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男性の育休取得を促す改正育児・介護休業法案を国会に提出
 〜出生後8週間に4週間取得可能な制度を創設〜

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┏━━┓    
┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
┗━━┛                           第228号
                              2021/04/01

           http://www.koyousystem.jp
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春の花爛漫の季節を迎えました。
皆様いかがお過ごしでしょうか。

雇用システム研究所メールマガジン第228号をお送りします。

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□ 目次 INDEX‥‥‥‥‥

◆男性の育休取得を促す改正育児・介護休業法案を国会に提出
  〜出生後8週間に4週間取得可能な制度を創設〜

■取得しない理由は「仕事の代替要員」「職場の雰囲気」等
■8週間以内の分割取得、休業中の就労可とする柔軟な制度
■個別の周知・意向確認を義務化。育休も4回の分割取得可能に
■22年4月から順次施行。制度運用の仕組みが鍵を握る
                 (以上執筆者 溝上 憲文)

■賃上げ回答はまだら模様ながらほぼ前年並み――2021年春季労使交渉
■厚労省が新たなテレワークに関するガイドラインを公表
■4月1日施行の改正高年齢者雇用安定法がもたらすインパクト
                  (以上執筆者 荻野 登)


編集後記(白石多賀子)

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男性の育休取得を促す改正育児・介護休業法案を国会に提出
  〜出生後8週間に4週間取得可能な制度を創設〜

 育児休業取得は女性に限らず、男性にも認められた権利だ。
育児・介護休業法は「事業主は、労働者からの育児休業の申出があったときは、
育児休業申出を拒むことができない」(6条)と規定している。
しかし、女性の83.0%が育休を取るのに対し、
男性の取得率は7.48%(2019年度「雇用均等基本調査」)にすぎない。


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■■■ 取得しない理由は「仕事の代替要員」「職場の雰囲気」等 ■■■
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 近年は共働き世帯も増加し、育休取得を希望する男性も増えている。
にもかかわらず男性の育休取得が進まないのはなぜか。

労働組合の連合が未就学の子どもがいる全国の20〜59歳の有職者の調査をしている
(「男性の育児等家庭的責任に関する意識調査2020」2020年11月16日発表)。
それによると、実際に「取得したかったが、取得できなかった」男性が31.6%もいた。
また、育休を取得しなかった男性の理由として最も多かったのは
「仕事の代替要員がいない」(53.3%)。
次いで「収入が減る(所得保障が少ない)」(26.1%)、
「取得できる雰囲気が職場にない」(25.6%)、
「取得するものではないと思う」(10.4%)、
「取得すると昇進・昇給に悪影響が出る」(7.2%)、
「仕事のキャリアにブランクができる」(6.7%)と答えている(複数回答)。

 収入に関しては雇用保険から賃金の67%の育児休業給付金が支給され
(180日、以降50%)、非課税で社会保険料も免除されるので手取額ベースで
8〜9割カバーされる。
こうした情報など取得したくても育休取得に無理解な企業・職場が多いこと
を示唆している。
驚くのは「自身の勤め先で育児休業等の制度が周知されていない」との
回答が39.4%もあったことだ。

 今回の男性の育児休業取得を促す改正案のポイントは以下の4つだ。

1.子の出生後8週間以内に4週間まで取得できる出生時育児休業制度の新設
 (【1】申出期限は2週間前まで、【2】分割して2回取得可能、【3】休業中の就業も認める)
2.取得しやすい雇用環境の整備と申出をした労働者に対する
  個別の周知・意向確認措置の義務付け
3.育児休業の分割取得(新制度を除き、2回まで取得可能)
4.育児休業取得率の公表の義務付け(従業員1001人以上が対象)


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■■■ 8週間以内の分割取得、休業中の就労可とする柔軟な制度 ■■■
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 現行の育児休業制度は原則子が1歳になるまで取得できる。
それを2つに分けて女性の産後休業中の8週間以内に4週間まで取得可能とするのは
明確に男性を意識した制度だ。
4週間はほぼ1ヶ月になる。
また、現行制度は原則休業の1ヶ月前までに申し出ることになっているが、
2週間前までとした。1ヶ月前では取りにくいという状況を考慮した措置だ。
ただし、出生予定より早まった場合は現行の育休と同様に
1週間前に申し出ることができる。

 8週間以内の分割取得も可能だ。
現行の育休制度はパパ休暇(出生後8週間以内に父親が育休取得した場合には
再度取得可能)があるが、新制度は8週間以内に限定して2回の分割取得ができる。
例えば妻が里帰り出産をした場合、子どもが生まれて1週間程度休業する。
その後仕事に復帰し、妻が自宅に戻ったときに再び休業することができる。

 また、産後8週間以内の新制度に限定し、休業中の就業も可能とした。
本来、育休中は仕事をしないでしっかりと休むことが基本だが、
前出のアンケートの「仕事の代替要員がいない」という事情や、
自分がいないと仕事が回らないという男性に配慮し、認めることにした。
ただし、労働者の希望に反して会社が悪用することも懸念される。
それを担保するために労使協定の締結を前提に認める。
具体的な手続きとしては、労働者が就業してもよい場合は、就業可能な日時などの
条件を申し出、事業主はその範囲内で候補日・時間を提示し、労働者が同意した
範囲で就業する。

また、休業期間中の労働日・所定労働時間の半分を上限とすることを
省令で定める予定だ。

 育休を取得しやすい雇用環境の整備と個別の周知・意向確認措置の義務付けに
ついては、新制度や男女に限らず育児休業全体に及ぶ新たな仕組みだ。
雇用環境の整備措置では、研修、相談窓口の設置、その他省令で定める措置など
複数の選択肢を設け、その中からいずれかの措置を講じることを義務づける。
また、短期はもとより1ヶ月以上の長期の休業を希望する労働者が希望する期間を
取得できるよう事業主が配慮することを指針で示すことにしている。


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■■■ 個別の周知・意向確認を義務化。育休も4回の分割取得可能に ■■■
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 個別の周知・意向確認措置については、現行制度の個別周知は努力義務だったが、
これを義務化する。
労働者または配偶者が妊娠・出産したことを申し出たときに新制度および現行の
育休制度を周知し、この制度の取得意向を確認することを義務づける。
周知方法は面談での制度の説明のほか、書面等による制度の情報提供など、
複数の選択肢を設け、いずれかを選択することを予定している。
意向確認をどこまでやるのか。

「対面が望ましいが、人事や上司が行うかについては運用に任せるしかない。
返事の確認については最終的な結論まで聞くのが望ましいが労働者の事情もある。
法案成立後、労働政策審議会で議論することになる」
(厚生労働省雇用環境・均等局職業生活両立課)という。

また、取得意向を確認する際は、育休取得を控えさせるような形での周知および
意向確認を認めないことを指針に盛り込む。例えば上司が「君は取らないよね?」
などとネガティブな言い方だ。

 新制度の出生時育児休業制度を除く育児休業期間については、現行の制度は
原則分割することができないが、分割して2回までの取得が可能になる。
男性の場合は出生後8週間以内の2回分割に加えて、8週間以降も含めて
計4回の分割取得が可能になる。
また、現行制度は保育所に入所できない場合には育休期間を1歳から1歳半、
1歳半から2年に延長できるが、育休開始日は1歳になった初日(1歳半の初日)に
限定されている。

そのため各期間の開始時点でしか夫婦交代できなかったが、開始日を柔軟化し、
例えば1歳2ヶ月で交代することができるようになる。
 男性の育休取得率を促すために従業員1001人以上企業に男性の育児休業取得率公表を
義務づける。

大企業に率先して育休取得を促す措置であり、該当企業は4000社弱にあたる。
また、今回の育児・介護休業法の改正では有期雇用労働者の取得要件も緩和する。
現行制度の育休取得は「引き続き雇用された期間が1年以上」という
“前要件”と「1歳6ヶ月までの間に契約を満了することが明らかではない」
という“後要件”があった。

今回、前要件を廃止。
後要件は残される「1年契約であっても、完全に1年で契約を
満了する、更新の目処はないと雇用契約書に書かれていない限り
『契約が満了することが明らかでない』ので育休取得が可能になる」(職業生活両立課)。


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■■■ 22年4月から順次施行。制度運用の仕組みが鍵を握る ■■■
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 法律の施行日は雇用環境の整備と個別の周知・意向確認措置の義務付け、
有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件緩和は2022年4月1日。
出生時育休制度、育休の分割取得は2022年10月頃を予定している。
男性の育児休業取得率の公表義務付けは2023年4月1日。
ということは22年4月1日〜23年3月31日までの2022年度の取得率を
公表することになる。

 以上が改正案の内容だが、はたして男性の育休取得が促進されるのか。
大手建設関連会社の人事部長は
「従来の法律はあまり柔軟性がなかったが、今回の新制度は育休中の就労を
認めており、結構柔軟な仕組みになっている気がする。
子どもにある程度手がかからなくなれば仕事もできるし、今のコロナ禍であれば
自宅でWeb会議も可能になる。
改正法が施行されると取得率は今まで以上に上がるのではないか」と語る。

 個別の周知や意向確認措置が義務づけられたが、運用上の課題もあるという。

「上司が単に本人に投げかけるだけでは、その効果は今までと変わらないだろう。
人事と上司、本人が三位一体となって取り組むような仕組みを考える必要がある。
例えば部署ごとに具体的な取り組み方法についてのアンケート調査を随時実施し、
人事がチェックするような仕組みがあれば進むかもしれない。
制度に合わせた企業の取り組みのためのルール化が必ず必要だ」(人事部長)

 単に法律を守るだけの後ろ向きの対応では取得率が伸びることはないだろう。
人材採用や社員の定着率向上など人材活用の観点から前向きの対策が求められている。
                             (溝上 憲文)


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■■■ 賃上げ回答はまだら模様ながらほぼ前年並み
                   ――2021年春季労使交渉 ■■■
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 2021年の春季労使交渉(春闘)は3月17日に大手企業の集中回答日を迎えた。
コロナ禍における2回目の交渉となり、景気・企業業績の動向からみて、
賃上げ水準は前年より大きく低下するとの見方が強かったが、
全体平均の下げ幅は限定的となる見込みだ。

労働側(連合)はこれ以上の賃金の下落はさらなるデフレの深みに陥ることから、
「雇用も賃金も」のスタンスで臨む一方、
経営側(経団連)は「事業継続と雇用維持」を最優先の課題としつつ、
賃上げについては業種横並び・各社一律は現実的ではないと主張。
労働側が求めた賃上げのモメンタム維持は必要だとの見解で一致していた。

17日の大手企業の回答状況を見ると自動車、電機などのこれまで
パターンセッター役の回答はバラツキが目立った。

その一方、コロナ禍でも業績が堅調だった企業では昨年並みの回答が示され、
回答状況はまだら模様となった。
巣ごもり需要等で業績堅調な産業・業種が存在するものの、自動車などは
産業の大変革期にあることもあり、先行き不透明感が交渉の足かせとなった。

一方、宿泊・飲食、航空・鉄道旅客、観光関連などでは雇用の確保・維持が
交渉の最優先課題となるなど、交渉をめぐる環境は三極化していたといえる。

 こうしたなか今季交渉の特徴は、労働側が前年の大幅なGDPの落ち込みなど
を踏まえて、要求を昨年よりダウンさせて臨んだものの、現段階の集計では
昨年並みの回答で妥結している点だろう。
過去の景気後退期に比べて前年実績比の下げ幅は大きくなく、
労使がウイズ/アフターコロナを踏まえて、ワークエンゲージメントを
維持・向上させるために導き出した回答・結果とみることができる。

 東京都が3月25日現在で集計した
「2021年春季賃上げ要求・妥結状況」(中間集計)によると、
都内の民間企業(59労組の妥結集計)の組合員一人当たりの加重の平均妥結額は
6,101円で率は1.82%となり、対前年比57円(0.94ポイント)増となっている。

 一方、要求を提出した労働組合のうち前年要求額と比較可能な167組合の
平均要求額は8,389円で、同一労組の前年要求額(9,991円)との比較では、
金額で1,602円減少(16.03%減)していた。
過去の景気後退期と比較しても、前年と比較した組合要求の下落幅は大きく、
労働側は交渉環境を踏まえて、自制的な要求で臨んだといえる。

 ただし、先にみたように宿泊業、飲食サービス業の妥結額は
前年比マイナス52.02ポイントとなるなど、今後、交渉が山場を迎える業種などの
動向によっては、妥結結果の平均が前年比でマイナスに転じる可能性も濃くなる。

 一方、連合集計(19日現在)で、パートタイム労働者などの
有期・短時間・契約等労働者の時給の賃上げ回答状況(56組合、32万8,516人)
をみると、加重平均の引上げ額は24.61円(平均時給1,046.23円)で、
昨年同時期の回答額を5.88円下回った。
しかし、こちらは2020年度の法定最低賃金がほとんど伸びなかったことが影響して
いるとみられる。
時給の加重平均の引上げ額(24.61円)を引上げ率に換算すると概算で 2.35%となり、
同時点で連合が集計した一般組合員(平均賃金方式)の 1.81%を上回っている。

 また、賞与・一時金についても自動車、電機などの金属関係の産別で構成する
金属労協の集計によると、大手54組合の年間一時金回答は4.94カ月で、
久しぶりに5カ月台を割ったものの前年(56組合)を0.11カ月下回る程度にとどまって
いる。
こうした回答結果を踏まえて、連合・経団連のトップとも
「賃上げのモメンタムは維持されている」との認識を示すコメントを発表した。

 賃金交渉の結果は、産業・業種ごとの景況の相違や企業の好不調を反映し、
まだら模様となった。その一方、産業・業種にかかわらず共通して進んだのが、
「同一労働・同一賃金」に関連した不合理な待遇差の是正などを含む働き方改革と
アフターコロナを展望したデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を含む
業務構造の改革に関する議論だった。

 こうした意味からも、今春の労使協議・交渉は従来とは異なる性質の議論が
労使間で真摯に交わされたとみることができる。


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■■■ 厚労省が新たなテレワークに関するガイドラインを公表 ■■■
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 厚生労働省は3月25日に新たなテレワークに関するガイドラインを公表した。
テレワークの推進を図るためのガイドラインであることを明示的に示すため、
タイトルを従来の
「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」
(2018年2月)から「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」
に変更した。

 テレワーク導入に際しての望ましい取り組み、人事評価や費用負担等の労務管理上
の留意点、フレックスタイム制やみなし労働時間制等との関係、中抜けや長時間労働等
テレワークに関連する労働時間管理のあり方のほか、
安全衛生、労災補償、セキュリティ対応等の幅広い課題についての考え方を示している。

 テレワークについては、新型コロナウイルス感染症対策として、
昨年4月の緊急事態宣言発出以降、急速に拡大してきたが、
その後一部では揺り戻しの動きもみられる。
しかし、新ガイドラインではテレワークについて、ウィズコロナ・ポストコロナの
「新たな日常」、「新しい生活様式」に対応した働き方であると同時に、
「働く時間や場所を柔軟に活用することのできる働き方であり、
働き方改革の推進の観点からも、その導入・定着を図ることが重要」と指摘。
使用者が適切に労務管理を行いながら、労働者が安心して働くことのできる形で良質な
テレワークを推進し、定着させるため、ガイドラインを周知するとしている。

 今回のガイドラインで強調しているのは、テレワークの推進によって、
従来の業務遂行の方法や労務管理の在り方の見直しを進めている点。
デジタル化の遅れがコロナ禍で明らかになったこともあり、不必要な押印や署名の廃止、
書類のペーパーレス化、決裁の電子化等に取り組むことが望ましいとしている。
さらに、コミュニケーション不足への対応や評価の在り方といった労務管理上の課題に
対しても言及。
対象者について、正規・非正規の雇用形態だけで区分しないことついての留意、
また、オフィス出勤を高く評価することは適切な人事評価とならないことなど
について念を押している。

 労働時間管理の把握については、
(1)パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として始業及び終業の時刻を確認すること、
(2)労働者の自己申告により把握すること
 ――の2つの方法をあげた。

 また、いわゆる中抜けについても把握方法として、
「一日の終業時に、労働者から報告させることが考えられることや、中抜け時間について、
休憩時間として取り扱い終業時刻を繰り下げたり、
時間単位の年次有給休暇として取り扱う」ことを例示するなど、
労働者の自律的な時間管理を促す方策が打ち出されている。

 また、テレワークによる長時間労働等を防ぐ手法としては、
(1)メール送付の抑制等やシステムへのアクセス制限等、
(2)時間外・休日・所定外深夜労働についての手続
 ――を労使の合意により時間外等の労働が可能な時間帯や時間数をあらかじめ
使用者が設定することなどを示している。

 いずれにしても、ガイドラインの内容は曖昧との指摘もあるように、
細部については職場の実情に合わせて、労使の話し合いの中から、
合理的な制度とする努力が必要だといえる。


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■■■ 4月1日施行の改正高年齢者雇用安定法がもたらすインパクト ■■■
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 人生100年時代が枕詞で語られるほど高齢化がすすむなか、
70歳までの就労確保を努力義務とする規定が盛り込まれた、
改正高年齢者雇用安定法が4月1日に施行される。

 これまでは、65歳までの雇用確保措置が義務化されていたが、改正法では
70歳までの就業確保措置の努力義務が新設される。
「雇用」から「就業」への言葉の変化がもたらすインパクトを考えてみたい。

 改正法をおさらいすると、努力義務の措置内容は、
(1)70歳までの定年引き上げ、
(2)定年廃止、
(3)70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

となり、ここまでは対象年齢が上がるだけで、旧法との違いはほとんどない。
これに改正法では雇用によらない措置として、

(4)高年齢者が希望するときは70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入と、
(5)高年齢者が希望するときは70歳まで継続的に従事できる制度として事業主が自ら
実施する社会貢献事業と事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う
社会貢献事業の制度が導入される。

 これまでの「定年延長」、「契約社員等での継続雇用」、「定年廃止」は
いずれも自社での雇用が続く制度だったものが、新設された高年齢者就業確保措置では、
(4)と(5)の雇用以外の措置(創業支援等措置)という自社で雇用ではない、
就業を支援する形での働き方が追加される。

 同法のもともとの理念は、働く意欲がある誰もが年齢にかかわりなくその能力を
発揮できるよう高齢者が活躍できる環境整備を図ることだった。
しかし、改正法は従来とは異なり、これまでの会社における雇用だけではなく、
70歳まで多様な働き方で働き続けられるよう、さまざまな措置を検討の対象と
しなければならなくなる。

 これは先に取り上げたテレワークを起点とした従来の労務管理施策の見直しと
密接不可分の関係にあるともいえる。
筆者が昨年11月に実施した大手企業のテレワークに関するヒアリングでは、
アフターコロナを展望する働き方の見直しとして、副業・兼業の許可・拡大、
ジョブ型雇用や高度プロフェッショナル制度の導入、さらにギグエコノミーに
対応した雇用類似の業務委託を組み合わせた雇用ポートフォリオの再編を展望する
企業が多いことに気づかされた。

 その共通する方向性は、労働時間管理の自律化と同じく会社が管理するのではなく、
働く人が自らキャリアプランを形成できるような制度設計に組み替えていく
ところにある。
キャリア形成については個別化・選択化によって、早くから専門性を見出し、
セカンドキャリアを展望できるような制度とする。
そして、雇用だけでなく業務委託による就業を含めて、キャリア形成の自律化を
促すものといえる。社員との業務委託契約では、電通やタニタの例が
取り上げられているが、改正高齢法を機にこうした取り組みが拡大することも予想される。

 高年齢者就業確保措置のうち、どの措置を講ずるかについては、
個々の高年齢者の希望を聴取しつつ、十分な労使協議が必要となる。
また、就業確保措置はひとつではなく複数の組み合わせも考えられる。

 今春闘では電機大手などで労使の議論が進み、労使委員会で継続協議することを
確認するケースが目立った。
流通・小売関係の人手不足もあり定年制の廃止などで取り組みを強めてきたUAゼンセンによると、
2017年以降からの制度改定分を含めると172組合が定年年齢65歳以上、
46組合が定年なしとなっている。
しかし、今のところ労働側は業務委託契約には否定的で、
雇用にこだわる姿勢を示している。

 いずれにしても、これからの長期化する職業キャリアを展望すると、
自らのキャリア形成について、気づきを与える機会をライフステージに応じて、
提供していくことも必要になるだろう。
キャリアカウンセリングの役割がさらに重要性を増すことになるかもしれない。
                             (荻野 登)



編┃集┃後┃記┃
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 コロナ禍における二つの話題を取り上げます。
 第一生命保険が、小学3年〜6年の子どもに「大人になったらなりたいもの」を
尋ねた調査結果で、男子の1位は「会社員」でした。

背景には、リモートワークで自宅において仕事をする親の姿を見て身近に感じた
のではと調査担当者が述べていました。

また、料理の宅配事業が全国に拡大しています。
ウーバーイーツジャパンによると現在約10万人いる配達員も最大20万人に
倍増する見通しとのことです。
ネットで仕事を請け負う「ギグ・エコノミー」と呼ばれる配達員は、
個人事業主の扱いで雇用保険や労災保険の適用はされていません。

 2月19日、英国最高裁は、米ウーバー・テクノロジーズのロンドンの運転手らに
「従業員」の権利を認める判決を出しました。
この判決により、3月16日米ウーバー・テクノロジーズは、
英国の運転手約7万人に対して、最低賃金や有給休暇が取得できる
「労働者」として取り扱うと発表しました。

英国最高裁の判決により各国で待遇改善の動きがあります。
日本においても「ギグ・エコノミー」の働き方をする人々に、
労働改善が課題となります。                   (白石)


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発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp

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