を控えた高齢者がキャリア選択として自営や開業を目指すことは
これまでもあった。その意味では、リスク負担も含めて個人の自由な選択肢の一つ
だといえるが、今回の改正では企業の「措置」という位置づけになっている。
このため、どこまで企業として責任を負うのかは難しい判断である。
条文で雇用以外の措置については、70歳までの雇用安定努力義務の範疇には含め
ていない。

 こうしたことから、創業支援等措置による就業は、労働関係法令による労働者保護
などが図られない恐れがあることが審議でも争点になった。
この結果、附帯決議では、労働組合または過半数代表者への説明、適用する労働者へ
の説明と納得、健康・安全面での配慮、労働災害の被災時の対応などを行うことが
要請されている。また、法令上は上記のように対象外とされているが、法改正の趣旨
に鑑み、70歳までの継続的な支援も求められている。

 高齢者雇用政策に関して雇用保険法での改正で重要なのは、高年齢雇用継続給付の
取り扱いである。この制度は、もともと65歳までの雇用確保と年金支給開始年齢の
接続が政治課題となった中で、賃金補填の措置として出来上がった経緯がある。
したがって、65歳までの雇用確保措置が進展すれば自ずと役割も果たすことになり、
そのため令和7年度から縮小することとされている。

これに関しては、人事管理上のいくつかの課題があるが、とりわけ賃金決定の問題は
大きい。在職老齢年金についても同じであるが、こうした公的給付の存在を前提にした
賃金等の決定が行われるような慣行をどう見直すか。特に附帯決議でも触れられている
ように、「同一労働同一賃金」に基づく高年齢者の不合理な待遇差の解消
という課題もある。

こうした議論の前提としては、まず定年後の高齢者の職務内容や職場環境を
どのようなものとしていくかという点が重要になる。
附帯決議でも、「高年齢期においては、労働者の体力や健康状態その他の本人を
取り巻く状況がより多様となることから、事業主がより柔軟な労働条件を整備できる
よう適切に支援すること。」
「六十五歳以降も働くことを希望する全ての労働者が個々の意欲及び能力に応じて
働くことができる環境整備を図るため、施策の充実に努めること。」とされている。

また、継続雇用等の実施に伴う財源確保をどうするかという問題もある。
その帰結として、定年前の現役世代も含めて人事賃金管理の見直しが必要になる
可能性も考えておかなければならない。定年延長であれば尚更であるが、
再雇用や勤務延長といった形態をとる場合でも コスト増になることが想定できよう。


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■■■ 労働基準法その他の改正 ■■■
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労働基準法の改正によって、賃金請求権の消滅時効は2年から5年に延長された。
(改正前の民法の1年では労働者保護に欠けるという観点から2年とされてきた。)
なお、退職手当請求権はもとより5年とされている。
また、賃金台帳等の記録の保存期間も賃金請求権と合わせて5年に延長になったが、
当分の間は3年でよいとされている。見直し条項もあるが、
この点については、附帯決議で次のような取り扱いが求められている。

「賃金請求権は労働者の重要な債権であることに鑑み、施行後五年を経過した場合
においては、労働者の権利保護の必要性を踏まえつつ、未払賃金をめぐる紛争防止
など賃金請求権の消滅時効が果たす役割への影響等を検証した上で、
賃金請求権の消滅時効期間を原則の五年とすることを含め検討し、
その結果を踏まえて適切な措置を講ずること。その環境整備のため、
施行後五年の経過を待たずに賃金台帳等の記録の保存期間の延長が可能となるよう、
中小企業等における記録の電子データ化を支援し、
記録の保存等にかかる負担の軽減を図ること。」

災害補償、年次有給休暇の請求権については、現行の消滅時効(2年)を維持する
とされているが、災害補償請求権の消滅時効期間については、
「労働者の災害補償という観点から十分であるのか、施行後五年を経過した際に、
労働者災害補償保険法における消滅時効期間と併せ、検討を行うこと。」
が附帯決議で求められている。

 今回の雇用保険法との改正では、複数就業者の労働保険上の取り扱いも重要な
点である。労災保険給付については、
「複数業務要因災害に関する保険給付」として、業務災害給付と別建てにした規定が
置かれたが、雇用以外の就業となる場合も少なくないことが想定される。
特別加入制度がそうした就業者を対象とできるかどうかが今後の問題となる。
このため、附帯決議でも、特別加入制度について、
「労働者に準じて保護することがふさわしいとみなされる者の加入促進を図るため、
制度の周知・広報を積極的に行うこと。・・・・その対象範囲や運用方法等について、
適切かつ現代に合ったものとなるよう必要な見直しを行うこと。」が求められた。

 雇用保険制度の複数就業者の適用については、まだ検討すべき点が多い。
附帯決議でも「・・・・逆選択やモラルハザードといった事象も含め、適用による
行動変化や財政への影響等を十分に検証し、必要に応じて、マルチジョブホルダーに
対する雇用保険の適用の在り方を検討すること。」といった形で先送りになっている。
労災保険のように事業主負担だけでないため、労働者負担が稼得する賃金収入とともに
増えてしまうため、それとのバランスで給付決定をどう考えるべきか。

 このほか、大企業における中途採用比率の公表については、離転職者が多いことの結果、
補充採用が多いという企業ではむしろ逆選択になってしまうことはないか
など懸念の声もあり、運用されてみてどのような効果があるか検証していくことが
必要だろう。
ただ、附帯決議では、「・・・・企業の実態や入社後のキャリアパスなどの情報も
中途採用を目指す労働者にとって有益であることから、様々な情報を総合的に公表しやすく
するための支援を検討すること。」と、より内容の拡充を求めている。
このような公表義務を課す例が労働関係で増えてきているが、総じて定量的なものは比較
しやすいが、定性的なものは判断に迷うことも多いように思える。
判断材料を公示させていくことも重要であるが、その前提としてそれらをどう読み取り、
自分のキャリア形成に結び付けていくかということも不可欠ではないか。
                              (北浦 正行)




編┃集┃後┃記┃
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世界各地で新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。

 1か月前は、多くの人が対岸の火事の認識だったのではないでしょうか。
東京は、先月23日から増加傾向にあります。

小池知事は不要不急の外出・夜間の飲食等の自粛要請をし、「感染爆発
の重大局面だ」と述べました。
また、安倍首相は28日の会見で、海外での感染拡大の例を挙げ、
「日本でも短期間で同じ状況になっているかもしれない。
最大限の警戒をお願いしたい」と国民に訴えました。

世界経済はリーマンショックを超える大打撃と言われています。
 日本政府は、新型コロナウイルスによる助成金制度として、

1.全小中高の臨時休校により、小学校等に通う子の保護者である労働者の休職に
 伴う所得の減少に対応するため、労働基準法の年次有給休暇とは別に有給の休暇
 を取得させた企業に対する助成金を創設。

2.従来からある雇用調整助成金の適用拡大 等

刻々と変わる情報と、情報公表の遅れ、公表された情報をわかりやすく整理して提供と、
売上激変による労働対策に追われる日々となりました。
 
 今、外出自粛にテレーワークが推奨されていますが、製造業、飲食業や小売業の
労働者、中小企業は情報漏洩対策が遅れテレーワークができない労働者が多いです。

企業側も、首都東京のロックダウン(都市の封鎖)を想定し、
社員の働き方や給与等の対策を立てています。
 
 一日も早く平常な日々を過ごせることを祈るばかりです。      (白石)



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発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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