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2023年の人事・労務の課題
 ~賃上げ・賃金制度・人材確保にどう対応するのか~

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┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
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                              2023/01/01

           http://www.koyousystem.jp
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謹んで新春のお慶びを申し上げます。
皆様は、今年一年間の計画や心づもりをどのように思い描きましたでしょうか。
皆様の思いが実現できますようお祈り申し上げます。

雇用システム研究所メールマガジン第249号をお送りします。

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□目次 INDEX‥‥‥‥‥

2023年の人事・労務の課題
  ~賃上げ・賃金制度・人材確保にどう対応するのか~

■賃金抑制策が招いた失われた30年
■インフレ率以上の給与アップがないと転職を検討
■賃上げに対応した人事・賃金制度改革が加速
■持続的成長に不可欠な50代のリスキリング
                 (以上執筆者 溝上 憲文)

■2023春闘に向け機運高まる「賃上げ」――前向きな経営者、労組も要求まとめる
■大手3社の転職紹介実績が絶好調、政府も円滑な労働移動の支援強化
■裁量労働の見直しが事実上決着――M&A業務に拡大、専門業務型に本人同意
                 (以上執筆者 荻野 登)


編集後記(白石多賀子)

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2023年の人事・労務の課題
  ~賃上げ・賃金制度・人材確保にどう対応するのか~

 2022年は物価上昇による40年ぶりのインフレ率、
それに伴う実質賃金の低下が大きな話題になった。
23年は賃上げ及び賃金制度、その延長である人材獲得競争力など
諸課題が問われる年になりそうだ。


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■■■ 賃金抑制策が招いた失われた30年 ■■■
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 賃上げに関しては日本だけが賃金が上がらない理由としてマクロ的にはデフレ経済説、
株主配当・内部留保肥大説、労働移動停滞説など諸説ある。
しかしミクロの面で企業行動を振り返ると、大きな要因はバブル崩壊以降、
モノやサービスの付加価値創造よりもコスト削減、つまり賃金を抑制する事業戦略を
優先させてきたことにある。

 基本給はベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)が賃上げの2大要素であるが、
最初に手をつけたのがベアの廃止・縮小だった。
厚生労働省の調査による主要企業の賃上げ率は1997年の2.90%をピークに下降し、
2002年以降の「いざなみ景気」下でも1%台で推移し、03年は1.63%となり、
定昇のみのベアなし時代が長く続いた。
さらに2000年初頭には定昇の凍結・見直しにも着手。経営側の春闘方針である日経連の
「労働問題研究委員会報告」(2002年)は「これ以上の賃上げは論外、
ベア見送りにとどまらず、定期昇給の凍結・見直しなどが求められる」
と企業に発信している。

 定昇は1990年代前半までは、大手企業であれば入社時から定年退職の60歳まで
支給されていた。
しかし2000年以降、定昇額の縮小や支給年齢の前倒し、あるいは廃止など見直しが進んだ。
2013年に日本生産性本部が上場企業に実施した調査
(第14回日本的雇用・人事の変容に関する調査)によると、定昇がある企業は67.6%。
定昇がある企業でも定年まで定昇がある企業は17.6%に減少。
「特に年齢や勤続年数に応じた定期昇給はない」企業が29.4%と約3割に達した。

ベアの廃止・縮小に加えて、定昇の廃止・縮小や適用年齢の制限が基本給の上昇を
阻んできたのは間違いない。


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■■■ インフレ率以上の給与アップがないと転職を検討 ■■■
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 しかし、こうした賃金抑制による企業の競争力維持策はもはや限界に達し、
弊害が顕在化している。弊害の1つは賃金低迷が消費支出を抑制し、企業がさらなる
低価格戦略に走るというデフレスパイラルの悪循環を露呈し、
人口減少下の日本経済をシュリンクさせたことだ。

 そしてもう1つは人材獲得競争力の低下である。
デジタル化などイノベーションによる付加価値創造には優秀人材の獲得が不可欠だが、
今では新卒を含めて外資系企業に奪われつつある。
すでに一部の企業が新卒初任給を25~30万円に引き上げる動きあるが、
まさに人材獲得や流出への危機感の表れだ。

 こうした弊害をなくすには賃上げは必至の情勢だ。
加えて原材料の高騰や円安という外発的な物価上昇が働く人の生活を苦しめている。
消費者物価指数は41年ぶりの3%台に突入し、賃上げ率が物価上昇率を下回るという
異常事態を解消しなければ可処分所得は減少する。
人材紹介業のロバート・ウォルターズ・ジャパンの「生活費高騰・インフレ」
に関する調査(2022年12月15日)によると、
会社員に「インフレ率以上の給与アップがない場合に、転職を検討するか」という質問に、
81%が「転職を検討する」と答えている。

また企業の76%が「物価の上昇・生活費高騰により、組織での人材確保が難しくなる」
と答えている。すでに「インフレ手当」を支給する企業も登場しているが、
少なくとも物価上昇分に見合う賃上げをしないと人材流出の恐れがある。

 さらに人材の確保においては、政府の「採用直結インターンシップ」の解禁より、
早期内定化に拍車がかかり、新卒人材の確保がより一層難しくなる可能性も
指摘されている。


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■■■ 賃上げに対応した人事・賃金制度改革が加速 ■■■
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 しかし、賃金を引き上げると当然ながら人件費が膨れ上がる。
とくに一律定額配分の年功的賃金体系の企業ほど人件費は増える。
加えて改正高年齢者雇用安定法の70歳までの就業確保の重い負担ものしかかる。
今年はその負担を緩和するための賃金制度の変革がより一層進むことになるかもしれない。

 例えば昨年末、社員1人あたりの年収を平均7%引き上げると発表したロート製薬は
昨年10月、年功的要素を排除した職種ごとの賃金体系に修正する新たな報酬制度を
導入している。
加えて政府が年収を4%以上引き上げる企業の税金の一部控除することも
年収引上げの理由に挙げている。

 賃金制度変革の一つの潮流が職能給からジョブ型賃金に代表される
「職務・役割給」導入だ。勤続年数や能力・経験など「人基準」で昇給していく職能給
を廃止し、職務や役割など「仕事基準」で給与を決める職務・役割給は、
日立、富士通、ソニー、東芝なども導入。
すでに管理職に導入しているNTTグループは一般社員についても年功的要素を
廃止した新人事制度を導入することを昨年10月に労使で合意している。

 また、政府もその動きを後押しする。岸田文雄首相は 昨年11月10日に開催された
「新しい資本主義実現会議」において、企業に「経験者採用を進めていくためにも、
個々の企業の実状に応じて、日本型の職務給への移行等の賃金の在り方を
ご検討いただきたい」(議事要旨)と語っている。
また、今年6月までに職務給の移行を含む労働移動円滑化のための指針を
取りまとめると表明している。


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■■■ 持続的成長に不可欠な50代のリスキリング ■■■
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 一方、政府が掲げるリスキリング(学び直し)は今後企業においても重要になる。
デジタル経済化の進行やビジネスモデル自体の変革も求められている中で、
従業員の再教育が不可欠になる。
その中でも最もリスキリングを必要とし、戦力化が求められるのは50歳代の
ミドルシニア層だろう。

 ミドルシニア層のキャリア開発研修やリスキリングを手がける
ジェイフィールの片岡裕司取締役コンサルタントは
「今後10年で50歳以上が組織の半分程度になるのが当たり前の時代になる。
すでに大手企業の中には再雇用者が4分の1を占め、50歳以上が50%を超えるところ
もあれば、5年後に80%を占める企業もある。
多くの企業で50歳以上が3~4割を占め、10年後には5割以上になり、
まさにミドルシニアはデジタル経済のど真ん中で新しい仕事をしなくてはいけない」
と指摘する。ボリュームゾーンとなるミドルシニアの再教育をどうするのか、
今年は大きく問われることになる。

 それ以外にも今年は多くの課題が待ち受けている。
株主重視から従業員を含むステークホルダー重視経営への世界的な流れの中で、
人をコストではなく資本と位置づける人的資本経営が叫ばれている。
ESGのS(社会)、SDGsの8番目の目標(働きがい等)の実践が投資家からも
注目されている。企業にとっても競争力の源泉である人材投資が持続的成長に
不可欠であることが改めて認識されている。

 その一つの具体的政策として今年は「非財務情報の開示」の圧力も高まるだろう。
金融庁は、2023年3月期の有価証券報告書から人的資本情報についての開示を
義務付けるため、昨年11月7日、「企業内容等の開示に関する内閣府令」に関わる
「有価証券報告書等」の記載事項についての改正案を公表。
開示義務の中に女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差が入った。
2つ目として政府が策定した「人的資本可視化指針」に基づいた非財務情報の
開示も投資家を中心に求められてくるが、矢面に立つのは人事部だ。

 今年は賃上げや賃金制度の変更など、もはや対症療法的な人事施策では通じなく
なるかもしれない。
少なくとも今後の10年先の経営を展望したビジョンを描き、それに基づいた
採用や社員のリスキリングを含めた人材活用戦略を着実に実行に移すときである。
                             (溝上 憲文)


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■■■ 2023春闘に向け機運高まる「賃上げ」
      ――前向きな経営者、労組も要求まとめる ■■■
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 物価高が続く中、2023年の春闘への注目度が増しているが、連合、金属労協、
UAゼンセンといった賃上げ相場形成に影響力のある主要労働団体の要求が
ほぼ出そろった。

 一方、サントリーホールディングス(HD)はベースアップを含めて6%の賃上げ、
日本生命は営業職員の賃金平均7%を検討しているほか、
キヤノンも20年ぶりとなるベア実施を予定するなど、経営側も賃上げに積極的な
姿勢を示している。
今春闘に向けて賃上げ機運はこれまでにないほど高まっている。

 労働中央団体(ナショナルセンター)の連合(芳野友子会長、687万人)は
12月1日の中央委員会で、来春の労使交渉における月例賃金の引き上げ要求指標について、
定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め5%程度とすること決めた。
定昇相当分を含めて5%以上の要求を掲げるのは、1995年以来28年ぶりとなる。

連合は来春闘争の基本スタンスについて、賃金が上がらず、企業部門で適切な
価格転嫁が進まないなどの現状を踏まえて、

「社会全体で中期的・マクロ的な視点から問題意識を共有し、GDPも賃金も
物価も安定的に上昇する経済へとステージを転換し望ましい未来をつくっていくことが必要だ」
と強調。
2022闘争で新たに掲げた「未来づくり春闘」を深化させるとの意気込みを強調している。

賃金要求については、「国際的に見劣りする日本の賃金水準を中期的に引き上げる」
「人材を確保・定着させ、生産性を高めていくには、継続的な『人への投資』が重要」
「マクロ的には物価を上回る可処分所得増をめざす」――などの視点から、

(1)産業相場や地域相場を引き上げていく【底上げ】、
(2)企業規模間、雇用形態間、男女間の格差を是正する【格差是正】、
(3)産業相場を下支えする【底支え】
 ――に分けて、それぞれ要求指標を掲げた。

【底上げ】の要求指標は「すべての働く人の生活を持続的に維持・向上させる転換点
とするマクロの観点から、賃上げ分を3%程度、定昇相当分(賃金カーブ維持相当分)
を含む賃上げを5%程度とする」。
前年方針から賃上げ要求幅を1%分積み増した。

 ベースアップ分などの賃上げ分を3%程度とした理由について方針は、
「内閣府の年央見通し(2022年度実質GDP2.0%、消費者物価2.6%)や
日本全体の生産性上昇率のトレンド(1%弱)を念頭に、国際的に見劣りのする
賃金水準の改善、労働市場における賃金の動向、物価を上回る可処分所得増の必要性、
労働者への分配増などを総合的に勘案」したと説明している。

 また、自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の産別労組で構成し、
交渉リード役となる(JCM、201万人)は同7日の協議委員会で、
すべての組合で定期昇給などの賃金構造維持分を確保したうえで、
ベースアップや賃金改善の賃上げ分について昨年の3,000円以上から倍増の
6,000円以上とする2023年闘争方針を決定した。

 さらに、連合傘下の最大産別で製造から流通サービスなど幅広い産業を組織化し、
パートタイム労働者などの短時間有期労働者が組織の6割を占めるUAゼンセン
(松浦昭彦会長、185万人)では、制度昇給等の賃金体系維持分に加えて賃上げ分として
4%程度を合わせて連合の要求水準を上回る6%程度の賃金引き上げを目ざす方針案を固めた。

 パートタイムの時給についても正社員の要求水準に合わせて50円増を盛り込んでいる。
連合の5%を超える要求の設定については、
「産業間」「雇用形態間」「企業規模間」の格差是正を進めていくためには、
「『5%』では足りず、『6%』という数字で闘争を進めることとした」(松浦会長)
と説明している。

賃上げの動きを波及させるためには、依然としてデフレ基調にあるサービス価格の
適正化と中小が賃上げできるような環境整備が必要になる。
流通・サービス系が多いUAゼンセンの要求は、この点を意識したものだといえる。

さらに、12月27日に公正取引委員会が価格転嫁巡り取引先との協議を促す目的で
佐川急便やJA全農、デンソーなど13社・団体を公表したことも、
中小・下請の賃上げを促進させるための環境整備の一環だ。
独占禁止法では、価格協議の場で価格転嫁の必要性を明示的に協議しなかったり、
転嫁しない理由を言わずに価格を据え置いたりすることは「優越的地位の乱用」に
該当する恐れがあるとしている。


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■■■ 大手3社の転職紹介実績が絶好調、政府も円滑な労働移動の支援強化 ■■■
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 一般社団法人日本人材紹介事業協会(人材協)が、22年11月30日に発表した
職業紹介会社大手3社(ジェイエイシーリクルートメント、パーソルキャリア、リクルート)
の2022 年度上期(4-9月期速報値)の転職紹介実績によると、
紹介人数は5万165人と過去最高で、前年同期比132.6%の大幅な伸びとなった。

 コロナ禍前の2019年度の同期比と比べても119.7%となっていることから、
人材協では「新型コロナウイルス感染症拡大前の状況を回復して、更に伸長している」
とみている。

業種別に求人企業(業界別は首都圏のみ)をみると、いずれの業界もプラスとなったが、
とくに電機・機械・化学等製造業界、コンシューマー業界(飲食、旅行、サービス業含む)は、
それぞれ前年同期と比べて42.9ポイント、42.3ポイントの高い伸びを示している。

 求人地域別でもいずれのエリアも同比20~30ポイント以上の高い伸びとなった。

経験職種別(職種別は首都圏のみ)の求職者をみると、
いずれも前年同期比でプラスとなった。
とくにその他一般事務で同比63.5ポイン増と高く、金融系専門職でも44.3ポイントの
プラスとなった。

 転職市場が活況を呈するなか、政府も賃金上昇を伴う円滑な労働移動に政策の力点を置く。
総合経済対策に向けた令和4年度第2次補正予算が12月2日に成立したが、
当年度予算で実施中の施策に加え、来年度予算要求とあわせて、
「賃上げ」「労働移動の円滑化」「人への投資」の一体的な改革を進めるための
助成金を新設・拡充する。

 「賃上げが、高いスキルの人材を惹きつけ、企業の生産性を向上させ、更なる賃上げを生む」
という好循環を「構造的な賃上げ」と呼び、その実現に向けて、
「人への投資」の抜本強化と成長分野への労働移動を一体的に進めることで、
経済再生につなげる経路を描いている。

 その政策のテコとなる予算措置として、デジタル分野等の新たなスキルの獲得と
成長分野への円滑な労働移動を同時に進める観点から、現行3年間で、
4,000億円規模で実施している「人への投資」の施策パッケージを
5年間で1兆円へ拡充する。

 賃金上昇を伴う労働移動の支援として、たとえば、労働移動支援助成金
(早期雇入れ支援コース)を見直す。
同制度は、再就職援助計画などの対象者を離職後3か月以内に期間の定めのない
労働者として雇い入れ、継続して雇用することが確実である事業主に対して
助成しているが、2022年12月2日からは、より高い賃金で雇い入れた事業主には
加算して助成する。

 このほか、
(1)中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)の見直し、
(2)求職者に対する求職条件向上指導の強化、
(3)特定求職者雇用開発助成金(成長分野人材確保・育成コース)の対象事業主の追求
 ――などを盛り込んだ。

さらに、リスキリング(成長分野に移動するための学び直し)への支援策の整備や、
企業間、産業間での労働移動円滑化に向けた指針を、23年6月までに取りまとめる予定だ。


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■■■ 裁量労働の見直しが事実上決着
        ――M&A業務に拡大、専門業務型に本人同意 ■■■
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 12月27日、厚労省の労働政策審議会労働条件分科会で無期転換ルールや労働時間制度
などに関する報告が取りまとめられ、労使間で溝の深かった裁量労働制に関する
論議が年内に決着した。

 使用者側が「専門業務型」への適応対象の拡大で要望していた顧客に対して
金融機関(銀行・証券)で合併・買収(M&A)を考案・助言する業務を加える。

 また、労働者側の要望を踏まえて、「専門業務型」に適用する際、
本人同意を得ることが求められることになった。
「企画業務型「の適用には本人同意が必要となるが、専門業務型は労使協定を結んでいれば、
本人の同意なしで適用できる。

 さらに、健康・福祉確保措置として(勤務間インターバルの確保、深夜業の回数制限、
一定の労働時間を超えた場合の適用解除、医師の面接指導)等が追加された。
裁量労働制は、技術革新、サービス経済化、情報化などの影響で、
労働者の裁量の自由度が大きい専門的労働者が増加したことを背景に
1987年の労働基準法改正の際に導入された(当初は研究開発者や記者など5業種に限定)。

 その後、90年代に入り、成果主義の導入とともに裁量労働制への関心が高まり、
対象業務拡大について経済界からの要請も強まったことを受け、
98年に企業の本社等の中枢部門で企画、立案等の業務を自らの裁量で遂行する労働者に
対しても裁量労働制が適用拡大。
現在の制度では、弁護士や証券アナリストなど19業種に適用されている
「専門業務型」と、98年に新設された事業の内容を例示した「企画型」の2種類がある。
 
 その後、経済界から適用拡大の要望は続いたが、その議論が再浮上したのは、
安倍政権時の「働き方改革」。企画型の対象業務に「課題解決型開発提案業務」と
「裁量的にPDCAを回す業務」の追加を「働き方改革関連法案」に盛り込む予定だったが、
厚生労働省の統計データの不備が指摘され、裁量労働制に関する内容が国会提出前に
法案から削除された経緯がある。

 厚労省は、統計データの不備問題などを受けて新たに実施した
「裁量労働制実態調査」を2021年6月に発表。
導入企業の割合は専門型2.0%、企画型は0.4%にとどまっていた。
こうした経緯を受け、厚労省は改めて裁量労働制を含む今後の労働時間制度について、
「これからの労働時間制度に関する検討会」を設置し、見直し方向を討議してきた。

 同検討会の報告(22年7月)を受け、厚労省の労働政策審議会労働条件分科会では、
裁量労働制の見直しに関する議論を開始した。
当初、対象業種について使用者側は前回の法案で削除された
「課題解決型開発提案業務」「裁量的にPDCAを回す業務」に加え、
金融機関における合併・買収等に関する業務を追加するように主張。

 一方、労働者側は、裁量労働制について、
「長時間労働を助長する」「フレックスタイム制でも柔軟な働き方は可能」などを主張し、
対象業務の拡大に反対し続けていたが、
一つの業務追加と健康確保措置の強化で折り合った格好だ。

 なお、同報告で労働契約関係について、
(1)有期契約労働者の雇用の安定に向け、無期転換申込権が発生する契約更新時における
  申込機会および転換後の労働条件、更新上限の有無などの書面明示義務づけ、
(2)労働条件明示事項に職務などを限定する場合の変更範囲を追加すること
  などが盛り込まれた。                 (荻野 登)



編┃集┃後┃記┃
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 明けましておめでとうございます。
本年も皆様に有意義な情報提供ができるよう頑張ります。

 12月15日、日本経済新聞夕刊に「ホワイト過ぎ 若手が離職」の見出しが
目に飛び込みました。

リクルートワークス研究所の調査結果からの記事によると、
「職場がホワイトすぎて辞めたい」と仕事の「ゆるさ」に失望し、
離職する若手社会人が増えている。
若手の職場への失望感を強めているのが上司のコミュニケーション不足。

 企業は、労働法改正により長時間労働やハラスメント防止をして働きやすい
職場環境を講じています。
しかし、若手からは「ゆるい職場」が不評を買っています。

 パワハラを気にしてコミュニケーション不足、さらにコロナ禍でテレワークが
進みコミュニケーション不足。
昨今、「ゆるい職場」でも「きつい職場」でも退職は増加傾向にあり、
企業はコミュニケーションやキャリアアップの見える化などの対応に苦慮しています。

 厚生労働省は、コロナ禍の雇用下支え策で財源が枯渇し昨年10月に
雇用保険料率が引き上げられました。
今春4月、さらに雇用保険率を引き上げ法定料率に戻る方向です。

例年より寒い冬です。
くれぐれも体調管理にお気をつけください。           (白石)


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発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp


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