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管理職の育成と選抜方法の進化(下)
 ~リーダーの育成と管理職の役割の変化~

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┃\/┃    ★雇用システム研究所メールマガジン★
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                              2023/08/01

           http://www.koyousystem.jp
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ジリジリと焼けるような暑い日が続きます。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
雇用システム研究所メールマガジン第256号をお送りします。

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□目次 INDEX‥‥‥‥‥

管理職の育成と選抜方法の進化(下)
  ~リーダーの育成と管理職の役割の変化~

■公募型の次世代リーダー候補の選抜と育成
■プレイングマネージャーで疲弊する日本の管理職
■マネジメントと専門職を分離した人事制度を導入
                 (以上執筆者 溝上 憲文)

■最低賃金の全国加重平均1,002円、上げ幅は過去最大の41円に
■連合の2023春闘最終集計は10,560円・3.58%で30年ぶりの高水準
■初任給と最低賃金の因縁深い関係
                 (以上執筆者 荻野 登)


編集後記(白石多賀子)

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管理職の育成と選抜方法の進化(下)
  ~リーダーの育成と管理職の役割の変化~

 前回は管理職数が減少し、昇任要件の厳格化や選抜の仕組みが多様化してきている
ことについて触れた。
それは管理職も含む次世代リーダーの育成においても近年多様化しつつある。
次世代経営リーダーの選抜・教育・実践のプログラムも各社は長年取り組んできた。


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■■■ 公募型の次世代リーダー候補の選抜と育成 ■■■
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 育成においては、人の成長の法則とされる「70・20・10の原理」がある。
70%が経験を通じての学びであり、20%がコーチング等による刺激、10%が研修等の
学習であり、リーダー候補の選抜後の実践がとりわけ重要になる。
また、次世代リーダー候補の選抜に際しては、従来は候補に選ばれても本人に直接
伝えないことを原則とする企業も多かった。

 しかし、近年では本人に伝えるだけではなく、自主性・能動性を重視した
公募型の育成プログラムを実施する企業もある。
武田薬品工業は次世代のグローバルリーダーの育成を目的とした部門横断型の
入社5~10年目の社員を選抜・育成するプログラムを設けているが、それとは別に、
2020年11月から国内の部門に限定した公募型のグローバル人材育成プログラムを
実施している。

 対象者は中途採用者を含む社会人経験8年未満の社員であり、公募の選考に合格後、
6~8年の育成プログラムに参加する。
公募としたのはグローバルリーダーになりたいという本人のキャリアに対する
自律と覚悟が必要との考え方がある。
公募は社内イントラネット上で募集し、書類選考、アセスメント、面談で選考する。
合格者は海外勤務を含めて3つの組織を経験し、その間メンタリングやコーチング、
リーダーシップ研修など集中的な育成・指導を受ける。プログラム終了後は各部門の
中核となるマネージャーレベルのポジションに就いて将来の経営層になるための
経験を積むことが期待されている。

 キャリア自律が叫ばれるなかで課長選抜の公募制にとどまらず次世代リーダー候補
育成の選抜においても公正かつ透明性が重視されているのが近年の特徴といえる。


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■■■ プレイングマネージャーで疲弊する日本の管理職 ■■■
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 しかし、一方で次世代リーダー候補である管理職の仕事量が増加し、
負荷と責任の増大によって本来の役割を果たせなくなっている実態もある。
日本企業の管理職はマネジメント以外に自らの仕事もこなすプレイングマネージャーが
多いことが知られている。
プレイングマネージャーとは、1人のプレイヤーとして成果を出す仕事に従事しながら
業績達成のマネジメントを行う。
産業能率大学総合研究所の「第6回上場企業の課長に関する実態調査」
(2021年12月9日)によると、プレイングマネージャーの割合はほぼ全員の
99.5%を占める。

 プレイヤーとしての活動がマネジメント業務に支障があるかとの質問では、
「とても支障がある」(10.9%)、「どちらかといえば支障がある」(38.6%)と、
半数が支障があると答えている。
課長としての悩みのトップ3は、「部下がなかなか育たない」(32.2%)、
「部下の人事評価が難しい」(26.2%)、
「職場(or自分の)業務量が多すぎる」(21.7%)となっている。
課長になってもプレイヤーとしての仕事だけではなく、全体のマネジメントや
部下育成も求められている。
うまくこなそうと思えば当然、オーバーワークになり、疲弊する。

 エネルギー関連業の人事部長は「組織のフラット化を目指した結果、
部長はそうでもないが、課長はプレイングマネージャーの役割に変わってしまった。
しかし、プレイヤーをやりながら部下の育成を含むマネジメントが本当にできるのか。
それができる課長は私の実感では3割に満たない。
しかも最近は、人材育成の重要性が指摘されるようになり、プレイヤーばかりやっていても
困るよという風潮になり、課長の仕事の負担が高まっている」と指摘する。

 すでにプレイングマネージャーの歪みも出始めている。
ラーニングエージェンシーの「『人事の課題』実態調査」(2023年1月)によると、
人事部が管理職の課題と捉えているトップは「部下育成力」であり、
301人以上の企業では84.2%を占め、その深刻さがうかがえる。


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■■■ マネジメントと専門職を分離した人事制度を導入 ■■■
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 本来、管理職はマネジメントに徹すべきだろう。
ところが日本的ゼネラリストの風土の中でプレイヤー業務が残ったまま、課長補佐、
次長職を含めて管理職数を削減した結果、本来のマネジメントの役割にも支障を来している。
マネジメントの役割が機能不全の状態が続けば生産性にも影響を与えかねない。
また、最近では管理職になりたくない若手社員も増えているといわれる。
現在の管理職の役割を見直さなければ、次世代リーダーの選抜・育成も画餅に帰する
可能性もある。

 管理職の役割の見直しに着手している企業もある。
大手IT企業は、管理職の職務・役割を明確に位置づけた職務給の人事制度を導入し、
管理職をマネジメントの役割とする一方、管理職と同格の専門職の等級を設けている。
その理由について同社の人事担当役員はこう語る。

「まず当社には専門職が絶対に不足している。
入社後は専門性を身につけてもらい、専門性が高い人はマネージャーと同格の等級に
して給与も同じ額を支払うことにしている。
専門性が高くなると、プロジェクトやコンテンツのマネージをする必要があり、
どうしても人をマネージする必要が出てくる。
人を仕切る人が好きな人はそこからマネージャーを目指してもよいし、マネジメントに
興味がない人は専門性を極める道もある。
もちろん、マネジメントになるかどうかは会社もマネジメントのプロなのかどうか
厳格に見極めていくつもりだ」

 もちろんマネジメント職に就いても、職責を果たせなければポストを降ろされる
仕組みもある。
同様に専門職についても、希望者が多ければ社内で競争が発生し、
専門性のレベルも厳しくチェックされることになる。
従来のように誰もが管理職を目指す単線型のリーダー育成ではなく、
個人の主体性や能動性を重視した複線型の仕組みに移行していく企業が
増える可能性もある。                    (溝上 憲文)


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■■■ 最低賃金の全国加重平均1,002円、上げ幅は過去最大の41円に ■■■
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 7月28日に開催された厚生労働大臣の諮問機関である第67回中央最低賃金審議会
(会長:藤村博之・独立行政法人労働政策研究・研修機構理事長)は、今年度の
地域別最低賃金額改定の目安に関する答申を取りまとめた。

 各都道府県をA、B、Cのランクに分け(昨年度までの4ランクから3ランクに再編)、
今年度の地域別最低賃金額改定の目安について
Aランク41円、Bランク40円、Cランク39円とした。

 今後、この答申を受けて各都道府県の審議会でこの目安通りで引上げが行われた場合、
全国加重平均は1,002円と初めて1,000台を超える。
全国加重平均の上昇額は41円(昨年度は31円)となり、1978年度に中央最低審議会が
引き上げの目安を示す現行制度が始まって以降で最高額となる。
引上げ率に換算すると4.3%で、昨年度の3.3%を1ポイント上回っており、
昨年から今年にかけての消費者物価率の上昇率を重視した改定とみることができる。

 現在、Aランクは6都府県(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪)、
Bランクは28道府県(北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、
福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、
岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡)、
Cランクは13県(青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、
宮崎、鹿児島、沖縄)となっている。

 今後各地方最低賃金審議会で、この答申を参考にしつつ、地域における
賃金実態調査や参考人の意見等も踏まえた調査審議の上、答申を行い、
10月頃までに各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定することになる。
同目安を踏まえつつ、物価動向にとどまらず、加速する人手不足の状況が、
地域別最低賃金の決定にどのように影響するかが注目される。
また、人材の流出防止のためにも、同ランクの地域では近隣の決定をこれまで以上に
意識した審議が展開されることも予想され、目安額を上回る賃金改定が実施される
可能性も強まる。

 今年の改定審議は6月30日に開催された第66回中央最低賃金審議会で、
厚生労働大臣から今年度の目安についての諮問を受け、同日に
「中央最低賃金審議会目安に関する小委員会」を設置し、5回にわたる審議を重ねて
取りまとめた「目安に関する公益委員見解」等を、地方最低賃金審議会に示したもの。

 改定審議の中で労働側は、2021 年度後半以降の物価上昇が働く者の生活に大きな
打撃を与えており、生活必需品等の切り詰めることができない支出項目の上昇が
とりわけ最低賃金近傍で働く者の生活を圧迫していることを強調し、物価上昇への
配慮が必要だと訴えた。
一方、使用者側は、最低賃金の大幅な引き上げは、経営上の負担感の増大やコスト増に
耐えかねた廃業・倒産が増加するとの懸念があると述べた。

 賃金に関する指標を見ると、後でみる連合の第7回(最終)集計結果で、
30年ぶりの高い水準となっており、有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額(時給)の
加重平均の引上げ率の概算は5.01%。

 経団連による春季労使交渉月例賃金引上げ結果では、大手企業で3.91%、
中小企業では2.94%となっている。

 支払い能力面を見ると、産業の経常利益率の推移は、四半期ごとに変動はあるものの、
改善傾向で推移している。

 こうした賃上げ動向と支払い能力に加え、今年は物価上昇の動向が目安改定に
大きな意味を持った。直近の月次を見ると、対前年同月比で、今年4月に4.1%、
5月に3.8%、6月に3.9%となっており、昨年10月から今年1月にかけて
「持家の帰属家賃を除く総合」が4%を超えている。

 その一方、大幅な最低賃金の引き上げは、中小企業により大きな影響を与える事から、
中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げしやすい環境整備の必要性については
労使共通の認識を示した。
特に地方、中小企業・小規模事業者に配意しつつ、生産性向上を図るとともに、
官公需における対応や、価格転嫁対策を徹底し、賃上げの原資の確保につなげる
取組を継続的に実施するよう政府に対し要望している。


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■■■ 連合の2023春闘最終集計は10,560円・3.58%で30年ぶりの高水準 ■■■
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 連合は7月21日に開いた中央執行委員会で、最終回答集計結果を踏まえた
「2023春季生活闘争まとめ」を報告し、今季闘争の評価と課題を確認した。

 7月3日時点でまとめた第7回(最終)回答集計によると、月例賃金改善(定昇維持含む)
を要求した5,613組合中5,463組合が妥結済み(97.3%)。

このうち平均賃金方式で要求・交渉を行った組合のうち5,272組合(昨年同時期比328組合増)
が回答を引き出し、定期昇給相当分とベースアップなどの賃上げ分を含む
加重平均は10,560円・3.58%(同4,556円増・1.51ポイント増)。
率では1993年の10,614円・3.90%以来、30年ぶりの高水準の結果となった。

 ベア等の賃上げ分が明確に分かる3,186組合(同973組合増)の
賃上げ分の加重平均は5,983円・2.12%となった(同4,119円増・1.49ポイント増)。

 300人未満の中小組合で賃上げ分が明確に分かる2,019組合の賃上げ分は
4,982円・1.96%(同3,210円増・1.24 ポイント増)。
いずれも賃上げ分が復活し、集計を始めた2015年で最も高いものの、
大手と中小間の格差拡大が顕著となった。

 パートなど有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額は、
時給では加重平均52.78円(同29.35円増)、単純平均39.74円(同18.37円増)となった。
平均時給は、加重平均1,095.67円、単純平均で1,091.78円となった。
その結果、参考値ではあるが、賃上げ率(加重平均)は 5.01%となり、
先にみたフルタイムの組合員(平均賃金方式)を上回っている。

 企業内最低賃金協定の要求・交渉を行った組合は、のべ1,425組合
(闘争前協定あり1,308組合・なし117組合)となった。
このうち、闘争前に協約があり、基幹的労働者の定義を定めている組合の
基幹的労働者の企業内最低賃金は、組合数による単純平均で
月額17万2,339円・時間額1,068円、基幹的労働者の定義を定めていない場合は、
平均で月額17万0,937円・時間額1,000円となった。

 一時金・賞与については、フルタイム組合員(正社員)一人あたり加重平均で、
年間月数4.87月で、昨年同時期と同月数にとどまった
(年間金額は158万8,396円で28,351円増)。

 短時間労働者は加重平均で、年間月数1.43月・年間金額10万3,399円、
契約社員は同じく加重平均で、年間月数2.25月・年間金額23万4,920円となっている。
こうした結果を踏まえて、連合は、
「直近の物価高による組合員家計への影響はもちろんのこと、賃金水準の停滞が
企業経営や産業の存続、ひいては日本の経済成長に及ぼす影響について、
労使が中長期的視点を持って粘り強くかつ真摯に交渉した結果であり、
未来につながる転換点となり得るものと受け止める」と前向に評価。

 今後の課題については、
「経済のステージを転換するには、
一度きりの賃上げでは不十分であり、継続することが重要」と強調する。

 また、中小組合も全体的に健闘しているものの、上げ幅の分散度合いは昨年より
大きくなっており、大手の賃上げ水準が大きく上昇するなかで、
格差是正ができたところは一定数にとどまると推測されることから、
適正な価格転嫁や「人への投資」「未来への投資」を通じた生産性の向上などにより、
「継続的に格差是正を含めた賃上げができる環境を作っていくことが必要」
であると総括している。


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■■■ 初任給と最低賃金の因縁深い関係 ■■■
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 春闘における労使交渉だけでなく、今年の高水準の賃上げを促した要因は、
今年の最低賃金の審議で最も影響を与えた物価動向をまず指摘することができるだろう。

 また、コロナ後の経済再起動でより深刻となった人手不足をあげることができる。

 人材獲得の熾烈化に対応して、多くの企業は初任給の大幅引き上げに踏み切り、
パート・アルバイトの労働市場でも採用時給を他社より高めに設定して差別化を
図ろうとする動きも目立つようになった。

 バブル崩壊以降、企業の賃金決定において、もっとも重視されてきたのは
「企業業績」だった。
デフレ不況下では「雇用維持」が最優先とされ、それと引き換えに停滞する
「企業業績」を反映した低率の賃上げが続いた。
しかし、今年以降は、世間並みのお給料をださなければ
人は集まらないし・定着しない=「世間相場」を意識した動きが賃金決定の
大きな要因に浮上することになりそうだ。

 「労使関係」「労働市場」「企業業績」といった賃金決定に影響を与えるこうした
要因とやや異なる「世間相場」という要因は、その正社員採用時の「初任給」により
明示的に表れることになる。

 優秀な人材確保のためには、よそ様よりも魅力的な「初任給」の提示が最も効果的。
しかし、これを放っておくと初任給の引き上げ合戦となり、
企業・産業間の秩序が乱れてしまう。

 こうした事態を避ける目的で、1959年に成立した最低賃金法に盛り込まれた
業者間の最低賃金協定方式による最低賃金が事実上の初任給カルテル
(当時は中卒初任給)になっていたことは、あまり知られていない。

 当時は高度成長期の入口で、人材の獲得が企業の命運を左右した。
そのため、各企業の競争条件を同一にすることで、公正競争を確保する必要があった。
また、中小企業にとっても、大企業に伍して優秀な労働力を確保するために、
賃金のなかでも初任給の水準向上が要請された。

 その後、高度経済成長が始まると、中卒初任給と最低賃金との乖離が始まる。
そのため、最低賃金は業者間協定に基づく過渡的な制度から、
現在の調査審議に基づく審議会方式を中心とする制度に法改正されたのが、1968年。
さらに中央最低賃金審議会が、時々の経済情勢等を踏まえてその年の引上げ目安を示し、
各都道府県の審議会が決定する現行方式に1978年から移行する。

 この頃から最低賃金の対象となったのは、もっぱら、急増してきた
主婦パートのほか、日雇いといった、常用雇用以外の労働者だった。

 こうしたなか、先の連合集計と審議会の目安諮問で示された金額を比較すると、
奇妙なことに気が付く。
連合など労働界が、地域別最低賃金を上回る産業別最低賃金の設定に欠かせないとして、
取り組みを進めてきた企業内最低賃金協定の時間額は先の連合集計によると約1,000円。
この水準は18歳見合い・高卒初任給水準としていることから、
今年、地域別最低賃金が1,000円超で改定されると、ほぼ同額となる。

 企業内最低賃金協定はパート・アルバイトを含む非正規雇用にも適用されるため、
入口段階ではあるものの、結果的に労働組合が求める正社員との
同一労働・同一賃金が実現したとみることができる。

 とはいえ、この取り組みが、地域別最低賃金を約1割以上上回る産業別最低賃
金設定の土台となるために取り組んできた経過からすると、
本来の趣旨からは外れつつある。

 また、初任給と最低賃金が時給ベースでほぼイコールとなったことで、
正社員になるメリットを感じにくくさせる要因にもなりかねない
(月間の手取りでは学生時代のバイト収入を下回ることが起こりうる)。

 当然ながら時給換算で最賃割れという制度設計は法律にも抵触する。

 こうした課題は、正社員の賃上げよりも最低賃金の引き上げスピードが
急速だったことが引き起こしたものだ。

 初任給と最低賃金をめぐるこの因縁深い関係は、先祖返りともいえる状況を
作り出している。
高水準の初任給設定は採用競争力の強化につながるが、公正競争の観点からすると、
業界内の秩序に悪影響を与えることもある。

 また、これまで労働組合が力を入れてきた企業内最低賃金協定が、
地域別最賃に追いつかれる現状は、運動の形骸化を招いている。

 労使とも賃金の社会性をより意識した最低賃金および初任給のあり方に
関する議論が必要になるのではないだろうか。        (荻野 登)



編┃集┃後┃記┃
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 35度を超す日々の中、気象庁が向こう3ヶ月の予報を発表しました。
暑さは10月まで続きそうです。

 総務省が住民基本台帳に基づく今年1月1日時点での人口を発表しました。
人口減少数は過去最多となり全都道府県で減少しました。
新型コロナが5類に移行し、花火やお祭りが数年ぶり復活し街には人が溢れています。
しかし、飲食等では人材確保ができず閉店している店舗等があります。

 上司による性的指向の暴露(アウティング)が原因で精神疾患を発症したとして、
池袋労働基準監督署が昨年3月に労災認定されていたことが公になりました。

 「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の
理解の増進に関する法律」(LGBT理解増進法)が6月23日より施行され、
事業主の取り組みとして、次の事項が求められています。

1.基本理念にのっとり、多様性に関する従業員の理解の増進に関し、普及啓発、
 就業環境の整備、相談の機会の確保等を行うことにより多様性に関する従業員の
 理解の増進に努める
2.従業員に対し、多様性に関する理解を深めるための情報提供、研修の実施、
 普及啓発、就業環境に関する相談体制の整備その他の必要な措置を講ずるよう努める

ハラスメント行為は多岐にわたります。
事業主は、業務遂行中に予想される生命、身体の危険から労働者を保護し、
就業環境の中で著しい肉体的・精神的な過重負荷等に起因した精神疾患や身体
疾患が発生しないよう配慮する義務があります。

 経営者および従業員にハラスメントに関する研修等を実施しましょう。
                                (白石)



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発行者 社会保険労務士法人雇用システム研究所
代表社員 白石多賀子 東京都新宿区神楽坂2-13末よしビル4階
アドレス:info@koyousystem.jp


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